ガードガール
「えと、貴女は確か……。」
「前学期ではアラベラ様、それにリタ様、そして生徒会の皆様にも大変失礼を致しました。」
深く深く頭を下げる彼女は、リタ様と私に水をかけてくれたあの人だった。
右手にサポーター?のようなものをつけているのに、手を動かしているのは大丈夫なのかしら……。
「あの、手をそんなに動かされては……。」
「あーそれは大丈夫です、さっき治ったみたいなので。」
「それって……。」
「私のことはいいんです!それより、ウィリアム様とあの女!」
「ああ、やっぱり……。」
怪我をしているはずなのに動かせる右手、もうそれだけで十分に何があったのかは分かった。
でも、これって一応、国家機密じゃなかったの?
だから私はジゼルにもリタ様にも、そのことまでは言わなかったのに……。
「仮にも手を治してくださった方に、あの女というのは……。」
「もう、ほぼ治っていたんです。けど、競技祭に出ない理由には丁度よかったんです。」
「は、はあ……。」
理由を話してくれた彼女は、少しも悪びれもせずに理由を述べた。
まあ私も正直、競技祭に出たくないから気持ちはわかるけど……。
「アラベラ様は何かご存じなんですね?」
「え、ええ、まあ……。」
「なら、あの状況をお許しになっているんですか?」
「あの状況、というのは……。」
「あー!アラベラ様!!」
「あっ……。」
「げっ。」
噂をすればなんとやら。
ウィリアム様の腕をしっかりと掴んだミライ様が現れた。
視界に入るのも正直辛いところだけれど、挨拶と謝罪はしないと。
「……おはようございます、ウィリアム様、ミライ様。」
「おはよう、ベラ。」
「ウィリアム様、その、この間は―」
「アラベラ様、おはようございます!今日からよろしくお願いしますねっ。」
「あ、は、はい……。」
「あら先程の。それと、ああー!貴女が私に似ているという!」
「ひゃ、ひゃああ?!」
ウィリアム様の腕をつかんでいたミライ様の手は、リタ様の手をぎゅっと握った。
「私ミライと申しますの!よろしくお願いします。」
「は、は、はいぃ……。」
「そうだ、私、今から色々な手続きをしないといけないんでした。それでは皆様ごきげんよう!」
「じゃ、じゃあね、ベラ、また後で。」
「ウィル様、ご案内よろしくお願いしますっ!」
そう言ってまたウィリアム様の腕を掴んで、ミライ様はあっという間に消えていった。
「……なんだよ今の。」
ダビが手を震わせながら、二人が消えた先を睨んでいった。
「アラベラ、あのままでいいのか?」
「それは……。」
いいわけないけど、仕方がなくて。
でも王命だし、私が何を言っても……。
そんな気持ちが頭の中でぐるぐるしていた。
「ダビ様、アラベラ様に八つ当たりはいけないですよ。」
「八つ当たりなんかじゃ……。」
「リタ嬢が正しいね。」
「うんうん、流石リタ嬢。」
「……。」
私が返事に困っていると、はっきりとした声でリタ様がダビに言った。
ダビは黙って下を向いてしまった。
「それに、そこの貴女も、アラベラ様を無暗に不安にさせるようなことを言わないで下さい。」
「ご、ごめんなさい……。」
さっきのミライ様からの声掛けに狼狽えていたリタ様とはまるで別人。
その姿は凛として、とてもかっこよかった。
「リタ様、ありがとう……。」
「いえ、出過ぎた真似を……。」
「「リタ嬢かっこいいねー!」」
「わ、わわわわ!」
兄様たちに囲まれた瞬間、凛とした姿は消えてしまったけど。
「兄様たち、そんなことをずっとしていたら、リタ様に嫌われますからね!」
「「えー。」」
兄様たちがこうやっていつもリタ様をからかうのは、リタ様を気に入ってる証拠なんだけども。
ウィリアム様やダビ様と違うのだから、もう丁寧にして欲しいものだわ……。




