種は育つのが早い
徐々にかけ足になっていた私がリタ様とダビのところに行くと、二人は驚いた顔をしていた。
「ど、どうされましたアラベラ様……。」
「何かあったのか?」
「えっ……だって二人が……体調悪くて……帰るって……。心配で……。」
息を切らして喋るとリタ様が背中をさすってくださった。
これじゃあどっちが病人か分かったものではない。
「あー、まあ本調子ではないものの、今はもうそこまで辛いわけじゃないんだよな。」
「そうなんです。でも、セバスチャンさんが無理はしてはいけない、と馬車を呼んでいただいて……。」
「その後すぐにウィリアムが来て、アラベラも待ってあげて、って言っててな。」
「そう、なの……。」
「ウィリアムは?」
「ブルーノ様とお話しされると言っていたわ。私たちは先に学園に戻りましょう。」
「そうですね。」
三人でまた馬車に乗って、学園に戻る。
リタ様もダビも本当に元気で、さっきの体調の悪さは嘘のようだった。
「緊張、し過ぎていたのかもしれませんね。」
「俺も案外緊張してたのかもな。」
「私だって多少は緊張していたはずなのに……。」
「まあ元気なのは悪いことじゃないだろ。」
「そうですよ!」
二人の優しさに胸が暖かくなる気持ちを感じながらも、ふとブルーノ様の言葉を思い出す。
ウィリアム様はなんで、今まで正式な婚約にしなかったんだろう。
考え始めると胸がキュッと締め付けられるような感覚に襲われるのに、頭からそれが離れない。
私に向けてくれた感情も、家同士のためのものだったとしたら……。
おかしいな、婚約破棄したかったはずなのに。
ウィリアム様が私と婚約をしたくないのかも、って、思ったら……凄く嫌だ。
「アラベラ?」
「だ、大丈夫ですか?!」
思わず胸の辺りを押さえてしまい、二人に心配をされてしまった。
「いえ、少し考えごとをしていて……ちょっとだけ嫌なことを思い出してしまって。」
「無理はなさらないでくださいね……?」
「ええ、ありがとうございます。」
「もう学園にも着いたみたいだし、馬車から降りて少し空気を吸った方がいいな。」
「それが良さそうですね。」
ウィリアム様がそういうお考えなら仕方ないわよね。
それで未来を少しでも変えられるなら、私はそのいつの日かを受け入れなくてはいけない。
受け入れられるのかな……。
そんなことを考えながら馬車を降りようとしてしまったせいで、私は思いっきり馬車から降りるのを失敗してしまったのだった




