奪われぬひと side:W
ウィリアム視点です。
「少しはまともな性格になったかと思ったのに。」
テーブルに置いてあったお菓子の中にあるレーズンサンドと、ベラたちが飲んでいたお茶に目をやる。
僕の家では出さないお茶の種類。
アラベラの家でも出ているのは見たことがない。
ダビの家も、リタ嬢の家でもこのお茶を扱っていないのだろう。
「僕がこのお茶とレーズンサンドを食べて、体調を崩したこと、忘れていたなんて言わせないよ。」
「そうだった、かな。」
このお茶は、レーズンとの食べ合わせがとても悪い。
小さい頃にブルーノとお茶をした時に、僕はこの食べ合わせで吐いてしまったのだ。
ダビもリタ嬢も小さい子供ではないから、吐くまではいかないかもしれないが、お腹を壊したり、気持ちの悪さがしばらく抜けないかもしれない。
「ベラはレーズンが苦手だからね。このお菓子に手を出さないと知っていたんだね。セバスチャンも……。」
「おや、アラベラはレーズンが苦手だったのか。」
「白々しい。」
小さい頃のブルーノはそれこそ暴君だった。
欲しいものはなんでも手に入れさせて、気に入らない奴は自分が出来る範囲で排除する。
そんな暴君に歳が同じ子供として、しっかりした子供の見本としてブルーノの側に置かれることが多かった。
最初は本当に嫌だった。
マナーはなってないし、話も大して面白くない。機嫌が悪いと僕にだって八つ当たりをするし、近くにいるセバスチャンは甘やかしてばかりだし、これが本当に王太子殿下か、と思った。
こいつのせいで、ベラとお茶をしたり、ダビと遊ぶ時間が減らされるのは苦痛だった。
ある時、あまりに腹が立って「そんなんだから婚約者が王子のくせにいないんだ。」と思わず言ってしまったことがある。
やってしまった。と子供ながらに青ざめた。
しかし、丁度良いタイミングでその頃、求婚をした相手に振られていたらしく、その言葉はブルーノに深く刺さったらしい。
そこから少しずつまともな性格になっていったのを僕は近くで見ていた。
今ではすっかりあの暴君な性格は消えたと思っていたけど……。
「こうでもしないと、アラベラと二人になれないだろう?」
「ふざけるな。ダビとリタ嬢はお前の駒じゃない。」
ブルーノは「あの二人には悪かったとは思う。」とお茶を飲みながら笑った。
「でも、お前だって、同じようなものだろう。」
「何が?」
「ダビから、アラベラを奪ったんだろう。」
言葉が一瞬詰まってしまった。
それをみて、ニヤリと笑われたのが腹立たしい。
「……そんなことはない。」
「おや、少し自信がなさそうだな。」
「うるさいな。とにかく、もうこうやって人を傷付けるのはやめろ。ベラにも手を出すな。」
「考えておこう。」
いいえ、ということか。
これ以上話しても無駄だと判断した僕は、背を向けて馬車を置いていた方へと向かった。
ああ、一刻も早く、愛しい君に会いたい。
誰にも奪わせるものか。




