お茶会にて
馬車にごとごとと揺られながら、私たちは何処かに運ばれていく。
揺られながらとは言ったものの、この馬車、振動がほぼない。王宮の特注品……?
何処か、と言ったのは見ている景色がどう考えても王宮に向かっている景色ではないから。
馬車に乗った当初、ガチガチと歯を鳴らして震えていたリタ様も、景色を見て少し落ち着きを取り戻していた。
しばらくして、馬車が止まり扉が開く。
外に出ると、そこは綺麗な湖が広がっていた。
「わぁ……!!」
「すごい、綺麗ですね!」
「避暑地にもってこいの場所だな。」
「あちらでブルーノ様がお待ちです。」
物腰柔らかな男性に案内されると、湖付近に置いてあるテーブルに、ブルーノ様の姿が。
「おお、待っていたぞ。」
「ブルーノ様、お招きありがとうございます。」
3人で挨拶をすると、ブルーノ様は少し嬉しそうに微笑んだ。
「いいところだろう?私が小さい頃よく過ごしていた場所なんだ。」
「そうなんですね、夏にぴったりの素敵な場所だと思います。」
「アラベラはここに来たことは?」
「いえ、王家御用達の場所には来たことがありませんわ。」
「そうか。」
質問に答えるとブルーノ様は少し微妙な顔をした。
あれ?もしかして割と有名な場所だったりするのかしら……。
「さあさ、皆様お座りくださいませ。」
案内をしてくれた物腰柔らかな男性が、着席を促す。
皆で席に着くと、お茶とお菓子が運ばれてきた。
王家の由緒正しいティータイム、というわけではなかったので、3人ともほっと胸を撫で下ろす。
お茶もお菓子も、どれも綺麗で美味しそう。
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「あら、それではアラベラ様のお父様は……。」
「今は家の執務室で、療養しつつ仕事をしているみたいですわ。」
「それにしても、魔物が街に出るなんてな……。」
「災難だったな、アラベラ。」
皆で近況報告をしていたのだが、やはり街に魔物が出るというのは穏やかなものではなく、話はそちらに流れていった。
もしかしたら、コルソンの領地以外でも、こういうことが起きているのかもしれない……と思ったけれど、そうではないらしい。
そんな話をしているとリタ様が顔を真っ赤にして手を挙げた。
「あ、あの、私、すみません、お花摘みに……。」
「セバス、案内してやれ。」
「かしこまりました。」
物腰柔らかな男性はセバスと言うらしい。
お手洗い、案内が必要な程遠いのね……。
「あの方、セバスさんと仰るんですね。」
「ああ。第一王子に付く者の名前はいつでもセバスチャンなんだ。」
「そうなん、ですか……。」
セバスチャンって、ヒロインに付く執事の名前(しかも王子の腹違いの兄!)なんだけど、ここからどう捻れてそうなっちゃうんだろう……。
まあ、私が無事に歳を取れば分かることよね、今誰に聞いても分かるわけないし……。
そう思いながら、お茶を一口飲んだ。
うん、美味しい。
少しするとセバスチャンさんが戻ってきた。
戻ってきた時に気付いたというより、気付いたら戻ってきていた、という感じだけども……。
「……俺もお手洗い、いいか?」
声に反応してダビの方を見ると、席を立ったダビはどこか具合が悪そうだった。
「大丈夫?!顔色悪いわよ?」
「そんなことねぇって。」
「セバス、頼んだ。」
「かしこまりました。ダビ様、こちらです。」
セバスチャンさんにダビは案内されて、奥に消えていく。
私がオロオロしているとブルーノ様が「セバスは医学の知識も持っているから心配しなくていい。」と励ましてくださった。
「なら……いいんですけど……。」
顔を下に落としていた私は、この時のブルーノ様の表情なんて、見ているわけがなかった。




