お見舞い
後日、アヴァン卿とウィリアム様がお父様のお見舞いに来られた。
アヴァン卿がお父様と二人でお話をされるとのことだったので、私とウィリアム様はゲストルームでお茶を飲んでいた。
運ばれてきたお菓子もあったのだが、苦手なレーズンが入っていたので手を付けずにいた。
ウィリアム様はレーズンがお好きなので、いつもニコニコしながら食べるのよね。可愛い。
今日は来た理由が理由なので、そんなニコニコされていなかったけど……。
「……災難だったね。」
「はい……本当、無事でよかったです。」
「ベラも、あまり外を一人で歩かないでね。」
「はい、心得ております。」
「だからと言って、男と二人きりになられるのも困るけど……。」
「え?」
「何でもない、こっちの話。ところで、お出かけのことなんだけど、今度のー」
バターン!という扉の勢いよく開く音と共に、弟の「僕も行きたい!!」という声が響き渡る。
「リドル?!」
「僕もお出かけしたい姉様と!ウィリアムとも遊びたい!!!」
ドアの側で聴き耳立てていたのか、この弟は……。
「こらこら。」
「せっかくのウィリアムのアプローチタイムは、」
「「邪魔しちゃ駄目だぞ。」」
ニヤリと笑いながら現れた兄様たちは、駄々をこねていたリドルを確保して部屋を出ようとする。
後から現れた兄様たちも、察するに……。
「兄様たちも、聴き耳を立てていらしたの?」
「なんのことだろう。」
「まあ、僕らは音声拡張魔法使えたりするけどね。」
「「コソコソ話には防音魔法が必須だぞ。」」
そう言い放つと、兄様たちは扉をゆっくりと閉めた。
「もう!聞かれて困る話はしてないけど、もう!!!」
「……防音魔法、早く覚えないとな。ベラと甘い時間を過ごすためにも。」
「あ、あ甘い時間って……その……。」
「冗談だよ。僕らはまだ授業外では魔法を使ってはいけないからね。ああ、でもあれは学園内での規則だったかな?」
クスッと笑うウィリアム様、眼差しが本気なんですが……。
「そうそう、お出かけのことなんだけど、今度の月曜日はどうかな?」
「あっ……すみません、その日、生徒会役員の一年生でお茶をする約束をしていまして……。
「リタ嬢と?」
「えっと、リタ様と、ダビと、ブルーノ様と……。」
「……へぇ、そっか、楽しんできてね。」
急にウィリアム様の声のトーンがいつもより、低くなった。
表情も何処か少し、曇ったような……。
「は、はい……、すみません、お出かけはまた後日ということで……。」
「……うん。」
「折角お誘いいただいたのに、申し訳ありません……。」
「大丈夫だよ。ごめんね、僕こそ。」
そう言って、お茶を入れようとした私の手をそっと握るウィリアム様。
「ウィ、ウィリアム様は何も悪くありませんわ……。」
「優しいね、ベラは。それに比べて僕は……。」
「ウィリアム様?」
そんなタイミングでノックがされて、返事をするとアヴァン卿が入ってくる。
「ウィリアム、帰るぞ。」
「はい、父上……。」
「アラベラ、ウィリアムの相手をしてくれてありがとう。」
「いえ、私こそ楽しい時間を過ごさせて頂きましたわ。」
少し恨めしそうな顔でアヴァン卿を見るウィリアム様。この表情珍しいかも……。
「馬車までお見送りします。」
「ありがとう。」
馬車まで歩きながら、アヴァン卿と、ウィリアム様と、学園生活についての話をした。
「そういえば、アラベラは生徒会役員になったそうだね。」
「はい。周りの皆さんにサポートを頂きながら、どうにか務めさせていただいていますわ。」
「ブルーノ殿下も生徒会役員だっけか。」
「えぇ、お詳しいんですね。」
「ウィルが恨めしそうに話をしてくれるのさ。」
「父上!!」
ウィリアム様とアヴァン卿が仲良しなことを実感した時間だった。
アヴァン卿は笑うと、ウィリアム様に似てるのよね。ウィリアム様が後20年くらい歳を重ねたらこんな風になるのかしら。
見てみたいなぁ……。
小さくなっていく馬車を見つめながら、そんなことを思った。
……出来るならば、近くで。




