夏季休暇、初日
夏季休暇初日、家からの迎えがきていたので、兄様たちと馬車に乗り込んだ。
入学式の時は、生徒会の仕事があったから、私より先に学園に行っていた兄様たち。
今思えば、入学式に兄様たちがいたんだから、そこで生徒会役員だということを気付けた筈なんだけど……。
兄様たちのことだから、私の様子を見に来てくれてたのかと思っていたわ。とんだ自惚れね。
兄妹水入らずで馬車の中でお話しをしていたら、あっという間に我が家に着いた。
馬車を降りると、向こうから凄い勢いで走ってくる弟の姿が見える。
「兄様!姉様!」
「わぶっっ。」
思いっきり抱きついてくるから吹っ飛びそうになった。
後ろにいた兄様たちに支えられてどうにか倒れずに済んだんだけども……。
「お帰りなさい!」
「リドル!良い子にしてたのかしら?」
「勿論だよ!」
「可愛い弟よ、出迎えありがとう。」
「少し見ないうちに大きくなったか?」
「成長期だもん!」
私と兄様たちが学園に行ってしまってリドルは相当寂しかったのね……。
兄様たちは私に甘いが、リドルにも甘い。私もリドルに甘い。
沢山の愛を受け取ったリドルはかなり素直で純粋な男の子に成長している。
とはいえ、まだ13歳なので、反抗期が訪れる可能性はまだまだあるわよね。
反抗してもいいけど「うざい」とか言われたら立ち直れる気がしないわ……。
「おかえりなさいませ。ささ、お部屋に戻ってお着替えなさいましょう。」
「ジゼル!少しは休んでいてもいいのに。」
「だいぶ先に着いていたので、休憩させていただいてましたよ。」
「ならいいけど……。」
ジゼルは「兄妹水入らずを邪魔出来ませんので。」と一足先に兄様たちのお付きの方と馬車に乗ってくれていた。
帰ってきたばかりで自分も疲れているはずなのに、こうして私の帰りを出迎えてくれるし。
本当、感謝しかないわ。
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家に入ると何やら騒がしい。
ドタバタと音を立てる使用人と、青ざめているお母様。
「ああ、アーミル、アーロン、アラベラ、おかえりなさい。無事で何よりだわ。リドルもお出迎えありがとうね。」
「お母様、何かあったんですか?」
「ええ、お父様が、怪我をされたみたいで……。」
「怪我?!」
「お父様が怪我なんて。」
「ど、どうしましょう、大丈夫なのかしらお父様……。」
「あの人に何かあったら私は……。」
青ざめた顔からポロポロと涙を落とし始めるお母様。
その横でオロオロする私とリドル。
こういう時、どうすればいいの……。
「ベラ、リドル、ここで僕たちが慌てていても仕方ない。落ち着こう。」
「はい……。」
「うん……。」
「お母様もお茶でも飲んで、僕たちと話そう?」
「え、ええ……。」
流石は長男&次男。
一つしか変わらないのに、この落ち着き方。
とても頼りになります……。
結論から言うと、お父様は腰を怪我していた。
全治一ヶ月、らしい。
わずかだが、我が家には領地がある。
その領地の外れに森があって、その近くの街で魔物が現れたそうだ。
その街に視察に来ていたお父様は、魔物に鉢合わせしてしまったらしい。
幸い、魔物は弱く、駆けつけた自警団によって退治されたのだが、その魔物が纏っていた粘膜をうっかり踏んでしまい、思いっきり滑って腰を強く打ってしまったとか。
……頭じゃなくて本当によかった。
家に帰ってきたお父様は私たちを見ると微笑んでくれたが、「夏季休暇、旅行は無理そうだな……。」と悲しそうな顔で呟いた。
「冬季休暇には、何処か連れて行ってくださいな。」
そうお母様がお父様の手を取って微笑んでいた。
私たち兄弟も「まずは自分の腰を治すことを優先して。」と伝えてお父様の部屋を出た。
「夏季休暇初日からこんな騒動が起きるなんて……。」
「魔物が街に出たのなんて、僕初めて聞いたよ?」
「そうよね……。」
私とリドルが話している通り、コルソン領は割と平和だ。
だからこそ、今回の魔物の話はかなり驚いた。
しかも粘膜を纏っている魔物って、確かこのゲームで最後に戦う魔物じゃなかった?
でもあの魔物は封印されてるはずだし、弱くなかったし……魔物違いかしらね。
「ベラも、リドルも、家の近くだとしても、なるべく一人で行動してはいけないよ。」
「念の為、ね。」
「はい、兄様。」
「分かりましたわ。」
優しく気遣いも出来る兄様たち。
普段は少し騒がしいけど、こんな頼りになる兄様たちが大好きだ。
「そういえば、ブルーノ王太子殿下からお茶のお誘い受けてるんだって?」
「やるねぇ、流石はアラベラ。あの王太子殿下から声をかけられるなんて。」
「もう!生徒会役員の一年生メンバーでお茶するだけですわ。」
「盛り上がってきたアラベラ争奪戦!」
「三角関係から四角関係!いや、五角関係か?!」
「どうなるどうするウィリアム!」
「恋のハードルは」
「「高くなる一方だ!」」
「なになに!兄様たちそれなんのお話なの!」
……いつもの兄様たちに戻ってしまった。
「純粋なリドルに色々吹き込もうとするのやめてください!!」




