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分からないことだらけ

「ここはね、拡張魔法と防音魔法が使われている場所なんだよ。」

「そ、そうなんですね。」


外の音は聞こえるし、扉には鍵がかからないから立てこもりには向かないけどね。とウィリアム様は付け足した。立てこもりに使う人はいないと思いますけど……。


しかし、気付かれていたとは。目が合ったつもりはなかったし、周りにはお嬢様の壁があったから気付くわけがないと思っていた……。


「そ、その……違うんです、覗き見をするつもりは……なかったんですけど……。ウィリアム様のお声が聞こえて……。」

「それで、挨拶もせずにここに立てこもるつもりだったのかい?」


あ、立てこもりって私のことだったんだ。


「だ、だってウィリアム様のご歓談中でしたし、この後もお仕事されるって……。」

「急ぎの作業でもないんだ。」


そう言って私のすぐ隣に座るウィリアム様。

片足がウィリアム様の足と少し触れ合っていて、そこに意識が集中してしまいそうになる。


「ねぇ、ベラ。」

「は、はい。」

「さっきの光景を見て、どう思った?」

「えと、ウィリアム様は人気だなぁと……。」

「それだけ?」

「はい……多分……。」

「そっか……。」


はあ、と隣でため息をつくウィリアム様。

少しして私の頬をそっと触り、少し切なそうな表情をされた。


「これでも僕は急ぎ過ぎたな、って反省してたんだよ。」

「そう、なんですか。」

「でもここ最近、ベラは生徒会や新しいご友人にご執着だろう?」

「そ、それはまあ、早く慣れないといけないのもありますので。」

「だから少しは僕に独り占めさせて?」

「うぃり、あむ、さま。」


ぎゅう、と抱きしめられ行き場のない手が宙に浮いていた。

服越しとはいえ、身体が密着している。

胸板はしっかりしていて、抱きしめている力は強く、嫌でも男女の差を見せつけられる。


「君は、こんなに華奢なんだね、ベラ。」

「そんなことは、ないですよ……。」


正直、抱きしめられているだけで頭がいっぱいいっぱいになってしまっているので、どうすればいいかが分からない。自分の心臓がびっくりするくらい早く動いているのが分かる。


「ふふ、これで少しは僕のことで頭いっぱいに出来たかな。」


そう言ってウィリアム様は、私を抱きしめるのをやめた。

さっきの少し切なそうな顔から、いつものにこにこ顔に戻った。


「僕はそろそろ作業に戻るね。」

「は、はい。」

「じゃあ、またね、僕の可愛いベラ。」

「え、ええ。ウィリアム様、ごきげんよう。」


扉がパタン、と閉まりウィリアムがいなくなったのを確認して、顔を手で覆って「あーーーーーーー!」と大きな声をあげた。

ウィリアム様、今日は可愛い感じだった……。


自信は正直あまりないんだけど、ウィリアム様は私をあい……あ、愛してくださっているのよね……。

流石に前回のアレで今回のこんなこと起きれば……私も鈍感ではないわよ……。


私はウィリアム様のことを好きだけど、それが恋とか愛かと言われると正直よく分からない……。

それに、私はウィリアム様に恋愛してはいけないんだってば。

私とウィリアム様が結ばれるということは、ゲームのシナリオ通りに進むと言うこと。

それは、私が獄中死をして、ウィリアム様は若くして死んでしまう、その未来へ近づけさせてしまうからだ。

さっき触れられた頬を、そっと自分で触る。

……そんなの嫌だ。


ウィリアム様がいつ亡くなるかは不明だけど、私がアーチボルトになってからの未来だ。

そして、庇う相手はダビ。


もしかして、私がウィリアム様と結婚しなかったから、そのままダビが死んでしまうのかな……。

ウィリアム様に死んでほしくないけど、勿論ダビにだって死んでほしくない。

都合が、良すぎるんだろうか。


何をすれば正解なのか、教えてほしい。

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