壊してしまいそう side:W
ウィリアム視点です。
ベラが生徒会役員になった。
あの双子兄たちがダビも引き入れたらしいが、僕は断られた。
「「恋のハードルは高い方がいい。」」
冗談じゃない。今でさえ、ほぼ僕の片想いのような状態になっているのに。
婚約破棄を切り出されてから、僕は少し焦り過ぎたかもしれない。
ダビにも「落ち着け。」と言われるし。
だからまた、前のようにとまではいかないけど、ベラが困ることは控えたいと思った。
でも、リタ嬢や、生徒会。
僕らが一緒にいれる時間はまた、少なくなっていった。
けれど、ベラが楽しそうなのは見ていて嬉しい。
少しは違うことをして、気を紛らわせたくて図書委員になった。
本は嫌いじゃないし、本を整理をしている間は少し無心になれるからよかった。
最近は同じクラスでもなければ、見たこともない人にたくさん声をかけられて、その時間を割かれるのが苦痛だったけど、図書室に来た生徒の案内をするのも図書委員の仕事だったので、仕方なく対応した。
仲にはお付き合いをしたいと言ってくる人もいたから、婚約者がいることを告げて断った。
……それでも、しつこく声をかけられるのは変わらなかった。
その日もまた、図書室に足を運ぶと、名前も覚える気のない人たちに声をかけられ、適当に対応していた。
いつもより騒がしい。授業休みで気持ちが大きくなっているんだろうか。
この人たちはここが図書室だというのを分かっているのだろうか?
もう少し静かにしてください、と僕が言うと、謝りはしたが「でも授業休みの日に会えるとは思わなくて」とお喋りが再開された。
勝手に盛り上がってお茶だとかなんとか言い出したので、婚約者がいることを理由にやんわり断った。
……婚約者は僕がこの人たちとお茶に行こうが気にしなさそうだけど。
遠い目をしながらふと勉強エリアの方を見ると、思わず目を見開きそうになった。
僕が見間違えるはずがない。
仕切りの上から顔を覗かせているベラの姿が見えた。
もしかして、この様子に気を揉んでくれた?
いやいや、過度の期待はよくない。
そんなことを考えていると、いきなり腕をグイ、と捕まれ抱きつかれた。
上目遣いというやつなんだろうか、そんな感じの表情でこちらを見ている。
これがベラだったらどんなに可愛かったんだろう。
そんなことを思いながらも、無理矢理その女を引き剥がす。
気持ちが悪い。触りたくもなかった。
「いい加減に、してくれませんか。」
いつもよりゆっくり一言発すると、周りが一気に静かになった。
「本を読んで、もう少し人の気持ちを慮ることを考えた方がいいですよ。」
この人たちには道徳の本でも勧めるべきだったな、と少し後悔しながら僕は「本を整理しに行く」と伝えてその場を後にした。
いつもはそれでも食い下がってくるんだけど、流石に今日は付いてくる人は居なかった。
少し早歩きで奥の倉庫の方角は足を進める。
けれど、今の行き先は奥の倉庫じゃなくて……。
「ウィリアム、さ、ま……。」
愛しい婚約者の元。
僕の登場に大分狼狽ていたので、声をかけてくれるつもりはなかったのだろう。
さっきの光景を見て、嫉妬して怒っているわけでもなく、ただ慌てた様子しかなかった。
思い切って何か思わなかったかと聞いたけど、見当違いな返答しかなくて。
……僕だけ空回って、馬鹿みたいだなぁ。
ベラを抱きしめても、彼女の腕は僕の背中に回らない。
その現実が、辛い。
ここはね、拡張魔法と防音魔法が使われているんだよ、と最初に伝えた。
だからね、僕が例えベラに何をしたって、声は外に届かないんだよ。
ベラを大切にしたい。その気持ちは嘘じゃない。
でも、君を僕でいっぱいにしたい。
僕しか瞳にいれられないようにしたい。
そう思ってしまうのも、嘘ではないんだ。
段々と、ベラの心音が早くなっていくのが分かる。
……少しは僕を意識してくれているんだよね?
身体を離しても顔が赤くなっていたベラを見て、少し満足した僕はベラに別れを告げて勉強エリアから離れる。
あれ以上あの空間に二人でいたら、自分が何をやらかすか分からない。
勿論、防音とはいえ、扉は簡易的だし、仕切りの上から中を覗こうと思えば覗ける場所なんだけども……。
情けない。
「壊しては駄目だそ。」
前に父上から言われた言葉が頭の中でぐるぐる回る。
こんなこともお見通しなのかもしれない。
僕は今日何度目かのため息をついて、奥の倉庫へ足を進めた。




