本の城の王子様
「お菓子の謎」は読んでみたら思っていた以上に謎な本だった。
様々なお菓子についての説明、解説が載っているのだが、ほとんどが
"このお菓子が最初、誰によって作られたかは謎のままである。"
と書かれているのだ。
いや、分かんないことを分からないって書いてる本って、何?!
知りたいから読んでるのに「自分も知らないんだよねー。まあお菓子は美味しいからそういうのは良いでしょ!」とかそんな感じで纏められていてイラッッッとしたわ……。
なんか前世でも、有名な人の噂とか事件の真相について!とかいうタイトルのくせに「詳しくは分からないみたいです。いかがでしたか?」みたいな文章を読まされたことを思い出したわ……。まさか今世でもそんな文章にぶち当たるとは思わなかった。
そんなことを思いながらため息をつくと、外が騒がしい。
「まさか授業休みの日にもお会い出来るとは思いませんでしたわ。」
「おすすめの本とかありますかぁ?」
「この間教えて下さった本、とても面白くて何度も読んじゃいましたぁ!」
「本以外には何がお好きなんですか?」
「来週のお休みのご予定とか……。」
「よかったらこの後お茶でもしません?」
「みなさんで、ね!抜け駆けは許されなくてよ。」
あらあら、噂の"人気者"の登場かしら?
声のトーンが恐らくいつもより高めなお嬢様方の話し声が聞こえる。
「すみません、何度も言っているとは思うのですが、僕には婚約者がいるので。彼女を裏切ることはしません。」
お嬢様方の声と違って低いトーンの声は聞き取り辛かった。
けど、その声を聞き間違えるわけがない。
まさか……。
「お茶くらいなら、婚約者様も怒りませんわよ!ね!」
「ええそうですわ!」
うーん、ここからでも「あわよくば」感が溢れ出ている。
多分、多分そうだよなと思いながら私は仕切りの上からこっそり外の様子を眺める。
にこにこ笑顔に太陽の光のような綺麗な髪の毛。
うん、ウィリアム様ですね。
図書室の人気者ってウィリアム様のことだったんだ……。
そういえば「生徒会役員にしてもらえないし、図書委員になることにしたよ。」ってお話ししてくださったわね。
ウィリアム様を囲んでいる一人のお嬢様が「ね、お願いしますわ。」とか言いながらウィリアム様の腕に抱きついた。他のお嬢様方は目が怖いことになってる。
「……?」
私はその光景を見て、急に何故か少し息苦しくなった。
仕切りから出していた頭半分を下げて、ソファにへたん、と座り込む。
どうしたんだろ、私。
「これから奥で本の整理をするので、僕はこれで失礼しますね。」
「は、はい……。」
そんな声がなんとなく聞こえて、こちらの方角へ進む足音が聞こえた。流れからしてウィリアム様だろう。
覗き見をしていた私はここで扉を開けて「あらウィリアム様奇遇ですわね。」なんてことが出来るほど面の皮は厚くない。
ウィリアム様が何か本の作業をなさるそうなので、奥にウィリアム様が入ってから、こっそり図書室を抜け出そう。
そう思っていると、
ガチャリと扉が開き、その扉を開けた主とバッチリ目が合った。
「ベラ。」
「ウィリアム、さ、ま……。」
覗き見していたの……バレてました?




