本の城
今日は土曜日。この世界にも週という時間の単位がある。
この学園では授業がないのは基本的に土曜・日曜。
完全に学園の施設が使えなくなるわけではなく、保健室や図書室、食堂などは勿論利用することができる。
といっても、学園外に出て買い物する生徒や、実家に帰る生徒。
授業がある日に比べて人が少ないので、どの時間でも空いている。
そういえば、未だに図書室を利用したことがない。
図書室というより図書館くらいの広さを持ったと言われる場所。
ちょっと探検……もとい、寄ってみようかな……。
あ、でもリタ様が「図書委員で、とても人気な方がいるそうで、その方目当で図書室に行く方も少なくないそうですよ。」とか言ってたわね。
リタ様とはクラスが違うし、クラスルームも階が違うから流れてくる噂は違うらしい。
私のクラスではそんな噂聞いたことなかったもの。
人気者と、その人気者を囲う生徒ねぇ。
私もその一人だと思われたら嫌だなぁ……。
いやいやいや、その人がいつもいるわけじゃないですし!もし囲まれている人がいたら、避ければいいじゃない!図書室は広いらしいですから!
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ行く気が削がれていたけども、学園で知らない場所があるのは勿体ない。
そう「ウェヌスと共に」でも、広すぎる図書室としてヒロインが驚くシーンはあったんだけど、全然ゲームに出てこない場所だったのよね……。
前情報が全然ない場所。不安でもあるけど好奇心のが勝る。
少しだけ深呼吸をして、扉を開けると、
ひんやりした空気と、紙の匂いが心地よい。
ああ、ここは本の城。
自然とそう思わせてくれた。
思った以上に広いわね……。本当にお城一個分ぐらいありそう。
でもよかった、その例の"人気者"はいないようね。この静けさが何よりの証拠。
本棚に近付き、なんとなく手に取った書物が「お菓子の謎」という本で、イラスト付きで読みやすそうだったので、それを抱えて「勉強エリア」と書かれた場所に足を進めた。
勉強エリアとは言っても、そこで読書している人が咎められるわけではないらしい。近くの図書委員の方に教えてもらった。
ただ、他の場所より勉強しやすいから勉強エリアなのだ。
ここにはちょっとした個室が何個かある。簡易的な扉がついていて、その仕切られた中には机と椅子が一セット置いてあった。
前世で言うとネットカフェみたいな感じかしら。ここはパソコンもドリンクバーもないけれども……。
前世の記憶に引っ張られているのか、何処か懐かしさを感じて、ついつい入ってしまった。
しかしこの狭さ。ただの仕切りだというのは分かるんだけど、こんな狭いと貴族によっては閉所恐怖症とかにならない……?
図書室は広いのに何故、この空間は狭いんだろう。
でも説明してくれた図書委員の方は「オススメですよ。」と微笑んでくれた。
まあいいか細かいことは……。
このゲームの世界観のフリーダムさはよーく知っているので、きっとそういう設定ガバガ……自由さがこの図書室にも反映されたのでしょう。
そういう所も嫌いじゃないのよね、と私は簡易的な扉を触り、閉めた。
するとどうだろう。
部屋がぐにゃりと広がった。
四畳半くらいの広さにはなったのかしら…?
机と椅子の反対側にはソファとテーブルも置かれて、そこそこくつろげるスペースになった。
これは……良いものね!図書委員さんがオススメしていたのも頷けるわ。
一人しか入れないと思っていたけど、これなら数人は入れそう。
座り心地の良いソファに座って、先ほど手に取った「お菓子の謎」のページをめくりはじめた。




