その理由
「どうしてリタ様に、あんな態度を取ったの?」
急遽自習になった授業中、こっそりとダビに聞いた。
「そりゃお前、一週間もストーキングされてたらいい気持ちしないだろ。」
「え?」
「気付かなかったのか?お前、ずっと付き纏われてたんだぜ。」
「全然……。休み時間に覗きに来てたことしか……。」
やっぱりな、と言いながら、パックのジュースを取り出してダビは飲み出した。一応、授業中よ……?
「ただ、敵意はなさそうだし、放って置こうとは思ったんだが、相手がリナレス子爵令嬢だと知ってな……。」
「なにか問題があるの?」
「リナレス子爵……リタ嬢の父親はあまり評判がよくなくてな。」
「そう……なの……。」
「主に女関係で、な。他にも色々やってるみたいだ。偉いご身分だよな、まったく。」
だからリタ様は、リナレスと呼ばれたくなかったのね……。
「その辺りで少し、個人的な恨みがリナレス子爵にはあってな。その令嬢と聞いてつい突っ掛かっちまった。」
むしろ娘は被害者かもしれないのにな、と言いながら飲み終わったパックをぐしゃり、と潰した。そのダビの表情は、怒っているような、後悔しているような顔だった。
「まあ、でもこれで間違ってもリタ嬢を哀れむようなことはするなよ。
「しないわよ!」
「よかれと思ったことが、本人を傷つけることもあるからな。」
そんな話をしていると終わりの合図が鳴り、お昼休みに入った。
……そういえば。すっかりすっかり忘れてたけど。
リタ様とのご挨拶の時、ダビ名乗ってたわよね。
「ダビって、リュル家の長男だった……のね。」
「何を今更。」
「はああああああ……。」
「おいなんだよそのため息!」
「何でもないわよ、ほら、ウィリアム様にも声かけてきて。リタ様いること伝えないと。」
「パシリに使うなっつーの!」
文句言いながら隣のクラスに向かってくれるダビのこと、嫌いじゃないわよ……。
でも、リュルって……。
孫のヴァネッサの婚約者の名前、ニコラ・リュルよね。
婚約断れない理由、ニコラ祖父がヴァネッサ祖父に命を守ってもらって……って話よね。
ヒロインの祖母
悪役令嬢の祖母、祖父
悪役令嬢の婚約者の祖父
こんなに集結して、いいものなのぉ……?
いや、私はまだ祖母になるつもりはありませんよ!!
まだ婚約破棄の夢は諦めて……ない……わよ……?
勝ち筋が見えてこないけど……。




