第4章第11話 ~勇者を目指す少年 3~
「―――と、まあ、今頃は私達の仲間に襲撃を受けていることだろうさ。多少の抵抗はあるかも知れないが・・・なに、そう時間は掛かることはないだろう。村人達の命は、今夜潰える。貴様がどれだけ身を削って助けたとしても、その結末は変わらない!貴様が辿る未来は、誰一人救えずに死に絶える。ただそれだけだ!!」
「そ、そんな・・・!くっ・・・!?」
村で起こっているであろう『紅の鷹騎士団』の襲撃。それを厭な笑みを浮かべる頬に薄布を貼った騎士から聞かされた僕は、地面に膝を着いた体勢のまま悔しさに歯噛みした。
「な、なんでだ・・・・・・」
「うん?」
「お前達の目的は、封印されている魔物を解放して、ライファ領を滅茶苦茶にすることじゃないのか・・・!?その魔物を誘導するために、村の人達を生かしておくつもりじゃなかったのか・・・!?なんであの人達を手に掛けようとするんだ・・・!!」
それと同時に、ある一つの疑問が僕の頭の中に浮かんだ。
ラディッシュさんの予想が正しければ、わざわざ村人を生かしておいたのは、封印から解放した魔物をライファ領側へと誘導する為だった筈だ。なのに、彼等はそれとは全く真逆の事をしようとしている。明らかに行動が矛盾しているのだ。
もしかして、ラディッシュさんの予想が外れていたのだろうか?そんな僕の疑問は、目の前の騎士達の話によって氷解した。
「ほう?私達の目的を見抜いた奴がいたのか。平民の中にも存外頭が切れる奴がいるようだな」
「・・・うん?この小僧が見破ったんじゃないのか?」
「ふん、こんな正義感丸出しの、青臭いガキがそんな知恵を持っているわけないだろう。それに、例の封印に関しては情報を持っている奴はかなり限られている。私達とて、封印の情報を知る者を捕まえ、拷問して吐かせたことでようやく得られたのだぞ」
「ああ、そうか。という事は、この子供に封印の事を教えた者がいて、そいつが俺達の目的を見抜いたって事か。なるほどな。・・・ってことは、そいつ、今後の為に捕まえた方がいいんじゃないか?確か、俺達が捕まえていた奴は、知っている封印の在り処を全部吐く前に、騎士団の尋問に耐えられなくて死んじまったんだろう?」
「ああ。その時の尋問を担当したバカがやり過ぎたのが原因でな。おかげで、予備プランもない状態で今回の作戦に、俺達『紅の鷹騎士団』と、領軍を投入しなければならなくなったと、団長が頭を悩ませていたのを見たことがある」
「ちなみに、やり過ぎてしまった担当の奴はしっかりと処分を下されたらしい。具体的には奴隷落ちしたそうだ。まあ、平民だったそうだから、さして気にする話でもないがな」
頬に薄布を貼った騎士は仲間の騎士にそう答えた後で、ふいにその口端を笑みの形に引き攣らせた。
「クククッ・・・ヤバいな。そいつが最後に浮かべていた表情を思い出したらつい笑いが・・・!」
「・・・相変わらず思うんだが、お前のその趣味は何とかならんのか?」
「そうそう。というか、お前が『紅の鷹騎士団』に入ったのも、その趣味の所為で元居た騎士団から半分追放扱いで追い出されたからだろう。もう少し自重してくれよ」
「いや、すまないな。・・・・・・で、だ。ガキ。本来ならお前の問いに答えてやる義理などないのだが、私を笑わせた褒美だ。特別に答えてやろう」
頬に薄布を貼った騎士はそう言うと、仲間の騎士に向けていた視線を、ツイッと僕の方へと戻す。
「お前達の予想は間違っていない。今回の作戦を立てたのは我々の騎士団の副団長であり、その男の命令に従って、私達は村人達を撒き餌に封印から解放した魔物をライファ領側へと誘導するつもりだった」
そこまで言った頬に薄布を貼った騎士は、「・・・だが」と言葉を続ける。
「だがしかし、だ。私達はあの男に命令されるという事がどうしても気に入らなかった。どうして私達貴族が、平民であるあの男の命令に唯々諾々と従わなければならない!本来であれば、命令する側に立っているのは私達だというのに!何故あんな下賤な平民の言いなりにならなければいけない!?」
頬に薄布を貼った騎士は、話を続けていく内に感情が昂ぶっていき、語気が荒くなっていく。
その様子を見て、怒りが籠められた声を聞いて、目の前の騎士が何を言おうとしているのかを察した僕は、「・・・・・・まさか」と呟く。
「ああ、そうだ。私達が村人達を殺そうとしているのはなぁ、私達を差し置いて副団長の地位に立っているあの男に、村人を無駄に殺したという失態の責任を取らせる為なんだよ!」
「そ、そんな・・・そんなことの為に、村の人達を殺すっていうのか、お前達は・・・!?」
「フンッ、貴様には分かるまい。我々貴族が平民に使われるという事が、どれ程の屈辱に当たるのかを・・・!」
ギシリッ、と剣の柄を強く握り、瞳を憎しみの色に染めながら言う頬に薄布を貼った騎士。
その身から滲み出る雰囲気は暗く、重い。
左右にいる騎士達も同じような雰囲気を漂わせているのを見るに、彼等もまた同じ気持ちなのだろう。
「あの男が、平民でありながら私達貴族よりも上の立場にいると勘違いをしている愚か者が、もう二度と私達に命令をするなどという愚行が出来ないよう、副団長の地位から引き摺り降ろす・・・!貴様等平民を殺すのは、その手始めに過ぎない!」
そう叫ぶと、頬に薄布を貼った騎士は一歩前に踏み出し、剣を振り上げる。
「―――だから、貴様は此処で死ね、ガキ。自身の無力さを嘆きながら、無様に死に絶えるがいいっ!!!」
月の光を反射してキラリと輝く刃が勢いよく振り降ろされる。
空気を切り裂きながら迫るそれは、確実に僕の首を切り落とす軌道を描いている。
「ぐぅっ・・・!!」
その一刀を躱すべく、僕は全身に走る激痛を我慢してその場から飛び退く。
次の瞬間には、先程まで自身の身体があった場所に頬に薄布を貼った騎士の一撃が通過した。
「甘い!《ストームスラッシュ》!」
「ッ!?」
攻撃を回避できた事に内心で安堵していたがしかし、それを見越していた様に、頬に薄布を貼った騎士が更に前へと進みつつ二撃目を放つ。
剣が振り切られると同時に風の刃が発生し、渦を巻いて僕へと迫る。
「あ、ぎぃ―――!?」
木刀を盾にすることで迫り来る風の刃を受け止め、防ぐ事に成功するがしかし、宙に浮いた状態では踏ん張る事など出来ず、僕の身体はそのまま吹き飛ばされてしまう。
「死に損ないが、無駄に足掻くなぁぁっ!!」
「なっ・・・!?」
ダンッ!!という力強い足音が響く。
次の瞬間、頬に薄布を貼った騎士が剣を振り上げながら跳び上がった。
「終わりだぁ!《パワーブレイク》ゥゥゥ!!」
「ぐっ・・・!まだ、まだぁぁぁっ!!」
落下と共に振り降ろされる騎士の剣。バチバチと迸る黄色み掛かった気が纏われたそれは、直撃すれば間違いなく僕の身体をバラバラにすることだろう。
吹き飛ばされながらそれを視界に捉えた僕は、空中でクルリと体を回転させ、地面の上を滑りながら無理矢理着地すると、木刀を両手で握り、下段に構える。
そしてタイミングを見計らって騎士の剣が振り降ろされるのに合わせて跳び上がり、木刀を勢いよく振り上げた。
「(力は相手の方が上。落下の勢いも合わされば、その威力は相当なもの。まともに受け止めれば、まず間違いなく僕の方が力負けして潰される・・・!―――だからこそ、僕が狙うべきは剣の腹!そこを思いっきり、ブッ叩く!!)」
「そぉこだぁぁぁっ!!《スラッシュ》―――!!」
「な、にぃぃっ・・・!!?」
騎士の一撃が完全に振り降ろされるよりも早く、その剣の横腹を僕の木刀による一撃が強かに打つ。
瞬間、ガキィッ!!という金属音が響き、振るわれる騎士の剣の軌道が脇へと逸れる。
「―――《エリアスラッシュ》!!」
「があああぁぁぁっ・・・!!?」
そのまま流れる様に木刀の刃先をクルリと翻し、回転の勢い込みの横薙ぎの一撃を目の前の騎士へと振るう。
それを防ごうと咄嗟に剣を引き戻そうとした騎士だったが、しかし間に合わずモロに食らい、絶叫を上げながら吹き飛んでいく。
「ガッ、アグッ・・・!く、クソがぁぁ・・・!」
地面を転がっていく頬に薄布を貼った騎士。完全に体勢が崩れきり、すぐには体を起こす事ができそうにない様子だ。
それを目にした僕は追撃のチャンスだと思い、地面を蹴って駆け出そうとする。
「―――《ストーンバレット》!」
「・・・ッ!」
―――けれどその動きは、急遽中断せざるを得なくなった。僕に向かって複数の石礫が勢いよく飛んできたからだ。
おそらく攻撃系の魔技だろう。それを放ったのが体格の良い騎士だと認識した瞬間、僕は反射的に大きくバックステップを踏んで回避した。
幾つもの石礫が広範囲に広がる様に飛んでくるので、その場で身を捻るくらいでは躱しきれないと判断したからだ。
その結果、石礫の大半を避ける事ができた。幾つか当たってしまったりもしたが、そのどれもが掠める程度で済んだ。
「《雷迅牙》ッ!」
「ッ!?しまっ・・・!《集気硬ほ、が、あぁっ・・・!?」
だけど、それに安堵する暇もなく、槍を持つ騎士による追撃が迫る。
横合いの、ほぼ死角に近い位置から突き出される槍の穂先。バチバチと激しく帯電するそれに気付いた時には既に遅く、一秒もしくは二秒もしない内にそれが自身の体に突き刺さる事になるのは容易に想像できた。
回避もう間に合わない。ならばと《集気硬法》を発動し、肉体の頑強性を瞬間的に上昇させて耐えようとしたが、しかしその効果が発揮されるよりも早く穂先は僕の脇腹に突き刺さった。
咄嗟に身を捻ることでなんとか致命傷だけは避ける事ができたが、槍が突き刺さった脇腹から激痛と共にまるで火で焼かれているような熱を感じて顔を顰める。
「う、ぉぉぉ、おおおおおおっっっ!!」
「なにっ!?」
口端から血を流しつつ槍の柄を掴み、固定する。
そして目の前の騎士の顔面に向けて木刀を突き出す。
「ぐっ、このっ!」
「ッ、ゼリャァァァッ!!」
それに驚きつつも咄嗟に槍を手放し、後ろに下がりながら上半身を逸らすことで回避する騎士。
そのまま地面を蹴ってバク転した騎士を尻目に、脇腹に刺さった槍を引き抜き、順手に持ち直して騎士に向けて投擲した。
「ッ!?チッ・・・!」
「―――《スラッシュ》!」
「そんな見え見えの攻撃が当たるとでも・・・!」
下から上に向けて自身に向かって飛んで来る槍を、横移動と回転を行いつつキャッチする騎士。
それによって動きを止めたかの騎士に向けて素早く接近し、戦技を発動しつつ木刀を力強く振り降ろす。
その一撃は騎士が先程キャッチし、構えた槍の柄で受け止められてしまう。・・・が、攻撃を防がれるのは最初から想定していた事であり、僕の本命の攻撃はこっちだった。
「《掌発勁》!!」
「なっ、ゴボォッ!?」
騎士の槍柄と鍔迫り合っていた木刀から右手を離しつつ、下から潜り込む様に更に一歩踏み込む。そして騎士の腹部に手を当て、戦技を発動して吹き飛ばした。
《掌発勁》とは、以前フェルヌスさんから教わった技の一つで、〝相手の体内に気の衝撃を打ち込みつつ吹き飛ばす〝という戦技だ。
超至近距離でしか使えないという欠点はあるものの、防御力を無視してそれなりのダメージを与えられるという利点があり、騎士の様な分厚い鎧を着込んだ相手に対しては非常に有効的な技であると言える。
「セェェイッ!!」
「―――調子に乗るな、ガキィィッ!」
「ッ!?」
《掌発勁》を受けた騎士は足裏を地面に滑らせ、ある程度下がった後に片膝を着く。
それを目にした僕は、更なる追撃を加えようと木刀を横薙ぎに振るおうとしたがしかし、そこへ槍を持つ騎士の背後から飛び出すように、頬に薄布を貼った騎士が攻撃を仕掛けて来た。
「《グレートブレイザー》!ハァァァッ!!」
「あぐっ!?」
頬に薄布を貼った騎士の持つ剣を包み込む様に橙色の気纏われる。
そしてそれは次の瞬間、エネルギーの刃へと形を変え、剣の姿を一時的に大剣の如きモノへと変えた。
その剣の柄を頬に薄布を貼った騎士は両手で握り締めると、気勢を上げながら大きく横薙ぎに振るってきた。
その攻撃を、僕は反射的に前に出した木刀で受け止める。
ぶつかり合い、ギギギッ!と音を立てながら鍔迫り合う木刀と剣。
お互いに負けるものかと押し合い続け―――結果、押し負けたのは僕の方だった。
「ぎぃっ、がっ・・・!?」
完全に膂力と体重の差で負けていた。
騎士の剣が振りきられた瞬間、僕の体は吹き飛ばされ、地面の上をゴロゴロと転がっていく。
「ま、だ・・・まだぁ・・・!」
こうして吹き飛ばされ、地面に転がされるのはもう何度目か。
それでも諦めない、諦めて堪るかという気持ちを胸に抱きながら、僕は再び立ち上がろうとした。
「―――え?」
―――その瞬間、僕の頭上で何かが降り注ぐ月の光を遮った。
「―――《フゥライングゥゥゥボディプレェェェス》!!」
ドガッシャアアアンッッッ!!!
「ガッ、ハァ・・・・・・!?!?」
〝ソレ〝は体格の良い騎士だった。
何時の間にやら、相当な重量がある筈の鎧を着込みながらも天高く大ジャンプをかましたかの騎士は、空中で一回転した後、両手足を大きく広げて僕がいる場所目掛けて勢いよく落下してきたのだ。
落下の勢いと鎧を含めた自らの全体重を乗せた一撃。想像すらしていなかったその攻撃方法に、完全に意表を突かれた僕は反応が遅れてしまい、避ける事ができずにそのまま押し潰されてしまった。
「・・・!!」
同時に、体の中でバキリッ、という音が響いた。
どうやら罅が入っていた助骨が完全に折れてしまったらしい。
その瞬間、全身に激痛が走り、口から大量の血反吐を吐いた。
「(ダ、メだ・・・もう、体が・・・動か、ない。・・・指の、一本・・・でさえも・・・・・・)」
声にならない息が、ヒュー、ヒュー、と喉の奥から漏れ出す。
体を起こそうとするも、そもそもその為の力を入れるすらできない。
元々限界間近だったのが、先程の一撃を受けた事で遂に限界を迎えてしまったのだろう。朧気に体の熱が少しずつ冷えていく感覚を覚え、同時に意識も水底へと沈んでいくが如く、徐々に徐々に落ちていく。
「・・・動かなくなったな。死んだか?」
「いや、まだ息があるな。とはいえ、最早虫の息だがな。死ぬのも時間の問題だろう」
「フンッ、手子摺らせおって。だが、これで私達の楽しみの邪魔をする者はいなくなった。・・・おい。あの村娘はきちんと逃がさないようにしていたんだろうな?」
「ん?応。ちゃあんと動くことが出来ないよう、例の鎖―――『反従の鎖』だっけか?―――を繋いでおいたぜ。・・・・・・しっかし、不思議だよなぁ。アレを繋いでおくだけでどうして動けなくなっちまうんだか。・・・お前、あんなのいったい何処から手に入れてきたんだよ?」
「教えるわけないだろう、そんな事。・・・だが、一言だけ言うならアレだ。蛇の道は蛇、というところだな」
「うわっ・・・お前がそう言うってことはあの鎖、邪教関係の代物かよ。また特級の疫ネタを持ち込んで来やがったな」
「―――待て。どうしてアレが邪教関係の代物だと分かった。私は一言もそんな事は口にしていないぞ」
「それはあれだ。以前からお前は黒い噂があったからな。そしてその噂の中に、邪教関係の品を密かに集めているというのがあってだな・・・・・・」
「ちっ、防諜関係は徹底して行っていたつもりだったのだがな。まだ甘かったか」
薄れゆく意識の中、そんな会話をする騎士達の声を耳にする。
けれど、その内容は半分以上は聞こえなかった。聴覚も失われつつあるらしい。彼等の話し声が少しずつ、少しずつ、遠くなっていく。
「まあ、それはそれとして。・・・で?お前は結局あの娘をどうするつもりなんだ?」
「・・・そんな事、決まっている。戦場で女を手に入れた場合、する事といったら一つだろう。―――お前達に問おう。満足に身動きが取れない女を思うがまま、好き勝手にヤルのは好きか?」
「そりゃ勿論―――」
「―――大好きに決まってるだろ!これぞ戦争の醍醐味ってやつだよな!」
下卑た笑い声を上げる騎士達。話している内容はもう聞き取れないが、それが良くないものだという事だけは分かる。
何とかしたい。そう思うがしかし、その想いとは裏腹に僕の体はピクリとも動かない。
昔に比べれば、フェルヌスさんと出会う前の頃に比べれば、間違いなく、確実に強くなっている筈なのに。
悔しさが胸を焦がし、何も出来ない己の無力さに、ギシリと歯噛みする。
そんな僕の様子を見て、放置しても構わないと思ったのだろう。騎士達は僕の傍から離れ、何処かに向かい始めた。
「さぁ~て、そんじゃま、お待ちかねのお楽しみをおっぱじめるとするか!・・・おら、こっちに来いっての!」
「ひっ!?嫌、来ないで!来ないでったら!ヤダ、ヤダヤダヤダ―――!?」
「・・・ほう?抵抗するつもりか?いいぞ。多少反抗的な方が楽しみ甲斐がある。身の程を弁えない輩を躾るのも貴族の嗜みというもの」
「お前らなぁ・・・邪魔するつもりはないが、後始末はしっかりやれよ。あと、あまり時間を掛け過ぎると他の連中に怪しまれるからな。出来るだけ手早く済ませろよ」
「分かっている。楽しんだ後はきっちり殺すさ。当然だろう」
「上にバレたら色々と面倒だから、な!」
「ぐぅ!?い、痛いぃっ・・・!やめ、やめて、触らないでぇぇ・・・!!
「へへっ、思っていた以上に良い体をしてやがるぜ、この娘。こりゃ楽しめそうだなぁオイ!!」
騎士達が向かった先は、村長の娘さんの所であった。
近づいてくる騎士達を目にして逃げようとする素振りを見せる村長の娘さんだったが、その瞬間、何時の間にやら彼女の腕に巻かれていた鎖が黒と紫が混じったような光を仄かに放ち、彼女の動きはギシリと止まった。
自分の体が意図せず動かなくなったことに困惑しつつも、自身に向けて伸ばされる騎士達の手に恐怖感を覚えてか、涙を流しながら嫌々と首を横に振るという今できる精一杯の抵抗をする。
けれど、騎士達はそれを無視して彼女の体に手を這わせ、まさぐり始めた。
それを、僕はただ見ている事しかできなかった。
やめろ、と叫びたくはあったが、声は出ない。出せない。どころか、もう瞼を開けている事すら億劫になってきた。
視界が狭まる。朧気になっていく。
もうまもなく、僕の意識は闇の中に落ちることだろう。
そんな中、僕はふと村長の娘さんへと目を向けた。
「――――――!」
彼女の口が「助けて」と、そう動いた気がした。
『―――スキル【■■■■■】の起動条件を確認。起動準備を開始します』
『―――エラー。起動失敗。スキル【■■■■■】が完全ではありません』
『―――再起動検討・・・・・・終了。スキル【■■■■■】の一部効果のみ使用可能。この効果の起動準備を開始します』
『―――起動完了。効果《黄金の灯火》を発動します』
『―――追記。再生可能なメッセージを確認。再生します』
『さあ、目を覚ましなさい、勇気ある者よ。アナタの終わりは此処ではないのだから。
さあ、立ち上がりなさい、勇気ある者よ。アナタの旅は未だ終っていないのだから。
さあ、奮い起ちなさい、勇気ある者よ。アナタを求める声が聞こえているのだから』
『アナタの成すべき事を成し遂げなさい。敗れ、倒れ伏し、絶望に堕ちながらも、それでも尚、誰かを助けんとする勇気ある者よ。汝に、暗闇の中で仄かに輝く灯火の如き光あれ』
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