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【改訂版】カオスゲート・サーガ ~大魔王と勇者の冒険譚~  作者: Kudo
第4章 ~迫り来る愚かなる者達~
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第4章第1話 ~少年と少女と冒険者見習い達 1~

皆様、お久しぶりです。kudoです。第3章までの文章の修正作業がようやく終了しましたので、新話を投稿します。

  

 

「―――ライファ辺境伯からの呼び出し?」


「はい。なんでも、以前フェルヌスさんが受けた依頼の依頼主であったサーポルベント領の貴族に関して話を聞きたいそうでして、早ければ今日にでも、と」


 とある日のことだった。アルクがフェルヌスとクーリィの二人と一緒に冒険者ギルドにやって来た時に、受付嬢であるシャーラから、このライファ領の領主であるライファ辺境伯からフェルヌスが呼び出しを受けているという事を告げられたのは。

 

「話って・・・あの件に関してはギルドに、というかシャーラに洗いざらい全部話したし、たぶんその報告もギルド経由でされている筈だろう?わざわざ私を呼んで話をする必要なんてないと思うんだが・・・・・・」


「その、私も詳しい理由まで知らされていないのですが、どうやら貴族間の微妙な関係性が関わっているらしくて・・・・・・あっ、それとギルドマスターからの伝言もありますよ!頼まれていた例の件についても話をしたいので、できれば来てほしいと言ってました!」


「例の件・・・ああ、あれか」


 初めは困惑気な表情を浮かべていたフェルヌスだったが、”例の件”という言葉を聞いて何か思い当たったらしく、納得するように頷いた。



「なるほど、そういう・・・仕方がない。そういうことであれば行かなくてはな。・・・呼び出しということだし、向かう先は領主の城でいいのか?」


「はい。客人としてフェルヌスさんを呼んでいるという事は、事前に門番の方にも伝えているそうなので、名前を言えば通してくれると思いますよ」


「そうか。・・・すまないな、二人とも。そういうわけだ。今日は一緒に行く予定だった依頼を受けられそうにない」


 フェルヌスは眉尻を少し下げて、申し訳なさそうにアルクとクーリィに謝る。

 ちなみにだが、彼女が口にした、今日アルク達が受ける予定だった依頼とは、『パルプィナの実』という果物を収穫するというものだった。

 『パルプィナの実』とは、”光の月”から”闇の月”へと移り変わろうとする時期にのみ『パルプィナ』という三つ又の葉が特徴的な蔓草に実る、強い甘味と酸味が特徴の果物だ。

 その大きさは、掌大くらいから一抱えする程までとまちまちだが、大きさで変わるのは食感くらいで味そのものは大して変わらない。大きいほど実が柔らかくなり、高い値段で取引されているが、掌大の物でもそこそこの値段はするので、低ランク冒険者にとってはおいしい依頼と言えるものだったりする。

 今の季節限定のライファ領の特産品で、交易都市ライファを出て二時間程歩いた所にある農村で栽培しているそうなのだが・・・・・・ただこの『パルプィナの実』、一株でかなりの量を実らせるそうで、農村に住む農民達だけでは腐らせる前に全てを収穫するのは難しいらしく、冒険者ギルドに依頼が出されたのも人手を求めての事らしい。

 また、この依頼に関しては監督役を務めるDランクから上の冒険者がいれば冒険者見習いも受けることができるそうで、その事を少し前にシャーラから教えてもらったアルクとクーリィは、依頼を受ける為にフェルヌスに監督役をお願いしていたのだ。


「いえ、領主様に呼ばれたのであれば仕方がありませんよ。僕達は大丈夫ですので行ってきてください」


「そうそう。それに、パルプィナの実だって別にすぐなくなるわけじゃないし、また明日行けばいいよ、師匠!」


 とはいえ、だ。実を言うとこの依頼、そこまで急いで受けようとしなくてもいいものであったりする

 というのも、毎年実る『パルプィナの実』の量は本当に多いらしく、全て収穫するのに毎回五日から一週間くらいは掛かっているのだそうだ。

 つまり、一日くらい依頼を受けるのが遅れたとしても、収穫には参加することができる。

 その事をシャーラから聞いた話で知っていたアルク達は、フェルヌスに大丈夫だと言い、ライファ辺境泊の下に向かうことを促した。


「・・・そうだな。それじゃあ二人とも、悪いが私はちょっと行って来る。話を終えたらすぐに戻ってくるからな」


「はい、お気をつけて、フェルヌスさん」


「いってらっしゃーい!」


「ああ」


 フェルヌスは小さく笑ってそう言うと、受付カウンターから離れてギルドの外に向かって歩いていく。

 その後ろ姿を、行ってらっしゃいと手を振りながら見送ったアルクとクーリィは、その後で互いに向かい合って、「・・・さて、僕等はこれからどうしようか?」と相談を始めた。


「受ける予定だった依頼はまた後日になったし、今日は何か別の依頼でも受けてみる?クーリィ」


「賛成~♪じゃあ、クエストボードに今日はどんな依頼があるか見に行こうよ!」


「分かった。じゃあ行こうか」


 元気よく答えるクーリィにアルクは頷いて見せると、彼女を連れ立ってクエストボードの前まで移動するのであった。


「・・・うーん、思ったよりも良いと思えるような依頼がないなぁ・・・」


「・・・だねぇ。それに数も少ない。『パルプィナの実』を収穫する依頼以外の雑用依頼がほとんどなくなっちゃってる。少し前までは沢山あったのに、何時の間にここまで少なくなっちゃったんだろう?」


 クエストボードの前に来たアルク達は、そこに貼り出されている依頼書を一通り眺めていたのだが、あまり良さそうな依頼を見つけることができずにいた。

 現在、冒険者見習いであるアルクとクーリィが受けられる依頼は、主に荷物運びや掃除洗濯、草むしりといった、通称”雑用依頼”とも呼ばれているFランクの依頼だけ。報酬金額はハッキリ言って高くはないが、基本的に常設依頼として貼り出されているものでもあるため、無くなるといったことはまず起こり得ない。

 ・・・筈だったのだがしかし、今日はその起こり得ない事が起こってしまったらしい。

 クエストボードをどれだけ見回してもFランクの依頼がほとんど見つからない。あったとしても一枚か二枚くらいで、その内容も監督役を必要とするものばかり。正直これでは、アルク達は依頼を受ける事はできない。


「うーん、いったいどうして・・・」


 アルクがそう呟きながら首を傾げ、同じく首を傾げていたクーリィと顔を見合わせる。

 ―――と、その時だった。不意に後ろから誰かに声を掛けられたのは。


「―――何ふざけたことを抜かしてやがる!雑用依頼が少なくなったのはお前等のせいだろうが!!」


「え・・・?」


 アルク達が振り返れば、そこには少年三人、少女二人といった、五人組の子供達がいた。

 その中でも目立つのは、一番前にいる体が大きく、がたいの良い茶髪の少年で、彼は腕を組んで鋭い視線をアルク達に向けている。

 先程の、憤りが混じったような声の主はおそらくこの少年だろう。そう思ったアルクは少し戸惑いながら彼に話し掛けた。


「えっと・・・僕達のせいって、どういうことかな・・・・・・?」


「はっ!惚けやがって!しらばっくれるつもりか、あぁ!?」


 大柄な少年は眼光を強め、一歩詰め寄る。

 その様子に思わず後ずさり、まあまあと両手を前に出しながらも、アルクは慌てて言葉を続ける。


「ちょ、ちょっと待って。君はどうしてそんなに怒ってるんだ!?僕達と君は初対面の筈だよね?」


「ああ、確かに会うのは初めてだ。だがなぁ、テメェ等のせいで俺達がどれだけ迷惑しているか、知らないとは言わせねぇぞ!!」


 アルクの問いに、大柄な少年は更に怒気を強めた声でそう答える。

 肩を怒らせ、今にも殴り掛かって来ようとする動きも見せていたが、その前に彼の隣にいた比較的細身の水色髪の少年が口を開いた。


「まあまあ、待ちなよギタル。彼等の様子を見る限り、どうやら自覚は無いみたいだし、しっかり理由を言わないと分からないと思うよ?」


 その細身の少年の宥める様な言葉を聞いたギタルと呼ばれた大柄な少年は、ピタリと動きを止めた。

 そして細身の少年に視線を向けて、数秒ほど間を置いた後にようやく落ち着きを取り戻したのか、大きく息を吸って吐いた後に腕を組み、ムスッとした態度で黙り込んだ。

 怒りが完全に収まったわけではなさそうだが、それでも一先ず状況が落ち着いた事にアルクはホッと胸を撫で下ろす。

 と、そこで細身の少年の視線がアルク達に向けられた。


「いやぁ、君達もごめんね。ウチのリーダーがいきなり怒鳴り込んじゃってさぁ」


 細身の少年はアルク達に向かって軽薄な感じで話し掛けてきたが、しかしその目は笑っておらず、どことなく鋭さが感じられた。


「う、ううん。それは別にいいんだけど・・・その、君達はいったい・・・?」


「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前はショーン。冒険者見習いで『五星の絆』というチームの一員だ。んで、こっちのでっかい奴はギタル。僕等のチームのリーダーだ」


「ふんっ・・・!」


「そして、後ろにいる大きなお腹を揺らしているのがポムス。双子の女の子がシェイナとキィナだ」


「よろしくね~」


「どうも」


「初めまして」


 本当に目が開いているのか怪しい細目をしたぽっちゃりとした体型のスキンヘッドの少年がゆらゆらと手を振り、その隣で互いに手を繋いでいたピンク色の髪を持つ双子の少女達がペコリと頭を下げた。


「あ、うん。初めまして。・・・えっと、僕達も自己紹介した方がいいよね。僕の名前はアルク。こっちの女の子はクーリィって言うんだ。・・・その、それで、ギタルって言ったっけ?彼が言っていた雑用依頼が少なくなっているのが僕達のせいってどういうことなのか、聞いてもいいかな?」


 その少年少女達に挨拶を返し、自己紹介をした後で、アルクは改めて本題に入る事にした。


「勿論いいよ。ただ、ここで話すのも何だから場所を変えようか。あっ、あっちのテーブル席が空いてるね。あそこに座ろうか」


 それを聞いたショーンと名乗った細身の少年は、「うん」と頷いた後にテーブル席へと視線を向け、ニコッと笑いながらアルク達を先導する様に歩き始めた。

 その後を追う様にアルク達も足を進め、そしてテーブル席に着くと、それぞれ向かい合う形で椅子に座った。


「―――さて、それじゃあ先程の話の続きをしようか。どうして僕達が、雑用依頼が少なくなった原因が君達、アルク君とクーリィちゃんのせいだと言っていたのかについてなんだけど・・・・・・それは単純に、君達がほぼ毎日、大量に依頼を片付けてしまっていたからなんだ」


「・・・?それって悪い事なの?冒険者が依頼を受けるのは当然でしょ?」


 ショーンが語るアルク達のせいだと言う理由を聞いたクーリィが不思議そうに首を傾げる。


「ああ、うん。別に依頼を受けることが悪いと言っているわけじゃないんだ。クーリィちゃんの言う通り、冒険者が依頼を受けるのは当然の事だからね。僕達が問題視しているのは、その量なんだよ」


 そんな彼女の様子を目にしたショーンは、少し苦笑した後にそう答えた。


「量・・・?」


「そう、量だ。君達も知っている通り、雑用依頼とも呼ばれているFランクの依頼は基本的に常駐依頼として張り出されている。だから無くなると言った事はまず起こらない。・・・・・・だけど、出される依頼の数よりも消化される数が多くなればその限りじゃない」


「・・・ついでに言えば、俺達冒険者見習いは、子供という事もあって体力はそれほど多くない。大抵は体も大きくないから、依頼を一つ達成するのにどうしても時間が掛かっちまう。だからこれまでは、依頼の数が少なくなるなんて事は起こらなかったんだ。

 ・・・だってのに、お前等が平気な顔で二つ三つどころか五つも六つも依頼を受けて、ポンポンポンポン片付けやがるから、片手で数えられるくらいにまで減っちまったんじゃねぇか・・・!少しは他の奴の事を考えろよな!!」


「・・・まあ、そう言うわけなんだよ。これで分かったかな?どうして僕達が、雑用依頼が少なくなったのが君達のせいだと言ったのか」


 ギリギリギリ、と歯軋りをするギタル。

 それを横目で見たショーンは苦笑しつつ、そう話を締め括った。


「それは、その・・・・・・ごめんなさい」


「私も、ごめんなさい」


 彼等の話を聞き、雑用依頼が少なくなったのは確かに自分達のせいだろうと理解したアルクは、素直に謝罪の言葉を口にする。

 その隣でクーリィも申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「うん。分かってくれたのならいいんだよ。ギタルもいいよね?君だって、別に彼等と喧嘩したいわけじゃないんだろう?」


「・・・・・・ふんっ!」


 ショーンがギタルに確認を取るように話し掛けると、彼は鼻息荒くそっぽを向いた。 

 だがその後で彼は、視線だけをアルク達へと向けた。


「・・・まあ、今後は注意するってんならいいさ。俺もこれ以上、口出しはしねぇ。だが、迷惑を掛けたケジメくらいは着けてもらわねぇとな」


 ニヤリ、とどこか悪どい感じの笑みを浮かべるギタル。

 それを見たアルクは、頬に冷や汗を流しながら尋ねた。


「ケジメって、僕達にいったい何をさせる気なの?」


「なぁに、簡単なこった。俺達が今日これから受ける依頼をちょっくら手伝ってくれればいい。それだけだ」


「君達の依頼を・・・?それは別に構わないけど、いったいどんな依頼を受けるつもりなの?」


「僕達が受けようとしているのは、『パルプィナの実』の収穫依頼だよ。ただ、監督役を引き受けてくれるDランクから上の冒険者がいなくて、受けることができないでいたんだ」


「そこで、お前等の面倒を見ている女冒険者、確かフェルヌスって言ったっけか?その人に俺達の監督役を頼んでほしいんだ。勿論、お前等も一緒に行っていい。どうだ?」


 ズイッ、とアルクに顔を近づけるギタル。

 その圧に押される様に自身の身体を仰け反らせたアルクは、悩ましげな表情を浮かべた。


「う、うーん。まあ、それくらいだったら構わないけど・・・でも、今日受けるつもりならちょっと無理かな」


「あん?どういう事だよそれ?」


「実はさっき、師匠はライファ辺境伯に、つまり此処の領主様に呼ばれたんだ。話をしてくるとも言っていたからすぐには戻って来れないと思うし、だから今日は師匠に監督役を頼むのは無理なの」


「領主様に、ですか・・・・・・なるほど。そういう事であれば仕方がありませんね」


「マジかよ!?クソッ、当てが外れたぜ・・・!出来れば今日の内に行きたかったんだがなぁ・・・」


 アルク達の話を聞いたショーンとギタルは、それぞれ困った様な顔や悔しげな顔を浮かべた。

 そんな二人の様子を目にしたアルクは、彼等がどこか焦っている様に見えて、気付けばその疑問を口にしていた。


「あの、さ・・・ちょっと聞いても良いかな。どうして君達はその依頼を今日中に受けたがっているの?」


「あん?あー・・・まあ、そうだよな。話を聞けば、そりゃ気になるか」


「ギタル」


「良いじゃねぇか、ショーン。どっちにしろ、コイツ等にはケジメを着けてもらうんだ。だったら、俺達の事情も教えておいた方がコイツ等も心から協力してくれるだろうよ」


「・・・・・・・・・」


 ギタルの言葉を聞いたショーンは、少し悩むような仕草を見せた後で小さな溜め息を吐いてから、やれやれ分かったよ、といった感じの頷きを見せた。


「へっ・・・それじゃあ、どうして俺達が『パルプィナの実』の収穫依頼を受けたがっているのか、その理由について話してやろうじゃねえか」


 その様子を目にして了承を得たと察したのだろう。ギタルはニッと笑みを浮かべると、アルク達に向き直り、自分達がどうして『パルプィナの実』の収穫依頼を受けたがっているのかを話し始めた。


「俺達がこの依頼を受けたがっている理由は、別に報酬が目的だからじゃあない。こういう監督役が必要な依頼ってのは、どちらかと言えば技術を伝えることを目的にしているやつだからな。得られる報酬額は然程多くはねぇ。

 ・・・だから目的はそっちじゃない。俺達が欲しいのは『パルプィナの実』そのものなんだ」


「『パルプィナの実』を・・・?いったいどうして」


「・・・『パルプィナの実』は滋養強壮の効果が高い実でね。過去に死の淵に瀕していた者がそれを食べて、一晩で元気になったという逸話がある程なんだ。実際、今でも貴重な薬の材料として重宝されていたりするし」


「・・・えっと、そんなのを欲しがるってことは、もしかしてアナタ達、それを食べさせたい誰かがいるってこと?」


 話を聞いて思った事をクーリィが尋ねると、その通りだとギタルは頷いた。


「・・・ああ、その通りだ。実は俺の妹が風邪を引いちまってな。風邪っつっても、性質の悪いのじゃなくて、なんてことない普通のやつなんだが・・・・・・妹は身体が弱くてな。そのなんてことない風邪でも死に掛ける程なんだ。だから、今の時期に実る『パルプィナの実』を持って行って、食わせてやりたいと思ってな」


「そういうことだったんだ・・・」


 彼等の話を聞いたアルクは、思わずといった風にそう呟いていた。

 五人が浮かべている表情を見るに嘘を言っている様には思えなかった。きっと本当にギタルの妹の為にこの人達は依頼を受けたいのだろう。

 出来る事ならアルクもその思いを叶えさせてやりたいとは思ったのだが・・・・・・彼等が求めているのは自分達の監督役となってくれるDランクから上の冒険者だ。フェルヌス以外にそれに該当する人を知らないアルク達じゃ、彼等の要望を叶えることは難しい。


「うーん・・・でもそれだったら、普通にその栽培している農村に行って買うか、譲って貰えばいいんじゃ・・・・・・あっ、そっか、今の私達の年齢じゃ・・・・・・」


「うん、そうなんだよね。今の僕達は冒険者見習いとは言え子供。都市の外に出ようとしても、大人達によって止められる。だから合法的にこの都市から出れて、且つ『パルプィナの実』がある農村に行ける依頼を受けたかったんだよ」


 アルクが考え事をしている間にクーリィがショーンに尋ねていたが、その内容はアルクの予想通りのもの。やはり彼等はまだ幼いという事で、この都市から出ることが許されていないようだ。

 とはいえ、それは仕方がない事だとアルクは思う。なにせ、都市の外には様々な”魔物種(モンスター)”が存在している。子供だけで外に出ようものなら、即座に餌食となって腹の中に納まったとしてもおかしくない。

 アルクとクーリィだってフェルヌスという保護者がいるからこそ都市の外に出れるのだ。故に、それがいない彼等に年の外に出る許可が出されるとは到底思えない。

 ―――けれどそこで、でも・・・とある疑問がアルクの頭の中に浮かんできた。








「・・・さっき君達は、監督役を引き受けてくれるDランクから上の冒険者がいないって言っていたよね?でも、この都市にはそれなりの数の冒険者がいる筈・・・・・・一人か二人くらいは受けてくれる人がいてもおかしくないと思うんだけど・・・?」


 そう、この交易都市ライファには沢山の冒険者がいる。その数は推定五千人。少し前にシャーラから聞いたから間違いない。それだけいれば、一人か二人くらいは彼等の監督役を担ってくれる人物がいてもおかしくない筈なのだ。

 だというのに、それがいないというのはいったいどういう事なのだろうか?


「ああ、普段通りだったら、お前の言う様に受けてくれる人はいただろうよ。・・・だけど、ほら、この頃立て続けに色々な事件が起こっていただろ?そのせいで、この領地の騎士団だけじゃなく、冒険者まで領内の警戒を厳しくするために駆り出されているらしくてよぉ。しかも結構な金額の報酬も出されるということもあって、どいつもこいつもそっちの依頼を受けに行っちまっているみたいなんだよ」


「それは・・・・・・」


 アルクの問いに対して、ギタルは肩を竦めながらそう答えた。

 表情こそ仕方がないといったものを浮かべてはいたが、しかしその目には焦燥感の色を滲ませている。

 時期が悪かった。一言でいえばそんな感じなのだろうが、彼等に―――いや、ギタルにとってはその程度の言葉で済ませられはしないのだろう。

 そんな彼の様子を見てそう思ったアルクは、彼等の監督役をしてくれる冒険者を探す方法が何かないかと考える。


「―――ふぅん。お前等、監督役をしてくれる冒険者を探しているのか?」


「・・・・・・え?」


 ―――と、そこで不意に、横合いからアルク達に声が掛けられた。

 全員が声が聞こえた方へと振り向けば、そこには体格のいい一人の男性冒険者が立っていた。


「話は聞かせてもらった。お前達の監督役、俺が引き受けてやろうか?」


 男性冒険者は立てた親指で自身を指差しながらそう言うと、アルク達に向けてニカッとした笑みを浮かべて見せた。





次回の投稿は4/25を予定しております。

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