第3章第9話 ~ゴンゾーの宿屋の悩み事 3~
2022年7月8日に内容を調整しました。
ゴンゾーの宿屋の店主であるゴンゾーがフェルヌスから料理を教わり始めた日から一ヶ月後の料理大会当日。交易都市ライファには『名誉料理人』という称号を手に入れんと数多の料理人達が集い、己が実力を、想像力を競い合い、しのぎを削っていた。
優勝を目指して蹴落とし、蹴落とされ。時に相手を称え、罵倒し―――そして今、その日最後の大勝負である決勝戦が行われようとしていた。
「さあ、野郎共!今大会の大詰め。決勝戦の始まりだぁっ!実況は俺、商業ギルド会長の息子こと『ジニアン』がやっていくぜ!」
『ウオオオォォォーーーッ!!!』
料理大会のステージ。町中の人間のほぼ全てが集まっていると思えそうなほどのその中心で、大会用に用意したと思われる緑色と金色合わさった派手派手な衣装を身に纏った青年が声を拡張させるアイテム―――『ボイスマイク』と言う名前の形状はマイクに酷似している物を手に持ちながら司会進行をしていた。
「そして、決勝戦に相応しい審査員の方々も紹介していくぜ!今回お呼びしたのはこちらの三名だ!まず最初に紹介するのは、この町の冒険者ギルドのギルドマスターであり、元Sランク冒険者の『モールテス』ゥゥゥ!!」
「ご紹介に預かりました、冒険者ギルドのギルドマスターであるモールテスと申します。審査員として呼ばれたからには公平な審判をさせていただきますね?」
バッとジニアンが手を翻した先には執事服をビシッと着こなし、左の片目に片眼鏡のモノクルを付けた初老の男性が審査員席に座っていた。彼は大会を見に来た観客に向けて軽くお辞儀をする。
彼の名前は『モールテス・バリソン』。先程の紹介でも言われた通り元Sランク冒険者であり、現在は冒険者稼業を引退して交易都市ライファに存在する冒険者ギルドのギルドマスターという役職に就いている人物だ。
「続いて二人目は、皆も知っているこの町の顔。忙しい領主に代わってこの交易都市ライファを切り盛りする我等が町長っ!『ナーバル・ヴォルネス』だぁぁ!!」
「ど、どうもご紹介に預かりました。町長のナーバルと申します。・・・えー、本日はお日柄も良く―――」
「はい!話が進まないんで、サクサク行くぞ!」
続いてビシッ!とモールテスの隣に伸ばされたジニアンの手の先には、頭頂部が剥げた肥満体系の中年男性が審査員席に座りながら額から流れ出る汗を手に持つハンカチで拭いていた。
彼の名前は『ナーバル・ヴォルネス』。領地全体の運営や貴族間の関わり合いで忙しいライファ領領主に代わってライファの町の運営と管理を取り仕切っている町長だ。丁寧に、悪く言えば腰を低くして挨拶をしようとする彼だったが、それをジニアンが話が長くなってしまうからとストップさせ、最後の人物の紹介を始める。
「そして本日最後に紹介する審査員は三人の中の紅一点。商業ギルドの副会長『フリーレナ』だぁっ!」
「審査員として呼ばれました、商業ギルド副会長のフリーレナと申しますわ。本日はよろしくお願いしますね?」
最後の審査員の紹介をしようと、ナーバルのいる席とは反対側の席にいる人物へとシュバッ!と指差すジニアン。
その先には青く長い髪を背中に流し、豊満な肉体を青いドレスで包んだ美女が審査員席に座りながらニッコリと、大半の男性を魅了する様な笑みを浮かべていた。
彼女は『フリーレナ』という名前の女性であり、このライファ領の商売に関係する事を主に扱う商業ギルドの副会長だ。並みの商人なんて簡単に手玉に取ってしまえる程の経営手腕でライファ領内の通称事業の一切を牛耳っている女傑でもある。
「こんな美人が見れて嬉しいか野郎共!」
『ウオオオォォォーーーッ!!!』
「ちなみにこれは余談だが、フリーレナがいる席には、本当は俺の親父である会長が来る予定だったんだぜ。ただ、諸事情で―――つっても、ぎっくり腰なんだがな―――で来れなくなっちまったから、代理として来てもらったんだ!良かったなお前等ぁ!」
『ウオオオォォォーーーッ!!!』
喜びの雄叫びを上げる聴衆―――特に男共―――の声が辺りに響き渡り、会場はまさに最高のボルテージを迎えていた。
「気分も盛り上がって来たところで、この決勝戦に参加する選手の入場だぁ!まずは赤コーナー。隣町『シャーデシー』にて立ち寄る旅人などに数多くの名物料理を振る舞ってきた大手料理店のオーナー!『ラァァンシャットォォォ』ッ!!」
ズバッ!とステージ右側に手を伸ばすジニアン。そこには赤のコントラストの衣服を身に纏った見た目三十代の男性―――『ランシャット』と呼ばれた人物が立っており、両拳を突き上げながら、やる気と力強さをアピールするような仕草をしている。
「そして反対の青コーナー。この交易都市ライファにて『ゴンゾーの宿屋』という店を営む店主にして料理人!『ゴォォンゾォォォ』ッ!!」
先程とは反対の左側にビシッ!と腕を伸ばすジニアン。そこには男らしいと言えるような彫りが深い顔立ちと、同様に筋骨隆々と言う表現が適切な肉体を持った男性―――ゴンゾーが黒い衣服の上に白い腰エプロンを身に纏いながら立っており、腕組みをしながらギラギラとした鋭い目を会場に向けていた。
「さてと、そんじゃまぁ、各選手の紹介を行って行くぜ!まずはランシャット選手からだ!繊細と言えるような料理の腕前を持ちながら、驚くほどの大胆さも持ち合わせたこの男!今大会で披露してきた料理は、味はもちろん、独創的と思える程見た目美しい料理の数々によって多くの審査員や会場の人間を魅了してきた!この決勝戦では一体どんな料理が出されるのか、大いに興味が出て来るぜぇぇ!!」
そんなジニアンの解説に会場は沸き立ち、紹介されたランシャットの表情は当然と言わんばかりの自慢げなモノになる。
「続いてゴンゾー選手だ!この男が披露してきた料理は主に一般家庭で食べられている様な物で目新しさを感じさせる物ではなかったが、その出来はとても家庭料理とは思えない程一段も二段も昇華させたものばかり!彼の料理を口にしたこれまでの審査員達からは、名品と呼ぶに相応しいと言われた程!こちらもこの決勝戦ではどんな料理が出されるのか、今から涎が出て来るぜぇぇ!!」
そんなジニアンの解説に再び会場は沸き立ち、紹介されたゴンゾーの表情は然程変わりはしなかったものの、フン!という荒い鼻息を吐き出していた。
「紹介も終わったところで、そろそろ本日最後のメインディッシュの登場だぁ!カモン!」
パチンと指を鳴らすジニアン。それを合図とするように、ステージの影から平たい皿に盛られた料理が運ばれてきた。
「初めはランシャット選手の料理から審査するぜ!この料理の名前は『誘惑のシーホースステーキ』!香辛料を練り込んだシーホースという半馬半魚の魔物の肉をミディアムになるくらいに焼き上げ、その上に薄くスライスし、ほんのり焼いたキャベとポルテトを交互に重ね、さらに肉の周りに円を描く様に掛けられた蜂蜜が彩りを映えさせている一品だ!その見た目もさることながら、美味しそうな匂いも立ち昇らせるそれは凄く美味しそうだぞぉ!!」
コトリと審査員達の前にあるテーブルに置かれるランシャットの料理。皿に盛られたその見た目は、激しく自己主張をするような焼かれてもなお赤みを帯びている肉に、その上に交互に重ねられた薄くスライスされたキャベとポルテトが乗せられ、その周りに紋様の様に掛けられた金色に薄く輝く蜂蜜が皿の中の色彩をより際立たせていた。
「ほう!これはまた、随分と美しい見た目の料理ですねぇ・・・」
「ええ、それに匂いも強烈ね。香辛料の香りが食欲を刺激して来るわ。多分誘惑の由来はこれね」
「で、では、さっそく一口・・・・・・むあっ!?」
最初に料理に口を付けたのは町長のナーバルだ。彼はナイフとフォークで切り分けた肉をパクリと口にし、その瞬間彼は驚いたようにその体を仰け反った。
「こ、これは凄い・・・!というか、辛い!?この肉に付けられている香辛料は相当ですよ!?」
「むっ・・・!?確かにこれは辛い・・・!しかし、その辛さは添えられているキャベとポルテトによって幾らか軽減する事が出来ますね。私的には、これはアリかと」
「それにこの蜂蜜のソース・・・甘さがかなり控えめだけれど、野菜だけでは抑えられなかった香辛料の辛みをほど良く中和して、シーホースの肉本来の旨味を引き出してさえいるわ・・・!た、食べるのを止められない・・・!?なんて計算された料理なの・・・!?」
口々に料理の評価を行う審査員達。
彼等の評価を耳にしたランシャットは嬉しそうに頬を緩ませ、その内心では「ふっ・・・!これは勝ったな」と己の優勝を確信していた。
「それでは、続いてゴンゾー選手の料理だぜ!カモン!」
審査員達がランシャットの料理を食べ終えた頃を見計らって、再びジニアンはパチンと指を鳴らす。
そしてそれを合図に、再びステージの影から料理が運ばれてきた。
「むっ?こ、これは・・・・・・」
「えっと・・・何かしら、これ・・・?」
「白いスープ、ですか・・・?こんな料理、始めて見ますね・・・?」
運ばれてきたのは底の深い皿であり、その中には白濁とした白いスープが入っており、それを見た審査員達はちょっと困惑した表情を浮かべた。
「それじゃあ、ゴンゾーの料理の紹介をするぜ!料理の名前は『野菜たっぷりゴロゴロシチュー』だ!白い見た目はヤギの乳を使用しているかららしいぜ!」
「なるほど。そういう・・・しかし、乳を料理に使うなんて随分と大胆な事を・・・!」
「そうね。発想は面白いわ。でも、それだけじゃランシャット選手の料理を超える事は出来な・・・!?え、何?このスープから立ち昇る匂いは・・・!?」
「これは・・・甘い匂い・・・?いや、それだけではありませんね。何と言うか、嗅ぎ慣れない匂いも感じます」
スンスンとスープの香りを嗅ぐ審査員達。その様子はどう評価したものかと酷く戸惑っている様でもあった。
「とりあえず、一度食べてみましょう。匂いだけじゃ、判断しきれないわ」
「それもそうですね。では、さっそく・・・・・・ッ!?こ、これは・・・!?」
スープをスプーンで掬い、パクリと一口食べるモールテス。
その瞬間、彼の表情は激変した。
「あ、甘い・・・!しかし、それだけではない。強烈な野菜と肉の旨味も感じられる・・・!」
「・・・!?た、確かに・・・!これはいっそ暴力的とまで言っていい程・・・!しかし、それを乳の甘さが覆って和らげている!」
「それに胃の中に到達した瞬間、スープのほんのりとした熱が、ゆっくり優しく体を温めてくれるわ。例えるなら、冬の季節の中、暖炉の熱によってじっくりと体が暖められていくような、そんな感じがするわ・・・!」
ゴンゾーの作った料理を口にした審査員達は頬をほんのりと赤く染めらせながらそう評価する。
彼等の評価を聞いたゴンゾーは無言でグッ!とガッツポーズを取った。
「それでは勝負の結果発表と行くぜ!今回の決勝戦の勝者及び優勝の栄光が輝くのは、ランシャット選手か、それともゴンゾー選手か・・・!審査員の方々、判定をどうぞっ!!」
バッと片腕を振るうジニアン。
それを合図に審査員達は自分達のテーブルの上に置かれていた赤色と青色に染められた二つの旗のどちらかに手を伸ばし―――
「私はこちらの旗を」
「わ、私もこれを・・・!」
「ふむ・・・どうやら、私達の考えは一致しているようですね」
そして彼等は青色の旗を手に持った。
「な、何だと・・・!?」
「・・・!!」
それを見たランシャットは驚愕により血走った目を見開き、ゴンゾーは握りしめた両拳を頭上へと力強く振り上げた。
「わ、私が負けた、だと・・・!?な、何故だ・・・!?何故なんだ・・・!!この大会で、この決勝戦で出した私の料理は、私の生涯の中でも最高傑作と呼ぶにふさわしい物だった筈・・・!なのに・・・!?」
「確かに、ランシャット選手の作った料理は素晴らしい出来でした。見た目の美しさも、味も、そしてアイデアも・・・」
「え、ええ・・・。強い香辛料の辛みはとても強烈なインパクトがありました。いっそ強すぎるくらいに・・・!」
「甘さ控えめの蜂蜜のソースで辛さの調節を行うという発想は見事と言う他ありませんが、しかしそれがこの料理の唯一の失敗と呼べるかもしれませんね。香辛料の辛みをねっとりとした蜂蜜の粘り気が取り込んで、後味にまで辛さが残ってしまっていました」
セリフの最後で「その辛さが喉に残留していて、結構辛かったのです」とフリーレナは呟く。
その発言を耳にしたランシャットは「なん・・・だと・・・!?」とショックを受け、己の口元をワナワナと震わせた。
「それに対してゴンゾー選手の料理ですが・・・最初見た時は、”え?これ本当に料理?”と思ってしまいましたが、実際に食べてみればこちらも非常に美味しいと感じました。野菜はしっかりと火が通っている為かとても柔らかく、そして肉も・・・おそらくこれは鳥肉ですね?しっかりと固過ぎず、柔らか過ぎない、噛み応えのある硬さでした」
「そ、それにスープ自体の味も中々のモノでした。あのドロリとした、少し粘り気のある白濁のスープに感じられた甘みが、ヤギの乳によるモノだとは分かります。・・・ですが、それだけでは唯甘いだけのスープになってしまう筈。・・・しかし、この料理にあるのはそれだけではない・・・!何か、土台となる濃厚な何かによる旨味が感じられる・・・!」
「おそらくこれは、ゴンゾー選手がこれまでの料理試合で使用してきた”コンソメ”の旨味でしょう。町長さんの言う通り、ヤギの乳だけを使えば乳の中にあるえぐみがスープの味を台無しにしていたでしょうが、コンソメの中にある肉と野菜の旨味がそのえぐみをかなり軽減し、更にフォロによって粘り気を出す事で、スープの甘さと旨味が口全体にじんわりと染み渡らせる。・・・正直に言えば、今でもその料理の余韻が、暖かな熱が今でも体の中に残っているのよ・・・まるで母親の腕の中に抱かれている様に・・・!」
ハァ・・・!と頬を赤らめ白い息を吐き出す審査員達。その表情は朗らかに緩み、穏やかで優しい笑みを浮かべていた。
「み、認められん・・・認められるか・・・!こんな、見た目料理と思えないモノに・・・!そこらの宿屋の店主に私が負けたなどと・・・!」
口元だけでなく、全身までもがワナワナと震え始めたランシャット。その心中は有名料理店の料理人としてのプライドが、なにより自身の最高傑作が負けてしまった事に対する屈辱感が、思わず胸を掻き毟りたくなる程に渦巻いていた。
両の瞳を揺らすランシャット。そしてその血走った眼が無意識にゴンゾーの作ったシチューが入った鍋に向けられた。
それを視界に入れた彼は、何を思ったのか苦虫を潰したような表情のままゴンゾーが使用していたキッチン台にズンズンと足音を立てながら向かい、そしてシチューが入った鍋に手を伸ばす。
そんな様子のランシャットを何をするつもりなのかと固唾を飲んで見守る周りの観客達。
なにせ荒い呼吸に、歯軋りさえしているのだ。その形相を見ればとてもまともな精神状態ではないという事が一目瞭然で分かるだろう。
もしや怒りに任せてその鍋の中身をぶちまけるつもりなのか?と予想した観客達であったが、しかしランシャットの取った行動は違った。
彼は伸ばしたその腕を鍋―――ではなく、その中にあった木製のおたまをグワシッ!と手に持ち、さらにもう片方の手で鍋の傍にあった木製の深皿を持って、その中におたまで掬ったシチューをトポトポと注ぎ始めた。
「こんな・・・こんな料理に私が負ける等ォ・・・!?」
その行動は料理人としてのプライドから来るものだろうか?彼は自身がよそったシチューを親の仇でも見るかのように睨みつけながら、深皿と同じく鍋の傍に置かれていた木製のスプーンを手に取り、それでシチューを掬って口に運び入れた。
「―――ッ!?」
そしてその瞬間、彼の表情は激変した。
「な、何だこれは・・・!?なんだ・・・これはぁぁ・・・!?」
一口食べると怒りに染まっていると言えそうな歪み切った形相が徐々に緩み始め、二口食べるとその口元に笑みを浮かべ、三口目には朗らかな笑顔を浮かぶ程に穏やかになっていた。
「ああくそ!くそぅ・・・!?俺の抱いていた怒りが・・・屈辱が・・・コイツを食べた途端に柔らかく絆されていく・・・!?」
彼の脳裏にはある光景が浮かび上がっていた。
それは彼の故郷の村であり、自身が両親と暮らしていた家だった。
「(寂れた村で朝から晩まで畑仕事で働いていた毎日。そんな中での唯一の楽しみが、母の作ってくれた料理だった。母は、若い頃にとある貴族の屋敷で下働きとして働いていたらしく、その時に屋敷の料理人から教わった料理のいろはで作られたた料理は、とても寂れた村なんかでは味わえないような味だったのを覚えている・・・)」
限られた材料の中で作られた料理。だがその味は彼の心を歓喜に震わせ、その瞳をキラキラと輝かせていた事を彼は思い出した。
「(こいつは、このシチューと言う料理は・・・その時の味を・・・記憶の隅に埋もれてしまった”母の味を”思い起こさせる・・・!!)」
「ウッ・・・、グス・・・!チクショウ・・・!?私の・・・!私の負けだ・・・・・・!!」
ガクリと膝を着き、大粒の涙を流すランシャット。
彼は涙声でそう言いながら己の敗北を認めるのであった。
「―――え~・・・少々アクシデントはありましたが、それでは今大会の優勝者を発表したいと思います!優勝は交易都市ライファにあるゴンゾーの宿屋の店主、ゴオォォンゾオォォォーーーッ!!!」
『オ・・・、ウオオオォォォーーーッ!!!』
先程までの怒り狂っていた様子から一変して涙を流して崩れ落ちているランシャットの様子を見たジニアンは、頬に一筋の汗を流しながらとりあえず決勝戦の結果だけでも言っておこうと思ってか声を張り上げる。
そしてそれを聞いた観客達は多少の戸惑いはあったものの、ジニアンの勢いに釣られる様に料理大会優勝者であるゴンゾーを称えようと声を上げるのであった。
余談だが、その後ゴンゾーの宿屋は当然と言わんばかりに大繁盛した。料理大会に優勝した実績もそうだが、何より大会に出された目玉料理を目当てに多くの客が訪れるようになったからだ。
とはいえ、実際に店主であるゴンゾーが出していたのはシチューではなくコンソメスープであったが。
何故コンソメスープだけなのかと不思議に思った者達が聞いてみたのだが、その答えはこうであった。
「俺はまだ、自分が納得出来るシチューを完成させていない・・・!未完成の品を作るだけで満足するなんてのは、料理人の名が廃るってもんだ・・・!」
何でも、彼の目標はとある人物が以前作ってみせたシチューであるらしい。
現在の腕前でもそこそこの出来のモノは作れるし、料理大会で出していたシチューも最高傑作と呼べる物ではあったが、それでもあの時食べた味には到底及びはしないのだとゴンゾーは語っていた。
「それに、俺はまだシチューどころかコンソメスープを極めることが出来ていない・・・!真のシチューを作るためには、まずはあの時食べた真のコンソメスープというべきモノへと近づかなくては・・・!」
「アタシも手伝うよ、アンタ・・・!二人で最高の料理を作ろうじゃないか・・・!!」
「お前・・・!」
「アンタ・・・!」
次の料理大会までには自分が納得できるシチューを完成させてみせると宣言したゴンゾーと、そんな彼を影に日向に支えながら手伝おうと決めたアレイシア。
まずはコンソメスープを極めて見せるとスープ作りに精を出す二人は、その過程で作られたコンソメスープを客に振る舞って行くのであった。
「うわぁ・・・!二人の背後に灼熱の炎が燃えている様子が見えるよ・・・!」
「・・・・・・で、あの二人の事どうするんですか師匠?」
「どうするって・・・正直どうしようもないだろう、アレは。・・・まさか、料理を教えただけであんな風になるだなんて、誰が予想できるか・・・!」
尚、そんな料理に対する情熱の炎を燃やしていた二人の様子をテーブル席で見守っていたフェルヌス達はといえば、どこか途方に暮れた様な視線を彼等に送りながら大きな溜め息を吐いていたという。
とりあえず、今回は此処まで。続きは6月頃投稿予定です。
それと、作者のもう一つの作品である『悪の組織の女幹部になっちゃった』ですが、現在執筆活動中です。
こちらは早くて6月頃、遅くても7月頃に投稿出来たら良いなと考えております。
当作品を読んでくださる皆様へ、今後も楽しく読んで頂けたら嬉しく思います。




