↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/97

87話

夜遅くても、自宅ということで看板娘のリケがまだフロントに座っていた。

「1泊お願いします」と部屋をお願いして、大銅貨5枚を支払う。

 そうだった、この街に来て初めて泊まったときにもこの値段の安さに驚いたんだっけ。


 無事空いていた2階の角部屋に入り、ベッドに腰かける。

「どうするかなぁ…」

 旅の移動手段について考える。


 エミナルお婆ちゃんは年の割には元気だと思う。でも以前、市場へ買い物へ出かけた時のお婆ちゃんの様子を思い出してみると…荷物を持って長時間歩くのは無理っぽい。セルセラの街からハウバールの町へだって歩いては行けない。ハウバール行きの馬車が出ていたら、それに乗るか?


※ハウバール行きの馬車は毎日2便。朝6時と正午にあります。


世界基本知識さんが相談相手になってくれた。


そうか。馬車があるのか。それに乗ったらハウバールに着くのは何時?


※片道4時間になります。


 片道4時間か。俺が歩いたとしたらそのぐらいで行けるってことだよな。

 馬車移動は出来ればしたくないんだよな。狭いし、人でいっぱいだし、揺れるし、お尻が痛くなりそうだし…

 ラノベあるあるだと、盗賊に襲われたり、同じ馬車に乗った人が盗賊の仲間だったりというフラグが立つんだよな。


 箱馬車を錬金術師さんの家から持ってきて、ゴーレムの馬を作って引かせようかな。問題は、本物の馬じゃないことがすぐにバレること。いいところは、必要なくなったらどっちもアイテムボックスに収納できるということ。


 本物の馬は、必要なくなったら扱いに困るし、生き物だから毎日お世話をする必要がある。第一に乗馬体験が2回あるだけの初心者が、馬をひとりでどうこうできるのか、ってことだ。

 うん、無理だよなあ。どう考えても生馬は。かといって、御者付きで馬をレンタルするのもナシだ。基本はふたりだけで移動する。その方が絶対いい。


「とりあえず、作ってみるか」

 念のために魔道具の方で結界を張って宿の部屋の中に入れないようにしてから、シェルターへ移動。


 広い場所でゴーレム用の岩を出して…

「って、岩以外の素材でもいいのか」

 一番多いのは鉄だけど、鉄にしても岩にしても重いよな。重量軽減スキルで軽くするけど。


「軽くする…」

 つまり、フローティングボードのように浮かせられるということだ。

「浮いていたら振動の心配はないよな」


 箱馬車を浮かせたまま移動させるイメージが浮かんだが…それってありなのか? フローティングボードどころではない重量を浮かせようと思ったら、かなり大変だぞ。しかも今回は俺一人じゃないのだ。


「…無理だな」

 ガリガリと頭をかいて仕切り直しだ。

「と、その前に…本日の送還スキルを使わないと」

 一日2回しか使えない貴重なチャンスを無駄には出来ない。


 このゴーレムのコアを、壊れる前の状態…元通りに直してください! 【環】!

 このゴーレムのコアを、壊れる前の状態…元通りに直してください! 【環】!


 ヒビが入り色褪せていたコアを2つ、元通りに直せた。

「コアが手に入ったのは嬉しいけど…錬金術師さん、馬のゴーレムも置いていって欲しかった…」

 多分だけど、最後になった彼らの旅用に持っていったに違いない。


「待てよ、馬がダメなら俺が曳くか?」

 行商人の荷馬車の護衛をした時に知ったが、この世界の荷馬車の速度は冒険者の歩く速さと変わらない。箱馬車はもっと早く走っていたが、そのために集団移動を選ぶのはやはりパスしたいのだ。


「そうだ、人力車だ!」

 人が曳く車があったじゃないか。


「欲を言えば自転車タクシーの方がありがたいんだけど…」

 待てよ。人力車、となると目立ちそうだけどリヤカーならどうだろう。災害の時に再注目されたんだよな。

「お婆ちゃんにリヤカーに乗ってもらって、俺が曳く。リヤカー本体に重量軽減スキルをかければ、ただ歩いていたり走っていたりするのと変わらない状態になるし…疲れてきたらリジェネを使ったり回復スキルを使うという手もある」

 お婆ちゃんにうたた寝をしてもらうことが出来たら、その間はフローティングボードで低空飛行をしながらリヤカーを引くとか…隠密で他の人には見えないようにしてぶっ飛ばすとか…


「あれ、これ…いいんじゃないか」

 と、なると俺が作るのはリヤカー型のゴーレムだ。

「引くんじゃなく、押すタイプにしよう。そして雨よけと日差し避け用にって屋根をつけておけばお婆ちゃんの視界に入る俺の足元は隠せる。うん、安全を確認する意味でも後ろから見守るタイプがいいよ」


 どんどんイメージが沸いてきた。


 実は自力走行も出来るゴーレムだけど、見た目は鍛冶で出来たようなフレームに木の板の囲いをつけて…ゴーレムの核を荷物を載せる台の下に隠して…

 お婆ちゃんが座ったり横になったりできる広さの荷台を用意しよう。屋根は半分折り畳みが出来るよう…乳母車の覆いをイメージして…。


 後ろの俺が押すスペースに跳ね上げ式の板を2枚。下へ降ろせば椅子代わりになって、ゴーレムの自走に任せる。上へ板を上げれば、ただの風除けのようになって、俺が押して進んでいるフリが出来るシンプル構造。


 うん、うん、イメージが固まってきた。


 錬金術と細工スキルを駆使して、大まかな部分は1時間ほどで完成したが、そこから細かい手直しをしたりしているうちに3時間が経過していた。


「やばい。とっくに日付が変わっているし」

 今日も忙しくて風呂にゆっくり入る時間はない。クリーンでさっと済ませて寝る前のトイレへ。マニムニ食堂でゆっくり朝食を食べたいし、花の水やりをしないとダメだし…


「アラームを6時にセットして…」

 急いでシェルターを出て結界を解除、部屋のベッドに横になる。


 ※…まだ部屋の前と建物から離れたところに監視者がいます。


  ああ、そう。頑張るねー。

  マップさんが教えてくれる無駄な頑張りに笑ってから、目を閉じる。


  明日は邪魔が入りませんように…。


  ムリかな、と思いつつ祈っておいた。


  *


「おはようございます」

 裏口からこっそりギルドに入り、セルビナさんの窓口へ。


「おはよう、ヒロヤくん」

「おはようございます、ヒロヤさん」

 今朝もヒナヒーラは冒険者スタイルだった。


「おはよう、ヒナヒーラ。これからクエスト?」

 尋ねると彼女たちは笑った。

「本日の平原と森のクエストの引率をお世話になります」

 ぺこっとヒナヒーラに頭を下げられて驚いた。

「そういうこと。今日もヒナちゃんの引率よ。よろしくね」

「…あ、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 同じ人間の引率ってありだったのか。


「では、本日のクエストの依頼書を渡します」

 セルビナさんからヒナヒーラと俺にそれぞれ1枚ずつ依頼書が手渡される。

「大丈夫だとは思いますが、暗くなる前には帰ってきてください。引率クエストは再チャレンジ可能なクエストです。…焦らずに頑張ってね」

「はい!」

 ほー引率クエストは再チャレンジ可能なクエストだったのか。俺の時にはそんな言葉掛けてもらわなかったな。


 では、とギルドを出ていくヒナヒーラの後に続く。


「待て、冒険者のヒロヤだな!」

 いきなり来るかよ。待ち伏せているのは知っていたけどな。


 ヒナヒーラがびくっとして、身を引いた。

「誰ですか?」

「マルムク商会の使いの者だ」

 昨夜とは違う商会からの使いらしい。偉そうに言ってくるのも、行かないと言った後の反応もほとんど変わりない。商人のやり方って同じなのか?


「冒険者への依頼はギルドを通してください」

「依頼ではない!」

「あっそ。ヒナヒーラ、行こう」

「待て!」


 ハッキリ言って、ギルドの前で騒がれるのは迷惑だ。俺が睨みつけるとびくっとして、それから周囲の状況に気がついたらしい。

「依頼無しで冒険者にタダ働きさせるつもりか? マルムク商会のやり方って、いつもそうなんだ。知らなかった―!」


「お、おい、やめろ…。声がデカい」

「名前も名乗らないマルムク商会の方。依頼じゃないのにタダで冒険者に頼みごとをさせようなんて、良くないと思いますー」

 場所が場所なので周りには冒険者が多い。しかもこれからクエストに出る者が多い時間帯だ。慌てたように周りを見て、使いの男は脱兎のごとく逃げだした。


「ヒナヒーラ。昨夜から、ごめんな」

「うぅん、びっくりしただけ。変な人だね」

「ホント。何がしたいのか分からないよ」

 本当は分かっている。俺に【虹の花】を採集させたいのだ。

 だが、大っぴらにギルドを通じて依頼すると、どこからか同業他社から嗅ぎつけられる。せっかく金儲けの匂いを嗅ぎつけて、その匂いのもとに辿り着いたというのに…他に出し抜かれたり奪われたりされると困るということだ。

 

「わずらわしいから、街を出るまでフードを被るよ」

 隠密だと完全に姿が消えてしまうから、認識阻害のスキルが欲しくなってくるな。スキルを増やし過ぎたと思ってたけど、スキル変換したほうがいいな。


 街の中はフードを被ったままで、門番の前を通る前にフードを降ろした。チェックを終え、街から出た後も監視者はいるがこちらの様子を伺う場所から動かなかったためフードは下げたままでいることにした。 


「ヒナヒーラは今回もマジックポーチを借りてきた?」

「うん、そう。セルビナさんが貸してくれたの。自分のは持ってないよ」

「背負い子は持ってる?」

「まだ買ってないの。この短剣と胸当てだけ」

「採集用の袋と取れた獲物を入れる袋は?」

「それは解体用のナイフとともに、正登録のお祝いにもらった」

 へぇ、そんなプレゼントがあるのか。


 マルクも正登録が出来る歳になったら、プレゼントがもらえるようになるのかな。いや、その前におっちゃんから色々プレゼント貰えそうな気もする。病気で奥さんを失くして子供がなかったみたいだし、我が子のようにかわいがりそうな気がするんだよな。お婆ちゃんに懐いているのが嬉しくてたまらないって顔をしていたものな。


「じゃあ、俺が使わなくなった背負子をお祝いにプレゼントするよ」

「ホント? もらっていいの?」

「いいよ」

「今もらってもいい?」

「今は…これから平原と森の両方へ行くことになるからな。荷物は少しでも少ない方がいい」

「分かった」


「ヒナヒーラは討伐と採集どっちに重点を置く?」

「私は採集! ヒロヤは採集が上手いってセルビナさんに聞いたの。採集だけで食べていくのって難しいかな?」


「初めは難しいと思うけど、いろんなことを勉強して、実際に森のなかを歩きながらいろんなものを見て、適切な処理をした薬草を採取するように心がけたらいいと思うよ」

「そうだよね。私、サレーナさんにいっぱい薬草のことを教わって、薬やポーションを作るお手伝いが出来るんだと思ったら、やりたいって思ったの。それまでは街の中だけで出来る仕事がいいなと思っていたんだけど、女の子でも頑張れば出来る仕事じゃないかって思って…」


「ヒナヒーラは誰かと組む予定は?」

「あ、もうチームに入ってもいいよって言ってもらってるの。引率クエストが終わって、デビューの許可が出たから」

「そうか、それは良かった。女の子1人は危ないからね」


「サーリャさんに誘ってもらって、女の子チームに入れてもらうの。リーダーのカリンさんは青1だって」

 差があり過ぎるのはどうかと思わなくもないが、セルビナさんもヒナヒーラには目を配っているみたいだし、俺が心配しなくても大丈夫か。


 先に森歩きをさせて、時々アドバイスしながら薬草採取させる。自分でやりたいというだけあってしっかり勉強してきているし、手順も間違っていなかった。


 平原へ戻ってきたが兎狩りに手古摺っていた。どんくさいとまではいわないが、まだ腰が引けていて攻撃の力が刃に乗っていない。打撲より少しマシなかすり傷を作るばかりで、なかなか仕留められない。


 同じチームで狩りをしているのではないから、泣きそうな顔をしている彼女の手助けは出来ない。

「一度俺がやってみせるから、自分と何が違うか考えてみて」

 狙いをつけたウサギに静かに、そっと近づく。ギリギリまで近づいて、兎に気がつかれた瞬間にピアッシュを投げる。

「すごい!」

「ヒナヒーラは女の子だから、どうしても男に比べると筋肉の力が弱い。俺も男にしては弱い方だし、怖がりだから接近しないで出来るだけ倒そうって考える」

「そう、か…。剣で戦う以外のやり方もあるんだ」

「ある程度接近したら、剣で戦った方がいいときもある。でも、接近する前に獲物を倒せたら楽だよ」

 ヒナヒーラはくすっと笑った。

「ヒロヤは楽な狩りをしているんだ」

「違うよ、狩りを楽しているんだ」

 似ているようで、少し違う。


「ヒナヒーラは石投げしたことある?」

「石投げ? したことない」

「じゃあ、一度兎に向かって石を投げてみよう」


「あ、でも投げる石を持っていない」

「そうだね。今回は俺のを使えばいい」

「ヒロヤっていつも石を持っているの?」

「石って意外と使えるんだよ。荷物に限りがあるときには、重くて邪魔だろうけど」


 試しに石を投げさせてみたら、意外と筋が良かった。3つ目で兎の頭に当たって、倒れた。

「失神しているだけかもしれないから、確実に止めをさそう」

 あ、ちょっと色々アドバイスしすぎた。引率って先生役じゃなかったのに、しまった。


 ヒナヒーラはちゃんと自分で止めをさせた。俺の方が初めて生き物を殺した時、ショックを受けていたよなーと思い出す。

「血抜きナイフ、持ってる?」

 聞くと首を振る。

「出来れば、すぐに血を抜いておいた方が臭みが残らなくておいしいお肉になる。査定に響かなくても解体する人に喜ばれると思ったら、時間のある時は面倒がらない方がいいかな。…余分があるし、あげるよ」

「これもプレゼントしてもらえるの? ありがとう!」


 ヒナヒーラは飛び跳ねて喜んだ。


「血抜きも終わったし、袋に入れてマジックバックに入れたし…帰ってもいいよね?」

 俺は頷いておいた。

「そうだね。体力ギリギリまで頑張るのは、出来ればやめた方がいい。いつ何が起こるか分からないから出来るだけ体力は温存した方がいい」

「分かった」


 ああ、危険だ。ついついアドバイスしてしまう。引率って難しいな。

 マーリレンは優秀だったな。


 ギルドカードを見せて門を潜り、街に入ったところでフードを被る。

 ずっと監視していた人もいるけど、門を超えた途端に動き出すのもいる。


 ギルドに向かって歩いている間にも尾行してくる者が増えていく。ヒナヒーラに気がつかれないよう、何も気づいていないフリを続けてギルドへ向かう。


 ひとりではなかったからか、声を掛けられることなく無事にギルドに到着。ヒナヒーラは森で採取してきた薬草と平原で狩ってきた兎を納品した。

「お疲れ様でした。ことら、査定用紙になります、金額を確認して、問題なければサインしてください」

嬉しそうにサインして、ヒナヒーラは報酬を受け取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。