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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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第8話

「さて、と。やってみるか」


 水生成水筒からの水魔法へのスキル変換はうまくいった。実にスムーズな流れで水魔法レベル3を修得した。もちろん、そのあとすぐに水生成水筒をお取り寄せしておいた。水魔法で水が作れるといっても、水筒から飲む方が飲みやすい。


 あとは…着替えがそろそろ欲しいが、洗浄スキルで服を綺麗にすることができるようになっているから、まだ我慢できる。塩も我慢しようと思えばもう一日ぐらいは我慢できる。


 サバイバルナイフを元にして解体スキルを【換】で得て、新しいサバイバルナイフを【召】しておく。

これで今日の召喚は終わりだ。


 明日は料理スキルと塩、着替え…着替えはさらにもう一日先送りしてもいいけど…シェルター内に風呂が設置できないかなぁ。まあ、洗浄スキルのおかげで、風呂もまだ先送りできるから…やっぱり便利そうなスキル優先かな。


 ステルステントから外へ出て、習得したばかりの水魔法を試すことにした。


 レベル1で使用可能な技はウォーターボール(水の玉だな。大きさも一度に作る数もイメージ次第)。ウォーター(人間シャワーが出来るな)。ウォーターサクション(水分の吸い出しかな)。

 レベル2でウォーターカッター(いわゆる水刃)。ミストウオール(目隠し的な使い方が出来る)。アイスニードル(細い針から太い針…長さも自由)。

 レベル3でアイスカッター(氷刃)。アイスウォール(氷の盾)。アイスバレット(氷の礫)。


 どれもこれもなんとなくで使い方は分かるが、精度はあまりよくない。使いこなせてない感じがありありとするものの、初日いきなりでこれは上出来だと自分で自分を励ましておく。


 一通りの技を試した後、俺が気に入ったのは…


「ウォーターカッター、いいっ! 使える!」

 高いところに生っている木の実を収穫するのにとても便利だ。いちいち木に登らなくてもいい。


 ただし、使いすぎると疲れる。魔力の使い過ぎってやつかな。結局は木登りしてナイフを使って収穫することにした。ダメじゃん、俺…浮かれすぎ。


 アイスバレットも威力はあるが、集中力が必要で…魔力節約をかねて小さなウォーターボールを使った攻撃が一番使い勝手が良かった。


 そう、考えていたあの作戦が実戦で使えたのだ。


 獣だろうが魔物だろうが、呼吸をしている生き物を確実に殺す方法。そう、息を止めればいいのだ。水を肺に送り込んで、呼吸ができない状態にしてしまえばいい。


 顔をウォーターボールで閉じ込めてしまうのは結構大変だ。獲物はウォーターボールから逃れようと激しく動く。だが、直接肺の中に入れてしまえばそんなに水の量は必要ない。


 この殺し方だと血は流れない。毛皮に傷をつけることもないし、アイテムボックスに収納すれば鮮度も落ちない。五匹くらいのジャッカルを前にしたときは少し焦ったが、一対一だとサーベルタイガーだろうがヒョウだろうが、サイだろうが、落ち着いて狩ることができた。


 この日の移動距離はぐんと伸び、転移門まであと1日か2日で辿り着けるところまで来た。

順調、順調と喜んでいたのは3時過ぎまでだった。


「湿地地か…」


 森がぽっかりと開け、目の前に湿地帯が広がっていた。


「やだなぁ」


 スニーカーが汚れる。浄化スキルで綺麗に出来るだろうが、足がめり込み歩きにくそうだ。

「いくら綺麗にできるといってもなぁ…」


 地図スキルでこの先の情報を収集し、この湿地帯を迂回することにした。 湿地帯は直径2キロぐらいだから、迂回しても大したロスでもない。

 まっすぐ突っ切ると最短距離になるが、真ん中が底なし沼に変わっていないとも限らない。最悪の場合を考えて、森の中を進むことを選択する。


「げ」


 湿地帯に近いせいか、森のなかで巨大カエルと遭遇した。赤マークには気が付いていたが、恐竜じゃないから水魔法で倒せばいいと油断していたのだ。


「わっ!」

 ビョーンと伸びた舌が頬をかすめていった。

 身体能力が上がっていなかったら、舌の攻撃を顔面に受けていただろう。ぎりぎりのところで躱すことができた。


「アイスシールド!」


 氷の盾の後ろに隠れ、少し後ろに下がる。巨大カエルの舌攻撃の衝撃がズガンと伝わってくる。怖い。身体能力が上がっていなかったら、吹っ飛ばされていただろう。

 水で窒息しろ! 100㏄、200㏄、300㏄……どんどん水を送り込んでいく。カエルの肺がどこにあるのか分からないが、肺の中に入れと睨み付け続ける。


「…………」


 死んだらひっくり返るんだ。

 白い腹を上に向けた巨大カエルを収納するか放置するかでしばらく迷う。見た目にも気持ち悪い。カエルや蛇といった爬虫類に対して特別苦手という意識は持っていなかったが、大きさが…俺よりもでかいとなるとさすがに嫌悪感が湧く。気持ち悪い。


 直接触れるわけでもないし、とりあえず持ち帰るか。


 近いうちに薬師スキルも取ろうと思っているから、これが素材になる可能性がある。解毒スキルと回復スキルは修得したが、薬師スキルでポーションや薬を作っておけば、この先役に立つだろうし、人里に行ったときに売り物にもなる。


※薬の材料以外にも、高級食材として人気があります。


 ってギフト全鑑定さんも教えてくれた。

 そか…美味しいのか。向こうの世界でも、カエル肉は鶏肉に似ているとか聞いたことがあるし、食べられていたものな。


 この大きさだと…かなり食べ応えがあるな。


※こちらはレア種のようですので、薬の素材としても追加で狩っておくことをお勧めします。


 レアなのかー。全鑑定さんの勧めに従い、赤マークを避けることなく進むことにする。

 先ほど倒したのはオレンジ色をしていたが、ほとんどのカエルは大きさも一回り小さく、茶色だった。


「なるほど。大きいオレンジ色を狙えばいいのか」


 ノーマルを3匹、レアを5匹倒したところで迂回が終わった。


 そろそろ、今夜の寝る場所を決めなくては…。

 森の中に入るが、なかなか手ごろな大きさの木が見つからない。

 地図スキルの案内があるから困らずに移動出来ているが、足元は木の根っこが飛び出しうねっていて時々転びそうになる。


「あそこか…」

 すっかり陽が落ち、薄暗くなった7時過ぎ。ようやく寝床になる崖へたどり着いた。

 この崖の上、10メートルほど上に窪地があるらしい。もちろん、獣のねぐらとして最適な場所には住人…いや、住獣がいるらしいが、追い払うか討伐してしまえばいいとのこと。地図スキルさんおススメの場所だ。


 さて、崖登りをしようかと見上げたところで、立派な二本の角を持つヘラジカあるいはトナカイに似た巨大鹿が先手必勝とばかりに駆け下りてきた。

 いや飛び降りてきたに近い、その勢いにびっくりする。


「アイスシールド!」

 さっきまでねぐらに居たと思っていたのに、崖下まであっという間だ。戦う心の準備をしていなかったら、唖然としている間に角で一突きされていたかもしれない。


 ひとつ深呼吸して、巨大鹿を睨み付け、水攻撃!

 肺に水、肺に水、入っていけ!


 走る勢いそのままに前方へと倒れ…巨大鹿はそのまま動かなくなった。


「………」


 ホッとした。巨大カエルとの戦いで、水攻撃に慣れていたことが良かった。 さらにいえば、巨大カエルよりも肺の大きさが小さかった。


 振り返ってみれば、巨大鹿の姿を確認してから討伐完了まで10秒と経っていない。アイテムボッスに巨大鹿を丸ごと収納しておく。


 ねぐらにはもう反応はない。が、警戒しつつ崖を登っていく。

 辿り着いた先はちょうどテントが収まりそうな広さがあった。


「まずは…洗浄だな」


 鹿臭いし、フンがあちこちに落ちている。フンはアイテムボックスに収納しておいて、後で捨てよう。


※肥料にもなりますが、発酵床にも利用できます。


 世界基本知識さんがそんなことを教えてくれる。


発酵床?


※オオツノ鹿は大量の野草を食しますが、体内では半分ほどしか消化できずに排出します。フンに水分を与えて根野菜などを数日入れておくことで半発酵状態になり、旨味と風味が加わります。


「………………」


 糠床で作る糠漬けならぬ、鹿のフンで作るフン漬け…ってことらしい。


「旨味と…風味が…?」


※クレイニア族の伝統料理です。


 世界基本知識さんが教えてくれる。


「そう…なんだ」


 だからと言って、食べたいかといえば…嫌だ! ごめんなさい! だよ。

食べるのは根野菜だといっても、わざわざフンまみれにして、それを食べたいとは思わない。いくらおいしいといわれたって、知らなかったらその美味しさはなかったことにできる。


 先ほどまでの『いい仕事をした』って感じの、どや感がしおしおとしおれるように変化した。


※では、薬草を育てる際の肥料としてみてはいかがでしょう。


「うん。それはいいね」


 おススメされた鹿のフンは捨てずに残しておくことにした。

 自分の家を得て生活に余裕が出来たら、庭で野菜や薬草を育ててみようと思う日が来るかもしれない。

 俺の母親もベランダにプランターを並べて野菜やハーブを作っていた。「食べられない花よりも、ちょっとした食卓の彩になる野菜のほうがお得よね」と常々言っていた。


 母親の料理を思い出したせいか、ぐぅと腹の虫が泣いた。


 寂しさと空腹感で心細くなってきたが…ぐっとこらえて弱気を振り払うと、周囲を洗浄する。

 土まみれ泥汚れでペタンとしていた鹿の抜け毛が…落ちていた岩場の上にもこもこと現れた。これもアイテムボックスに収納して片づける。

 箒も塵取りもいらないなんて、なんて万能なアイテムボックス。最高だ!


※大鹿の抜け毛、毛皮は衣服の素材に利用可能です。柔らかく軽く耐寒性能を備えています。


 世界基本知識さんも追加情報をくれる。


 なるほど。じゃあ、抜け毛も捨てずに残しておこう。将来、服を作る素材にしてもいいし、売り払ってもいいってことだね。


 ねぐらの奥には抜け落ちた鹿の角も二対、四本落ちていた。これももらっておくことにする。世界基本知識さんがこれは薬の素材や武器の材料になると教えてくれたからだ。


 明日にでも薬師スキルが修得できないかチャレンジしてみよう。回復スキルと解毒スキルは手に入れたけど、今後のことを考えたら森の中で自生している薬草を採集して、薬師スキルで薬を試作するのもいいんじゃないかなという気がしてきた。


 腹痛や下痢止め用の薬があれば備えになるし、異世界定番のポーションも買うより自作する方が安上がりな気がする。


「掃除はこんなところかな」


 目に見えるものすべてをアイテムボッスに収納し、綺麗になったところでステルステントを出す。


 テントの中に入るとホッとする。

 明日こそは塩を手に入れよう。そう心に決め、炊いたご飯を握っただけのおにぎりで夕食にする。

 食後のデザートは桃にした。ナイフで皮をむき、手をべとべとにしながらかぶりつく。


「洗浄スキル、最高だな」

 ティッシュペーパーやラップのない生活だが、洗浄スキルでこまめに綺麗にできるからあまり不便を感じずに済んでいる。


 おなかがいっぱいになったところで、筋肉痛に気が付いた。今日も一日森の中を歩いたり木に登ったり、獣から逃げたりしていたから全身の疲れもある。


 筋肉をほぐすストレッチやマッサージをしたが、回復スキルは使わなかった。寝ることで体力も魔力も回復できるからだ。


 ステルステントにはマットレスはないが地面に直接寝るわけではなく、寝床はハンモックを利用するようになっていた。


「っと、その前に…」


 汚れた服を洗浄スキルで綺麗にしてから、ハンモックに横になる。


 いつもは陽が落ちるまでに寝床を決めていたが、今夜はなかなか見つからず、この場所に辿り着くのが遅くなった。これから先も、夜に移動しなくてはいけない場合もあるかもしれない。


「暗視スキルが手に入ればいいけど…そんな便利アイテムあるかな?」

 向こうの世界だとナイトスコープとか夜間モードに切り替えられる望遠鏡などがあったけれど…とりあえず、スキルをリクエストしてみるか。…いや夜間移動は危険だし、やめておこう。


 あれこれ考えているうちに…いつの間にか寝付いていた。この日シェルターを利用しなかったことに気が付くのは翌朝、目が覚めてからのことである。

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