↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/97

77話

「降りるぞ」

 外からドアを開けられるのを待つことなく、ギルド長が馬車から降りた。俺が先に降りてセルビナさんをエスコートした方がいいのかな、と思っている間に彼女は先に降りてしまった。

 ですよねー。貴族の真似ごとなんかしなくてもいいですよね。


「冒険者ギルド長ゼラス様、同ギルド職員セルビナ様、同ギルド員ヒロヤ様、3名様ですね。お待ちしておりました。侍従のティケアと申します。主、コ―ンソルド伯爵のもとへご案内します」

 馬車を出迎える位置に立っていたすらりとしたナイスミドルは侍従さんらしい。

 着ている服はこちらの世界のデザインだが、仕事が出来る男が着るのにふさわしい感じ。こういうデザインもいいなぁと見惚れてしまった。


「う、む…頼む」

 ギルド長、偉そうな態度だなぁ。って、実際に偉いんだから仕方ないのか。俺は下っ端だからちゃんと挨拶を返しておこう。

「初めまして、ヒロヤと申します。伯爵様にお声掛けいただく機会を頂戴いたしましたこと、光栄に存じます。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

「これはこれは、ご丁寧に」

「お招きいだきありがとうございます。セルビナです。どうぞよろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。…どうぞこちらへ」


 屋敷の扉は自動ドアではなく、開ける係の人がいた。中に入ると広いホール。そして2階へ続く階段がある。歩く導線を示すように床にはカーペットが敷いてある。

 へー。俺が手に入れた貴族の別荘の館と基本デザインは変わらないんだな。


 ホールには6人のメイドさんが並んで出迎えてくれた。男爵様のところで働いていたメイドさんと制服のデザインは少し違う。こちらの方がちょっとおしゃれな感じ。男爵様のところのメイド服にはフリルはついてなかった。


 2階へ上がり、すぐ近くの待合室に通された。1階を使わなかったので、出入りの商人よりは上の対応をしてくれている感じかな。

「どうぞ、お掛け下さい」

 座り心地の良さそうなソファと椅子が並んでいた。

 俺は真っ先に下座に向かい、ソファの横に立った。セルビナさんも俺の横に。ギルド長は少しキョロキョロしてからセルビナさんの横に移動した。


「………」

 ギルド長、先座れよ。そう思ったのが伝わったのか、やっと座ってくれた。上から座ってくれなきゃ、こっちも座れない。

「お待ちいただく間に紅茶などいかがでしょう」

 ギルド長がなぜかこちらをチラッと見てから、「よろしく頼む」と答えた。


「かしこまりました」

 侍従さんが部屋のドアを見た時、外から開いてメイドさんがワゴンを運び入れてきた。タイミングピッタリ、凄いね。

「では、しばらくお待ちくださいませ」

 紅茶と茶菓子のクッキーを用意してメイドさんが下がる。下がると言っても部屋の隅に控えているので俺たち三人だけというわけではない。


「先、いただきますよ」

 しばらく待っても誰も手を出さないので、先に飲ませてもらうことにした。

 いきなり連れてこられて、緊張で喉がカラカラだ。ここの領主がどんな人なのかの情報が全くない。

 ハイセイの街の領主、トリニーア様のように気さくな方だといいんだけど…。


 ああ、いい香りだ。さすが、伯爵ともなると使っている茶葉もいいものだな。

 比べてしまって悪いけど、男爵様のところより香りがいい。

 仄かにスズランに似た香りがして、ウバっぽい。こっちの世界じゃウバとは言わないだろうけど。

 街の露店でも食材店でも紅茶は見かけなかったから、この町にはないのかと思ってた。いや、貴族街に足を踏み入れてなかったから見かけなかっただけなんだろう。

 

 錬金術師さんの家にあった茶葉がなくなったら困るな、と思っていた矢先にハイセイで緑茶を仕入れることが出来たから、紅茶を飲む頻度が減っているんだよな。緑茶とコーヒーがあればいいか、って感じで。


 クッキーは…残念なことに硬いよ。もうちょっとほろりと砕ける感じの方が好みなんだよね。お砂糖が使ってあるから甘くて、味は悪くないんだけどね。

 遠慮なく紅茶とクッキーをいただいていると、こちらへ向かってくる光点に気がついた。…来たか。


 カップを置き、姿勢を正す。セルビナさんとギルド長の方を見ると、2人も気配を捉えたらしい。さすがだ。

 3人でドアの方へ視線を向けると、ノックに続いてドアが開いた。さっと立って、屋敷の主を出迎える。


「やあ、お待たせして申し訳ない」

 気さくな感じで部屋へ入ってきたのはまだ30代半ばごろの精悍な男性だった。身長は180ほどあるが、がっしり体形ではなくスリムに感じる。かと言って細いとかひょろいという印象はなく、武の方にも秀でていそうな感じだ。印象としては剣よりも槍をふるう人っぽい。


「コ―ンソルド・カノン・セルセティだ。セルセラの街の領主をしている」

 ギルド長とは面識があるらしく、彼の自己紹介は俺とセルビナさんに向けたもののような気がした。

「お初にお目にかかります。ギルド職員、セルビナです」

「初めまして ヒロヤと申します。こうして直にお声掛けいただく機会を頂戴いたしましたこと、光栄に存じます」

 気安く交わす、とんとんの挨拶は出来ないので軽く腕を曲げて胸につけ、頭を軽く下げておく。

 世界基本知識さんに教えてもらったのだ。思いがけず男爵様と接する機会があったのに、作法が分からなかったから困ったから…。


 片手を胸の前へもってきて曲げるのは、利き手に武器を持っていないことを示すためだそうで複数の国に共通する上流の挨拶らしい。

 ついで…というように国王の前で拝謁する時の作法まで教えられたが、そんなものは必要ないよと練習しなかった。


「今日は急な呼び出しにもかかわらず、よく来てくれた。感謝する」

「………」

「どうぞ、座ってくれ」

 領主様から先に座ったのを確認して、ギルド長が座った。セルビナさんが続き、最後に俺が座った。

 …セルビナさん、少し緊張してる? 領主様がいい男だからかな。


「早速だが、用件を伝えよう」

 伯爵様の話をざっくりまとめると…


 その1、貴重な『虹の花』を贈り届けてしてくれてありがとう。

 3つもいただいたので、2つを正王妃殿下と第2王妃殿下へ献上させてもらうことにした。


 その2、貴重な『虹の花』を長持ちさせる育て方を知っていたらぜひ教えて欲しい。王都へ運ぶ前に枯れてしまったのでは家門に傷がつくのだ。


 その3、貴重な『虹の花』を臨時オークションに出品してくれることに感謝する。


 これについてははっきり言わなかったけど、売り上げの一部がこの街に税金として入ることを喜んでいるのだと思う。


 以上、領主様の話はそんなところだった。

 セルビナさんに向かって、「我が家の庭師を紹介するので、ぜひ彼にお世話のコツを伝授して欲しい」と頼んでいた。

 俺に対しては「幻の花とも言われている貴重な花をよくぞ見つけて持ち帰ってくれた。今後も何か貴重なものを採取した暁には、高値で買い取らせていただくので声を掛けて欲しい」ということだった。

 ギルド長を前にして言うのもなんだけど、直接取引も構わないような勢いだった。


 メイドさんに「セルビナ様」と声を掛けられてセルビナさんが連れていかれた。庭師さんのところでお世話のコツとやらを教える、ということだろう。

 縋るような目でセルビナさんに見られたが、俺はご指名ではない。勝手にしゃしゃり出るわけにはいかないから、黙って見送っておいた。


「ヒロヤ、だったね。報酬は別として、何か欲しいものはあるかな?」

 こういうのが、困るよね。ありませんと断るのが正解なのか、本気にして何か貰うのが正解なのか分からないんだよ。相手によって正解が違うんだと思うんだ。


「まだこの街に来てから日は浅いのですが、ギルドではとても良くして頂いていますし、この街も住みよく困っていることがないので、思いつきません。申し訳ありません」

 ギルドに良くしてもらっていると言ったからか、ギルド長が胸を張った。この街は住みよい街だと言ったことで領主様も嬉しそうに微笑んだ。


 別にヨイショする意味ではなく、本当に住みよい街だと思う。ギルドも仮登録の幼い子の支援からしっかりとしていてくれているから、ストリートチルドレンっぽい子供の姿を見ることはほとんどない。

 路上生活者が全くないとは言い切れないだろうが、この大きな街の規模から考えるとかなり治安がいいと思う。


「セルセラに来て2カ月ほどだったかな」

「はい、そうです」

「それでもう、青銅1に上がるだなんて。かなり優秀だね」

「…いえ、偶然に恵まれました。今回の花も自分ではこれほど貴重なものとは知らず…驚いております」

「幸運を運ぶものは欲のない者の前に現れるのかもしれない」


 ようやく、緊張せずに話せるようになってきた感じがする。商人スキルを無意識に入れていたけど、それがなくても話せそうだ。

 トリニーア様より若いということも、緊張をほぐす要因になってくれた。


「コ―ンソルド様」

 侍従の声に「もうそんな時間か」と呟いた伯爵がギルド長に顔を向けた。

「改めて、今回のことは助かったゼラスギルド長。今後も貴重なものが手に入れば遠慮なく申し出て欲しい。追って詳しい話は担当に任せてある。よろしく頼む」

「…はい。今後ともよろしくお願いします」


 伯爵が部屋から出た後、ギルド長がソファに寄り掛かった。まだ気を抜くのは早くないか? メイドさんが見ているのは気にならないのか。

「あー疲れた。お前、慣れてるのか?」

「…いいえ」

 それとなくメイドさんへ視線をやると、彼女たちの存在をようやく思い出したらしいギルド長は姿勢を直した。

 そして下手な誤魔化しで、すっかり温くなった紅茶を飲み干した。


「おかわりはいかがですか? ギルド長」

 すかさず声が掛かる。それまで置き物のように静かにしていたのに、ふいに動くんだよな。

「いや…いい。大丈夫だ」

「ヒロヤ様はいかがですか?」

「ありがとうございます。ぜひいただきます」


 おかわりしたってお金は取られない。なら、飲んだふりをしてこっそりアイテムボックスに収納してもらっておこう。マニムニ食堂で味噌汁のお替りを持ち帰るテクニックを磨いている俺には、紅茶のお持ち帰りは難しいことではない。


 ああ、いい香り。2杯目は時間が経過したことで少し香りが変わっていた。1杯目ほどの喜びはないが、それでもここでしか味わえない紅茶だ。ゆっくり楽しませてもらおう。

「お気に召していただけたようですが、よろしければ少しお持ち帰りになられますか?」

 にこっと微笑みながら囁いてくれたメイドさんに感謝しつつ、笑顔で返す。

「よろしいでしょうか? ぜひともお願いしたいです!」

 ギルド長は興味がないのか、ちらっともこちらを見なかった。


 接待役のメイドさんから上役のメイドさんに話が通り、上役さんぽいメイドさんみずから籠に入れて持ってきてくれたよ。しかも、客への手土産用に用意されているのか可愛いサイズの缶入りを3つも。

「どうぞ、こちらもよろしければ飲み比べてみてください」

「ありがとうございます!」

 わーい、高級品の紅茶の葉を3種類ゲットだ。

 上機嫌で紅茶缶を受け取り、マジックポーチにナイナイしたところでセルビナさんが戻ってきた。お土産にもらったのか、小さな花束を手にして、にこにこのご帰還だった。


「んじゃ、帰るか」

 ギルド長の号令で席を立ち、メイドさんズのお見送りで屋敷を後にした。

 伯爵夫人にも、彼らの子供にも無事会わずに帰って来られた。変なイベントが発生しなくて良かったよ。


「はぁあっ」

 箱馬車が3人だけを乗せて走り出したところでギルド長とセルビナさんが大きなため息をついた。俺もこっそり溜息をついた。

「ギルド長、2度目はないですよね」

「ないだろ。…後は知らん。ハーシュの奴に丸投げしてやろう」

 ははは。副ギルド長がオークションの担当者になっているし逃げられないだろうね。

 

「予定通り明日はお休みいただいてもいいですか?」

 セルビナさんも明日はお休みか。

「自分の首を賭けて、花を枯らさねぇっていうなら好きにしな」

 セルビナさんはしばらく考えてから「オークションが終わってからまとまったお休みをいただきます」と宣言した。

「そうしろ。オークションが無事終わって落札者に花を引き渡すまで、俺も気が休まる気はしねぇ」

 あららら。申し訳ない。この騒動の発端であるだけに、他人事だと笑えない。


「ギルド長。…これ、職員のみなさんで」

 昨日受け取ったクマ肉の塊をひとつ取り出せば、怪訝そうに見てから気がついたらしい。

「おい、コレ。お前が上がるきっかけのレアか」

 ランクを上げてくれたお礼代わりではないですよ。黄銅のままでもよかったので。

「昨日、少し食べましたが美味しかったです」


「ふっふふ…。お前みたいなガキに労われるほど落ちぶれちゃいねぇ、と若いころなら啖呵のひとつも切っただろうが…ありがたく頂くぜ。トップの席に座っちゃいるが、なかなか上物の肉を口にする機会が減ってしまってな。現役の頃みてえにはいかないんだよ」

「ギルド長、独り占めはダメですからね。みなさんで、ですから」

「なぁに、セルビナとこの坊主が黙ってたら分からねぇじゃないか」

「あっ、ズルい。独り占めする気ですね」

 ギルド長もマジックポーチ持ちだ。肉の塊はポーチの中に消えていた。


「ギルド長ー」

「はっはっは…」

「ギルド長ー!」

「はっはっは……」

 なにこれ、即席の漫才か?


「ギルド長ーっ!」

 このままでは手に入らないと判断したのか、セルビナさんの視線がこちらを捉えた。あーハイハイ、分かりました。

「仕方ないですね。では、こちらをみなさんで…」

 もうひとつの塊肉を取り出し、セルビナさんに手渡す。


 にっこり笑って、セルビナさんに渡った肉は消えた。

「おい、お利口の返事はどうした」

「…何のことです?」

「かー。こいつも独り占め仲間だな」

 え?


 もしかして、セルビナさんも…分ける気がない?

 見ていると、えへへという感じの笑顔を浮かべるではないか。ダメな大人が2人、どうするんだよ。

「……ここだけの話ということにしますか」

 俺がそう言うと「それがいい」「そうしましょう」との打てば響くような返事。


「まあ、確かに…美味しかったですからねぇ」

 昨日食べた肉の味を思い出していると、二人の喉がゴクリと鳴った。


 箱馬車の中の沈黙が気にならなかったのは、3人が3人とも極上の肉のことを考えていたからに違いない。


 …今夜はクマ肉の煮込みだな。うん。


  *


 ギルドの裏口に戻ってきたのは昼前だった。元の予定通り、今日は仕事はしない。

 2人とはギルドの裏口で別れ、ひとりだけ部屋に戻ってきた。


 気分はすっかりクマ肉。かと言って、美味しい煮込みが短時間で出来るはずもないから食べるのは我慢するしかない。代わりにガツンとニクニクしい焼肉で我慢だ。お腹を満たした後、シェルター内の食堂のキッチンで大量の煮込み料理を仕込む。

 錬金術師さんのところから持ってきた燻製機も使って、クマ肉の燻製も少しセットしてみた。干し肉はボアで充分美味しいから、やっぱりクマは煮込みだな。それとしゃぶしゃぶでも食べてみたいが、肉を薄切りにするのがめんどくさい。塊肉を薄切りにする簡単な道具を作ろうかな。

 そうだよ、ささっと作ってしまえばよかったんだよ。今後も使うんだし、今作らなくてどうする。


 煮込み中の鍋ふたつをそのままにして、配膳台の片隅で薄切りカッター機に取り掛かる。設計図は頭の中だ。構造はシンブルだから、作りながら整えていく。


 カットする厚みを変えられるようにするかな。厚さは1ミリ、2ミリ、3ミリの3タイプあればいいかな。塊肉を固定するのはスライドタイプのこれで、挟むようにして…うん、うん。刃は薄すぎたら肉に負けそうだし、どのぐらいが最適だろう。脂身があるからどうしても汚れるな。切れ味も悪くなるが…ここは洗浄で気になったときに綺麗にするか。


 よしよし、出来た。早速試し切りしてみよう。

 うーん、力まかせに切るという感じで面白くない。もうちょっとスムーズに切れないものかな。刃の角度を変えてみるか。

 作っては直し、直しては作る。試行錯誤すること30分余り、とうとう薄切り肉カッターが完成した。

「いいね、いいね」

 どんどんお肉をスライスしていく。真空パックはないが、ハキロの葉で100グラムごとに包んでアイテムボックスに収納しておけば、いつでも切りたて新鮮な状態で一人前ずつ利用できる。


「肉が出来たら、後はタレだな。ポン酢代わりは柑橘類と酢で出来るがゴマダレはない。好きなんだけどな―ゴマダレ」

 そもそも、ゴマをまだ発見してない。どこかにある気はするけど…ないものは仕方がない。


「そろそろ、煮込みが完成かな」

 味見をして、味を馴染ませるためにそのまま放置。明日にでももう一度温め直してから小分けにして、スープ皿単位で収納しておけば、好きな時にアツアツ出来立てが食べられる。


「夕飯までもう少し時間があるな」

 大量の料理を作って、一息ついて…時間を確認すれば、まだこんな時間。なにをするかな…と考えて今日はまだ虹の花の水やりをしていなかったことを思い出した。

「一日で枯れていたら困るな」

 こちらの花が枯れてしまったということは、ギルドに渡した花も枯れるということ。


「ああ、良かった。元気だ」

 シェルター内に移動して花畑に行くと、元気な花を確認することが出来た。

 森で移植してから4つの区画に分け、育成実験を続けているがどの区画も元気なままだ。

 記録を残しておこうと専用のノートも用意した。ノートとしては売っていないため、紙を紐綴じにした手作りのノートだ。


「今日の日付を書いて、まずは普通の井戸水」

 地面が乾かないようにたっぷりと…。如雨露も手作りした。細工と錬金術で金属加工もお手の物だ。鋳型を作って量産…はしないだろう。


「あれ? 庶民の庭にも畑はあるよな。水やりは何でしているんだ? 庶民の庭は小さいけど、貴族の庭はデカいし…って、そうか。水魔法の使える庭師を雇っていれば解決か。やっぱり、如雨露を商品化しても需要はないな」


 次は水魔法で水やり。うん、これが一番楽だよな。

 こっちは浄化水で…最後に聖水。水やりを先にした後、じっくりと観察。アンド記録つけ。


「気のせいかもしれないけど、聖水が一番元気そう」

 花弁の透き通る色が、見る角度を変えなくても虹色にキラキラ輝いているようだ。

「次に元気そうなのが水魔法の水か」

 次が浄水で最後が井戸水。だが、この3つは気のせいかもしれない程度の違いだ。


「冒険者ギルドでは月の光に当てたからいい匂いがしたんだよな」

 そう。シェルター内はいつも明るい光に包まれている。太陽の光でもないし、月の光もない…この明るさは蛍光灯の明かりに似ている。

「こっそり育てているわけだから、匂いがしないのはいいことか」

 一度でもあの香りを嗅いだことのある者には分かる。毎日虹の花を世話していて、服に花の移り香をさせていたら…隠し持っていることがすぐにバレてしまう。


 まさか、オークションに出品するほどの花だったとは。

 そして…王家にも献上されたという。

「森の奥で採ってきたものは表に出さない」

 二度と失敗はしない。いい教訓になった…と反省の材料にするより他はない。


「もう、しでかした後だものなー。今更なかったことにはならないよ」

 俺は大きなため息をつき、気分転換に本日の召喚を行うことにした。



 山賊の拠点から、状態のいい武器を50本【召】!


 海賊の隠れ家から、状態のいい武器を50本【召】!


 町を拠点に泥棒している盗賊たちから、状態のいい武器を50本【召】!


「えーと、あとは…」


 砂漠で泥棒している盗賊たちから、状態のいい武器を50本【召】!


「お、おおー。見たことがない形の武器が来た」

 思い付きを試してみたところ、砂漠にも盗賊がいると分かった。


「これ、なんだ? 曲がった剣とか、鎖鎌っぽいのもある」

 一本、宝石が象嵌されたきらびやかな曲剣もあった。

「高そー。これは武器庫の奥にしまっておこう」

 使う気もないし、売ると足がつきそうなものは隠しておく。いつかまとめて処分、出来たらいいなーと思っているがどうなることやら。


 とりあえず、悪いことをしている人が困ればいい。困って悪いことはもうやめたと改心してくれたらいうことはないのだが…悪はなかなか滅びないだろうなぁ。

 時々、思い出したように武器を取り上げる召喚をしているが、毎回現れる。もう取り上げる武器がなくなったという状態にならない。

「質の悪い鉄は溶かして、包丁やスコップなど使えるものに作り替えよう。うん、今日はもうちょっと大きなシャベルを作ってみよう」


 スコップも包丁も鋳型を作ってあるから作るのは早い。シャベルはイチから作って…型取りをしよう。森で実際に使ってみて、使い勝手を試してから鋳型を作ろう。


「うん、わくわくして来た。新しいものを作るのって楽しいな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。