73話
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山賊の人達から、隠している武器を100コもらいます! 【召!】
本日の召喚1回目。100コと指定して取り寄せてみると、ごちゃっと山盛りの武器が現れた。
「クリーン!」
汚いのでオールクリーンですべてピカピカに変える。僅かな刃こぼれも直してしまうこのチート。クリーンが凄いのか、鍛冶スキルが勝手に発動しているのか自分でも良く分かっていない。
「えーと、まずは3つに分けるか」
分け方は剣とそれ以外にまず分ける。そしたら、剣の中からすぐに材料にしてしまう安物とそれ以外に分ける。
「今回は槍と弓もあるんだな」
不思議とこれまでは剣と斧だけだった。剣は長剣と短剣、片刃と両刃。投げナイフと刺突ナイフという違いはあったけど、剣もナイフも剣に分類している。斧も細かく言えば大きさや厚みが違うが斧は斧とひとまとめにしている。
アブラの木を倒した斧は山賊から奪った武器だった。斧はスキルにせずただ力任せに使っただけだったけど、最近召喚の回数を余らせ気味だからスキルにしておいてもいいかも。槍と弓はもちろんスキルに変えておいた方がいいだろう。
槍を使いこなすためのスキルに【換】!
槍が消えた。
弓を使いこなすためのスキルに【換】!
弓も消えた。
ステータスカードで確認すれば、無事に槍術3と弓術3を獲得していた。
「ついやってしまったけど…手を広げ過ぎた気もするから、槍と弓のスキルはしばらく持っていることを忘れよう」
すぐに使い道のない剣やその他の武器は、鍛冶部屋の倉庫に片づけておこう。
「…あ、そうだ」
ふと気がついた。材料にしようと思っていた安物のナイフなら失敗しても惜しくないから、付与の練習に使える。
「何を付与しようかなー」
付与ならどこでも出来る。
移動しようと腰を上げたが、その場に座り直す。
剣は使っていれば切れが悪くなってくるよな。油が付着して刃の鋭さがなくなってしまう場合と、磨耗したり欠けたりする場合があるはず。
皮脂汚れはクリーンでいいか。ぺったん。
「鑑定っ…。うん、汚れ防止が付与できてる」
じゃあ、次はこの剣に…回復! ぺったん。
「鑑定…。あれ? 付与したはずの回復がないな。うーむ…失敗か」
刃こぼれは回復では治らないのか。あ、修復と回復は別物か。なるほど。
「やり直して…そうだな。鍛冶の研ぎは付与できないかな」
………ダメ、か。付与スキルが発動する気配がない。研ぎはスキルに含まれる技術で、実際に刃物に対して手を加える必要があるみたいだ。
剣の重みは振り下ろしの威力と関係してくる気がするから、重力軽減を付与しても仕方ないだろうし…
試しに、と魔法を付与した魔法剣というものにもチャレンジしてみたが全敗だった。
「んー。本を読んで勉強してみるか」
鍛冶部屋には鍛冶に関する技を集めた、付与と錬金術に関する本があった。
「………………」
『魔法陣を介し、付与スキルを使って様々な効果を加えることが出来るのはレベル以外にセンスも必要』って書いてある。…俺にはセンスが足りないということか。
「……」
いや、経験積み、腕を磨けば光るものが出てくるはず。そう、まだ練習を始めたばかりなんだ。出来ないことがあっても当たり前だ。…と、思いたい。
「魔法陣か…」
これもスキルに出来るんだろうか。
それとも、魔法陣の書き方を勉強しないから付与できることとできないことがあるんだろうか。それとも、付与できないものをやろうとしているだけなのだろうか。
今日はスキルを2つも増やしたばかりだから、これ以上はやめておこう。魔法陣の勉強はまた今度にしよう。
地下の鍛冶部屋から出て、リビングへ戻ると雨が止んでいた。錬金術師の家に戻ってきて2日目だが、明日も雨が降るようなら雨の中をカケルで飛ばなくてはならない。
どうするかと外へ出てみると、視界に映る空は薄い雲に覆われている。
「この世界に天気予報はないからなー」
まだ嵐は経験したことがないが、この世界にもあるのではないだろうか。嵐も台風も、長雨も。
世界基本知識さん。この辺りの天気。毎日の変化でなくていいから、長雨が降る時期があるとか、強い風が吹く時期があるとか…分かる?
※申し訳ありません。
あ、データーはないのか。
※ですが、8月頃にこの地方に…記憶と照合した結果…台風と呼ばれる荒れた気象状況の記録があります。
ああ、やっぱり台風はあるのか。
世界基本知識さんは俺の記憶を読み取って情報を検索したり結果を知らせたり…つまり情報の出し入れができるということなんだな。でないと台風なんて言葉出てこないよね。
俺のなかにいる…俺自身のスキルだからそういうことも出来て当然か。
不思議な関係だが、スキルにAI形式でと願い、叶ったことからすでに始まっていたのかも。記憶を読みとったり、知識として文字や映像で知らせてくれたり、とそういうことが。とても不思議だけど、助かってる。
「さて、どうするか…」
雨があがっている間に、予定を切り上げて町に戻るか。
空を見上げ、森に吹く風を感じ。空気の匂いを嗅いで、頬に触れる気温に身を任せる。
「もう少しゆっくりしたかったけど…街に帰るか。帰れなくなった方がめんどくさいことになる」
そうとなったら…必要ないものは残して、持っていくものをアイテムボックスに入れてこよう。
俺が錬金術師さんの家を出て、3時間の道のりを2時間飛んだところで再び降り始めた雨に掴まった。
「まいったな。明日まで大人しくしていたほうが良かったか」
今はまだ飛んで飛べないことはないが、視界が悪い。間の悪いことに雷まで鳴っている土砂降りがカーテンのようになって迫ってきている。こんなに急に天気が崩れるとは計算違いだ。
シェルターで過ごしてもいいが、この状況でステルステントならどんな状況になるかを体験してみようとあえてステルステントを出してみた。
「ふー、びしょびしょだ」
カケルからフローティングボードに乗り換える間にびしょ濡れになった。濡れたまま森に降り、木と木の間隔が広くなったところを見つけてステルステントを出して飛び込んだのが今。
「ドライ!」
体表面の水分を飛ばすために編み出した、風と水魔法の合わせ技だ。といえばカッコいいが風魔法のホットウインドと水魔法のウォーターサクション、ミストウオールの3つを素早く展開することで1つの魔法を使ったように見える…ただそれだけだ。
ただそれだけと言いながらも3つを1つのように纏めるのが腕の見せ所。というか、イメージのなせる業。異世界物のノベルズでよく『魔法はイメージ』というフレーズが繰り返し使ってあったが、その通りだと思う。やってみたら出来たのだ。魔法を習得し、レベルが解放されたと同時に分かった使い方には『ドライ』はなかった。つまり、複合技は本人のイメージ次第。努力やアイデア次第なのだと思う。
「外は激しい雨だが、中は静かだな」
暴風雨なんてないかのように、いつもと変わらない。
ステルスモードに加えて、結界が外界の雨風を遮断しているのだろう。雨がしみ込んできて地面が濡れるということもないし、風でテントが揺れるということもない。
「錬金術師さんの家も目標だけど、このテントも作れるようになりたいな」
次のレベル4まであと少し。多分だけど、次のレベルアップでいくつか出来なかったことができるようになる。ハズだ。
洗浄で身体をさっぱりした後、寝ることにした。明日は早めに起きて採集しながら街を目指そう。何度も上空を通っていたが、この辺りまで歩いてきたことはないから新しい発見があるかもしれない。
*
いつ暴風雨がおさまったのか分からないが、起きてテントの外へ出てみると見たことのない光景があった。木の小枝があちらこちらに散乱し、近くの木の枝がへし折られてぶら下がっているのもある。
「こんなになっても気がつかなかったんだから、このテントは優秀だなぁ」
すでに朝食も身支度も済んでいる。テントを撤収して地図で方角を確認すると歩き出した。
「水溜まりがあちこちにある」
ぬかるんでいる場所もあり、いつもより歩きにくい。
せっかくなので落ちている枝を回収しながら歩く。後で水分を抜けばいい焚き付けになる。
「ん?」
マップさんが左手の方にレア素材があると色付きの光で教えてくれた。
「へー。綺麗な花だ」
行ってみると、スミレのような花が2メートル四方に密集して生えている場所に出た。
え? これ食べられるのか。鑑定さんが教えてくれた。しかもこれ、月の光を当てると甘い匂いを漂わせる、って…食べてみたい。
エスラお嬢様に教えた、スミレの砂糖漬けの花入り飴…に使ったスミレに大きさは似ているが、姿形や色合いが全く違う。
ああ、スミレではなくカタクリの花に姿形は似ているのか。でも、色合いが違うな。ガラスのように花弁が透き通っている。観賞用としても喜ばれそうだな。
長持ちさせるためには土ごと瓶に入れて持ち帰った方が良さそうだ。ん? 土ごとだと生きた状態になるよな。もしかしてアイテムボックスに入らないのか?
嫌な予感がして、土つきのまま袋に入れて先に試してみた。
「…やっぱり、ダメか」
時間停止になっている優れものだが、生きているものは入れられないんだよな。時間を止める便利な魔法なんてないし…弱ったな。こんなにいっぱいあるのに手持ちだと少ししか持ち帰れないぞ。
とりあえず食用に、花だけを切り取ったものをアイテムボックスに収納して持ち帰ろう。月の光を当てないと甘い香りはしないらしいけどゼリーに入れたら綺麗だろうな。そう思いながらせっせと摘み取る。
「根っこごとのも持ち帰りたいな。土つきを…植木鉢代わりに瓶に詰めて…重量軽減で軽くすれば、リュックいっぱい持ち帰れるかな」
あ、これ専用の瓶を作る必要があるな。手持ちの瓶だと高さが足りなかったり、株ごと入れるのに口の口径が狭かったりして入れにくい。
たっぷり珪砂を採集したはずだが、もう3分の1も減ってしまった。またどこかへ採りに行かなきゃ。
「そういや、セルセラの近くにクリナードって大きな川があったな」
初心者向けの森や平原とは逆方向だから、そちら方面はまだ行っていなかった。
クリナード大河は海まで続いていて、河口にある港町リノアドは貿易港として栄えている。セルセラの街の鍛冶師たちが作った金属製品や少し離れた銀山から採掘した銀などもこの川近くに作られた町から輸出されているらしい。
セルセラの街がこの河の近くに拓かれて発展しなかったのは、クリナード大河がたびたび氾濫するかららしい。…以上、世界基本知識さんに教えてもらいました。
「とりあえず、瓶は12個もあればいいか」
試しに土ごと採取した花をリュックに入れてみる。下4つの上に重ねて3つ、その上にぎりぎり2つの9つしか瓶が入らないな。
重力軽減させないで背負ってみたら、結構重い。といっても、持ち運べない重さではない。ここから町までまだかなりの距離があるから歩き初めより重く感じるだろうけど…無理して持って帰ってきたと、説明できるギリギリ。
「あ、コレ畑に根付かないかな」
シェルター内にまだ何も植えていない畑がある。
「…あれ? そういや、シェルター内なら持っていける? ん? …そうだよ!」
そうと分かったら、群生地の半分くらいもらって帰っても構わないよね。
平たい木の箱を作り、土ごとシェルター内へ運び入れる。ずっと放置されていた荒れ放題の畑の土地を念のためクリーンしてから、聖魔法の祝福を与えてみる。
この祝福は良く分からないのだが、活性となっているから生き物を生き生きさせる力を与えるのだと思う。レベル1で使えるようになる技だから、少し元気になる? という感じかも。植物に対して効果があるかどうか分からないけど…生き物というくくりでは同じだからやって損はない。と、思いたい。
根付きの状態の花を等間隔になるように移植して、水魔法で根元に優しく水やりしておく。
「よし」
群生地の半分ほど、極力間引きしたような状態になるように採取したから、1年ほど経てば元のように戻るだろう。念のためマップ上のここに、目印のピンを立てておこう。
花弁が硝子のように透き通っているから、カラフルなゼリーに閉じ込めたらますます涼し気になるな。楽しみだなぁ、何味のゼリーを作ろうかな。砂糖漬けも出来たらいいな。キラキラのシートグミみたいになるかも。
ガラス瓶を入れたリュックは背負わずにシェルターに預けておく。うん、良い裏技に気がついた。アイテムボックスに入らなくても、植物ならシェルターに入れられる。ゆくゆくは群生地のように増やして、定期的に収穫できる食材のひとつにしたい。
「あれ…何か来たな」
シェルターを出てしばらくした時、マップさんが獣の存在を教えてくれた。正体が分からないということは、まだ遭遇したことがないものだ。
木の上に避難してステルスモードで身を隠し、正体を確認することにした。800メートル先にいたそれは偶然通りかかっただけらしく、そのまま行き過ぎていく。
「あれがオークか」
ボアの巨体も迫力あるけど、オークの方が異世界感たっぷりだ。人間っぽくないのが救いかな。ワーウルフもまだ遭遇したことがないけど、あまり出会いたくないかも。オークと違ってワーウルフは食用ではない、とも聞いている。ただ毛皮は丈夫で防寒性にも優れているらしい。
ステルスモードのままフローティングボードを出し、森の上まで高度を上げる。このまま飛べば1時間とせずに街へ戻れる。
「…いや、ここからどのくらいかかるのか。一度歩いてみるか?」
この花をセルビナさんのお土産に渡すなら、森の奥へ歩いてどのぐらいと答えなければおかしい。オークのことも気になるし、報告しておいた方がいいよな。
元の場所へ戻り、鳥以外は全て遭遇を避けて進む。これまで来なかった森の奥だからか、薬草の種類も量も多くてお宝獲り放題のフィバー状態だ。
「やばい。こんなことしていたら日が暮れる」
シェルターの畑に移植できるという禁断の蜜を知ってしまった俺は、薬草も同じように根付きのまま移植しよう、と採集と移植を繰り返してしまった。
「ここまで歩いてきた時間から作業していた時間をざっくり引いて計算するより、進んだ距離から平地移動の4倍を掛けた方が正確かも…?」
大まかに森の奥に進んで8時間と計算した。街から森の入り口までも足したら、森の中で野営を最低でも1泊しないとダメだ。行って採集して帰って…ホントは2泊した方が良さそうな採取ポイントだな。
初めからあの場所が分かっていたなら一直線にいけばいい。だけど、周囲を探索しながら辿り着いたとしたら、2泊3日でも少し厳しい気がした。
セルビナさんに森の中で2泊していたと知られたら…またランクアップしろって言われそうだな。
「仕方ない。クマか鹿ぐらい狩って帰るか」
持ち帰ったのが花や草だけだと知ったら、目を吊り上げた姿が容易に想像できる。
「まだクマは食べたことがないから、クマにしようかな」
報酬が減ってもいいのだし、肉を半分ほど引き取りたいと言ってみよう。
熊肉だとどんな料理がいいんだろう。煮込みかな。焼肉を試してもいいし。お肉のことだけ考えていたら足取りが軽くなった。
だが、その1時間後にクマと対峙した俺の顔は引きつっていた。
「肉だけになって来いー!」
俺の叫びにグワァと吠えたクマはエサの分際で! と怒ったのかもしれない。
食うか食われるかの戦いを制したのは……いただきます、俺でした。




