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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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第45話

第2部スタートです。

(続きを待っていてくださった方がいらっしゃると、嬉しいのですが…)

 カケルでひとっ飛びしてセルセラの街まであと3キロというところで街道へ下りることにした。これ以上街に近づくと街道を行き交う人や荷馬車などが多くて、人目を避けて降りることが難しくなると判断したのだ。


 隠密状態を急に解除すれば、さっきまでいなかったはずのところに人が急に現れたと目撃される可能性が高い。そんな危険は冒せない。


 フードの端を引っ張り、ちゃんと被れていることを確認してから隠密を解除。足を踏み出した。


 この街道は大きな街同士を繋いでいるためしっかりとした石畳みで整備されている。さらに、この辺りは荷馬車が二台すれ違えるほど幅も広い。カディルナ伯爵の統治がうまくいっているからか、石畳の管理はしっかりされているみたいだ。


 今朝は6時頃に起きて朝食を食べてからのんびりすることなく出発した。今は10時前だから片道3時間半ほどで森の中の隠れ家から移動できることになる。毎日となると大変だが、これなら隠れ家と街との往復も苦にならない距離だ。


 「…………」

 街道を歩き始めてしばらくして気が付いた。

 俺の歩く速さ、もしかしたら遅い?


 地図スキルで確認していた後ろを歩いていた人々との距離が少しずつ接近している。街に到着する前に追いつかれそうだ。


 錬金術師さんの家にずっと閉じこもっていたわけではなく、森の中を歩いていたとはいえ採取しながらの移動だ。街道を歩き続けているのとは運動量が違うかもしれない。


 ほんの少し早足にしてみたが、結局は追いつかれた。そしてすぐに追い抜かれた。

 通り過ぎるとき、お互いにちらりと相手を確認した。向こうは4人組の冒険者。こちらはたったひとりの旅人だった。


 …なるほど、冒険者の人達だったのか。みんな体格がいい人ばかりだったし、背も高かった。普段から歩き回っているのだろうし…うん、足の長さが違うことも俺の足が遅い言い訳に加えさせてもらおう。


 今の俺の重量軽減スキルはオフになっている。森歩きをする時なら木の枝に飛び乗ったり、倒木を乗り越えたりと使い勝手のいいスキルだが、平地の街道を歩くときぐらいは筋肉を鍛える意味でも重力負荷をかけた方がいい気がする。


 また後ろから冒険者がやってきた。マジックバッグを持たない冒険者もいて、獲物を背負子に載せている人もいれば狩った鳥を腰から下げた猟師のような見ための冒険者もいた。

 そう、気がつけば周りは冒険者だらけだった。ハイセイの街ではこんなに冒険者の人を多く見なかった。


 それとなく冒険者たちの様子を見ながら歩いていると、セルセラの街が見えてきた。この街はこれまでで一番高い石造りの壁に囲まれていた。門番の数も倍以上だし、街の中から出てくる人や荷馬車も多い。往来している人の声や荷馬車の音など、すでににぎやかだ。


 ここの門番も全身甲冑姿ではなく、革の鎧に槍、腰には剣を下げているという先ほど通り過ぎて行った冒険者グループたちと似たようなスタイルだったが、肩から掛けたマントにお揃いの模様が入っている。その模様が片目のダイアウルフだから妙にカッコいい。


 街の中から外へ出る人たちの対応をしている門番さんのその後姿をじっと見ていたら、こほんという咳払いが聞こえた。あっと気が付いた時には俺の番になっていた。

「すみません。皆さんのマント姿がカッコ良くて見惚れていました」

 どうやら俺の視線の理由に気が付いていたらしい門番さんは嫌そうな顔をするわけでもなく、努めて無表情をとりつくろっているように思えた。少年がキラキラした目で同僚を見ていたら、悪い気はしないはずだよな。


「ギルド証は?」

「ありません」

 村から出てきて旅をしている。そう言ったとしても、短期滞在の観光や買い物目当てで立ち寄っただけのパターンもあるしうるさく身元確認されない気がする。


「そう。向こうで話を聞くから移動して」

 門番とのこうしたやり取りも三度目だ。慌てることなく手招きする男のもとへ行く。

「あ、フードは降ろすように」

「はい」

 素直に言われたとおりにする。今回はマロン色の茶髪、水色の瞳に偽装している。ほくろの位置も変え、左の耳たぶと右の首筋にした。耳たぶのほくろは少し大きめにしたからピアスのようにも見えるから印象的だろう。

 名前を聞かれなかったが、問われたらこの街では『ヒロヤ』と答えることにしている。


 列から離れると俺の後ろに並んでいた冒険者たちは首から下げていたギルドカードを見せて、さっさと街の中に入って行った。


「セルセラに来た目的は?」

 同僚らしきこの門番さんの方が愛想はない。ただし、こちらの男は声が低く渋い。年齢も上っぽい。


「この街で冒険者登録したくて来ました」

 自分でも何かを作ってみたいという思いから鍛冶職人たちの方に強い興味がある。だから弟子入りしに来たと言うかどうかで迷ったが、いきなり伝手もなく弟子入りさせてくれるところはないと気が付いた。

それよりもこの街は冒険者が多い街だ。新規登録を希望して訪れる少年は珍しくないのではないかと考えた。


「そうか、魔法は使えるのか?」

 俺の全身を見て、剣士タイプではないと判断したな。剣術スキルは習得しているが、剣を使っていないのだからその判断は正しい。


「はい。これでも成人しています」

「成人していたのか!」

 やっぱり、まだ成人前だと思っていたな。そう思われている感じがした。


「規則で街への入場料が大銅貨2枚必要になる。ただし、冒険者ギルドに登録し宿泊先の宿を決めたらこの仮入場札を持って来い。門番にギルドカードを見せて仮入場札を返却すると、大銅貨2枚は返却されることになっている」


 街への入場料が大銅貨2枚というのはどこも共通しているんだな。


「分かりました。いま大銅貨2枚出します」

 マントのポケットから直接大銅貨2枚を出した。マントの下には30のウエストポーチを隠している。120のドクターズバッグは様子見で、まだ出さないことにした。


「仮入場札だ。失くすなよ」

「はい。ありがとうございます」

 受け取って、同じくマントのポケットへ。入れるフリしてマジックバッグに収納した。


「冒険者ギルドはこの街に三カ所ある。だが、新規登録するなら中央のギルドがいいだろう」

「冒険者ギルドが三カ所もあるのですか」

「セルセラの街は広いからな。ひとつしかないと業務に支障が出る。街の門もこことは別に三カ所あるから間違えないように気を付けるんだな」

「分かりました。登録は中央ギルドに行ってみます、ありがとうございます」


 本当にこの街にいる冒険者の数は多いんだな。だったら口実ではなく、ここで冒険者登録してみてもいいかも。やってみたいという興味もあるし、冒険者になってみるなら人が多い方が目立たずに紛れ込みやすい気がする。


 門を通過して入って少し驚いた。セルセラの街は本当に広かった。人も多い。といっても渋谷や銀座の混雑ぶりを知っている俺にとっては軽く驚いた、ぐらいのことだけど。


 しかし、どうしてもキョロキョロとしてしまうのは仕方がない。どう見ても外国なのだ。しかも時代が百年以上は昔。馬車が走り、荷車を引く人がいるというのは現代の日本では見なかった光景だ。

 歩いている人たちが着ている服、身に着けているカバンや頭巾なども俺にとっては楽しい観察対象だ。


警告!


 突然、地図スキルさんの警告が頭の中に響く。赤い光点が斜め後ろから急接近してきた。俺は警戒しつつすぐに振り返る。

 と、目つきの悪い男がちっと舌打ちして通り過ぎていった。


 ……もしかして、スリ? 狙われた? こんな子供なのに?


 って、自分で言うのもなんだけど…子供を狙うかよ。いい歳をしたおっさんが。心の中でぷりぷりしていたが、なんとなく分かった。俺は…自分で言うのもなんだが小奇麗なのだ。貴族のお忍びにでも間違われたのかもしれない。


 靴はピカピカで汚れていないし、マントも埃っぽくない。青の店で買ったマントだから紺色でオシャレだ。しまったな…門番も内心では何と思っていたのか分かったもんじゃない。

 せめてマントを変えたいところだが、着替えるのにいい場所がない。仕方がない、宿を決めて入るまでこのままにしよう。


 宿か…あまりにも安宿だと治安が悪そうだ。さっきみたいなスリも大きな街にはいるだろうし…かと言って、高級すぎる宿に行くのも変に目立ちそう。悩むなあ。


 歩きながら地図スキルで周囲を検索。あ…鍛冶職人たちが多いのは第3街の西側なんだ。どうするかな、見学だけでもできないかな。行ってみたいけど…素人にいきなり工房見学なんてさせてくれないだろうな。やっぱり、まずは宿決めかな。


 この街はバームクーヘンのように第1街、第2街、第3街と3層構造になっている。外に近い第1街は庶民的な食堂や店が並び、冒険者向けの集合住宅や安宿も多いみたい。

 第2街になると店も宿もグレードが少し上がっているのかな。中央通りには高級そうな店や宿が並んでいた。気になる雑貨店や魔道具の店もあったが、後で来ることにして印だけつけておく。

 第3街はこの街の中心。領主である伯爵の屋敷があり、主要な施設や教会などもあった。商業ギルドがあるのも第3街だ。


 第3街を守るように、内壁がぐるりと丸く囲われている。外壁ほどの頑強さはないが石壁の上には歩哨が物見を出来るような見張り台も所々造られている。

 ここには門番というより守衛兵と呼んだ方がいいような揃いの軽鎧を着た男たちが出入り口を守って立っている。全身一体の鎧ではないものの、胸当てや両手両足など部分的に鎧を身に着けて槍を手にしている。全員が腰から剣を下げていて、見るからに強そうな男たちだ。肩に掛けているマントには片目のダイアウルフ。図柄は同じだが、マントの色やその長さが門番たちとは違っていた。


 中央冒険者ギルドは第2街と第3街の境にあった。ちなみに、他ふたつは第3街の北と南にある。北支部と南支部とでも区別しているのかな。


 中央冒険者ギルドが第3街に近い第2街にあるということで、俺はこの辺で宿を探すことにした。

 わざと表通りから一本奥へ逸れた。でも冒険者ギルドに近い方角へ進路をとる。


 歩いていると3階建ての建物に宿屋を示すマークがついていた。【虹の架け橋】と書かれた宿名を見て、アッと思った。

 思い出したのだ。セルネージュ川でワニもどきを水魔法で追い払っていた冒険者3人組の男たち。彼らのチーム名が【虹色の虹】であったことを。


 あーすっきりした。思い出せそうで思い出せないのって、気になるよね。


 奇妙な縁がある…気がするこの宿で部屋があるかどうか聞いてみよう。


「いらっしゃいませ」

 子供が来た、と嫌そうな顔をされなかったぞ。ただそれだけで好感度が上がるのは、他の宿でそんな顔をされたことがあるからだ。


「あの…宿泊したいのですが、おいくらですか? 部屋は空いていますか?」

「おひとりですか?」

 だね。まずはこれ、確認されるよな。


「はい、ひとりです。ここは食事つきですか? なしですか?」

 カウンターにいて俺の対応をしてくれる女将さんらしき中年女性は、マイラさんとは違ってほっそりしていた。髪を纏めて高く結上げる髪型はそっくりだったが、髪の色が違う。ややくすんだ金髪に艶はなく、どことなく疲れた印象を受けた。


「ひとり部屋はないからふたり部屋を使ってもらうことになる。それでも良ければ空いているよ。宿泊だけなら大銅貨6枚。夕食を付けるならさらに大銅貨1枚。朝はやっていないよ」

 素泊まりだと6千円か。俺には痛くない出費だけど…さて、どうするか。


「トイレやシャワーはありますか?」

「あるよ。どっちも階ごとにひとつずつだ。シャワーは扉が開いていたら使える。閉まっていたら先客がいると思っておくれ」


 シャワーとトイレがあるのなら、6千円は仕方ない料金だと思う。それにふたり部屋をひとりで使うと言っていたし…【フクロウの止まり木】ぐらいの部屋の広さはある…と期待しよう。気に入らなければすぐに変えればいい。この街は大きい、宿はいくらでもある。


「では、とりあえず一泊お願いします」

 銀貨を1枚出す。女将さんはなぜかホッとしたように頬を緩めた。冷やかしではないかと思われていたのかな。


「食事はどうするね?」

「時間は何時からですか?」

「夕方6時からだが、終わるのは10時だ」

「分かりました。ではお願いします。多分7時頃にお邪魔します」

 受付カウンターからは食堂が見えていた。四角いテーブルに4つの椅子。それが5組。カウンター席は6席。カウンターの奥行きは狭いが、独り者にはカウンター席があるのはありがたい。


「お釣りと部屋の鍵だよ。外出する時は預けて行っておくれ」

「分かりました」

 お釣りの大銅貨を受け取り、マントのポケットに戻す。


「あとそれから…明日は何時に部屋を開ければいいですか?」

 チェックアウトの時間を確認すると、女将さんは不思議そうな顔をした。


「何時に部屋を開ける? 今日の11時過ぎに部屋に入るのだから、明日の11時前に出ていくのは当然だろう?」

 あーそういうシステムか。24時間利用OKね。分かりやすくていい。


「分かりました。それでは一泊一食お世話になります」

「ああ、ゆっくりしていっておくれ。何かあれば誰かがここにいると思うから、声を掛けておくれ」


 部屋までの案内はないらしい。部屋の鍵についた札に2の6と書いてあったから、2階へ上がる。2の6と書かれた部屋のドアを鍵で開け、中に入る。


「……んー」

 フクロウの止まり木より部屋は狭いかな。ウェルカムドリンクの水もないし、備え付けの家具もあまりいいものではないみたい。もしかしたらハズレかな。明日は別の宿を探してみるか?


 そう思ったが、ベッドもソファのクッションも座り心地は悪くない。床は当然として窓のガラスもちゃんと綺麗に掃除されているし、部屋に入ったときに嫌な匂いがすることもなかった。

 とりあえず、今夜の食事を試してみないと何とも言えないかな。


 時間的にお昼だ。歩き疲れているわけではないから外へ食べに行っても良かったが、手持ちの食事で手早く済ませてから出かけることにした。


毎日1話、12時更新予定です。よろしくお願いします。

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