第41話
大満足で買い物を終えた俺はハーレンダルさんに見送られ、舟で領主館へ戻った。戻るや否や待ち構えていたレモンさんに掴まり、会議室へ。これまでの進捗状況を説明してくれた。
「それで、明日にでも試験ツアーを行うことになったんだ。ぜひ君にも立ち会ってもらいたい」
「前回と違って、一般参加者も加わった大規模なものなんですね」
早い。早いよ、もう試験ツアーをやっちゃうのか。やれるのか。
「そうなんだ。君にアドバイスをもらった通り、門番にこの街を訪れる観光客の男女や年齢、人数、家族か恋人か友達かといった構成を聞き取って、3組の観光客を招いてみた」
参加者リストを確認して驚いた。
「参加者は…1組目は領主様ご家族ですか!」
夫人と2人の子供を加えた4人。もう真打登場ですか!
「ご婦人方が興味津々でね。トリトーナ様も下見の時からどれほど変わったのかお知りになりたいみたいなんだ」
「街の飾りつけの方は…もう?」
「間に合わせる。遅くとも明日の朝一に、終わらせる」
うわーギリギリか。水路の長さを考えたら、旗の制作が間に合うのが不思議なくらいだ。よく見れば、レモンさんの顔色が悪い。寝不足状態じゃないの?
「ご家族は領主様一行。そして中年夫婦のふたり旅を想定して、俺の両親に参加してもらうことにした」
公私混同だとは言えない。きちんと意見を聞き取りやすいと判断しての人選だろう。
「最後に若い友人同士の旅行客として、商業ギルドの3人娘に参加してもらうことになっている」
イシェラさんからは何も聞いていないが、たぶん…3人娘の中に入っていそうな気がする。
「明日と強行したのは、実は教会で結婚式を挙げるカップルがいるからなんだ」
「それはいいですね。華やかなツアーになります」
「後は当日の天気だが…この時期は特に荒れることも雨が降ることもないから大丈夫だろうと思っている」
天気か…人の力ではどうにもできないが、観光にとって大切なファクターだ。
「そういえば、この街へ来てから一度も雨が降っていませんね。いいお天気続きです」
「この辺はもともと雨が少ないところでね。川の恵みがあるから水に来困らないし、舟で海へ出れば海の恵みもある。この土地に街が出来るのも当然の立地だよ」
数百年前には荒れ地と沼だったことを、今の街に住む人たちは知らないのだろう。昔の偉大な錬金術師たちがこの地を住みやすい街に変えたことを知らなくても…生きていける。
生きていけるが…同じ錬金術師の端くれとしては、彼らの苦労が全くなかったことのように忘れ去られているのも少し寂しい。なるほど…黎明の錬金術師が思わず愚痴りたくなってあの本を残すはずだ。当時の領主が後世に伝え、残すことをしないのではないかと予測していたのだろう。
「とりあえず、レモンさんたち役人の方々が徹夜しなくてもいいよう、俺にもできることがあれば手伝いますよ」
「ホントかい! ありがたいよ!」
と、いうことで俺も旗つくりを手伝ってみました。先払いで一千万の報酬をもらってしまっているからね。観光振興のお手伝い、頑張ってしますよ。
役人さんたちが仕事をしたり、寝泊まりする建物が領主館とは別にあるそうで…そちらで内職のアルバイトに駆り出されていたおかみさん連中と旗つくりを頑張った。つい、時間が余ってしまい小旗も作った。
「ヒロム君、これはなに?」
「観光舟の舳先にでもつければ、ツアー中の観光客かどうか分かりやすいかなーと思って」
ぱたぱたと旗を振ってみる。
「こうやって、観光客を出迎えるのでもいいと思います」
パタパタ。ぱたぱた…旗を振っていると、おばちゃんたちも俺のマネをしてくれた。みんなで旗を振ると、楽しくなってきたのか、誰からともなく笑い声が上がる。
「いいねえ、これも。歓迎しているって気持ちが伝わりやすい気がする」
「他にも何かないかい?」
「他に、ですか…」
ちょっと考えて菫の花の形、5弁花に布を切り抜いた。
「へぇ…器用だねぇ」
「今は時間がありませんが、抜型を作ってハンカチに青の花の染め抜きをして観光客に売れば、旅の思い出として家に帰った後も残りますよ」
そう、俺の提案はお土産つくりだ。ひとつサンプルを作っておけば、後は勝手にいろいろ考える人も出てくるだろう。
「この街の、そして領主様の家紋でもあると聞いています。菫の花などいかがでしょうか?」
「家紋…不敬にならなきゃいいけど…その辺どうなんだいレモンさん」
「確認してみないと分かりませんが、家紋そのものではないですし…領の宣伝としてもむしろいいのではないかと…」
「大きな花ではなく、小さくしてハンカチの片隅に染料で型を押す方が楽に作れるかもしれませんね。ちょっと高級品だと、刺繍にするとか」
小さな花を切り取りハンカチの隅に軽く縫い付け、これがスタンプされたものだとイメージしてみてくださいと見本代わりにする。
「これも可愛くていいねぇ。あたしらでも使えそうだ」
レモンさんは素早くメモを取ると、ちょっと行ってきますと早くも領主のもとへ走り出した。
俺はおばちゃんたちとともに置いてけぼりにされ、顔を見合わせた。
「あたしらはそろそろ帰るよ」
徹夜で作業しなくて済んだことを喜んだ彼女たちを見送った後、レモンさん以外の役人のみなさんとともに俺は食堂で夕食をごちそうになった。 多くの人達とワイワイと食べる食事は美味しい。
領主館での食事の方が美味しい料理が出てきたが、役人たちとは気安く会話出来て、領主様たちのような緊張はしない。
役人さんたちの中にはレモンさんのような貴族もいるが、ほとんどは平民の人達だった。街から領主館へ通うのは大変で、時々残業したときは泊まり込みになるそうだけど、お給料がいいみたい。
俺はまだ学生で仕事に就いたことはないけど、アルバイト経験ならある。バイト代がいいか悪いかは重要だよね。
役人さんたちにおやすみなさいと挨拶をして、ひとりで屋敷の自分の部屋へ戻るとロルフェさんに怒られてしまった。ご領主様と一緒の食事が用意されていたらしい。そもそも、レモンさんの仕事を手伝うことから連絡が行っていなかったらしく、帰りがずいぶん遅いと心配をかけたみたいだ。
俺のせいではなかったが謝って、お詫び代わりに作り置きしてある飴をプレゼントする。
「…綺麗です。これがエスラお嬢様にお教えしたという菫の花入り飴ですか」
「うん、ロルフェさんには特別に菫の砂糖漬けもあげるから、機嫌を直して」
機嫌を直してと言われたことが恥ずかしかったのか、さっとロルフェさんの頬が染まった。
「わたし…すみません。勝手に心配していただけなのに」
「うぅん、帰りが遅いと心配してくれる人がいるというのはいいものだよ。だから、お礼ね」
瓶入りの菫の砂糖漬けは、飾っておくだけでも可愛いい。砂糖が貴重品でなければ売り物にしたいほどだが、一般市民相手の商材にはならい。
「明日は早くから予定が入っているから、もう寝るね。風呂も洗浄で済ませるから…」
「承知いたしました。…おやすみなさいませ。ヒロム様」
「おやすみ、ロルフェさん」
彼女を笑顔で部屋から送り出し、俺は隠避でこっそり図書室へ。昨夜の続きでカーサイノ師の残した本をシェルター内の家で書き写す。最後のページまでたどり着き、何気なく本をひっくり返して気が付いた。
「あれ?」
微かな違和感を感じ、閉じたばかりの裏表紙を開く。すると表から順番に開いただけでは気づかなかった仕掛けに気が付いた。
「反対側から開いて初めて気が付くようになっている」
違和感を感じなければ、反対から本を開こうとは思わなかっただろう。
巧妙に隠されていた仕掛け。そっと魔力を流してみる。
「手ごたえに違和感…俺じゃないということか」
持ち主を限定してあるのか。識別するパターンでないと開かない鍵のようなものが裏表紙に仕込まれていた。
「さすがだな、大錬金術師。今の俺じゃあ、再現は無理っぽい」
なんとなくの仕組みは分かるが、では実際にどうやればいいのか、と考えると…分からない。錬金術レベルが次に上がったときには俺にも分かるようになるのだろうか。
魔力の上昇はじりじり続いているが、毎日上がるわけじゃない。このペースだとあと半年から10カ月ほどかかりそうだ。それでもレベルアップを急ぐ必要はない。今でも隠しておかないといけないことが多くある。
「もしかしたら、領主様だったら反応するのかも…」
後世の領主に向けたメッセージが残されていても不思議はない気がした。
*
観光ツアーの予行の朝。
天気は快晴、風は微風。参加者もツアー運営側のテンションも高く、観光案内所からの舟ツアーがスタートした。
俺は先頭を行く舟に乗せてもらった。2艘目が領主様ご家族の乗った舟。3艘目にレモン役人のご両親とレモンさん。4艘目に商業ギルドの3人娘、となぜか飛び入り参加になった【フクロウの止まり木】の宿の女将さんを加えた女性グループ。最後の5艘めにレモンさん以外の役人たちの中から希望者3名が乗り込んでいた。
どの舟にも舳先に同じ青色の小旗を付けてもらったから、水路を歩く人達からは同じ一行だと分かるだろう。
「ヒロム君、旗をくぐる景色と両側の家のベランダに花が並んでいるだけで、いつもの水路がいつもと違う景色に見えるよ」
俺が乗る先頭の舟には舟組合の人たちが乗っている。彼らも自分たちが中心となる舟ツアーに大きな期待を寄せている。
「マーセルさん。他の水夫のみなさんもこの数日慣れないことで忙しかったと思います。ですが、今後は皆さんが中心となって進む観光事業ですので、皆さん自身も楽しみつつ観光客のみなさんをもてなしていただけたらと思います」
水路横の道を歩く人達が足を止め、こちらを注視していたりする。
俺はにこにこ笑いながら、彼らに手を振った。すると相手はちょっと驚いたようにしてからニコッと笑って手を振り返してくれた。
「わぁ…」と歓声が上がった。次の舟に乗っている人たちが領主様ご家族だと気が付いたようだ。
先ほど俺に手を振り返してくれたおじさんやおばさんたちが領主様に向かって手を振り始めた。
「ご領主様よ」
「トリトーナ様!」
「ミラーナ様ぁ、エスラ様ー!」
大きな歓声が上がった。
舟に乗っている人、水路わきの道を歩いている人。それぞれが楽しげに微笑み、笑い、歓声を上げつつ手を振り合う。
その騒ぎに気が付いたのか、水路の両側にある家のベランダからも住人が顔を覗かせた。そして誰もかれもが笑顔で水路を行く人たちに向かって手を振り、歓声を上げた。
誰かが魔法を使ったのか、庭から摘んできたような花が領主様の舟に向かい、ゆっくり飛んでいく。
「マーセルさん、これ、計画になかったですよね」
「だな、街の住人からの粋なプレゼントじゃないか」
「素敵な街ですね」
それを皮切りに、時々花や花びらが水路を飛ぶようになった。魔法がある世界ならではの光景だ。
不特定多数の人々の魔力が満ちていることを利用し、俺はこっそり水底に向かって…鉱脈探査をしてみた。
……ある。あるよシンダリンダルの鉱脈。いまこっそり採掘したらバレるかな?
※危険かと。領主や彼ら家族を守る衛兵には高確率で気付かれます。
世界基本知識さんにも止められ、俺はすぐにこの場での採掘を諦めた。
<夜中に、誰もが寝ている時間にフローティングボードから採掘を試みたら…、大丈夫かな>
※試す価値はあると…ただ、フローティングボードより舟を利用し、隠避状態で採掘した方が危険はさらに少なくなるかと…。
<舟、か…。その辺に繋いである舟をこっそり借りてもばれないかな>
世界基本知識さんの返事がないということは、バレる確率とバレない確率のどちらが高いか判断できなかったんだろう。
「マーセルさん」
「なんだい」
「この舟、素人の俺が操るのは難しいですか?」
「ん? 興味があるか? やってみたいか?」
「なんだか見ていたら…水夫のみなさんがカッコいいし…やってみたくなりました」
子供の好奇心全開、に見えるようににこにこしながら聞いてみる。
「海へ出たら櫂を操るのは難しくなるからな。浅い水路でならやってみるといいだろう」
マーセルさんとの会話を聞いていた水夫さんが手招きしてくれたので移動してみる。
「手は、こう。両手でしっかりと、そう…角度はこんな感じから自分が力を入れやすいように動かして…舟を静かに滑らせるように…」
手を添えたまま櫂を操ってみてくれる。なんとなくコツが分かったが…
「これ、思ったより力が要りますね。水夫さんたちが細身ながらも鍛えた身体つきをされている理由が分かりました」
可愛い、若い女の子の船頭がこの世界にはいないわけだ。
「ありがとうございました」
体験水夫を経験させてもらって、改めて働く男たちのカッコよさを感じた。
「とても素晴らしいお庭ね」
「ほんとですわね、お母様」
綺麗な花の庭で速度を落とししばしの花鑑賞を楽しんでいると、横づけになった領主様御一行の船からも楽しんでくれている声が聞こえてきた。低い橋の下くぐりは今回は見送れらた。
正午前に無事教会前に到着。一番いい場所を領主様たちに譲って、しばらくした頃…教会の鐘が鳴り始めた。ガランガランというより、カラランコロロンとやや高めの音だが、爽やかな音でこの街の空気によく似合う。
誰からともなく歓声が上がる。教会正面の扉が開き、花嫁と花婿を先頭に、参列者がどっと教会前広場に出てくる。向こうの世界と違い、花嫁は白いウエディングドレス姿ではない。だが精いっぱいのおしゃれをして、花で作られた冠を花婿とともに被って、幸せそうに手を繋いでいる。
結婚を半年後に控えたエスラ様、トリトーナ様も熱心に、そして楽しげに見ておられる。商業ギルドの3人娘…もちろん、イシェラさんもその輪の中にいて羨ましそうに、だが楽しそうに微笑んで、花嫁たちを見ている。
領主様たちにまさか自分たちの結婚式を見ていただくことになるとは思っていなかったのか、花嫁たちはかなり驚いていたようだったがそこは和やかに役人たちが取り仕切って、混乱なく済んだ。
お互いに笑顔で手を振り合い、観光ツアー中のみんなは待たせていた舟へ戻る。
再び全員を乗せて舟は教会前を離れた。
しばらく行くと、街の水路から河口へ出た。さっと視界が開け、解放感とともに爽やかな風が周囲に満ち満ちる。太陽の日差しはややきついが、水面をキラキラ反射していてとても綺麗だった。
「足元、お気を付けくださいー」
女性でも桟橋に渡りやすいよう、踏み段が急遽作られ、増えていた。細かいところまで気が付く人がいるなぁと感心した。
舟の上から安定した桟橋へ移り、誰からともなくほっとしたため息が漏れた。
「どうぞ、皆様、日陰へお入りくださいー」
今回は天幕が張られ、ベンチが並べられていた。
そうだよな、食事をするならイスとテーブルも必要になる。
「今回は箱入りランチボックスの方にしたんだよ」
女将さんが近寄ってきて、教えてくれた。
「ヒロム。ここまで来たのはあたしも初めてさ。街中の水路もいつもとは全く違っていて楽しかったし、街の者にも楽しめるツアーだと分かったよ」
「女将さん…」
「ほら、ごらんよ。ここから街全体が見える。あたしらの街は綺麗な街じゃないか」
空気が澄んで綺麗だからか、色が鮮やかでくっきり見える。あ、あの庭になっているフルーツはライムじゃないか。
「……」
無意識に遠視スキルを使ってた。あはははは。
「ヒロム…あたしらも食べよう。リーノとアイラがこの日のために頑張って作ってくれたよ」
全員分の席はなかったので俺は桟橋の端に腰を下ろした。水夫や役人の方たちも、みんなそうしている。
「海を見ながら昼食、とはなかなかに楽しいものですね」
足をぶらぶらさせていたのは俺だけだった。子供っぽかったかな。
「ですね。ハイセイの街を眺めながらの食事とは、贅沢ですね」
「贅沢、か…。違いない」
食事を終え、しばらくゆっくりしたら再び舟に乗って街へ帰る。
行きと違い、かなりみんなリラックスしていて、通りかかった街の人達へ手を振る人も増えた。
本来ならツアーのゴールは初めに乗った水路なのだが、今回はテストツアーだ。参加者に感想を聞いたり、改善点を話したりする必要があるということでゴールは領主館だった。
「お疲れ様でしたー」
全員が船から降りたのを確認し、レモンさんが大きな声でみんなに声を掛けた。
「それぞれ休憩していただくお部屋へご案内しますので、指示があるまで待機願いますー」
もちろん、領主様ご家族は別だ。いつもくつろいでいらっしゃる応接間で担当の役人が感想を窺うことになっている。担当と言っても今回はレモンさんじゃない。彼は自身のご両親から意見を聞き取ることになっているらしい。
俺も自分の部屋でしばらく休憩していいとの許可をもらった。が、領主様に呼ばれて彼らご家族とご一緒する。
エスラ様とミラーナ様、つまり男爵令嬢と男爵夫人がとにかくテンションが高かった。領主館から出るときは大きめの舟でいつも護衛に囲まれているため、今回のように間近に水路を見たり街を見たことがなかったらしい。
大興奮して、口々に楽しかったと褒めていただいた。
領主様からも大成功の判定をいただいた。役人の方の目にうっすらと嬉し涙が滲んでいた。今日の準備のため、大変だったものなぁ。
トリトーナ様も感激したのか結婚式を挙げた後、小舟で街を巡りたいと言い出した。エスラ様も同じ気持ちだったみたいで賛同していた。領主様たちもニコニコしていたが、役人の方の笑顔が引きつっていた。
だよねぇ。警備とか、準備とか、すっごい大変そう。
参加者全員からツアーの行程のこと、料理のこと、気が付いたことなとを細かく聞き取ってこの日は解散。役人たちと舟組合の役員たちは休む間もなくこの後会議をするらしいが、俺はもう免除してもらえた。
これから先はこの街の人たちに頑張ってもらわないとね。
夕食の時間までフリータイムだ。仕事のご褒美になっている図書室の読書、その続きに行く。これがなければ明日にでもこの街を出てもいいんだけど…いや、待て待て。シンダリンタルが欲しい。ここの鉱脈をこっそり採掘したい。銀鉱脈より見つけるのは難しいって大錬金術師さんも言ってたし、どうやったらこっそり採掘できるかな。
舟を操るのは難しそう。フローティングボードで水路の上を飛びながら採掘出来れば一番早いんだけど…。
地面の下の鉱脈から鉄を採掘したことはあるけど…水のさらにその下の地層にあるんだものな。飛びながら…はさすがに無理がある。
※水路の下でなく大地にあれば採掘しやすい?
あれ、珍しい今のは地図スキルさんか?
<うん、多分ね。俺は土魔法は持ってないけど、錬金術の分離や抽出があるし…鉄を大地から引き寄せてアイテムボックスに収納する感覚はもう覚えているから、多分シンダリンダルでもできる>
インゴットにするにはさらに錬成が必要になるが、粗鉄の状態でアイテムボックスに収納した鉄はまだ使う予定がないから採掘したまま保管している。
「ん…なんだ?」
地図のある一点にレアマークがぴかぴかと輝き始めた。しかもそこはセルネージュ川に近いが街からは外れた場所だ。
「もしかして…」
胸をドキドキさせながら確認してみると、シンダリンダルの鉱脈を示していた。
<これ、間違いない?>
※街の水路下より少ない。
そうか、鉱脈としては街中より少ないから大魔術師も採掘しなかったってことかな。それに、街づくりをさせられて鉱脈を発見したって言ってたし…他の場所まで掘るわけにはいかなかったのかも。
大錬金術師の本はもう必要な個所は写し終わった。寝よう。早く寝て、夜中にこっそり採掘に行こう。
「よし…」と勢い込んだが、まだ晩餐が終わってない。
最後の晩餐に「明日にはこの街を出ます」と伝え、領主様にお暇を告げよう。それと、あの本のことも伝えて…魔力を流して本に変化が現れないか試してもらおう。
黙って立ち去るのは…俺自身の心残りになってしまいそうだから。




