第34話
1級って…レベル3と横に書いてあるのに…3じゃないの?
「洗浄スキル所得者は千人に一人ぐらいだと伺ってましたが…1級とは?」
これ、表示しない方がよかったのかな。でも、毎日使っているものだし、無意識レベルで使ってしまうスキルを隠すのは難しい。せめてレベルを下げておけばよかったんだろうけど…うっかりしてた。マジで。
「通常のレベル1ならな、そのくらいおるだろう。ワシも何人も知っておる。だが、1級クラスになると極端に少なくなる。このハイセイの街の人口は2万ほど。1級はひとりもおらんよ」
なんとっ! ハーレンダルさんのマネしちゃったよ。
「しかも、薬師は2か…。その若さだと、こちらも上級職入り間違いないだろうな」
洗浄スキルまで上級職になるなんて思わなかった。
「そうか、なるほど…それでリーエルの街か」
謎が解けたと言わんばかりに頷かれた。
「その歳でリーエルを目指しておるということは、薬師の弟子となって修行を積み師から免許皆伝をもらうか、医学学校に入学することを考えておるのだな」
「ありがたくも出現したスキルですので、出来れば準薬師のまま終わりたくはないかな…と」
「ん? 既にどこかの薬師に師事した経験があるのか?」
「まともに教えてもらったわけではありませんが…見よう見まねで少しだけ…」
「師とトラブルでも起こしたか? 見よう見まねでランク2になれるなら破門するにはもったいない、覚えの良い弟子だろうと思うが…」
「亡くなりました。借金が多額残されていたようで、実の子供でもないので逃げてまいりました」
「あー。なるほど。薬師の中にも経営難から借金を作る者は珍しくはない」
逃げてきたと言ったのに、あっさり理解されたよ。こういうパターンよくあるというか…そういうこともあり得るってことで納得された感じ。
「して、師の名前は?」
それは考えてなかったな。適当につけると後で困るから、母さんの昔のあだ名をもらおう。
「アメばあさんと村の者は呼んでいましたが、正式な名前かどうかも分かりません。あの人自身も正薬師だったのか準薬師だったのかはっきり分かりませんし…」
ハーレンダルが俺の嘘の身上話に額をおさえていると、静かに控えていたイシェラが首を傾げつつ質問した。
「会頭。準薬師と正薬師って違うのですか? 薬師に2種類あることを初めて知りましたけど…」
「違うのだ。薬師ギルドは商人ギルドとは別組織として独立しておるから、関わりがなく知らなんだかもしれぬ。しかし我々にも無関係ではいられない問題がある。良い機会だ。覚えておきなさい」
「はい」
「正薬師は正薬師に師事し、免許皆伝を受け独立した者。あるいは医学学校を卒業した者。どちらかの者だけが資格ありとして認められ、薬師ギルドに登録される。これに対しギルドに登録していない薬師もいる。この者は準薬師と区別されているが、先にも述べたとおりギルドに登録されている者か否かの違いで、単純に能力が劣っているとは限らない」
「違いは、ギルドの会員かそうでないかの違いだけなんですね」
「だが、その違いによって明確に決められていることがある。販売可能な量と、直接販売が可能かどうかだ」
「直接販売とは?」
「正薬師は自分の店を経営し、客に対面販売が出来る」
「ということは、準薬師はそれが認められていない?」
「そうだ。だがここで現実問題がある。村などの正薬師がいない環境下では、薬師ギルドに登録していない者が作ったポーションでも一定の基準を満たしていると品質が保証されたものに限り、直接販売が認められている。これも命にかかわる話だから、生命の安全が優先される」
「なるほど…村に必ず正薬師がいるとは限らないですよね」
「それどころか、準薬師すらいない村の方が多い。ギルド会員になったからといって、田舎に派遣される義務は負っていない。となると誰しも人口が多い街で店を開きたくなる。難しい問題なのだよ」
「なるほど…人口が多い街で開業した方が買ってくれる客も多い。つまり儲かりますものね」
「そこで関わってくるのが我々の同胞でもある行商人だ。行商人は運搬賃を上乗せした価格で正薬師が調薬した商品を村々に届け、販売することが認められている」
「なるほど。というか、上乗せしていただかないと行商人の利益がなくなってしまいますものね」
「本来、薬は各品質ごとに明確に価格が決められている。販売価格は正薬師も準薬師も同じにしなければならない。命にかかわる薬を個人的な欲のために釣り上げてはならないと国が定めているからな。そんなことがあれば懲罰の対象となる」
「ここまで話を聞いていると、田舎で店を開いていれば特に正薬師になる必要はないですよね?」
ホントだ。俺も話を聞いていてそう思った。
正薬師のいないところでなら、村でも町でもギルド加入する必要なく商売が出来るじゃないか、って。リーエルの街に行かなくてもいいんだと思ったら、なんだか…気が抜けた。
「だから、一生を地方で準薬師として過ごす者も多い。さて、ここからが問題だ」
「問題?」
「なぜ薬師ギルドは免許皆伝を受けた者。あるいは医学学校を卒業した者。どちらかの者だけを薬師ギルドの会員として認め、薬師ギルドに登録しておるのか」
「確か、能力の優劣はないとおっしゃいましたよね? だったら……ん?」
「確かに、優劣はないとワシは言った。だが、薬師ギルドにすれば、目が届かぬ者に対してはその保証が出来ない。つまり能力が劣っている可能性が高いと見做すしかないのだ」
「あー。なるほど…」
「そして、薬師ギルドの目が届かぬ者がどんな不祥事を起こそうとも、どんな経営状態をしていようと、一切かかわらぬという姿勢をとっている」
薬師ギルドは準薬師を見下していると捉える者もいるだろうし、見放していると感じる者もいるだろう。
「準薬師さんは正薬師と同じ、命にかかわる立派な仕事をしていらっしゃるのに…」
ハーレンダルは黙って頷いた。
俺は2人が話しているのを聞いているだけでよかった。大体の事情は世界基本知識さんから聞いていた通りだが、改めて話を聞くと、問題がいろいろあるなと感じた。
薬師ギルドはギルド会員の数を管理し、どの町で活動しているかも把握しているだろう。だが、どのぐらいの人数の準薬師がいて、どこでどう活動しているかは全く把握していない。
例えば無医村の村がどこにどれほどあるのか知らなければ、医師を派遣しようという動きも生まれない。
また、村に唯一いた準薬師の後継者がその地から生まれなければ、準薬師がいない村がまたひとつ増えることになる。薬師は上級スキルだ。スキルの儀で授かれる者は少ない。
そのわずかな確率で薬師スキルを得ても、師となる薬師がいなければ一人前の薬師になれる確率はとても低い。
調剤に必要な器具類は高価だ。ポーション瓶も一定の基準を満たしたものを購入しなければならない。そうしなければ、それに入れるポーションが売り物としての品質を満たさないことになってしまう。勉強できる環境、そして調剤器具を買い揃えられる資金、薬師になるためにはどちらも必要となる。一人前になるにはハードルが高い仕事のひとつが薬師だと思う。
「すごいのね。その若さでそんな高い志を持っている少年、なかなかいないわ」
あれ。イシェラさんの目がキラキラと俺を見つめ始めたぞ。うわー勘違いさせてしまったよ。
作り話の身の上に同情されるかもとは思っていたが、違う方向へ向かったぞ。居心地が悪い思いでいると、謙遜しているととらえたのかハーレンダルさんの好感度も上がった。
「ワシで力になれるようであれば良かったのだが…この街の薬師ギルドの奴らとはちと折り合いが悪くてな。領主様に頼めば何とかなるやもしれんが…」
「いえいえ…予定通り、リーエルの街を目指しますので大丈夫です」
正直リーエルを目指す意欲は半減していたが、かといってこの町に引き留められるのは困る。上級職らしい洗浄3のスキルがバレたあとだ。警戒心が働く。
「そうだな。ここで薬師ギルド登録をしてしまうより、その方がよいな。薬師ギルドにはいろいろ派閥やら修歴をうるさく問うやからもおるらしいから、大きな志を持つ君はリーエルの街で登録した方が将来よい地位まで上り詰めることが出来るだろう」
いや…別に高い地位とかいりませんから。そんな高い志もないんです。ただちゃんとした免許があれば将来困らないかなーっていうぐらいの軽い気持ちで…いただけのことで……。
「よい師に巡り合うと良いな。…それはそうと、洗浄スキルの件だが」
その続きを口にせず、じっと見つめるものだから嫌な予感が膨れ始める。
「正直に言えば、この場で知りえた君のスキルの話を誰にも言うつもりはなかった。だが、洗浄スキルの1級となると少し話は変わる」
変わらないでいて欲しかった…
「いや、悪いことにはしない。君にしか頼めない仕事をお願いしたいだけだ。引き受けてもらえないか?」
「…えっと、その内容を先に伺っても?」
「聞いてから断られると困るのだが…」
「俺も聞かずに受けるのは…困ります。怖いです」
「そうよな。…では、この件は後程ということにしよう。どのみち、ワシ一人では決められぬことだ」
「ますます怖いんですけどー」
本気で怖がっているのにそうとはとらえなかったのか、ワハハハと笑われて困ってしまう。
「いや、本当に悪い話ではない。ちと秘密を守ってくれという条件が付くだけだ」
その条件が怖いんですけど…
「会頭。そろそろ彼にギルド規約の話をお伝えしたいのですが…私も業務が詰まってますので」
それからはイシェラさんのペースになったよ。
商業ギルド会員になった俺が知っているべき規約。つまり守るべき事柄のことだね。
「ギルド会員になった方へお渡ししている手引きがありますから、場所を変えましょう」
ここからは秘匿性が高い話ではないということで、カウンター横にあった衝立で仕切られたブースへ移動になったよ。ハーレンダルさんはもちろん、ここでバイバイ。会頭自らが新規ギルド登録に立ち会うのも普通はない。珍しいんだって。だよね。
「さて、と…。まずはこの書類を読んで欲しいの」
と、渡されたのは相当な厚みがある紙の束。商業ギルドに所属しようという者はこれを読み、理解し、順守しなければならないらしい。
「しばらく一人にするけど、戻ってきたときに《《質問を受ける》》から頑張って読んでね」
「はい」と受け取り、読み進めていくと基本的なことや、当然だねという内容も多かった。
例えば、商いとは個人の利益を追求することだけが目的ではありません、とか。出来れば借金を作らず、先を読んだ商売をしましょうとか。商売敵がライバルになるか戦友になるかはあなたの商い次第ですとか…標語のようなものも交じっていた。
ただやはり、税をきっちり納める義務のことについてが細かく書いてある。帳簿の付け方や、いつでも提出できるように在庫管理しておくこととか、監査について。いつまでに税を納めて、どんな時なら免除を受けることが出来るか、とか。結構多岐にわたっていた。
商業ギルドの組織図も載っていた。各支部は会頭をトップにしていることもちゃんと書いてあった。他にも役員についてだけではなく、商業ギルドに加入している組織も紹介してある。
商人ぽくない建築組合や土木組合、鍛冶組合、森林組合まで入っている。どうしてなんだろと思ったところでイシェラさんがお茶を淹れて戻ってきてくれた。
彼女がテーブルの上の箱に魔力を流す。すると予想通りこの魔道具によってミストウォールの防音兼遮断効果が表れた。有効範囲2メートルほどかな。
「どう? 《《なにか知りたいこと、分からないことはある》》?」
ひととおり読んだところで理解できないのは分かっている、と言わんばかりの質問だ。なるほど。
しかしそんなことより…気になる。イシェラさんがテーブルに置いてくれたコップの中身。
お茶だ! 紅茶ではない。色が違う。
「すみません、先にいただきます」
喉が渇いていたフリをして、コップの中身を飲む。
残念ながら…期待した日本茶ではなかった。だが、独特な風味を除けばほんのりとした後味の甘さや微かな渋みが緑茶にかなり近い。
「あ、ごめんね。苦手だった?」
じっくり味わっていたせいで額にしわでも寄っていたのか、イシェラさんが勘違いした。
「いえ…そうではなく…これ、何のお茶ですか?」
「シンシーの葉から作れらているお茶なの。私の故郷では広く飲まれているんだけど、こっちにはなくてね。最近行商人に頼んで、運んでもらえるようになったの。職員の人たちから広めようと、ここで煎れているのよ」
シンシーの葉。覚えておこう。
「これ…ちょっと渋いでしょ? 好き嫌いがあるし、なかなか販路拡大とはいかなくて、店での取り扱い交渉も実はうまくいってないの」
「俺は好きです。昔飲んだことのあるお茶に近かったので、むしろもっと飲みたいぐらいです」
「ホント? 嬉しいわ! でも、昔飲んでたなんて…ひょっとして私と同じルーテクリ地方出身?」
「いえ…残念ながら違うと思います。庭に生えていた低木から摘んできた葉で、保護者代わりが自作していたお茶でしたので…」
「あら…低木から摘んできた葉? シンシーを家の生垣代わりにする家もあるのよ」
「え…?」
「ちなみに、うちの実家もそう。春になると新芽が出てくるからそれを摘んで、手で揉んで、天日で乾かして作るのよ。えっと…茶葉が分かるように持ってくるわね」
乾燥した状態の茶葉とそれに湯を加えた後のポット。ほらこれ、と両方見せてもらって確信した。間違いない、日本茶の葉だ。鑑定さんも緑茶葉と教えてくれる。
つまり、味が違うと感じたのは生育環境の違いからくる葉の違いか、加工技術の違いかのどちらかだろう。お茶の煎れ方の違い、という線もある。
「あの、これ…欲しいです。売ってもらえませんか?」
「えっ、いいわよ」
やった! 緑茶を手に入れられるぞ! 錬金術師さんのキッチンに残されていたグリーンティーの葉を飲みきったら、もう飲めないのではないかと少し心配していたのだ。
「どこへ行けば買えますか? イシェラさんがお持ちなんですか?」
「この街で一軒だけ置いてくれている店があるから、そこに販売をお願いしているわ」
ここでイシェラさんがぽっと頬を赤くした。
「実は、そこは恋人の店なの…」と小声でひそひそ。
「いま地図を描くから、買ってもらえると助かるわ。ごめんね」
「いえいえ…本当にこのお茶が気に入ったので、こちらこそ嬉しいですよ」
買い占めたいところだが、そんなことをしたらすぐにいろんな人にバレそうだ。女将さん経由でアイラさんにまで話が行ったら、どんな料理に組み合わせるんだ? とかなんとか新作料理の相談をねじ込んでこられそうだ。
日本茶を普及させるなら尽力するのも悪くないが、ここで首を突っ込むと抜け出せなくなりそうだ。テイクアウトひとつでここまで騒ぎが大きくなってしまったのだから自重しよう。
「ところで、何か質問や疑問はあった?」
簡略図の他、雑貨屋の店名を書いたメモをもらう。俺はしっかりとポケットにしまった。フリをしてアイテムボックスに収納した。ここが一番安心だ。万が一にも失くしたくない。
「あ、それなんですが…」
建築組合や土木組合、鍛冶組合、森林組合まで商業ギルドに入っているのはどうしてなのかと尋ねたら…なんと。彼らは職人気質が強すぎて、帳簿つけを苦手とし、売買に関する交渉にも弱く、商人たちの目から見たら『なってない』ことが多々あるらしい。
全ての職人が必ずそうとは決まっていないがその傾向は強く、どんぶり勘定をしたり、口約束だけで仕事をしたことからトラブルに発展するケースもあったりして、経営が立ち行かなくなることが昔から珍しくなかったらしい。
そこで簿記に優れた商人を派遣したり、経営者の一人として加わったりして裏から支えることになり、最終的にいくつかの組合が商業ギルドの中に組み込まれることになったそうだ。
「なるほど…よくわかりました」
俺も制作に没頭して、寝食を後回しにしてしまうことがある。自分で商売をすることになったら、支出と収入をきっちり管理しなければならない…のだが、それがめんどくさいと思っている自分もいる。
商業スキルを持っている俺でさえこうなのだから、モノ作りが楽しくて仕方がない人種が税金関係のカネの話を誰かに押し付けたくなっても仕方がない。出納管理を任せられる者がいたら、任せるよな、うん。
「他には? ないの?」
「とくに…ないですね」
むしろ、分かりやすく書いてあった。
商業ギルドに加入した年の納税率が通常の半分に優遇される制度はありがたい。新規に商売を始めた商人を育てるための助成制度がこの世界にあるとは思わなかった。もっとシビアなのかと思っていた。
さらに助成制度は初年度だけではなく、2年目3年目まで続く。2年目は30パー減税、3年目は15パー減税。4年で赤字を解消できないようなら商人に向いていないから借金を増やす前に商売をやめよう…って、親切に教えてくれている。
「帳簿の付け方も分かった?」
1年目に監査が入ったときに不備があれば、帳簿の正しい着け方も教えてくれるし修正申告にも応じてもらえるという。うん、やっぱり親切だ。
「はい、大丈夫そうです」
もっと商業ギルドってやり手な商人の集まりで、若手には冷淡なのかと思っていた。若いうちに苦労しておけ、とか。商売敵になりえる相手には塩を送らない、みたいな…。
「はぁー…その歳で理解しちゃうのか。会頭が目を掛けるだけのことはあるわー」
「へ?」
なぜか、じと目で見られた。
「あのね。商人になりたいとやってきた人、みんながそれを読んだだけで理解できるとは限らないの。商業ギルドに登録したいとここを訪れた人の4分の一ほどが登録しないまま立ち去るのは、わたしたちの審査が厳しいからだけじゃないのよ」
「…………」
「商売のイロハを分かっているつもりになっていた人。憧れや情熱があれば何でもできると思っていた人。そんな人が真っ先に脱落するわ。自分で気が付くのよ、やっていけない。無理だって」
「………………」
「正直、商売人をあきらめて裏方に回る人の方が多い。誰かに店員として雇われたり、在庫管理したり…ギルドの職員になったり。でもそれだって、安定した収入を得ることが出来るから、なかなか定職に着けない人から見れば羨ましい仕事になるわ」
「……………………」
何と言えばいいのか分からなかった。
「君はまだ準薬師で、正薬師になりたいと思ってる。それはそれでとても素晴らしいことだと思うし、応援したいと思う。でも、それとは別に商人ギルドに登録したときに生じる責任と義務についてもきちんと理解している。それはすでに商人としてやっていけるという自信があるからじゃないかしら」
イシェラさんは優しく微笑みかけてくれた。
「この仕事をしていると、時々『この人は大商人になりそう』とか『いい人なんだろうけど、商売は向いていなさそう』って思うこともあるのね。君は『必ず成功する人』だと思ったわ。頑張ってね」
ここは「はい」と言うしかない。
「はい。頑張りますね。色々ありがとうございました」
無事、商業ギルドでの用事を済ませた俺は、丁寧に一礼してからギルドを後にした。
いや、後にしようとした。
「待って、待って…」
「え?」
「え、じゃないの! 勝手に帰られたら、私が会頭に怒られちゃうの!」
「いや、だって…さっきもらった地図の…俺、買い物……」
「あー。あーだけど、ダメっ。ダメったらだめっ」
こっちに来なさいというように問答無用で2階へと連れていかれる。なんで? ちょっとの間でもいいんだけど…そろそろご飯時だし街へ…って言ってみよう。
「…あのー」
「ダメっ!」
結論から言おう。俺はこの日、茶葉を買いに行くことはできなかった。
……ガックリ




