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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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第30話

なんでここの人たちは俺に経営相談みたいなことをするのかなぁ。


 無事に羊の敷き布団とふかふかのラグを購入し、市場で店仕舞いセール中だったフルーツも買い込んで宿に戻ると、女将さんに掴まった。この宿に泊まって二日目が終わろうとする頃にようやく女将さんとご対面したよ。

 どっしりとしていて、頼りになりそうな女将さんだ。体格もややぽっちゃり体系。親父さんの料理が美味しすぎるから、太ってもおかしくはないよね。


 見かけだけではなく、貫禄がある。大きな宿と食堂を切り盛りしているだけあって、眼光は鋭い。


「アイラから話は聞いているよ。素晴らしいアイデアを授けてくださったんだってね。感謝するよ」

 感謝すると言いながら睨まれて、俺は声も出ない。


 女傑だ。彼女がいればこの店は安泰だろう。

「結論から言う。あんたのアイデアは採用させてもらう。面白いし、やりがいがある。そう感じた」

 ありがとうございます、というように会釈しておいた。


「街の商工会の会議でも議題として挙げさせてもらうよ。観光が賑わうことはこの街全体が賑わうことでもあるからね。おそらく、賛成票の方が多いだろうよ」

「それは…よかったです。この街へ来たよそ者が感じたことですので、夢語りを聞いていただいただけでもありがたいです」


「謙虚だねぇ。…で、あんたにはいくら払えばいいかい?」

 へ?

「考えたことがなかったって顔してるね」

「もちろんです。こんなアイデア…実現する者がいなければただの妄想みたいなもので…」

「そんなことはないだろう。あんたはちゃんと、実現可能な企画を売り込んでくれた」

「実現可能だと評価していただけるのでしたら、それで充分嬉しいです」


「本当に、何もいらないというつもりかい?」

「ええ、いりません。小舟に揺られながら、親父さんかアイラさんが作ってくれた美味しいサンドイッチを食べることが出来たら、最高の旅の思い出として残ります。この街に来てよかったなぁと思います。……ただ、それだけの話です」

 目の奥までのぞき込んで来ようとする視線を受け止める。嘘じゃないから、憶することはない。


「分かった。ハキロで包んだサンドイッチは『ヒロム巻き』として売り出させてもらうよ」

へ?

「それは恥ずかしいです! 絶対に嫌です!」

 俺のびっくりした顔が可笑しかったのか、おかみさんはにやりと笑った。

「嫌なのかい。困ったねぇ」

「本当に、やめてくださいよ!」


「あんたは3泊の予約と聞いているけどもう2、3日タダで泊まって行かないかい」

「………」

 その2、3日を伸ばしたらもっと長くなりそうな予感がする。


「いえ…予定通り3泊だけ、お世話になります」

「そうかい…残念だねぇ」


 俺からもっとアイデアを搾り取ろうとしたって駄目だぞ。

 とりあえず明日は約束通り、親父さんの名物料理のレシピを教えてもらって…明後日の朝にはこの町を出よう。


  *


 まだ購入していない食材はないかと朝市巡りをしてから、青い布にこだわりのある服屋へ向かう。今日の俺の服は自分でリメイクしたものだ。襟元、ポケット、そして袖口に色鮮やかな青緑の布をアクセントに縫い付けてある。


「いらっしゃい……」

 店内に入ると、店長さんの声が途中で切れた。驚いた顔でじっとシャツを見たかと思えばだだっと駆け寄ってきた。

「お客様! その服はどちらで?」


 俺の顔とシャツの間を視線が行ったり来たりせわしない。

「確か昨日、紺色のフード付きマントを購入下さったお客様ですよね」

 覚えていてくれたのか。…というか、すごい嬉しくて、マントの色を褒めちぎったものな。印象に残らない方が可笑しいぐらい浮かれてた。


「はい。昨日はお世話になりました」

「それで、今日はどのようなご用件で…?」


 俺の他には客はいないが、自分の好奇心より来店した客の要件を確認すべきだと判断したらしい。

「こちらのお店の商品が気に入って、もう少し買い物をしたくて来ました」

「ありがとうございます!」


 笑顔で応えつつ、俺の服からは目をそらさない彼の様子が妙に嬉しかった。

 確かに気になるだろう。元の状態の布で服を作れば平民が着るには派手で上質すぎる。仕方なくハギレにしたものをポイント遣いにしているが、それでも染色に詳しい人ならこの発色の良さ、技術の高さに気が付くはず。


「ベットシーツほどの大きさとの布を2枚、クッション用カバーを2枚。…ああ、そちらの色です。昨日来た時には迷ってましたが、やはり欲しくなってしまって」


 嘘だ、今日また来る口実用に昨日はわざと買わなかった。


「あと、こちらでは布かばんの取り扱いはないのですか?」

「今のところ…予定はないのです。申し訳ありません。自分ひとりで全てやっているもので…」

「やはり、こちらの製品はすべて店長さんが?」


「はい。お客様のシャツを拝見するまで、この地方では自分が一番優れた染色技術を持っていると己惚れておりました。お恥ずかしいです」


「いえ、そんなことはないと思います。染色も縫製もデザインもすべて、これまで見たどの店よりも素晴らしいと思いました」

 ってか、俺が知っている服屋は多くないんだけどね。一般市民は明るい色の服は着ちゃいけないと思っていたから、この店の存在が嬉しかった。


「では、追加でカバン制作用にえっと…向こうの色の布を、そうだな少し多めでもいいから3メートル分ください」

 彼が布をカットしてくれている間にセール品のハギレも追加で買っておく。何に使うか決めてないけど、色の気に入った布は見つけた時に確保しておきたい。


「あの…少しお時間をいただいても?」

 支払いを終え、買った商品をマジックバッグにしまうと、彼はそう切り出してきた。

「はい。大丈夫です」


 店主は足早に店の外へ出ると営業中を表していて札をひっくり返し、クローズに変えて戻ってきた。


「お客様のシャツはどちらにある店のものですか? 王都ですか? それとも、シャランの街で?」


<シャランの街の情報をちょうだい。世界基本知識さん>

「そのどちらでもありません」


※北にある隣国、ランセ皇国第二の都市。服飾技術に優れた職人が数多く住んでいます。周辺国の王族や貴族たちの服を手掛ける店が商取引したり、または参考に制作したり、服飾の中心地ともいわれています。


 なるほど。優れた技能者が集まるファッションの街かぁ。少し興味あるなあ。


「古着を自分でリメイクしました。このカラフルな布は俺が染めたものではなく…内緒にしてくださいね。拾ったんです」

「拾った?」


 目を丸くしてる。そうだよね。

 この世界では布の価値が俺がいた世界よりも貴重だ。作るのに手間も時間もかかるためか、一般市民には古着やリメイクが当たり前のこととして生活に根付いている。


「海岸を散歩しているとき、浜辺で箱を見つけました。その中にこの綺麗な布が入っていたのです」

「おぉ…そんな…なんてことだ……」

 はっとしたように彼の目が強い光を放った。


「もしかすると、ハギレではなくきちんとした布として…?」

 俺は黙って頷いた。


「こんなに素晴らしい布を作る国が、どこかにあるなんて…!」

 沈没した船から流れ着いた荷物ということにした。この布がどこの国のものだったのか俺にも確かめようがない。偶然拾ったことにするのが一番だと思った。


「周りには誰もいなかったので、いただいちゃいました」

 俺がなぜこんな話を彼にするかというと、他の店より一歩も二歩もハイセンスなこの店から、もっともっと一般市民にも楽しめる綺麗でカッコいい服を広めていって欲しいと思ったからだ。


「あの、それで…その布はもう…?」

「まだ手元に残ってます。少しずつしか使えないので…よかったらお分けしましょうか?」

「ホントですか! それはぜひ! ぜひ勉強させていただきたい!」

 今日一番の食いつきだ。店主さんは職人魂をギラギラ燃やしている。


「いま出しますね」

 スマートで、ともすればダンディにも見える三十代くらいの店主さんなのだが、今はおやつを前にした子供みたいになっている。


 俺がカットした布の残りを、肩掛けカバンから出す。彼は大切そうに受け取り、声を震わせた。


「すばらしい…なんて素晴らしい!」

 実際に手で触れて、じっくりと見分し、ポケットから折り畳み式のルーペまで取り出して布を詳しく調べ始めた。ルーペがこの世界にあるということは、メガネもあるはずだ。望遠鏡を作る技術は…どうなんだろ。


「本当に、こんなに素晴らしい布を分けていただいてもよろしいので?」

「どうぞ、差し上げます。お好きにお使いください。…ただし…」


「ただし?」

 どんな条件が出るのだろう…とでも思ったのだろうか、神妙な顔つきになった。


「俺が海で拾った箱の中から見つけたことを内緒にして欲しいのです。今更本当の持ち主が現れたとしても、返せませんので」

 ぺろっと舌を出しておどけて見せると、ホッとしたように彼の表情が弛緩した。


「そうですね。でも、おそらく元の持ち主は現れないでしょう。わたしとしてはこれの持ち主には登場願いたいところです。そして、正式な取引をお願いしたい」

「ですね。俺もそれは思います。取引できるなら、買い取りたいですよね」

「本当に…残念です」


 俺たちは共犯者あるいは同し趣味を持つ仲間のような笑みを交わした。



  *


 夜。

 【フクロウの止まり木】食堂の営業時間が終わり、客が帰った後。俺は厨房にいた。

「この時間しか空いてなくてねぇ、すまないね」


 そう、サンドイッチの作り方を教えてくれと呼ばれたのだ。と同時に…俺にレカスの作り方を教えてくれるっていうから、来ないわけにはいかない。


 レカスは今夜のメニューとして食べさせてもらった。巨大なものだと1メートルほどにもなるヒラメのことがレカであり、そのヒラメの肉団子スープがレカスと呼ばれる料理でもある。

 魚を肉団子にする料理は初めて食べた。…と思ったら、よくよく思い出してみたらつみれがあった。なんだ、味付けは違っても料理の発想は変わらないんだと思ったら親しみを感じた。

 食べることで作り方はなんとなくわかったが、俺の知らない隠し味やコツがあるはずだから作り方を習いたいと思った。


 食堂の方には客はいないが従業員はいる。結婚していて家族が帰りを待っているのではない人は、仕事終わりに残った料理を夕食として食べて帰るらしい。

 なるほど。昼の料理も余っているなと思っていたが、初めから残すことを想定して仕込んでいたらしい。自分たちが運んでいる料理を知らないというのは従業員の教育としてはよくないから、彼女たちにも食べてもらうのはとてもいいと思う。


「ヒロムはパンに必ずバターを薄く塗っていたが、あれはなぜだ?」

 厨房に入ってすぐに質問が飛んでくる。

「パンに汁気が吸い込むのを防ぐためです」

「防ぐ? パンに汁がしみ込んだ方がパンもおいしくなっていいじゃないか」


「水分を含むとパンはぺちゃとして触感が悪くなるでしょう?」

 感覚の違いかな。気にならないようならそれはそれでもいいけど…


 親父さんとアイラは顔を見合わせた後、残っていた従業員たちにも意見を聞いた。その結果、気になるという者と気にならないという者が半々だった。

「あたしは作る手間をかけても、バターの香りがしている方がうまそうだと感じるねぇ」

 女将さんの意見でバターはありということに決まった。


「持ち帰りパンの方に角切り肉と何かを絡めていただろう? あれはなんだい?」

「コミコミの実を粉にしたものです。これも汁気をパンの外に逃がさないために使いました」


「コミコミの実? って、なんの味もしないあれかい?」

 やや大きめのゴマのような実だが、粉にすれば片栗粉の代わりになる。

 俺は外の殻を剥いてから粉にしたが、こちらの世界の人はそのまま食べても味がしないし、加熱すると固くなると言って料理には使わず、家畜の肥料に使っているみたいだ。

「あれって、羊や牛のエサじゃなかったか?」


 俺は牧場見学へ行ったとき、動物の餌になっている植物を鑑定して片栗粉の代用になると気が付いた。で、市場や調味料を扱う店で片栗粉を探したが売っていなかったから、この国では食べられていないのだと知った。


「人間が食べても問題はないですよ。コミコミの実の粉は料理の幅を広げてくれる重要な素材のひとつです」

「料理の幅を広げる、だって?」

 料理人3人の目が光った。


「簡単にできる卵スープを作ってみます」

 リーノ青年がささっと動いて、必要になる卵と玉ねぎをどうぞというように用意してくれる。さらに自分は鍋に水を入れ、火にかけてくれるという手回しの良さだ。


「乾燥キノコもいただいていいですか?」

「あるものはなんでも好きに使ってくれ」

 ということで自由にやらせてもらう。


 卵スープをささっと作って2つの小鍋にとりわけ、片方に水溶き片栗粉を加え、片方はそのままで完成品とした。

「少しずつ味見してみてください」

 スープボウルに少しずつ、まずは片栗粉を入れていない方を入れて配る。なぜか全員が興味津々で、受け取りに来る。

「全員にいきわたりましたか? それでは、どうぞ」


 こくこくっとみんなの喉が鳴る。

「こりゃ旨い。仕上げのごま油がたまらんな」

「使っている材料は少ないし、短時間でできたものなのに…味わいに奥深さを感じる」


 自分でも飲んでみて自画自賛。相変わらず、料理スキルがいい仕事をしてくれている。

 片栗粉を入れた方のスープも同じように、少量ずつ全員に配る。

「どうぞ、飲み比べてみてください」


「おぅ…これは……」

「とろりとしている。なんだろ、味が優しくなった?」

「あたしゃこっちの方が好きさね。飲みやすい」


 飲めばわかる違いに、みんなが驚いている。

「このように、コミコミの実の粉を入れることによってとろみが生まれて飲みやすくなり、味わいが増し、余韻を長く楽しむことが出来るようになります。さらに寒い季節にはスープが冷めにくくなりますので身体も温まります。お勧めですよ」


「何の役にも立たないもんだとばかり思ってた」

「とろみは重要ですよ。食欲が落ちた時、あまり食が進まない時でも喉の滑りが良いため、食べることが楽になります。味も匂いもしないことが、かえって使う食材の邪魔をせず、名脇役となりえるのです」

「メイワキヤク…ってなんだい?」


 しまった、演劇がないとこの言葉の意味は伝わりにくいか。 

「メイン素材にはならないけれど、これがあることで料理の完成度を高めてくれる、なくてはならない食材のことです」

「なるほど、大体の感じは分かったよ」


「かぁちゃん、コミコミの実を仕入れといて欲しい」

「分かったよ。…ところで、粉に挽くことは難しくないのかい?」

 俺は錬金術でやってしまったからなぁ…どうアドバイスしよう。言葉に詰まっていると勝手に結論を出してくれた。


「…分かった。粉屋で頼んでみるよ。まずは試してみないと分からないからね」

「力になれずにすみません」

「何言ってんだよ。隠すことも出来たってのに、あんたはちゃんと教えてくれたじゃないか。こっから先はあたしらが努力すればいいのさ」

 女将さんの言葉に、親父さんもアイラさんも頷いている。


「ヒロム、あのスープの仕上げにごま油を入れるレシピな、使わせてもらってもいいか?」

「構わないですよ、どうぞ」

「有り難ぇ。教えてもらってばかりだな」

「そうだねぇ教えてもらってばかりで心苦しいけど、四角いパンのサンドイッチの方でも教えて欲しいことがあるのさ。いいかな?」


 これは長くなるぞと思ったわけではないだろうが、従業員のみなさんは食堂に場所を移して食事に専念することになった。いつまでもゆっくりしていたら帰りが遅くなる。明日の仕事に差しさわりが出るということだ。


「何でしょうか?」

「丸いパンの方は肉とメイロの葉だけだったが、四角いパンの方は焼肉と潰し卵、その間に何かを入れていた。あれは何なの?」

「ユートクペーパーです。ユートクの実を紙のように薄く加工したものになります」

 米粉から作らなくても、ライスペーパーに似たものがあった。


「ユートクの実? これも普段使わない食材だねぇ」

「茹でると弾力が出る。それだけ食べるとほのかに甘いってぇのは分かるが、これも無味無臭に近い。わざわざ紙のように薄くしたことはなかったが…コミコミの実と同じでメイワキヤクって奴だな」

「その通りです。今回は肉と卵の間に挟むことによって、それぞれがバラバラになりにくくなると同時に柔らかい触感も加えました。メイロを生のまま使っていますから、メイロはシャキシャキ。肉は歯ごたえと弾力。ユートクペーパーはもっちりとした弾力、卵はほんわりとした柔らかさ。それぞれをまとめることで生まれる味と触感を楽しんでもらえると思います」


「コミコミの実を使わずにユートクペーパーを使った理由は?」

「肉と卵。具を2種類使ったのは美味しさと目にした時の色どりの相乗効果があります。どちらも食べやすくするため粗みじん状態です。そのまま挟むだけではバラバラになりやすい。そこでお互いの味を損なうことなく固定してまとめてくれるのがユートクペーパーというわけです」

 マヨネーズがあればもっと旨いものが作れる。だが、生卵を使うのはどうかという問題があるから教えられない。


「あの…ハキロの包み方のことでお聞きしたいのですが」

 リーノ青年がどうしても知りたいという顔をして聞いてきた。

「ハキロの葉に切れ込みを入れて包むのは、ほんの少しとはいえ手間がかかります。 今まで通りに包んでから、十字の紐を掛けて括るのではだめなんですか? それでも型崩れせずに持ち運べると思うのですが…?」


「実際に、リーノさんはあれを食べたよね?」

「はい。いただきました。とても美味しかったです」

 この世界の卵自体の味が濃く、うま味があることもあり、スクランブルエッグに塩だけでも満足感がある。俺の料理の腕が特別上手いわけではない、と思う。


「俺が実際に食べるところを見せるよ。あぁ、パンはそのままだけどサンドイッチになっていると想像してね」


 結んでいたリボンを解き、十字になった紐を取り去り…ハキロの葉をそっと剥がす。


「あっ!」

 どうやら気が付いてくれたようだ。

「分かった? リーノさんはハキロの葉を取り去って、パンを直接手に取ってかぶりついたよね」

 俺はハキロの葉を剥いだものの、手に持つ部分は残した状態で噛みつく真似をして見せた。


「外で食べるとき、その人の手が汚れていることもあるよね。そんな汚い手でものを食べるのはよくない。でもこうやって切り込みを入れてあれば、食べやすい状態にしたままハキロの葉の間からサンドイッチを食べることが出来る」


 ぐるぐるっと巻くだけでは、結局ほどいてしまうことになるのだ。

「分かりました!」

「よく考えられているねぇ」

「手が汚れているかどうかなんて気にしたことなかったさ」

「それはこれまで外で食事をしたことがないからですよ」

「そうかもしれないねぇ…。なにせ、料理を外へ売りに行くということも初めての挑戦だから」


 客は店に来る。店で食事をして帰っていく。それがこれまでの常識で、それ以外がなかったとしたら…彼らにとっては発想の転換。一種の料理革命なのだろう。


 大げさだけど。


 彼らにとっては大げさではない。それはみんなの真剣な顔が物語っていた。


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