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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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第3話

【換】。この世界の一般常識や知識!


 目覚めの一発で【換】スキルを使ってみたが、相変わらずの変化なし。この時点でクールダウンが24時間という制約を理解した。


 がっかりしたことで脱力したのか、欠伸が出た。

 「眠い…」


 時間は短いが、警戒心はどこへ行ったというぐらい熟睡してしまった気がする。

 もうちょっと寝ていたいが、木の上で寝るのは危険すぎるだろ。俺ってこんなにも図太い性格してたのかとビックリする。


 「まだ眠いけど、我慢しよ」

 いつもなら、目が覚めるとすぐに寝巻から着替えて洗面所へ向かうのだが…


 「あれ?」

 違和感に気が付いた。


 水分摂取をぎりぎりまで控えていたといっても…いまだにトイレへ行きたいと思わないのは変だ。さらに言えば、腹も減っていない。この世界に来てから何も食べていないのに。


 冷や汗が流れ、ぶるっと身震いした。


 俺って…本当に生きているのか?


 もしかして、死んだ状態でこっちの世界に来たのか?

 ステータスカードに書かれていた16歳の次の数字のゼロ。あれは生命エネルギーがゼロとかそういう意味なのか?


 慌ててカードを取り出して確認してみた。


「あれ?」

 寝る前に見た時と数字が変わっていた。正確には0 27/27になっていた。

召と喚の間がわずかに離れているのと同じでゼロと後ろの27の間にはわずかな隙間がある。


 そっと0の上にだけ指を置いてみる。


 《ランク 社会的貢献度》


 今度は27の方に触れてみる。《魔力量 ゼロになると気絶する》


 なるほど…。

 もっと早くにゼロの意味を調べていればよかった。

 ランク(社会的貢献度)がゼロなのは当たり前だ。この世界に来てから何もしていないから。

 だけど、魔力量が昨日に比べて増えているのはなんでだ? 特別なことは何もしてないのに。

 この27が多いか少ないかを知るためにも、この世界の一般常識を知りたい。


 そうそう。空腹にならない謎も気になるんだよな…。



 かすかに枝が揺れる音がして、頭上を見上げる。けれど…風は吹いてない。

 この巨木も謎だ。この木の周りには動物も来ないのか、鳴き声すらも聞こえない。


 そうだ。朝になったら上の方まで登ろうと思っていたのだった。

 ステータスカードを消し、木登りを開始する。上へ上へと登るにつれて枝と枝との間隔が狭くなり、登りやすくなった。


 生い茂っていた枝先の葉が少なくなり、視界が少しずつ晴れていく。




 「マジかよ…」


 思わず絶句した。見渡す限り、どこまでも森が続いていた。地平線の向こうまで見えているのに、すべてが森だなんて…。




 「ありえない……」

 足から力が抜けていく。もたれかかるように幹に背を預けた。




 世界樹。




 頭の中に、不意にその単語が浮かんできた。

 ごくりとつばを飲み込んで、深呼吸。ゆっくり、深呼吸。なんども繰り返す。


 少し落ち着いてきた。




 ぽとっ。

 不意に手の中に実が落ちてきた。



 「え?」

どこからこの実が落ちてきたのかと見渡しても、どの枝にも実らしきものはついていない。

 アイテムボックスに収納してみると、【世界樹の実1】と頭の中に浮かんできた。


 「はぁぁ…」


 やっぱり、そうか。そうだよな、と納得するしかない。こんな不思議な木が、 どこにでもある木のはずがない。

 ふつう枝ぶりが立派で大きな木であれば鳥がねぐらにしていて、夕方や明け方には鳥の鳴き声でうるさくてたまらないハズだ。

 ここは結界、あるいは聖域の中になっているのだろう。だから鳥の姿もなく、静かで…暖かい。こんなに高いところに登っているというのに、枝が風に揺れてない。安心安全な場所だと感じる。


 「ありがとうございました、世界樹さん。いや、世界樹さま。おかげで一晩を無事に過ごせました」

 アイテムボックスから実を取り出して、掌に載せると差し出した。返却するつもりでいたけど、実はいつまで待っても消えない。


 「もらっても…いいんですか?」



 風もないのに目の前の梢が微かに揺れる。しかし、その揺れているのは一部だけだ。



 「えっと……」

 世界樹の実なんて、超レアな素材だろう。本当にいいんだろうか…。


 時間がゆっくり過ぎてゆく。




 「ありがとう…ございます」

 もらっておこう。アイテムボックスに大切に実をしまう。

 木の幹に抱き着いてみると、葉の揺れる音がする。しゃべれない木と会話しているなんて…不思議な感覚だ。




 慎重に降りて、地上へ足をつける。

 木の上とは思えないほど安定感があったけど、やはり地上にいる方が安心する。



「ここには危険はない? もしかして、護ってくれていますか?」

 応えるように、微かな風が頬を撫でていく。


 世界樹の根元に座り、足を投げ出す。

 ここが安全な場所だとしたら、ゆっくりさせてもらいたい。


 「この世界に突然来ることになって困っています。もうしばらくここにいさせてください」


 木漏れ日が暖かく降り注ぐ。

 「ありがとうございます、世界樹さま」


 この不思議空間にいれぱ、何も飲食しなくてもいい気がする。起きてからしばらく経つか、相変わらず空腹を感じないし、飲みたいとも食べたいとも思わない。




 リュックをアイテムボックスの中から取り出し、荷物をすべて出して広げる。自分が何を持っているのか、もう一度落ち着いて堪忍しておきたかった。

 「メモ帳と筆記用具を持ち歩いていればよかった」

 普段はスマホのメモ機能やカレンダー機能を利用していたから、リュックの中に紙と筆記用具はない。


 「予備バッテリーがあるとはいえ、これだけではなぁ。新たにスマホの充電が出来るところなんてないし…」

 電源を落としてもたせているけど、そのうちスマホもタブレットも使えなくなるだろう。

 「電源を入れたところで、異世界ではなぁ…。役に立たないか」

 荷物を出して、並べて、戻して、また取り出して。リュックに戻して、アイテムボックスに収納して、自然と大地に寝転がっていた。木漏れ日が温かく降り注いでくる。




 「嘘みたいだ。異世界にいて、世界樹の木の根元に寝転んでいるなんて」

 夢ならそろそろ醒めて欲しい。そう思っていたのに、いつの間にか熟睡していた。



 「あ、そろそろかな…」

 召喚スキルがそろそろ使えそうな気がする。不意にそんな気がした。




 この世界の一般常識や知識を出来るだけ詳しく知りたい! 出来れば会話形式でお願いします!【換】!


 まるで手ごたえのなかった空間に、突然ドアが現れたかのような不思議な感覚が生まれた。ステータスカードで確認してみるとギフトが一つ増えていた。

 ギフト? スキルとどう違うんだろ?

 そう思いつつ、ステータスカードで調べてみる。



 ギフト【世界基本知識】の文字に触れると《この世界のどこの図書館にもない大百科辞典》と出た。



 なんとなくだが、タブレットの中の社会科の教科書が【変換】した気がする。もとになった教科書はこの世界では必要ないものだから、消えてしまっても問題はない。

 あれ? そうなるとアイテムボックスは何が【変換】したんだ?


 しばらく考えてみたが分からなかった。この謎は世界基本知識にも載っていないだろう。


 「まずは…ギフトとスキルの違いはなんだろう?」


 ※成長する技能のスキルに対し、ギフトは成長することがありません。ギフトを授けられる者は稀で、ギフトそのものが特殊です。


 おぉおお…AIと会話しているみたいだ。ひとりじゃない感じで、嬉しい。


 「この世界はどんな世界なんだ?」

 漠然とした質問なのに、答えが頭の中に浮かんでくる。


 ※大地が丸いことをこの世界の人は知りません。大小さまざまな大陸が六つあり、それぞれは陸地で繋がっておらず、大陸間を移動可能とする船はありません。


 「大陸が六つあるのか」


 ※現在、最も大きな大陸のグラニアスにこの世界の人々の6割が住んでいます。


 大陸は6つもあるのに、そのうちのひとつに6割も集中しているのか…。


 ※このユニレシア大陸とグラニアス大陸は、古代人によって設置された転移門で現在も行き来が可能です。


 驚くべき新事実に慌てふためく。いま俺がいるのはユニレシア大陸で、古代人が設置した転移門を使わないと別の大陸へは行けない。 

 「この大陸に人は住んでる?」


 ※僅かながら隠れ住む人がいます。


 ということは、ほとんどいないということか…。この大陸に隠れ住んでいる人の里を目指すより、一番大きな大陸に移動しておいた方が良さそうだな。


 えーと、いろいろ知りたいけど…スキルはどうやったらレベルを上げられる?

 出来ることなら、早く召喚スキルのレベルを上げたい。一日にひとつだけというのは物足りない。正直困るんだ。


 ※スキルを上げるためには経験値を増やす必要があります。経験値を増やすのはスキルの使用頻度を増やしたり、魔力量を増やすことも有効となります。


 なるほど…では魔力量を増やすのはどうしたらいい?


 ※魔力量は基本、生まれつきの資質が大きく関係しています。生まれたばかりの赤子は魔力回路が細く、閉じたままの場合もありますが、6歳前後になると回路の流れは安定してきます。消費と回復を繰り返すことで魔力量が増えたり、魔力を含む食べ物を摂取することでも増えます。魔力溜まりに身を浸すことによって増える場合もありますが、いきなりの増加には危険が伴います。


 危険? どうなるんだ?


 ※精神と肉体の乖離が起き、最悪の場合は死に至ります。



 「…………」

 魔力溜まりには近づかないようにしよう。

 次に基本的な質問をしようかな。一日は何時間?


 ※一日は24時間。一時間は60分。一週間は6日。一か月は24日。一年は12か月。


 共通しているのは6あるいは6の倍数か。元の世界と似ているから覚えやすいかも。

 この世界に神様はいるのか?


 ※広く信仰されている神様は6柱。

 創造神を頂点として太陽神、月神、空神、大地神、海神。さらにその下にも眷属神が多数いるとされていますが時代や地方によって変遷があります。


 宗教戦争はある? …侵略戦争でもいい。


 ※現在はありません。


 あ、今はないのか。良かった。


 ※魔物の脅威に対抗するため、各国は協力関係を続けています。


 …魔物っ? やはり魔物がいるのか!


 ※魔物は遥か昔に魔力を帯びたことにより獣が変質したといわれています。現在は生存環境に関係なく、遺伝によってその資質が受け継がれています。繁殖力が強いため数を増やしており、どこの国にとっても脅威となっていますが薬、武具、衣服、エネルギー源などの有用な資源ととらえる面もあります。


 魔物討伐といったら冒険者か。


 ※冒険者。冒険ギルドに所属し討伐、護衛、雑用などを請け負う者のこと。十歳で仮登録が可能。十五歳になると本登録が可能。ランクは上から白金、金、蒼銀、銀、黒鉄、紫鉄、青銅、黄銅、赤銅の9階級。


 つぎはお金について教えて。


 ※銅貨、銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨、銀貨十枚で大銀貨、大銀貨十枚で金貨、金貨十枚で大金貨。


 日本円に直したら?


 質問の仕方が悪かったのか、答えが返ってこない。

 えーと、おにぎり一つ…ってこの世界にはおにぎりかないか。米を炊いた料理なんだけど…米って分かる?


 ※ロンディアーナ国及びその周辺では主食となっている穀物ですが一般的な主食ではありません。


 この世界にも米があるのか! これは嬉しい! 


 「ロンディアーナ国ってどこにあるの? えーと、遠いの? どうやったら行ける?」


 ※転移門からグラニアスに行き、北西大陸のマトラシュを経由し、南大陸のジニカルーズへ渡ります。さらに東側の離島にあるヤトマールの西にロンディアーナ国はあります。辿り着くには…現在の交通手段では不可能と判断します。


 そう。不可能なら仕方ない。 お金の価値についての質問に戻ろう。

 「えーと…異世界ものの定番の肉の串焼きはある? いくら?」


 ※農村部と都市部など販売している場所で変わりますが銅貨1枚か2枚。


 都市部で一食の食事を安い宿で食べるとしたら?


 ※スープ、肉料理、パンの定食で銅貨4枚から5枚。


 なんとなく、一食400円から500円で考えてもいいかも…。だとしたら銅貨1枚が100円かな。

 都市部で素泊まりの宿を探すとしたらどのぐらい?



 ※冒険者が一般的に利用する宿で大銅貨3枚から4枚。商人クラスで5枚から7枚。



 うーん…。分かるようで分からないような……。

 素泊まりで3000円から4000円だと安い気がする。でも、日本のホテルのおもてなしを基準にするから違和感があるのかも。

 一泊大銅貨3枚に3食の食事代を足したら大銅貨4枚と銅貨5枚。二日で大銅貨9枚。一か月が24日だったから大銅貨108枚。つまり銀貨11枚…推定11万円でおつりがくる。


 いや、その計算の前にどうやって稼ぐか、いくらぐらい稼げるか…だよな。でもまあ、それを考えるより先に人里にも行かずにしばらくは森の中で隠れ住む予定なんだけどね。

 この世界で生き残るためにいろいろスキルとか技術を身に着けておきたいから。


 まだ先のことだけど、国語はこの世界の言葉を理解するスキルとして変換可能な気がするけど…他の教科書は何に変換できるのだろう? 食事を自分で作ることを考えたら、狩った獣を解体するための解体スキルとか、料理スキルとかを覚える方がいい気がする。


 解体も料理も家庭科で変換できるかな? スキルだけ持っていても仕方ないから、まずは解体用のナイフを手に入れなきゃな。こっちは【召】のスキルで取り寄せ出来るはず。


一日を世界樹の木の根元でのんびり過ごしたが、丸一日が過ぎても飲食の必要はなかったしトイレにも行きたいと思わなかった。夜は冷熱遮断シートを広げて、地面で寝た。鳥の気配も、虫の存在すらなく俺は爆睡した。

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