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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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第20話

 フローティングボードで移動可能な時間が片道3時間に増えたころ。森を抜け、崖に辿り着いた。森を抜けると同時に視界がばぁっと明るくなり、目が眩んだ状態で海に飛び込みそうになって慌ててしまった。


「ヤバかった…」

 即座にUターン。ドキドキ。

 空を飛んでいなかったら、崖から真っ逆さまに落下していた。

 いや、そもそも早く飛び過ぎだって話だ。すぐに停止できる安全飛行速度であったら、海に飛び込みそうになることはない。


「ここから夕陽を見たら、すごい綺麗だろうな」

 どちら側に夕日が沈むのか分かっていないけど…海に沈むのを見てみたい。


 地図スキルを確認すると周囲には危険な赤点はない。

「ステルステントで一泊するのは、ありなんじゃないか?」


 見晴らしが良いため、海が太陽の光を反射してキラキラ輝いている。船の影もないし、小島もない。天気もいいため水平線が綺麗に見える。海の色はエメラルドグリーンではなく深いめの色をしている。多分深いのだろう。


「海を見たのは久しぶりだなぁ」

 ずっと山の中にいた。河原に住んでいるみたいなものだから、周りすべてが木というわけでもなかったが…。


「懐かしい気がする。海の景色ってどこも変わらないのかも」


 ここから進路を南西へ変えると小さな漁村に着くらしい。すでに村民が移住し村は消えている可能性もあるけど…それならそれでもいい。


「少し休憩して、この周辺を探索してみよう」

 テントではなく小さな家を出すスペースがあれば、最高なんだけど…と思ったものの、そうそう上手くはいかなかった。

「空地、なんてないよなぁ。やっぱり」


 誰かが木を伐採して、根を掘り出して、掘り返した地面を整地して…でもしないと森の中に家を建てられるほどの空地なんてあるはずもない。


「比較的、広めなのはこの辺か…」


 崖ギリギリまで木が生えているため、木の横に立つとそこから海が見える。

一番太い木の裏側に回ると比較的、木と木の間が広く空いている場所があり、ここならステルステントを出せそうだ。地面にまばらに生えている草をアイスカッターで刈り取っておく。


 ちなみに、柔らかい草にウォーターカッターだと草が柔らかくしなるように薙いで上手く刈れなかった。俺のやり方が悪いのか、それとも威力が弱いのか分からないが、レベル3のアイスカッターを使う方がきれいに刈れてすっきりする。


「テントの準備は一瞬だ」

 陽が沈むまでまだ時間がある。この周囲で摂れる採集を探そう。

 そう思うと同時に地図スキルさんがあちこちに星マークを付けてくれる。


「あれ?」

 崖の向こう、つまり海の方にもマークがついている。


 なんだろうと思いつつ、フローティングボードを出して崖から飛び出す。下から吹き上げる風に一瞬身体が持っていかれそうになって慌てて制御する。


「崖に咲く花…」

 ヤマユリに似た白い花が咲いていた。海風にさらされながら険しい崖に咲くなんて、すごい生命力だ。慎重に近寄っていき、鑑定してみる。


 セインククール、という固有名が見えたけど、翻訳ではヤマユリになっていた。時々、向こうの世界にもあるものはこうやって翻訳してくれる。ヤマモモや姫リンゴ、小麦など多くのものが同じものであると世界基本知識さんが教えてくれる。


「花と葉っぱも使えるけど、地下茎の芋部分に魔力が多く含まれていて回復薬の材料になるのか」


 なかなかこんなところまで取りに来らる人がいないからなのか、崖にへばりつくように咲くヤマユリの白い花は線状に連なる花畑のようになっている。


「俺にとっては取り放題だけど、根っこを掘り起こすのは大変かも…」


 海風に煽られ、何度も身体が浮く。かといって崖に足を下すスペースもない。


「体力勝負になってきた」


 こんなところでフローティングボードから落ちたら無事では済まない。崖の途中に叩きつけられるか、海面に叩きつけられるか…どちらにしても無事では済まないかもしれない。

 30本を数えたところでセインククール採集を終わりにした。


「あれ? まだ崖下に何かある?」


 地図スキルさんの導きで高度を下げていく。


 干潮なのか、海に取り残された岩場があちらこちらにあった。


「あ、これはもしかして!」


 岩場全体に張り付く黒い物。海面と接しているところはそよそよとそよぐように揺れている。

 少しためらったが慎重に岩場に降り、ぬめり気のあるそれをナイフでこそぎ取るようにして確認してみる。クンクン…この匂いは……


「ノリだー!」


 天然の岩海苔に違いない。磯の匂いがこんなに嬉しいなんて…。

 どうすれば効率よく岩海苔が採集できるかを考える。

 水魔法も風魔法も上手くいく予感がしない。


「岩に張り付いている…つまり、生きている状態だからアイテムボックス収納もできない?」


 んーん~ン~


 結果、ナイフで岩から削り取りながらアイテムボックスに収納するという、非常に地道な作業を繰り返すしかなかった。


 岩場にしゃがみこみ、一生懸命海苔取り作業をしているうちに…いつの間にか太陽が降りてきていた。


「ヤバ、潮が満ちてきた」

 いつの間にか岩場中央へ追い詰められていた。他の岩場にも海苔がついていたが、採集はもう終わりにした方がいい。


 フローティングボードを出し、海風の助けも借りながら崖の上へ飛び上がる。

 無事に崖の上に足をつけることができ、ほっとした。


「結構、汚れたなぁ」

海苔で汚れたフローティングボードと靴底を洗浄スキルで綺麗にする。


「手も綺麗にしないと…」

 洗浄スキルで綺麗にすると磯臭い匂いも消えた。


「洗浄スキル、めっちゃ便利だよ」

 水洗いと違って、乾かす手間もいらない。


 夕焼けを見ながらご飯にしようと、木の根元に腰を下ろす。地図スキルには赤マークも黄色マークもない。多分十キロ範囲にいるのは俺だけだろう。野生動物がいるかもしれないけど、危険がある生き物なら色をつけてくれるはず。地図スキルさん、頼んだよ。


 先ほど採集した海苔の加工は後回しにして、ご飯と野菜たっぷりスープを用意する。食後のデザートは果物かな。甘さがさっぱりしたナシもどきにした。


「………」

 森の中にいたら気が付かなかった夕焼け。開けた視界一杯を染める夕焼け色。

 カメラを持っていないのが残念なほど綺麗で勇壮な景色だった。


「…………」

 目を離すのがもったいないほど、刻一刻一刻と変わっていく茜色。雲に照り映える輝きは息を飲むほどに神秘的で、感動する。


「…ずずっ…」

 鼻をすすって気が付いた。いつの間にか涙が後から後から流れ出してきて、息がしにくいほどだった。

 自分が泣いていることに気が付くと同時に、ぷわっと感情が膨れ上がった。抑え込んでいた悲しみが、一気に噴き出したかのようだった。


「…な、んで……」

 海に沈む夕日を見たいなんて思ってしまったのだろう。


「なんで…」

 泣いているのかなんて、決まっている!


 さみしい…寂しい……

 独りなんて、やだよ。もう、ずっと…ずっと独りぼっち。独り言を言うしかない。誰も答えてくれない。誰も話しかけてくれない。誰も笑いかけてくれない。誰も、誰も…誰もいない!


 誰も、誰も…誰もいない! 誰も、誰も…誰もいないんだ!


 この世界に俺を知っている人は誰もいない。誰も俺のことを助けてくれない。誰にも助けを求められない。誰にも…誰も……


 誰も俺を知らない。

 ここに俺がいることを誰も知らない。


 この世界には他にも人が住んでいるのだろう。でも、まだ誰にも会ったことはない。見知らぬ誰かに遭うことは怖いけど、それでも誰かに会いたい。


 そう、誰かに会いたいんだ。会って、話がしたい。会って笑いかけてもらいたい。ひとりで生きているんじゃないと感じたい。この世界で…独りじゃないと……俺は独りじゃないと言って欲しい。


 俺は涙が止まるまで泣き続けた。すっかり周囲が闇に包まれたころ…人恋しさに近くの町へ移動することを決意した。


  *


 泣き疲れるように眠った翌日、俺は朝早くに河原へ戻った。錬金術の家に帰るとすごくホッとしたが、町へ移動する決意は堅いままだった。


 さびれそうな漁村へ向かう気持ちは消えていた。少しでも大きな街へ行きたかったが、その前にたどり着くことが出来る近くの町を目的地に定めた。


 この場合の街と町の違いは住人の数、つまり人口だ。ちなみに、その地を治めている領主が男爵だと町と村がいくつか。領主が子爵以上だと街と町と村がいくつか。町や村の数は領地の広さや経済力で変わるらしい。つまり、同じ男爵でも領地の町の数や村の数は違うってことだ。


 森を出た後、一番近いのは村なのだが…村だと住人すべてが知り合いというコミュニティによそ者が入っていくことになる。まだ学生で、限られたコミュニティしか知らない俺にはハードルが高い。

 同じ世界の住人ならそんな気後れもないのかもしれない。だが俺は違う世界からこの世界へ訳も分からず紛れ込んだ異分子のようなものだ。人恋しいと同時に、この世界の人が怖いという感情を無視できない。


「ゴーレム…ゴーレム。ゴーレムの作り方」

 探していた錬金術の本を手に、椅子に座る。


 地下倉庫にあった馬車を引いていたのは、きっとゴーレムだったハズ。森の中を移動するのにも馬タイプのゴーレムは役に立つだろうが、俺はもっと早くそして楽に移動したかった。


 と、なると目指す形は紙飛行機…いや、人力飛行機…違う、セスナとかだとかっこいいかも。

 高度は大森林の上を飛び越えるぐらいあればいい。15から20メートルほど上空を安定して飛び続けることができれば、森の木々の間を馬で走り抜けるよりも絶対に早い。

 障害物もない上空は、ネックレスの隠密で姿を消していれば鳥に襲われることもないはずだ。


「それに、馬だと揺すられ続けることになって疲れそう。その点、飛行機タイプだと椅子に座っていればいいから楽そう」

 今の俺の移動手段は徒歩かフローティングボードで飛行するかの二択。

フローティングボードは立ったままの移動になるから3時間が限界だと感じた。大森林を抜けて街まで徒歩移動だと3か月弱かかる計算らしい。


 徒歩だと時速5キロ、自転車で時速15キロ、車だと時速60キロぐらいか? 

 車の免許もなければセスナに乗った経験もないからはっきりしたことは分からないが、単純計算で飛行速度を時速50キロとすれば、十分の一。

つまり徒歩移動90日が飛行移動だとするとわずか9日で町まで行けることになる。


 これはもう、今すぐ出発する必要はない。むしろ、焦るのはバカのすることだ。飛行できるゴーレムを作る方が時間の無駄もないし、楽できるよね。


「えーと…材料は…」

 一般的なゴーレムの材料は土、岩、鉱物、変わったところでは水や炎なんてのもありなのか。


「土や岩の場合は簡単に材料が手に入るし頑丈そうだけど…重い。飛ぶ材料には不向きだ」

 鉱物も頑丈で重そうだけど…こちらは材質によっては貴重で、量を揃えるのに費用が掛かる。

 水は近くに川もあるけど…人が乗ることは想定してないよね。炎は論外。


「軽くて丈夫で、成形が簡単で…材料が手元にあるとなると……」

 錬金術師さんたちがこの家に残しておいてくれた素材に手を付けるしかない。

 大きさは一人乗り用でいい。コクピットの両側に揚力を得るための両翼、バランスを保つための尾翼も必要だろう。

 いや…推進力は風魔法があるし、揚力も重量軽減スキルがあるから……究極なのは卵型だったりして。


「んー…でもなぁ。卵は…ないよなぁ」

 空飛ぶ卵。小さい手羽と可愛い尾羽でもつけるか?


 あれ? なんか、可愛いぞ。

「ありのような気がしてきた」


 俺は何に洗脳されたのか分からないが、空飛ぶ卵を基本デザインにしたゴーレムづくりを開始した。



「出来たー!」

 その夜遅く。完成したのは河原の石をメイン素材にした警備用ゴーレムだった。


 あれ?


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