94学園祭当日1
すみません、久々の投稿です。
書き始めて一直線できたものの、他の皆様の投稿を読んで勉強しようと思って読んでいたら、皆様凄くて読み漁っておりました。そして自分の話が勢いだけで情けなくなりつつ、次に新しい書き物ができたらその時はちゃんと考えるとして、これは勢いだけで行こうと踏ん切りがつきました。お付き合いいただけますと嬉しいです!
94学園祭
リセドール学園、学園祭。
サファリア、アカサンドリア両国の友好と知識交換、若人の育成と様々な思惑で建立されたこの学園が開催する学園祭は、年に一度部外者に解放される場となる。
従って、今日の学園祭には普段学園に通う学生以外に、保護者、その従者はもちろんのこと、恐らく二国の者や全く学園に通うものとは関係のない者も来ているようで、想像以上の賑わいを見せている。
学園の敷地が広大であるため、人が分散して混雑しないと思っていたが、考えてみると出店が本舎周りに集中しているため、まるで京都の祇園祭のように人がひしめき合っている。
「……すごいな」
この世界に生まれてから、満員電車に揺られることもなく、人がこれほど集まる場面を見たことがない。
校門を潜ろうという時に馬車が大渋滞を起こしていて、その先に見えた光景を見て、思わずそう呟いていた。
「はい、こんな光景を見たのは初めてです。」
「あの〜。もうここで降りた方が良くないですかー。」
「私もラファルの意見に賛成です。」
「俺も賛成!御者さんには悪いけど、なんとか引き返してもらおう。」
事前に先輩から学園祭の日は渋滞するとは聞いていたのでいつものメンバーで一台の馬車に乗ってきていた。朝イチというわけではないが、学園祭が始まってすぐくらいの時間に到着するようにしていたのだが、それでもこの混雑とは想定以上だ。
俺たちの劇は午後からなので皆んなで学園祭を楽しんで、と思っていたが、久々の人混みに挫けそうになる。考えてみたらポリニャックの時もこんな感じだったが、あの時は護衛として人避けしてもらっていたし。ああ、そうか、あの時と違ってこの人混みが俺に殺到するわけではないから大分マシか、と気を落ち着ける。
「校舎にたどり着いたら行きたいところはあるか?」
この世界でも学園祭のパンフレットがあり、事前に配られている。
俺たちが出る劇以外にも他の同志による演劇や音楽演奏などの出し物スケジュール、魔法演習場での魔法演技、剣術試合等は時間が決まっている出し物だ。
それ以外にも出店として屋台があったり、教室でのカフェ営業、部活動の活動報告があったりと多岐にわたる。俺も軽く目は通したが、余りにも多すぎて全部は回りきれないし、皆の行きたいところを優先したいと思い、熟読しないことにした。
チラッと見えたSM会、という単語が前世的にヤバいと思ったが、健全な全年齢対象ゲームの世界だ。何かの略がたまたま被っただけだろうと無視することにした。
「10時からの〜魔法演技観てみたいです〜」
「私はできれば屋台巡りをしたいです」
「俺はなんでもいいよー」
「私はちょっと顔を出さなければ行けないところがあるので皆様とご一緒できるのは最初だけなんです。」
ベアトリスがすぐにいなくなってしまうのか。学園祭デート憧れだったのにな。まあ、まだ数年あるし。
俺も馬術部に顔出したいしな。
「じゃあ、ベアトリスがいる間に少し屋台でも回って魔法演技を見に行くか。俺はその後は馬術部の手伝いに行ってくる。」
どうしても屋台というと、たこ焼き、焼きそば、リンゴ飴、綿菓子なんかを想像してしまうが、流石貴族が通う学園だからか、テントの作りからして違う。俺の前世の知識にある画一的な屋台ではなく、一店ずつのデザインが全く違うし、グランピング施設のようにオシャレなのだ。大きなテントのようなものもあれば、1日で撤去するのが勿体ないと感じるような木造の施設もある。そこで供される食事も、ナイフとフォークが必要になるようなしっかりしたものだ。
少しガッカリしてしまったが、皆は楽しそうだ。街で買い食いする俺やフエゴ、テールと違い、ラファルとベアトリスはこういった形態が珍しいようで目を輝かせている。
フエゴも、こういう形態と思っていなかったようで屋台巡りを提案したものの少し戸惑っていたが、2人の楽しそうな様子を見てホッとしていた。
「ベアトリス、食べたいものがあれば言ってくれ。」
「あ、ありがとうございます。見ているだけで楽しくて。今のところお腹は空いていないので、皆様が食べたいものがあればお任せしますわ。」
「あの〜それではー。あちらの飴細工のお店はどうでしょう〜?」
ラファルが提案してくれた店は比較的小ぢんまりとしていて、客に飴細工を作っている様子が見てとれた。
軽く人垣が出来ていたが、購入する客だけでなく、飴細工が出来上がる様子を見守る見物人の人垣のようだ。
「いいな、腹も膨れないし、見事なものだ。」
実際飴細工の職人の様子は見てて凄い。学生なんだよな?
火魔法を巧みに操り、飴を温めるのはわかるが、それを形成していく技術は職人技だ。火を操れるとはいえ、飴を柔らかくすることしかできないため、形成するのは手先だけだ。学生ができる技とは思えない。凄いなあと思いながら短い列が減っていく。
「あ、シ、シャルル様!?」
飴を買う段になってようやく気付いた職人が俺に気付いて恐れ慄く。いや、普通にしてくれて良いんだが。
「花の形で頼む。我が最愛の婚約者に。」
「ふ、ふぁい!!」
うーん、緊張してしまったようで、今までの見事な造形からは考えられないようなヘンテコな花が出来てしまった。
恐らく薔薇なのだろうが全てがグニャグニャした謎生物になってしまっている。
「申し訳ございません!もちろんお代は結構です!!」
と真っ赤な顔で頭を下げられてしまったがそういうわけにはいかない。俺は通常料金を払いその場を去る。
とはいえ、これをベアトリスに渡すのも気が引ける。
どうしたものか、と思案していたが、皆の元に戻ると何故か皆生暖かい視線を俺に向けていた。
まあ、こんな変な形の花の飴細工を持っていたらそうなるか、と思いながら皆に合流する。
「あの、いただいてもよろしいですか?」
とベアトリスから声をかけられる。
俺と店主のやり取りが聞こえていて、気を遣ってくれたのだろう。
「すまない、彼なら綺麗な花を作ってくれると思ったのだが。」
「いいえ、充分ですわ!味は変わりませんもの。」
そう言って受け取ってくれたベアトリスは本当に可愛い。謎生物と化した飴の花であろうと、ペロペロしているの本当に可愛い。
「すみません、それでは私はこの辺で。」
「送っていかなくても良いかい?人が多いから心配だな。」
「大丈夫ですわ。この先は目的地まであと少しですし。」
頑なにベアトリスの目的地までは送らせてもらえなかった。
まあ、ここから先は一本道で、何故か行列が出来ているので運営側である彼女が通っていく分には問題が無いだろう。
移動時間も考えると、ラファルが行きたがっていた出し物の時間にもちょうど良い。少し残念に思いつつベアトリスが駆け足で遠ざかっていく様子を見守って俺たちもその場を離れるのであった。
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side ベアトリス
ふうー。やばかったですわ。
上手く巻けました。
まさかSM会の展示発表にシャルル様を連れてくるわけにいきませんもの。
シャルル様はお優しいからこの教室にまで着いてこようとされていましたし、ここから一本道になるからどの会場かわかったテール様がニヤニヤされていましたし、展示会場に向かう行列に並ぶ者達がシャルル様に気づいて目を白黒させたり顔を赤くしたり青くしたりしていて、本当に気が気じゃありませんでしたわ。
「ベアトリス様!無事お越しいただけたのですね!」
私が教室に入るなり、SM会会長ダリア・ラジヴィから感嘆の声が挙がる。シャルル様入学当初から発足したというこの会を知ったのは実はごく最近。
演劇メンバーから教えてもらったのである。
婚約者の私を差し置いてファンクラブのような活動をしているこの会を不敬であると罰せられるのではないか、と秘密裏に活動をしていたのだが、あまりにもメンバーが多くなり、隠し通せるものではない、と判断し、接触を図っていたところ、演劇メンバーと私の仲が狭まったことによる曝露とのこと。
正直なところ私はシャルル様と学園の皆との仲を近づけたいと願っていたため、こういう会があればそのとっかかりになるのでは、と有り難く接触を受け入れたのです。
というか、シャルル様の侍女の娘が会長なら、侍女越しにサッサと接触してくれればよかったのに、と思ったのですが。
「お招きいただきありがとうございます。ベアトリス・ドアバックと申します。」
「お呼びたてしてしまい申し訳ありません、デリア・ラジヴィが娘、ダリア・ラジヴィと申します。」綺麗なカーテシー。デリア様は何度もお会いしていますが、ダリア様は初めてになりますわね。
「初めに申し上げておきますが、この会はあくまでもシャルル様を見守る会という名の通り、何も行動に起こすことはございません。ただ、一部会員につきましては、あらぬ妄想を暴走させておりますが、ベアトリス様を害するものはおりません。」
「それは気に留めないでいただけませ。私の友人にもそういった方はおりますわ。実質的な被害が出そうであればおっしゃっていただけますかしら?」
シャルル様のご友人とシャルル様の妄想をされる方は多いと心得ていますわ。実際に妄想が激化し、私を排除しようと思うならその動きを伝えていただけますかしら?という、私の真意が伝わったようでダリア様はニコリと微笑まれ、展示ブースにご案内いただけました。
膝から崩れ落ちそうになりました。
実際、周りには崩れ置ち、咽び泣く人々が多数。
私はシャルル様の婚約者としての矜持と意地、そして耐性のおかげでなんとか毅然と立つことが出来ました。
展示スペースにはありとあらゆるシャルル様の絵画と彫像が展示されておりました。
そしてシャルル様の入学当初からの年表のような行動記録。これには軽く眩暈がしましたわ。国の諜報機関もかくや、というべき記録に流石に物申しました。
とはいえ、絵画は何点か購入したいと思ったのですが、永久保存とのこと。残念です。
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side シャルル
ん?何故か寒気がしたような?気のせいか。
ベアトリスと別れ、ラファルの希望通り魔法演技を見にきた。
本校舎からは離れているもののまあまあの混雑ぶり。
学園祭の目玉の一つだそうだ。
学生よりも大人の方が多いのは優秀な学生を青田刈りしたいというところかな、と客席を見回しているとラファルとフエゴが飲み物を両手に持って戻ってくる。
俺とテールで席を取り、2人が飲み物を買ってきてくれたのだ。
「凄い人ですね。お二人を探すのも手間取るかと思いました。」
何気にこの世界は分かりやすく髪色の濃さで属性魔力の濃さが変わるので俺ら2人は見つけやすかっただろう。テールは茶色だから分かりにくいかもしれないが、俺の髪色の金はまず居ない色だ。こんな時は便利だろう。
「そう思うとテールよりラファルかフエゴが残った方がわかりやすかったかな?」
2人の髪色も原色に近い。遠目でわかりやすいことこの上ないのだ。
「いえいえ!大丈夫でした!観客席の方々の視線が集中しておりましたので!」
ああ、そうか。王族パワーはここでも健在か。
「まあ、すぐにみつかったなら良かった。もうすぐ始まりそうだ。」
魔法演技とは。よくわかっていなかったが、通常の魔法は敵を倒したり、味方を援護したり回復したり。要は戦闘を目的として行われるものだ。
だが、今目の前で繰り広げられるのは、「見せ物」だ。
言い方として侮蔑しているように聞こえるかもしれないが、俺は純粋に感動していた。
魔法の使い方は戦うためだけではないのだと気付かされた。
火薬は銃弾や手榴弾といった戦闘に使われるだけでなく、花火のように平和的且つ観賞用に使われることもある。
魔法もそうなのだ。
今目の前で繰り広げられている魔法は、花火のような華麗なものだった。
火の魔法は正に花火の様に色取り取りに咲き乱れ、水の魔法は流麗な曲線を描き、風の魔法は花びらを散らし、土の魔法は地面からギリシア神話の様な像を浮かび上がらせ、神話のような世界を魔法により紡ぎ出していた。
気付けば周りの観客と同じく立ち上がって、手が痛くなるまで拍手していた。
純粋な演技に対する感動はもちろんのこと、どうしてもゲームの世界観に引きずられ、「魔法は戦うためにある」という固定概念を覆されたことによる感動があったのだ。
周りの拍手が小さくなっていく中、手を打ち続ける俺の手にフエゴの手が重なり、ようやく俺は拍手をやめた。
「俺も花火を出せるよう精進します。」
……うん、よっぽど俺が魔法演技を気に入ったと思ったんだな。
忠誠心怖い。




