学園一年生52学園祭準備3
「なんか最近ベアトリスが構ってくれない……」
「ベアトリス様はお忙しいですからねー。17ページからお願いしますー。」
俺の愚痴を無視して、劇の練習が始まる。
本当の劇の練習なら座って台詞合わせなんかをするもんだと思うが、俺達は素人だし、時間もないし、何気に皆ハイスペックで頭に台本も入っているということもあり、いきなり舞台の上で練習している。
本来なら脚本、監督のベアトリスが稽古を見ているはずなのだが、学生劇なこともあり、表舞台だけでなく裏方関係全てを彼女が監修しているため、舞台スタッフの方にかかりきりになってしまっている。
そのため、役者であるラファルと、ベアトリスと共に脚本を作り上げた御令嬢達が観客席から俺達に演技指導というか、改善点を助言する、というのが基本的な練習パターンになっており、ベアトリスが構ってくれないのだ。
ラファルの出番の時は御令嬢達のみの指導になるが、何故かそのタイミングでは意見を言う声が小さくなるため、後でラファルから御令嬢達の意見を集めてもらい、それを又聞きしていた。
それが面倒なので、ラファルの出番の時はコミュ力の塊であるテールに意見収集してもらうことにした。
ラファルと違い、テールは演技に関してどうこう言うことはないが、彼女たちの意見を聞いて伝えてもらえるだけでリアルタイムで進行できるので有難い。
ラファルは可愛らしい容姿と穏やかな物腰から、御令嬢方に混じっても違和感がないし、可愛がられている。何気に学園内でラファルを見かけるときは女性に囲まれている。
テールは授業をサボりまくっているくせに、男女問わず友人が多い。
フエゴは男子の友人が多い。頼れる兄貴分、といった感じだ。劇の出番以外は大道具作りにも参加しているようで、俺も手伝いに一緒に行こうとしたら、
「シャルル様が来ると皆緊張してしまいますし、ほぼ出番になるので劇の稽古に集中して下さい。」と断られてしまった。
まあ、実際俺が出ないシーンはほとんどないんだよな。手伝いもあんまできないんだけど、せっかく学園祭の準備なんて青春行事だから参加したいな、と思う。大道具の作成なんて、皆でやっている感強くてザ・青春って感じするし。
幼少期からの貴族教育で、女子と接するのはなんだか気がひけるし男同士でわいわいやりたいんだよな。
そんな憧れを胸に秘めつつ、粛々と劇の練習に勤しむ俺であった。
最初は照れがあったが、基本的に強気で男のフリをする女性の役だから、男らしく台詞を言えばいいからなんとかなった。
問題の後半に入って、恋愛要素が強くなってくると、ダメ出しがドンドン多くなっていった。
今まで遠慮がちだった演技指導の御令嬢陣が、ラファルやテールを挟まなくても大声でダメ出しするようになっていった。
ぶっちゃけちょっと、いや、かなり怖い。
「シャルル様、そこは照れてはいけません!主役はまだフエゴ様からの愛情に気付いていないので、同僚として接する場面ですわ!」
「テール様!そこはもっとガバッと勢いよく!壁ドンは勢いです!」
「ラファル様!その場面はもっと上目遣いを!目を潤ませて!」
「フエゴ様!その照れ具合、解釈通りですわ!尊い……」
御令嬢方の熱の入りようが怖すぎて、俺ら役者陣は全員戦々恐々としている。
フエゴだけはあまり怒られない。意外にも演技の才能があるのかもしれない。
もちろん、主役級の俺たち4人だけではなく、端役の役者陣も場面場面で登場するのだが、彼女達はそちらの演技に対しては淡々と指導している。
俺らに対して演技指導をする時のみ目が血走っている。熱が入りすぎていて怖い。
学園祭が近づくにつれ、全体の熱気が増していき、俺もだいぶ関係者と自然に話せるようになってきた。
演技指導の御令嬢方はもちろん、他のスタッフとも絡むことが増え、最初は萎縮していた皆も、必要に駆られて話すようになり、徐々に雑談も交わすようになった。
学園祭でクラスが一丸となっていくような空気に俺も混ざれるようになったことを自覚して、つい口元が緩んでしまう。やっぱりいいよな、この感じ。
劇の練習の合間を縫って、というより授業の合間に馬術部にもちょいちょい顔を出すようにした。
劇の練習は、スタッフの時間が合うよう放課後に行われることが多いが、俺は取っている授業が少ないので授業時間の隙間を活用して時間を作ることができた。
馬術部の当日の役割は気を遣ってもらい、流鏑馬的なデモンストレーションの的交換だけにしてもらったが、事前準備の手伝いは積極的に関わりたい。
毎回会えるわけではないが、ペドロ先輩との時間は大切にしたいし、会えなくても馬術部の他のメンバーとも仲良くなりたい。馬術部には、ベアトリスとラファルに馬に乗れるようになってもらいたいと思って関わるようになったのに、ペドロ先輩と会って、1番俺が参加していた。2人もたまに来て、馬に乗れるようにはなったのだが、俺は元々馬に乗れたのであまり俺自身は参加することはないと思っていた。そう考えると不思議なものだ。
ペドロ先輩と関わる中で、他の馬術部の皆とも話をするようになった。先輩が卒業しても、馬術部にはたまに顔を出そうと思うくらいの縁ができている。
そしてこうやって学園祭にむけて準備をする中で、その縁は強固なものになっていく。
演劇も、部活も、俺がウジウジと悩んでいた、「友人が出来ない」という考えを覆してくれる。
親友、といえるのはやはりいつものメンバーだが、俺にだって縁は作れるのだ、というのをこの日々が教えてくれた。
更新滞っていてすみません、本当にぼちぼち頑張ります




