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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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90学園一年生49 出し物協議とSM会

90学園一年生49 出し物協議とSM会

「演劇がいいんじゃないかな?」

「私も演劇が良いですわ!」

「ベアトリスさまー。舞台で演技できますかー?」

「私は脚本、監督で!」

「しかし、ベアトリス様しか女性がいないのですよ?ヒロイン役をされるなら脚本、監督を兼任されるのは難しいのでは。」

「男性しか出ない演目にすればよろしいのではなくて?若しくはどなたかに女装していただくか、他にメンバーを募集すれば良いのです。」




わー楽しそうだなー。

俺たちは休日に集まって学園祭の出し物について話し合っている。

というか、俺は皆が話し合っているのを聞いている。

寮の中央部分、男女共用スペースにある応接室で集まり、何をやるか意見出しをしているところだ。


この世界にはホワイトボードがないので俺はノートを広げ、書紀のような役割をかってでた。

どうしても皆のテンションと俺のテンションに温度差を感じてしまう。俺は面倒くさがりなのだ。テールやベアトリス、ラファルもこっちサイドの人間だと思っていたのだが、予想に反して皆楽しそうだ。


「シャルル様も、書いてばかりではなく意見を出してください。」

急に話を振られて思わず肩が跳ねる。


「演劇なら、俺は裏方にしてくれ。」

『それは無理』だ、ですわ、です〜、です

語尾はバラバラだが皆の発言が綺麗に重なった。


「なんでだ!?絶対に無理だ!人前で演技なんか恥ずかしくてできるか!」

「いやいや、なに言っちゃってんの?王子様なんだから人前に立つのなんかなれてるでしょ?」

「そうですよ、シャルル様。いつも演技しているようなもんじゃありませんか。」

「え?何?どういうこと?」

「シャルル様、私も聞きたいですわ。フエゴ、どういうことかしら?」


「わかった!やればいいんだろう!」

思わず立ち上がる。

納得いかなそうなテールとベアトリスは置いておいて話を進めよう。フエゴには素の状態を見られているが、あれはあまり知られたくないのだ。王子らしくない。

俺はソファに座り直し、コホンと咳払いをして意見を続ける。


「演目を決めよう。ベアトリスが舞台に立たないなら、恋愛ものは却下だ。俺は演技でも他の女性と絡むのは絶対に嫌だ。あと、このメンバーだけでは人数が少なすぎる。役者だけでなく舞台を作ったり、当日の音響や照明と人員が必要だろう?早急に演目を決めて、必要人数、舞台装置、予算を作成しよう。」


「はい!私演目を決めましたわ!」

元気よくベアトリスが手を上げる。早いな。


「主要人数は丁度4人なのです!あとは端役で、かつ皆様にピッタリなのですわ!」


…………なんだか妙に生き生きしているのが気になる。


ベアトリスの気迫に押されたのか、ラファルがおずおずと尋ねる。

「あのーベアトリス様ー?決められた演目とはなんでしょうかー?」

「男装騎士は月夜に夢を見る、ですわ!今1番人気のある小説なのです。」


なんだか不穏なタイトルに感じるが、、、

「ラファル、知っているか?」

「いえー僕が読まないジャンルみたいですー。」

ラファルが読まないジャンルってことは恋愛小説じゃないのか?さっき恋愛ものなら俺はやらないと言ったのに無視されたのか?



ベアトリスが語ったあらすじは、訳あって男装している貴族令嬢が騎士として大成していくストーリーだが、その中で異国の王子や同僚の騎士、魔術師団長との恋愛が絡むというものらしい。


「そんな小説が流行っているんですね。」

フエゴはあらすじを聞いて感心したように頷いているが、俺は物凄く嫌な予感がしてベアトリスに確認する。

「今聞いた話では女性が主役だと思うのだが、ベアトリスが演るわけではないのだろう?」

若干声が震えていたように思うが仕方あるまい。


「ええ、もちろんシャルル様に演じていただきます。」

と、俺の好きな優雅な微笑みを返される。


「いや無」

「決定ー!面白そうじゃん!」

「同僚の騎士役は私でいいのでしょうか。」

「僕はー魔術師団長ですねー。テール様が異国の王子ー。ピッタリですねー。」

「皆様に了承いただけて嬉しいですわ。早急に企画書を作成いたしますわ!楽しみですこと。」


…………これって俺だけ恥をかけと?

イジメじゃないよね?

ペドロ先輩、人気者ってイジられ役ってことですかね?







********


SM(シャルル様を見守る会)定例会議



「……………………皆様、既に噂ではご存知かと存じます。」

その日、かつてない厳かな口調で司会者兼会代表の小柄な少女が口を開くと、大ホールに集まった参加者達は次の言葉を真剣な面持ちで待ち望んだ。


「シャルル様が『男装騎士は月夜に夢を見る』のヒロインを演じられます。」

司会者の少女が発言後、感極まったとばかりにグフッという音と共に口を押さえて崩れ落ちると共に会場からは金切り声や野太い悲鳴と、様々な叫びが挙がる。まさに阿鼻叫喚である。


『男装騎士は月夜に夢を見る』は、今この世界で圧倒的な人気を誇る恋愛小説で、貴族の御令嬢は読んでいなければ馬鹿にされるほど話題になっている。もちろん、この学園に通う貴族令嬢は全員が読んでいるといっても過言ではない。

その人気から、男子生徒でも隠れファンが多い小説だ。


その小説の主人公は貴族生まれの女性だが、武家の名門の一人娘ということで男として育てられる。辺境の地で生まれ育ったことから自分の境遇になんの疑問も持たずに育ってきたが、15の年に王都の騎士学校に入学し、自分だけが女性であることに驚きつつ、男と偽りながら生活をしていく。

その中で、素敵な男性達と出会い、女性としての自分の感情に戸惑ったり、女性の格好をしている時に会った男性に口説かれたりと、ドキドキさせられる展開に読者は夢中になっている。

そんな「男装」騎士を「女装」したシャルルが演じるという倒錯に倒錯を重ねたような役どころにSM会の面々は狂喜乱舞した。


そして、現実のシャルルとベアトリスの仲の良さについては疑いようがないことも知られている中で、見目麗しい「ご友人の方々」との恋愛模様がどのように描かれるのかと、「部会」メンバーの興奮がおさまらない。自分達の妄想が芝居の上とはいえ、現実として実現するのだ。今回脚本、監督を務めるベアトリスへ直接申し立てられなくても、彼女の友人達へ「部会」から激しい要望合戦が繰り広げられることは想像に難くない。


ちなみに大半の「部会」メンバーは、「ご友人の方々」とシャルルの仲を応援している。

今では「部会」は「ご友人の方々同士」にまで活動を広げているのだが、その部会については今回は涙を飲んでもらうしかないだろう。

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