学園一年生48 学園祭にむけて
更新が滞りまくりですみません!!完結まで程遠いのでのんびりお付き合いくださいませ、
89 学園一年生48 学園祭にむけて
さすが乙女ゲーだと実感させられることがあった。
リセドール学園にはクラスが存在しないのに学園祭があるのだ。
学園祭があるのは乙女ゲーとして、イベントが必要だからかな、としみじみ考えてしまう。クリスマスはないので、冬季休暇までにある攻略対象者としての親密度を上げるイベントとして存在するのだろう。
俺の前世日本の学園祭だと、クラスと部活、委員会で出し物をやっていたが、この世界は部活と有志で出し物を行う。
有志というのは、例えばカフェがやりたいっていう奴がいたら、そいつが掲示板に企画趣旨や必要人員数等を張り出して同志を募り、規定人数を揃えれば出し物を行う、という感じだ。
リセドール学園は貴族の学校なので、利益が出るような内容でもその分はプールされて次年度の学園祭に回されるらしい。
学園祭全体で見ると収益が見込める内容ではない出し物が多く、赤字になるため、学園運営費としてサファリアとアカサンドリアが予算を付けている。
各部活動への配分は優先的に行われるため、有志での出し物は学園として実行できる数が限られるし、収益が出るような内容の方が通りやすい。
いつもの学食での昼食時間も、学園祭の話題になった。学園祭まであと数ヶ月、徐々に掲示板で企画が張り出されてきているのだ。
「シャルル様、学園祭はどうされますか?」
目をキラキラさせながらフエゴが聞いてくる。
俺は苦笑する。やっぱりイベントものは楽しみなんだろうな。俺が高校の時も、すごく乗り気な同級生と、全く興味のない同級生がいたがフエゴは前者のタイプだな。
「どう、と言われても何も考えていないよ。馬術部の出し物に参加しようかとは思っているんだが。」
俺が顔を出している馬術部でもなにをやろうか、という話が出始めている。
例年は初心者のための乗馬体験がメインで、流鏑馬的なデモンストレーションを挟むらしい。
ペドロ先輩も今年最後だし、俺も参加しようかと思っている。
「演劇でもやりますかー。」
「いいんじゃないかな、それなら裏方募集しないとね。」
「それなら私の好きな小説、台本起こしますわ。」
………………あれ?
みんなノリノリ?
「お、俺は馬術部があるから参加しないぞ?」
え、何?視線が冷たくない?
気のせいか食堂内の学生達も無言でこちらを見ている気がする。
というか見られている。
聞き耳立てられていたのか?
なんだコイツ、王子のくせにノリ悪いな。みたいな空気感が居た堪れない。
「えーじゃあーなんだったらやるんですかあ?」
ラファルがなんだか柄が悪い。
「シャルルさあ、せっかく皆でなんかしようとしているのにさ、自分は参加しないとかどうなの?」
え、テールくん、俺が悪いの?空気読めよって言われている気がするんだけど。
「学生時代は3年間だけですのよ?やり切らないと勿体無いと思いませんこと?」
ベアトリスさんー。そんな体育会系な感じでしたっけ?
「シャルル様がお忙しいのも、馬術部の活動に参加したいのもわかりましたから、やれる範囲でできることをやりましょう!」
フエゴにまで気を遣われている。
そして食堂中の生徒が見守る中、俺は出し物の内容はともかく、何かやるなら参加すると頷くしかなかった。
*******
「……て、ことがあったんですよ。」
放課後、馬術部に顔を出し、馬の世話を手伝いながらペドロ先輩に今日の昼食時の話をした。
「それは大変だったね。シャルル君は人気者だからなあ。」
と大らかに笑われる。
ペドロ先輩は太陽のような人だ。
俺なんかよりよっぽど人気があるように思える。後輩から慕われているのも知っているし、友人も多そうだ。
「はあ。人気、というか私なんか王子だから注目されているだけですよ。……ははっ。」
情けなくなってつい自嘲気味に笑い愚痴を溢してしまう。
笑って欲しいと思って口にだしたが先輩の顔が強張った。
「シャルル君は君が王子だから友人や学生達が君に何かやって欲しいと思っているのか?」
その真剣な声音に、明らかに怒気が含まれている。
ああ、この人は俺のために怒ってくれているんだと察する。
だから俺も真摯に答えたい。悩んでばかりだが正直な気持ちを吐露する。
「正直最近、自分に自信が持てないんです。自分の存在が、王族であることにしか価値がないような、王族だから皆敬ってくれる、一方で王族だから敬遠される、そんな気分になっていて。」
俺の告白を受けて少し気まずそうな様子で頭を掻いた後、ペドロ先輩は真っ直ぐ俺の目を見て話をし出した。
「なあ、シャルル君。俺は王族じゃないから君の気持ちを理解できるわけではない。想像しかできない。」
俺がペドロ先輩の言葉を理解できるよう、少しの間を置き、再度語りかけてくる。
「少なくとも、俺が会った君の友人達は君が王族だから友人でいる、というようには見えなかった。冗談のつもりか、本気かはしらんがそんな言い方をするもんじゃない。彼等を貶めることになる。」
何も言い返せなかった。
ここ最近で新たな友人作りに失敗し、卑屈な気持ちになっていた自覚がある。
だけど、自分の友人に対してまで穿った見方をするようになっていたのか、と自覚させられた。
彼等はきっと、「俺」と学園生活を楽しみたい、と思ってくれただけなのに。
王族だから学生達に敬遠される、その考えに固執して、彼等まで同じように見えてきてしまった。
「…………俺が馬鹿でした。」
「わかればいい。」
ニカっと太陽のような笑顔を見せてくれた先輩に惚れ惚れする。
ああ、こんな風に怒ってくれる先輩ともこれが最後の学園祭になるのか、と寂しい気持ちにもなった。
「それにな、シャルル君は王族じゃなかったとしてもきっと人気者だったと思うぞ?」
…………それはどうだろう?
人気者じゃないし。やっぱり人気者っていったらペドロ先輩みたいなひとじゃないかな。
俺もこんなに熱くて人望のあるタイプになりたい。
その後、他の馬術部の部員とも合流し、学園祭の打ち合わせをした。
例年通り、一日中初心者乗馬体験を行うため、部員は時間制で担当することになった。
俺は馬術部の手伝いは流鏑馬、正確には弓や槍で馬上から的を打つデモンストレーションだが、の際の的交換という、簡単な裏方だけをすることになった。
他の活動で時間が取られることが予想できるため、馬術部では事前準備がなく当日少し参加するだけ、と気を遣ってもらった形になるのが申し訳ない。
ペドロ先輩との最初で最後の学園祭になるのだからもっと関わりたかったというのが本音だが。
流鏑馬を当日担当するのは3年生が中心で、デモンストレーションの時間や的の配置等は追々決めていくことになった。




