84 学園一年生43 シャルルとラファル
84 学園一年生43 シャルルとラファル
「シャルルさまー。」
ある木曜日の授業終わり、ラファルに声をかけられた。
「あれ、ベアトリスと同じ薬学の授業だっただろ?一緒じゃないのか?」
「ベアトリス様はー先生に質問があるとのことでーそのまま残られていますー。」
「そうか。」
「あの、シャルル様ー。少し聞きたいことがあるのでー2人でランチさせてもらって良いですかー?」
「ああ、もちろん。」
ラファルとの付き合いは長いが、2人きりで話すことは殆どなかったな。
思い返すと、学園入学前にベアトリスとの仲を心配して話をした時くらいかもしれない。
学園入学後も俺はテールとフエゴと一緒にいることが多い。
改まって2人で話したい、と言われればベアトリスのことだと想像は着くが、何の話だろう。
食堂でテイクアウトのサンドイッチを受け取り、屋上に来た。
屋上には他にも生徒が数組いたが、俺たちは他の生徒から離れた席のベンチに腰掛け2人で食事をとる。
なんとなく気まずい。
食事をとりながら、当たり障りのない授業や学園生活の話をしていたが、ラファルの声がいつもより低い気がして落ち着かないのだ。
「シャルル様はーベアトリス様のこと、ちゃんとお好きなんですかー?」
2人とも食べ終わったのを見計らって急に真面目なトーンでラファルが話しかけてきた。
隣に座るラファルの目はいつもより鋭い。真っ直ぐに俺を見ている。
急な質問に驚きつつ、
「勿論だ。」
と答える。
「27回」
「え?」
「27回ですーシャルル様ー。」
何の数字だ?
にこにこと笑顔でこちらを見ているラファルの顔が、笑んでるはずなのになんだか怖い。
「ベアトリス様に着きそうな虫を追い払った数ですー。」
「……そ、それは、」
「誰がベアトリス様の婚約者でしたっけねー?」
ラファルの顔は笑顔なのに目が全く笑っていない。
背筋に冷たい汗が流れる。
「確かに僕はーベアトリス様と同じ授業も多いですしー。仲も良いですしー。虫を追い払うのも勝手にやったことですしー。」
ペラペラと話し続けるラファルに返す言葉が思いつかない。
「……でもー。いい加減シャルル様の鈍感さには腹が立つというかー。」
「……もっと大切にしてあげてください。」
*********
ラファルと別れた後、寮の自室に戻って、ベッドに寝そべりながら1人考え事に浸った。
ラファルから告げられた言葉が消化しきれず、1人になりたかったのだ。
ベアトリスが俺の婚約者だということは、サファリアの者は勿論のこと、アカサンドリアの者にも周知されているはずだ。この学園でそれを知らない者はいないだろう。
ベアトリスがいくら可愛いからって、婚約者がいる女の子にアプローチする奴がいるのか。
あーでもゲームの中で、婚約者がいるシャルルにマリアがアプローチして、ベアトリスと婚約破棄していたな。婚約破棄はあり得なくはないのか。
精霊達に見守られての婚約式を行なって、俺とベアトリスの仲も良好で、なんの憂いもないと思っていた。
27回……
ラファルは俺が鈍感だから、と言っていた。
ベアトリスと俺が学園で2人だけになることがほとんどないということは理解している。
仲を進めるため、2人で会う時間を設けてはいるが、他の生徒がいる前ではなく大抵2人で外に出掛けている。
学園で俺達2人でいるところを見かけないせいで生徒達に不仲だと思われてベアトリスにアプローチするやつが増えている、ということか。
俺たち2人が仲が良ければ良いと思っていたが、ベアトリスに手を出そうとしている男がそんなにいるならもっと俺たちの仲を見せつける必要があるのか。
ラファルがベアトリスをずっと守ってくれていたんだな。
……ラファルが言う通り誰が婚約者なのかわからないな。
情けない。
前世でも付き合った女性には何考えているかわからない、だの、放ったらかしにしすぎだの言われて向こうから振られるばかりだったことまで思い出して自己嫌悪に陥る。
もやもやと考え続けているとノックの音がしてデリアが入ってきた。
「シャルル様、フエゴ様がいらっしゃってますがお通しして良いですか?」
「ああ、応接室で待ってもらってくれ。」
帰宅後制服のまま考え事をしていたので普段着に着替えて顔を出す。
「待たせたな。何かあったか?」
「いえ、昼食の時間に食堂にお姿がみえなくて、ラファルも居ないし、何かあったのかと思いまして……」
「少しラファルと話をしていただけだ。心配をかけたならすまない。」
昼食にいなかったくらいで過保護だな、と思いつつラファルと俺という組み合わせが珍しいため、その後も姿を見せなかったことで心配をかけたのかな、と思い苦笑する。
「い、いえ、ラファルとご一緒されることが珍しいので、何を話されたのか、気になると言いますか、、、」
なんだか慌てすぎて口籠るように話しながら顔まで赤くなっているフエゴが面白くてクスリと笑いが漏れる。
「お前から見て、俺とベアトリスの仲はどう見える?」
「へ……いや、あの、仲睦まじく見えますが?!」
「だよな……」
唐突な質問すぎて焦っていながらも、俺の望む答えを返してくれる。いや、いつも俺たちと一緒にいるフエゴにきいても仕方ないか。
一般生徒から見てどう思われているか、なんて聞く相手がいない。
俺って本当に友達少ないな。
「フエゴは俺以外に友人がいるのか?」
「は!?あ、いや、いつもシャルル様達といますが、それなりに受けてる授業の同じクラスに友人がいますが。」
わかっていた。わかってはいたが、俺だけがぼっち。
いや、フエゴ、テール、ラファル、ベアトリスと一緒にいるからぼっちではないんだけど。
友人が少なすぎる。
あいつ友達少ないよなー王子なのに笑
とか一般生徒に笑われているのでは。
そんな惨めな俺からなら、婚約者であろうとベアトリスに粉をかけても奪えるのでは、と思われているのではないだろうか。
「シャルル様、どうされました?」
首を垂れて塞ぎ込んだ俺にフエゴが焦って声をかけてくれる。お前はいい奴だな。
「決めた。俺は友人を増やす!」
「は?」
ラファルから忠告してもらった通り、俺からベアトリスを奪えると思っている奴が多いなら、その要因は潰すべきだ。
俺の最大の欠点、友人の少なさから来る不仲説をぶっ潰すべく、友人作りに勤しむことにした。
******
「なあ、ラファル、シャルル様に何を話したんだ?」
「えー。ベアトリス様にアプローチする虫を僕が潰すのはおかしいって話だよー?」
「シャルル様は友人を増やすことに注力するって話していたが?」
「は?何でそうなるのかなー?」




