83学園一年生42 魔物学実践授業
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83学園一年生42 魔物学実践授業
学園一年生後期の魔物学の授業では、魔物との戦闘実践を行う。
てっきり、周辺の森にでも行くのかと思っていたのだが、最初のうちは学園内にある施設の中で、授業のために捕縛された弱い魔物と戦うところから始めるらしい。
自分が何度も魔物と戦っているから忘れていたが、普通の王都で暮らすような子息令嬢は魔物を見るのも初めて、というような者が大半だ。
アカサンドリア出身の貴族は魔物との戦闘経験者が多いが、全体の生徒の安全性を鑑みると、いきなり野外での戦闘は非現実的だ。野外だと、場所により出現しやすい魔物は想定できるが、いきなり強い魔物が出現する可能性もある。焦った生徒が森で遭難する可能性もある。
魔物学の授業は、俺の学友全員が取っている唯一の授業だ。ゆくゆくは戦闘での連携を高めたい、と思って全員に魔物学をとってもらうよう勧めたのだが、と思いながら講師からの今後の流れの説明をきく。
実践授業の最初のうちは、一対一で倒せるような弱い魔物との戦闘訓練、というか、まず魔物との戦闘に慣れるところから行い、徐々に強い魔物との戦闘を行ってゆく。
2年生になったら、複数人で戦う訓練をし、戦闘に慣れたあたりでようやく野外で実践を行う予定だ。
今日は魔物学の授業で初めての魔物との戦闘。
何度も見たことのある兎の魔物。
一角兎だ。
その名の通り額部分に一本の角があり、中型犬くらいのサイズで、普通の兎より凶暴な顔をしており可愛げはない。すばしっこいが戦闘能力は低い魔物だ。
1匹ずつ檻に入れられていて、檻の中で所在なさげにくるくる回っている個体や、ぐっすり眠っている個体がいる。
1人目の生徒の名前が呼ばれ、みんなの前に進み出て、彼の5メートルくらい先に檻が一つ置かれる。
「一角兎はその角での攻撃がメインで、攻撃時には直線的な動きしかしません。向かってくる途中に魔法で倒すか、対峙して剣で倒すか、得意な方で倒してください。素材は肉と毛皮、角です。魔法は全属性有効ですが、素材を取るなら剣で倒す方がよいですね。危なくなりそうなら講師が助けに入りますので気にせず戦ってください。初めて魔物と戦う生徒には特に気を配りますので戦闘前に自己申告をお願いします。魔法は中級魔法までしか使用しないように。結界が持ちません。一角兎でしたら、初級魔法で充分に致命傷を与えられます。」
講師の説明の後、順に一角兎との戦闘に入る生徒達。
初めて魔物と戦闘する者の中には怯えてしまい動けなくなる者、切った後の血を見て泣いてしまう者もいた。
そんな生徒の様子を見て、自分が初めて魔物と戦った時は高揚感が勝っていて、何の抵抗もなかったな、と思い返す。
前世で食品関係の仕事についていて、屠殺場の視察や、ジビエ肉の仕入れのため猟について行ったりしていて、あまり抵抗がなかったが、普通の感覚では怖いのかもしれない。特に今日の相手は一角兎。虫系の魔物や植物系の魔物より抵抗感が高そうだ。
初めての魔物討伐の実践授業である今日はあえてそういう魔物を選んだのかもしれないな。
自分が魔物を殺すことにむいているか見極めさせるために。
魔物学の授業は途中でやめる生徒も多いと聞く。魔物とはいえ、何かの命をとる、ということ自体への嫌悪感には個人差があり、慣れることはできない者もいるからだ。
「次、シャルル君」
講師からの呼びかけに応じ前に出る。
檻の扉が開けられると真っ直ぐにこちらに向かってくる一角兎。
テールから渡されたアカサンドリアで作られた剣で首を刎ねる。
実戦で初めて使用したが、軽いのに素晴らしい切れ味だ。
首に骨があるはずなのに、まるで紙でも斬ったかのように刃への抵抗感がない。
一瞬の出来事に周りが静かになっているのがわかる。
とりあえず、にっこりと微笑んでおく。
日本人はとりあえず笑っておく人種なのだ。
「次、……君、、、」
講師が次の生徒を呼び、皆我に返ったような顔をし、次の生徒に集中する。
フエゴとテールも一刀で首を刎ね、ベアトリスとラファルは初級魔法であっけなく仕留めた。
全生徒を見ていて、俺たち5人は圧倒的な強さだと実感した。
剣技、魔法の強さ、正確性はもちろんだが、精神的にブレないのだ。
特にベアトリスとラファルは魔物と戦うのは初めてのはずだ。
初めて魔物と戦う生徒にみられる怯えや緊張が2人からは感じられなかった。
「2人とも初めての戦闘だろう?怖くなかったか?」と、授業の後聞いてみたが、2人ともキョトンとした顔で顔を見合わせる。
「あのー。魔法の練習でー。父上やシャルル様の魔法を見慣れているのでー。」
「兎の魔物くらいだと怖さが感じられなくなってしまいましたの。以前お出かけした際にも蝶の魔物を見たことがございましたし。」
「そ、そうか。」
2人が肝が据わっているのは俺のせいでもあるらしい。
頼もしく思う反面、悪い道に引き摺り込んだような変な罪悪感を感じる。
まあ、ここまで来て2人が魔物と戦えない、と言い出すよりは良いのだがなんだか複雑な気分だ。
「もう少しー手応えのある魔物と戦いたいですー。」
「そうね、2年生になれば1人で対処できない魔物とも戦えるみたいですし。精進しましょう!」
なんだかとってもやる気な2人を見ながら、講師にもっと強い魔物を早めに用意してもらうよう相談しようと思うのだった。




