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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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82/116

スルス視点

82 スルス視点

シャルル王子がポリニャック領に行ってみたい、と言い出したのは学園でのことだった。


私からシャルル王子に以前からポリニャック領の話をしていたこと、彼自身が王都以外の視察に出かけたことがないことから、そう考えるのも自然なことに思えた。


彼自身の年齢がまだ若いことに加え、目立ちすぎる容姿のため、サファリア国王が彼を王都以外へ視察に出すことを躊躇していただろうことは容易に想像できた。


私や、彼の学友も一般的に整った容姿をしていると思うが、シャルル王子の容姿は人外のものではないか、と思わされるものだ。あそこまで飛び抜けていると生活するのも大変だろう。

それを本人が自覚していないのが尚更タチが悪い。



とはいえ、可愛い生徒が我が領に来たいというのならば、もちろん受け入れたいと思う。

将来の国王となる彼にとって、王都以外の領地がどういう状況にあるのか、知っておいて損はない。


話で聞くより、現地に行くということが大切なのだ。幸い、私が作成した認識阻害の腕輪があるため、彼の容姿が視察の害になることはないだろう。


1日くらいは、王子が視察に来た、という実績を作るため、そのままの姿を晒してもらう必要があるが。


シャルル王子が街に現れれば大変な騒動になることは想像に難くないため、警備や人員の流れなど、調整事項は多いがなんとかできるだろう。父のアルガンも私も、領地内なら如何様にもできる。

父に、シャルル王子の容姿の注意点をうまく説明できるかが1番の問題だ。危機感を持って接してもらわなければなるまい。





夏季休暇に入ってすぐ、シャルル王子から王の許可が出たためポリニャック領を訪問する、と書面が届いた。正式に決まるまで具体的には動けなかったが、ポリニャックに王子が来る可能性があることを事前に父に相談はしていた。


父は王城でシャルル王子を何度も見たことがあったため、私が1番懸念していた彼の容姿に対する説明は必要なかった。

彼が無自覚キラキラ王子、という笑えるものの的確な渾名を付けられていることも教えてもらった。

父とため息を吐きながら、キラキラ王子対策を考えることにした。


王子が来領する際の訪問ルートや警備状況を入念に検討している際に、王子の姿絵を販売して小遣い稼ぎをしよう、と父が提案してきた時は耳を疑った。結果、一儲けできたので、我が父ながら抜かりがないな、と感心させられた。




シャルル王子がポリニャック領にやってきて、街を視察した際は案の定大変な騒ぎになった。

こうなることを予想して、父と私で綿密に計画を練っていたため、大きなトラブルがなく済んでホッとした。

こうやって街民の反応をみると、リセドール学園内でシャルル王子をみかけた際に生徒がみせる反応は大人しいものだったのだな、と感じる。

学園の生徒は遠巻きに見て顔を赤らめたりコソコソ話したりはするものの、直接シャルル王子に話しかけようという猛者はみかけない。

街民は積極的に握手をしに行っている。

涙を流して拝んだり、叫び声を浴びて気絶したりする者もいるが、救護班もうまく稼働しているため問題はない。

シャルル王子も、流石にそんな過激な者には驚いているようだが、積極的に握手に答えている。

流石に徐々に疲れが顔に滲んできてはいるものの、街民との握手を嫌がる素振りはないことに感心させられる。




翌日、街の警備状況をシャルル王子に見てもらい、夕食時にミラドーナの来訪を伝えられる。

毎度毎度、ミラドーナの自由さには呆れさせられる。

突然やってくるのが当たり前のエスタニアの王女。

私の幼馴染。

よりにもよってサファリアの第一王子の視察に被るとは。

あの無作法な王女を我が国の王子に会わせてよいものか。


大きなトラブルにならないことを願いながら、シャルル王子に伺いをたて、ミラドーナに会わせることとなった。





マナー無視でミラドーナがポリニャック家の朝食の場に飛び込んできた時は、こういう奴だとわかっていても肝が冷えた。

説教時間、もといマナー教育時間を10倍にすべきだ。というか、もう入国拒否にでもしてやった方が良いかもしれない。




その後、3人で港を訪問し、シャルル王子の視察を進めた。

貿易事務所の視察時に、私が早急に対応すべき事項があり、ミラドーナとシャルル王子は先に昼食の場に移動してもらうことにした。


私が遅れてレストランに到着した時に、2人の間に何か気まずそうな雰囲気が漂っていたことから嫌な予感がした。


ミラドーナがまた失言をしていたとしたら、シャルル王子が呆れ顔になり、ミラドーナが突っかかっているはず。

だが、ミラドーナの方が気まずそうな顔をしてシャルル王子をみている。

何があったのだろうか。


私の心配をよそに、食事が始まると2人は昔からの友人のように話始めた。

ミラドーナにつられてか、シャルル王子の話し方もフランクなものになっていた。

友好関係にある2国の王族達が仲良くすることは喜ばしいことではあるのだが。

2人の仲があまりにも縮まっていることに私の胸にざわりとした嫌な感情が芽生える。


私の研究室にシャルル王子とベアトリス嬢が一緒に来る時もあるため、何度か2人の様子を見ている。シャルル王子がベアトリス嬢と会話する時は、王子らしく紳士的に接している。


それとは違い、ミラドーナと話す時のシャルル王子は自然体のように感じる。


もちろんシャルル王子が私と接する時も教師と生徒、という立場なので、こんなに楽しそうに、かつ親密に誰かと話しているシャルル王子を見るのは初めてだ。



このもやもやした気持ちは何なのだろう。


自国の王子が、婚約者がいる身で独身女性と親しくしている状況。

それを謀らずしも、自分が仲介してしまったことに対する不安と焦りだ、と結論づける。









館に帰宅して、今日のミラドーナとの接し方を注意しなければ、と思いシャルル王子を呼び出すことにした。

ミラドーナだけではなくシャルル王子にまでマナー講習が必要になるとは嘆かわしいことだ。


とはいえ、シャルル王子が私の部屋に来たもののどう切り出せば良いかわからず、言い淀む。

自分から今日の反省を述べてくれればよいのだが。


「あ、あの、スルス先生?お話があるのですよね?」


シャルル王子の方から声をかけられ、気づいていないのか、と一睨みする。

「シャルル王子。私が言いたいことがわかるかね。」


「申し訳ありません、何も思いつきません。」

怒りを通り越して呆れる。


「君は既に婚約者がいたと思うが。」

シャルル王子は鈍感だが馬鹿ではない。そう言えばわかるだろう、と思いヒントを出す。

少し考える素振りを見せた後、気がついたようだ。


「軽率でした。」


ミラドーナとの接し方の件でここに呼んだこと、何が悪かったのか理解したのだろう。


「念のため聞いておくが、ミラドーナに惹かれたわけではあるまいな?」


「それはありません!話が盛り上がってしまいましたが、そういった感情は皆無です。」


その言葉で気持ちが落ち着くのを感じた。


「ほう?随分と楽しそうだったが?君のあんなに生き生きとした様子は初めて見た。」


口に出して少し後悔した。何でこんなことを言ってしまったのか。私といる時はあんなに自然体でいることはなかったのに、ミラドーナと親しく話す姿が頭に残ってしまったのだ。


「シャルル王子、婚約者がいる身で先程の態度はいかがなものかと思うぞ。私から見ても、……その、親しげな恋人同士のように見えた。」

誤魔化すように実際に感じたことを告げてしまう。


「申し訳ありません、腕輪の効果があると油断してはいましたが、浅はかな言動でした。」

「いや、言動もだが、ベアトリス嬢からミラドーナへ心を移されたのか、と心配になってだな。」

そうだ、あくまでも私はシャルル王子の婚約者であるベアトリス嬢を心配しているのだ。


「まさか!ミラドーナは友人です。彼女も、その、想う男性がいると聞き、私もベアトリスの話をして、それでお互い気兼ねなく話せたのです。」


「あのミラドーナに想い人!?それは意外だな。そうか、まだまだ子供だと思っていたが。」

ミラドーナは幼少の頃から知っているためか、私にとってはまだまだ手のかかる子供、という位置付けだった。シャルル王子と2人でいる時にそんな話をしていたとは。


「まさかそんな話を私が来るまでの短時間で話していたとはな。どういう流れで聞いたのだ?」


「秘密です。たまたま彼女が口を滑らしただけです。」


「まあ、ミラドーナのことだから想像はつくが。私には相談してこないのに。」


「俺にもうっかり話してしまっただけで、相談してきたわけではありませんよ。秘密にしているようなので、相談してくることはないと思いますよ。」


「まあいい、2人が仲の良い友人となった、ということなら問題はない。ただ、あのような親密な態度は問題だ。以後気をつけるように。」

ミラドーナに想い人がいる、ということがまだ信じられない気持ちではあるが、その話があったから、気兼ねなく2人が仲良くなったのだということに安堵する。

婚約者がいるのに、他の女性と仲良くなるのは良くないことではあるが、自分に恋愛感情を持たれないとわかっていたからこその距離感だったのだろう。


と逡巡していると、シャルル王子から見つめられていることに気付く。

「なんだ?人の顔をジロジロとみて。」


「いや、す、すみません、もしかしてヤキモチでも焼かれていたのかと。」


!!ヤキモチだと、誰が誰に妬いたというのか!


「馬鹿なことを言うんじゃない!話は終わりだ!君達は一国の王子と王女だ!節度を持って接するように!」 


顔が熱くなっているのを感じ、シャルル王子を退出させた。




ヤキモチだと?


違う。絶対に違う。


私がミラドーナに妬くなどとあり得ない。













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― 新着の感想 ―
[良い点] ミラドーナに妬く?妬くんだったらシャルル様にでは?と思いましたが、これはつまりフエゴくんのライバル登場でしょうか。 まだ仲の良い友達がぽっと出の女の子と仲良くしてるのを見て嫉妬した、くらい…
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