学園一年生39夏季休暇9ポリニャック領訪問5 スルスのお叱り
81学園一年生39夏季休暇9ポリニャック領訪問5
「じゃあね、シャルル!貴方がエスタニアへ来るのを楽しみにしているわ!」
「ああ、ミラドーナ。土産に俺が狩った魔物の魔石を持っていく。」
すっかり仲良くなった俺たちは敬称もなく話すようになり、お互いの王都訪問の話までしていた。ミラドーナはこの後商人との面談があり、要件が終わった後は帰国するため、ここで別れることとなった。
ミラドーナと別れた後、俺とスルスは、貿易船から上がってきた商品を媒介する商店を見学させてもらい、領主の館に戻ってきた。
なぜかずっとスルスは眉間に皺を寄せていた。
そんな怖い顔をしていては、視察先の商人達も怯えているではないか、と思いながら注意するのも怖いため触れられずにいた。
「シャルル様、お話があるので落ち着かれましたらお声がけください。」
有無を言わせない冷たい口調で告げられ、思わずすくみ上がりながらこくこくと頷く。
午後機嫌が悪かったのは俺のせいか?
何かやらかしたのだろうか。
不安になりながら、港で潮風を受けベタついた肌を洗い流すために湯を浴び、着替えた後にスルスとの話に挑んだ。
スルスの私室に通され、研究室のような壁一面の書物の山に見入っているとソファーに腰掛けるよう促される。
茶を運んでくれた使用人が退室すると、スルスが大きなため息をついて、重苦しい沈黙が訪れる。
居た堪れない気分になり、口を開く。
「あ、あの、スルス先生?お話があるのですよね?」
ジロリと睨まれる。
「シャルル王子。私が言いたいことがわかるかね。」
皆目見当がつかない。
「申し訳ありません、何も思いつきません。」
正直に言うと、益々厳しい目付きになり、大仰にため息をつかれる。
「君は既に婚約者がいたと思うが。」
そうか、ミラドーナとの会話が盛り上がりすぎていて、傍目から見れば俺が未婚の女性と親しくしていると見られてもおかしくはない。
俺はミラドーナがスルスのことを好きだと知っているし、ミラドーナも俺が婚約者のベアトリスを慕っていることを知っているので、あまり気にしていなかった。食事中も認識阻害の腕輪を発動していて良かった。ヘタをするとレストランの従業員からおかしな噂が立っていたかもしれない。
「軽率でした。」
同席していたスルスは気が気じゃなかったことだろう。浮気現場に同席させられたようなものだ。本当に俺とミラドーナが想いあっているのなら、2人を合わせてしまったことに堪らない罪悪感を持つだろう。
「念のため聞いておくが、ミラドーナに惹かれたわけではあるまいな?」
「それはありません!話が盛り上がってしまいましたが、そういった感情は皆無です。」
「ほう?随分と楽しそうだったが?君のあんなに生き生きとした様子は初めて見た。」
その一言で俺は言葉を詰まらせてしまう。
実際楽しかったのだ。
ミラドーナの歯に衣を着せぬ言いようには、王女としてどうか、という気持ちが最初こそあったが、国についての意見を交わすうちに気にならなくなった。
ああ見えて、ミラドーナは自国のことをしっかり勉強しており、国の課題について率直な意見や自分なりの解決案も見出しているし、着眼点も面白かった。
いい友人になれたと思う。
「シャルル王子、婚約者がいる身で先程の態度はいかがなものかと思うぞ。私から見ても、……その、親しげな恋人同士のように見えた。」
流石に生徒とはいえ自国の王子に対して言いづらかったのだろう。最後の一言は言い淀んで俺から目を逸らす。
「申し訳ありません、腕輪の効果があると油断してはいましたが、浅はかな言動でした。」
「いや、言動もだが、ベアトリス嬢からミラドーナへ心を移されたのか、と心配になってだな。」
「まさか!ミラドーナは友人です。彼女も、その、想う男性がいると聞き、私もベアトリスの話をして、それでお互い気兼ねなく話せたのです。」
すまん、ミラドーナ。相手がスルスだとは伝えないから安心してくれ。
「あのミラドーナに想い人!?それは意外だな。そうか、まだまだ子供だと思っていたが。」
全くスルスは気づいていなかったようだな。頑張れ、ミラドーナ。
「まさかそんな話を私が来るまでの短時間で話していたとはな。どういう流れで聞いたのだ?」
「秘密です。たまたま彼女が口を滑らしただけです。」
「まあ、ミラドーナのことだから想像はつくが。私には相談してこないのに。」
「俺にもうっかり話してしまっただけで、相談してきたわけではありませんよ。秘密にしているようなので、相談してくることはないと思いますよ。」
貴方相手なら相談ではなくて告白になりますよ。
「まあいい、2人が仲の良い友人となった、ということなら問題はない。ただ、あのような親密な態度は問題だ。以後気をつけるように。」
ホッとしたようにスルスが告げる。
これは立場上の発言なのか、スルスがミラドーナに気があるからなのかどっちなのだろう。
友人になった俺としてはミラドーナの恋が上手くいくよう応援してやりたいが、スルスの顔からは判断がつかない。
「なんだ?人の顔をジロジロとみて。」
しまった、顔色を伺おうと顔を見過ぎた。
「いや、す、すみません、もしかしてヤキモチでも焼かれていたのかと。」
途端にスルスの顔が真っ赤になる。
「馬鹿なことを言うんじゃない!話は終わりだ!君達は一国の王子と王女だ!節度を持って接するように!」
追い出されてしまった。
あの反応は脈ありっぽいぞ。よかったな、ミラドーナ。
まだ終わっていないのに新しい作品アップしました。
ラブコメです。良かったらそちらもどうぞ。




