学園一年生33夏季休暇4 王との面談 ユアンとフェルディナンド
73学園一年生33夏季休暇4
ドラゴンに対する対策は現王である父の対策を引き継ぎつつ、次期王となる俺も対策を考えていくことにし、詳細は後日とした。この場では大まかな方針だけ決まれば個別に騎士団長のアランや王宮魔導士のユアンと相談ができるので良しとする。
本題のドラゴンの話に区切りをつけた後、次の話題を切り出す。
「父上、私は学園に行くまであまりにも国内、国外について不勉強でした。」
今世の大半を城内で過ごし、王都の外に出るのも王都周辺の魔物討伐程度。夜会でも話すのは顔見知りの者が中心で、他の者は挨拶程度しか話してこなかった。まだ13歳とはいえ、世間知らずにも程がある。紙の上で勉強したつもりになっていたが、アカサンドリアの第五王子テール、国内のポリニャック領主の息子スルスと知り合い、彼等と話す中で自分の不勉強を思い知るばかりだった。
「サファリアの王都以外の領地や国外に足を運ぶ許可をいただけませんか?」
父であるダール王、宰相のベルナールが顔を見合わせて目線でやり取りをする。ベルナールは慌てた様子で俺と父上の方をチラチラと見る。そんな様子のベルナールに軽く息を吐き、父上は俺の目を見て言う。
「お前が次期王になる上で必要なことだ。、、、ただ、視察時の体制についてはベルナールと相談をしてからだ。」
警備体制や、訪問先の準備体制等、色々と検討すべきことがあるのだろう。
「もちろんです。つきましては、もしこの夏季休暇中に都合が合えばポリニャック領にお邪魔したいのですが、、、。」
「夏季休暇中は王宮にずっといるのではないのか!?」
前傾姿勢で間髪入れず突っ込んでくる父に、普通子供と一緒にいたいのは娘の場合ではないか、と苦笑しつつ返す。
「もちろん、急な話で受けてもらえるかは分かりませんが、父上の許可がもらえるなら早い方が良いと思いますので、この夏季休暇を利用したいと思っています。魔法陣の講師のスルス先生がポリニャック領主の息子なので、まずは知っている方のところに、と思いまして。」と説明すると、面を食らったような顔をしながら、
「検討する。」
と了承をもらえた。
父との面談時間が定刻になったため、話を切り上げ、退席した。
「ベルナール、どう思う?」
「ポリニャック領主へは早馬で知らせれば問題ないかと。ただ、王都、いや、王宮からシャルル王子を出すとなると、、、、」
「その問題で今まで閉じ込めていたようなものだからな。」
「ポリニャック領主には申し訳ないですね。」
シャルルの目立つ容姿は視察には向かない。対応するポリニャック領主には申し訳ないが、頑張ってもらうとしよう、とダール王は心の中で謝るのだった。
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父との面談が終わると、魔導士練習場に足を向けた。ベアトリスとラファルがユアンから指導を受けているはずなので、途中で合流すると伝えてある。
近づくと、練習場全体に結界が張られてあるのがわかる。最近、学園では魔法陣による結界を張ってあるが、強度、範囲共にやはりユアンの結界は別物だな、と感心しながら繁々と観察する。
「シャルル様ー!」
俺に気付いたラファルが声をかけて走り寄ってくる。一緒にいたユアンもそのラファルの声で俺に気づき、ペコリと頭を下げた後、こちらに近づいてくる。
「ユアン、久々だな。ラファルの魔法の腕はどうだ?」
「ご無沙汰しております、シャルル様。あまり学園では高等魔法は練習ができなかったようですね。とはいえ、初級魔法、中級魔法の練度はあがっていましたよ。よく頑張りましたね、ラファル。」
父に褒められて嬉しいのだろう。ニコニコしながらユアンの方を見るラファル。柔らかい微笑みを浮かべるユアン。この父子は仲が良くて微笑ましいな。
「ところで、、、ベアトリスの姿が見えないな。」
辺りを見回してもベアトリスの姿はない。確かラファルと一緒に魔法の練習を行うと聞いていたのだが。
「ベアトリス様は、その、フェルディナンド様が先程連れて行かれまして。」
すっかり失念していた。サファリアにはシスコンを拗らせた面倒くさい男がいたのだ。
「フェルディナンド義兄上か。彼も仕事があるのでは?」
「午後は休みをとられたとのこと。もう追いかけても追いつかないでしょうね。」
俺とベアトリスの予定を調べて会わせないように連れ去ったのだろう。ちゃんと仕事をしているのか不安になるが、将来の宰相候補として文官の職につき活躍しているとは聞いている。俺が王になる頃にはフェルディナンドが宰相か、、、今から頭が痛い。あの敵意丸出しのシスコンと上手くやっていける気がしない。妹のことさえ挟まなければ有能な人材ではあるのだが。
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約30分前
午前中からユアンに見守られ、ラファルとベアトリスは魔法の練習を行っていた。今日は練習というよりも、2人がこの半年でどの程度成長したのかの確認を講師のユアンが行うのが目的だった。魔力切れを起こさぬよう、高等魔法だけでなく初級魔法からその成熟度を確認していく。ラファルとベアトリスの2人は元からセンスがよく、勉強熱心であったため、学園入学前から13歳とは思えない腕だったが、半年経ち、更にその精度が上がったことに満足するユアンだった。
昼休憩を挟み、午後から再開しようとした直後、こちらに歩み寄ってくる黒色の髪の顔が怖い男がいた。
「お、お兄様?」
「ユアン、ベアトリスは急用だ。帰るぞ。」
突然現れたフェルディナンドがユアンに声をかけ、ベアトリスの腕を掴んで帰ろうとする。
「お待ちください、お仕事はどうされたのですか?まだ私もユアン様に見ていただいている最中ですのよ。」
フェルディナンドの腕を振り払い、困り顔をするベアトリス。
「フェルディナンド様、この後シャルル様もいらっしゃいますし、まだベアトリス様も練習されたいようですが、、、」
とユアンが口を挟むが、ギロリと睨みつけ、
「家族の急用だ。仕事なら午後は休みを取っている。急用なのでご容赦いただきたい。ベアトリス、母上が待っている。行くぞ。」
と言いながら、強引にベアトリスを連れて行ってしまう。急用なのに休みを取っているのか、と呆れながら見送るユアンにラファルが
「父上ー。諦めましょうー。フェルディナンド様がいくら頑張っても意味がないですしー。サファリアにいる時くらいは好きにさせておいたらいいんですよー。」
と少し黒い一面を見せながら声をかける。
ユアンはため息を吐いた後、息子の魔法の練習に付き合うのだった。
ユアンは自身の結婚において、さしたる障害がなかっただけに、面倒な小舅がいるシャルルに同情するのであった。




