学園一年生31夏季休暇2 騎士団との訓練
学園一年生31夏季休暇2
サファリアに帰ってきた翌日から、以前のように騎士団の練習場に通うことにした。
学園に通ってから、素振りは部屋で毎日行なっているが、対人練習は基本的に授業で週に2回だけ。フエゴやテールと寮の裏で練習はしているものの、学園に通う前より剣を振るう時間が減っていた。魔物とは学園に入ってからはベアトリスと出かけた一度しか戦っていない。
腕が鈍ってるのではないかという焦りがあった。
「面白いですね。」
俺の指導に当たったフエゴの父、騎士団長のアランが俺とフエゴの打ち合いをしばらく見た後にそう言ってきた。
俺はその言葉の意味がわからず首を捻る。アランは更に俺に訊ねてくる。
「半年で戦い方が変わりましたね。どんな方とお会いしたのですか?」
二刀流で戦うアカサンドリアのテールや、ペドロ先輩との騎馬訓練、他のクラスメイトの武器や特徴を説明する。
「なるほど。良い相手に恵まれましたね。」
「ああ。良い練習相手に恵まれている。ただ、自分では違いがわからない。」
「はい。ご自分では気づきにくいと思いますが。」
とにこにこして、俺とフエゴを見るアラン。
フエゴは、むすっとした顔でアランに言う。
「何が変わったっていうんだよ?にやにやしてんじゃなねえぞ、くそ親父。」
アランからフエゴの頭頂部に素早く拳骨が落ち、フエゴは頭を押さえてしゃがみ込む。
「口が悪いぞ。ちょうど魔物討伐の依頼が来ている。シャルル様もお付き合い願えますか?」
フエゴを一睨みしたあと、こちらに笑顔を向けて話しかけるアランに怯えながら頷いた。
今回の討伐依頼の対象ははオークだ。森の外に出てきたオーク二体は人型の形態の魔物だ。前世のRPGだと、亜人として仲間になったり、猪や豚のような容姿だったりするので今世とは違う。今世のオークは、「鬼」のイメージに近い。筋骨隆々の3メートルくらいの大男で、牙と短い角が2本額に生えており、肌は緑色をしている。目は白目部分が黒く、いかつい顔をしている。俺はこっそり緑鬼と渾名をつけた。
騎士団10名と共に緑鬼の前に馬で駆けつけた俺とフエゴに、一対一でオークと戦うようアランが言う。もちろん騎士団員からは反対の声が挙がる。通常オーク1匹に騎士団数名であたる。一対一でも倒せるが、安全策として数名であたるのが基本の戦い方だ。
俺だって反対だ。俺は第一王子という立場がある。死んでしまったら騎士団の責任問題になる。騎士団員が言い含めてくれないかな。
「ごちゃごちゃうるせえ!危なくなったら補助に入るっつってんだろ。」
アランの一声で騎士団員が静まりかえる。
「問題ない。フエゴは右のやつ、シャルル王子は左のやつと戦うんだ。」
フエゴが飛び出し、右手にいるオークに斬りかかる。
仕方ない、と思い、補助魔法を発動した後、俺ももう一体へとむかう。
思いの外柔らかい。そして遅い。
巨体の緑鬼は棍棒を振り回しているので、1発でも当たるとかなりのダメージを受けそうだ。恐らく一撃でこちらは動けなくなる。
ただ、モーションが遅く、棍棒を振り上げている時にこちらの剣で切りつけることができる。腰蓑のような装備しかつけていないので、上半身、足と斬りつけるが、皮膚も柔らかく、簡単に切ることができる。魔物によっては剣では深く切り裂くことができない硬い肌を持っているため簡単に剣が入るオークの肌は柔らかく感じる。
チラリとフエゴをみると、もう相手のオークが膝をついている。体に刻まれた傷は多くはないが、俺が付けたものよりも深い。
一撃の重さでは敵わないな、と思いながら対峙しているオークがまた棍棒を振り上げた隙を狙い、懐に入り剣を突き刺す。
騎士団員からの声援を浴びながら、団長のアランの元に討伐の報告にいく。フエゴも一緒だ。
「よくやったな。以前の自分との違いがわかったか?」
そう言われて、学園に通う前の戦い方を思い返す。フエゴはもっと力技で押し切っていたし、俺の剣はもっと軽かった。2人とも相手への対処の仕方に幅が出ていた。
「はい。確かに変わりましたね。」
「2人の上達をみて、オークくらいなら2人とも1人で倒せるとわかっていたから任せた。まあ、なんかあったら俺の首が飛んでいたがな」
と笑うアラン。
「ちょ、親父、笑い事じゃねぇよ、、、」
フエゴと騎士団員は苦い顔をしていた。俺にもしもの事があったら物理的にアランの首が飛んでいた可能性もある。俺はため息をついた。
「任せていただけるのは嬉しいですが、あまり無茶をさせないでください。」
「オークくらい余裕だっただろ?無茶はさせていない。シャルル王子もフエゴも、もっと色んな敵と戦っていく方が伸びる。」
アランは気がつくと俺に敬語を使っていない。フエゴと親子だな、と思う。まあ、俺も敬語だったり上からだったりと安定しないので人のことは言えないが。立場が上だから命令口調じゃないと、と思うんだけど、習っている立場としては敬語になってしまう。学園の先輩や教師にも敬語だからサファリアに戻ってきても敬語のクセが抜けないままだ。
緑鬼との戦いを終え、俺は少し強くなれているのかな、と実感があった。フエゴとも話し、フエゴも以前より上手く戦えたと感じているようだ。
小さい頃から騎士団の皆との訓練を重ねてきたが、学園で違う戦い方をする者と会ってきた。特にテールとの戦いの中で学んだ事が大きかった。テールはサファリアの者達とは戦い方が異なるので、その動きに翻弄されることが多く、対処に時間がかかった。魔物と戦う場合、魔物によって動きが全く異なるので、それに対処する訓練にもなっているのだ。
学園に入り、剣を振るう時間は減ってしまったが、それでも自身が強くなっていることに安堵した。夏季休暇が終わると魔物学で魔物との実践も始まるので、より強くなれるはずだ。
訓練を終えて自室に戻ると、父上から明日の昼間に面談の時間が取れたと書状が届いていた。
思いの外早かったな。もっと時間がかかると思っていた。宰相に相談して無理矢理開けてくれたんだろう。有難いことだ。
もちろん相談内容の本題はドラゴンのことだ。
それ以外にも、俺は色々と知らないといけない事がある。馬鹿息子と呆れられないことを祈る。




