学園一年生28 ベアトリスとシャルル
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頑張ります!
俺とベアトリスが婚約者だとはいえ、学園に入学してから2人きりになるのは難しかった。
お互いの部屋で会うとなると、密室となってしまうため、未婚の貴族としては外聞がよろしくない。かといって学園内の開けたところでは多くの者の視線が集まるため、2人きりという気がしない。
乙女ゲー「光の乙女の楽園」では、マリアと各攻略対象者達のイベントで、2人きりの状況が随時発生していたので簡単に考えていたが、ゲーム内でのマリアの置かれた状況と、現実の俺とベアトリスの状況では全く違う。
マリアは平民で、特に誰からも注目を浴びていなかったから、目立つであろう攻略対象者と2人きりになったとしても、特に誰かから見咎められなかったのだと思う。俺、というかゲームのシャルルとは庭や学園の廊下、教室など、様々な場所でマリアと偶然会うイベントがあり、ゲーム上では2人だけのように見えたが、実際はその場にいる者たちに遠巻きに見られていたんだろうな、と想像がつく。その場にベアトリスがいなかったとしても、ベアトリスに忠言が入り、そしてベアトリスがマリアに文句を言う、という状況で悪役令嬢が出来上がったのだろう。
ゲームの悪役令嬢の時みたいに焼き餅を焼いてくれるベアトリスを見てみたいな、と思うけれど、そのためにマリアや他の女性と話してベアトリスが傷つく姿を想像すると実行しようとは思わない。
長々と説明してきたが、入園前に考えていたよりベアトリスと2人になる機会が少なくて、俺は不満なのだ。
学園恋愛っぽく色々とイベント的に2人になれると思っていたが、全くそんなことはなく、基本テール、フエゴ、ラファルの誰かと一緒で、それはそれで楽しいのだが、一度きりの学園生活。せっかくなので恋人と2人で楽しく過ごしたい、と思うのは当然だろう。
スルスに作ってもらった腕輪は学園内では校則違反になるため使えないので、校外でデートするために使わせてもらおう、と思い日曜日にデートの誘いをベアトリスに出し、了承を得た。
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思い切って誘ったものの、2人きりになるのは久々で、俺の方が緊張してしまう。
学園からほど近い丘で、ランチとお茶でもどうかという誘いにのってもらい、俺とベアトリスが乗る馬車と、俺たち2人の侍女と軽食を用意してくれる料理人、衛兵1人が乗る馬車の2台で近隣の丘にむかう。
2人で馬車に乗っているが、お互いなかなか話しかけられず無言が続いている。せっかく久しぶりに2人になったのに無言のままなのはどうかと思い、話しかける。
「急に誘って悪かった。」
「い、いえ、嬉しかったですわ。」
そういって俯いてしまうベアトリスに、次の言葉が出てこない。
今まで2人の時は何を話していたんだっけ?と考えるが、なんだか頭が真っ白になってしまう。
なんだか2人ともぎこちなく、遠慮してしまっている。
会話が続かないため、チラリと向かいに座るベアトリスを見る。ベアトリスは俯いたままなので目が合う事はない。今日は野外への誘いだったこともあり、動きにくいドレスではなく、シンプルなワンピースを着て、足元は膝下までの編み上げブーツを履き、髪も束ねている。町娘のような服装だが、本人の気品がそうは見せない。
じっと見続けるのも不躾なので目を逸らし、窓の外を見る。
いつも学園で顔を合わせているのに、なぜ2人きりになると緊張してしまうのだろう。
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丘に着いて、侍女たちが簡易な椅子や机、パラソルと飲み物や軽食を用意してくれたので、そこに座る。
野外だが、念のため認識阻害の腕輪に魔力を込める。本来は魔物避けに使われる機能なので、魔物が寄ってこないように、という目的での使用だ。
「ベアトリス、長期間の読書、ありがとう。おかげで色々と勉強になった。」
「問題ございませんわ。『眩き御魂のをみなの地』は、わたしが個人的に読みたかっただけですし。」
「でも、俺が言わなければもっとのんびり読んでいただろう?」
そういうと、図星だったようで言い淀む。
「正直申し上げるとそうですわ。所々難解な部分など、飛ばして訳しましたの。でも、本当に面白い小説でしたし、のめり込んでしまったのは自分のせいですわ。」
「訳した小説、読ませてもらったからわかるけど、登場人物が皆んな魅力的だったね。
ベアトリスはどの男性が好みなのかな?」
「え、あの、、、」
いかん、軽く小説の話に持っていったが目が真面目すぎたか。言いにくそうだ。
「それぞれの登場人物が魅力的に描かれているな、と思ったのでな。作者はどんな人物だったのだろう、なぜここまで個々の人物像を小説で浮かびあがらせられるのだろう、と感嘆した。恐らく、読者もお気に入りの登場人物を見つけ、ソフィアとの仲を応援しながら読み進める内容だな、と思ってな。」
言い訳が説明じみて長くなった。
「まあ、男性のシャルル様もそう思われましたか?
どの方も応援したくなってしまいますわよね。
ソフィア様のことを皆さま本当に真摯に思われていて、どなたか1人を選ぶのか、それとも恋愛に発展せず終わるのか、と胸を躍らせて読み進めてしまいましたわ。」
「男性は皆ソフィアを口説いていただろう?よくあんな台詞を吐けるな、と思わないでもない。」
「まあ、小説ですから甘い言葉が過剰になり過ぎていると感じられても仕方ないと思いますわ。」
「ベアトリスも言われてみたい?」
きょとん、とした顔の後、真っ赤になる。
「い、いえ。小説の中での台詞ですから。」
「濡れたような黒髪に、アメジストのような濃い紫色の瞳。その深淵のような濃い紫色の瞳に私はどう映るのでしょう。闇と光、対極にあるような私たちですが、違うからこそ惹かれ合ってしまうのでしょうか。私はあなたのことが気になって仕方がないのです。」
ソフィアの台詞を声に出してみる。ソフィアは光属性で俺と同じ。テネブルは闇属性でベアトリスと同じ。男女は逆だが、俺たちにも当てはまる。
思い通り、ベアトリスの顔が真っ赤に染まる。
むず痒くなるような台詞ではあるが、きっとこういう台詞は喜んでもらえるのだろうと思い、口に出してみたのだ。
「、、、夜の闇に閉ざされた私の世界に、貴方が光を差し入れてくれたのです。私の世界を照らしてくれた貴方こそが私の太陽、貴方が居てくれなければ私の世界は再び暗闇に包まれ、もう2度と目覚めようとは思わないでしょう。」
顔を赤らめながらもテネブルからの告白シーンをこちらの目を見ながらハッキリと告げるベアトリス。
今度はこちらが、顔に熱が上がるのを感じる。
「ごめん、無理」
小説の内容だとはわかっているが、恥ずかしすぎて両手で顔を覆う。
自分から降っておいてなんだが、この手の台詞は言うのも恥ずかしいが言われるのも恥ずかしい。
しかも光と闇で、ちょうど俺たちと同じなので自分たちに重ねてしまう。
「うふふ。」
「ベアトリス?」
「いつも、こちらが照れてしまいますので今日は私の勝ちのようで嬉しくなってしまいましたわ。」
「いつもベアトリスの可愛さに負けてしまっているのは俺の方だと思うのだけれど?」
ポンっと音がしたように真っ赤になるベアトリス。
「、、、シャルル様はずるいのですわ。」
「どういうこと?」
「ご自分で考えてくださいませ。シャルル様。お茶のおかわりは良いのですか?」
カップが空いてしまっている。
認識阻害の効果を外し、デリアに お茶の替えを促す。
俺はそのまま認識阻害を再発動させることを忘れていた。




