学園一年生27 月曜シャルル 武術と馬術
昨日皆と別れた後からベアトリスが現代語に訳してくれた小説を読み始めた。
学園ではなく、サファリアの街が舞台になっており、今のように貴族街と平民街が分かれていない時代であったため、主人公のソフィアと貴族たちが自然と街で出会い、親交を深め、貴族達から求愛される様子が描かれている。
俺としては読んでいて恥ずかしくなるような甘いセリフが散りばめられている。光、闇、風、水、火、土の属性の男性達はタイプの違う色男で、さぞかし当時の女性読者は自分の好みの登場人物に感情移入しながら読んだことだろう、と思う。
ベアトリスにもどの登場人物がタイプか聞いてみよう。
主人公のソフィアは皆に求愛されるが、最終的には闇属性のテネブルという男に惹かれる。
ソフィアが明るく、元気な性格なので、どこか陰りのある雰囲気の男に惹かれたようで、気がつくとテネブルのことを気にしてしまう。
ドラゴンが街に現れ、戦いに行きたいこと、自分がテネブルを選んだことを皆に伝えるが、惚れた女のために、皆戦いに参加することになる。
後はベアトリスが説明してくれた通りだ。
俺がこの小説で確認したかった、ソフィアが戦うことの必然性があるのか、という点で言うと、最終的にドラゴンを倒したのがソフィアとテネブルだったというところくらいだ。
乙女ゲー「光の乙女の楽園」と似た内容なので、何か参考になれば、と思ったのだが、ソフィアがいなければドラゴンと戦いにいけない理由は見つけられなかった。
ゲームの中でも、この小説でも、主人公が声をかけて他の登場人物と一緒に戦いに行く、というのは同じだ。そう思うと、現実でもマリアはいらないんじゃないか、という仮説が真実味を増してきた。
小説を読み終えると朝になっていたが、デリアに声をかけて昼まで寝させてもらうことにした。
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四時限目の武術の時間に向かうと、フエゴとテールが先についていた。
「読み終わった?何か参考になりそう?」
「読み終わったが、特に参考にすることはなかったな。恋愛小説自体ほとんど読んだことがなかったが、甘い台詞だらけで脳が溶けそうだった。」
「女の子はそういうの好きだよね。」
「現実で言われたら引くと思うぞ。」
「どんな台詞があったんですか?」
「そうだな、、、例えば、、、、いや、やめておこう。」
「顔赤いよ、シャルル。」
思い出すだけで恥ずかしくなるような台詞ばかりだったのだ。
武術の授業が始まり、今日はペドロ先輩と組んで練習する。
「シャルル君はもう馬術部には来ないのかい?一緒に来ていた2人もあれ以来来ていないようだが。」
とペドロ先輩に聞かれて全然行っていなかったことを思い出す。
「私は馬に乗れるので、あの2人にも乗れるようになって欲しいのですが、ここ数週間調べもので忙しくて。2人にはまた行くように声をかけておきます。」
「そうか。ところで、シャルル君は騎乗での戦闘訓練はしたことがあるかい?」
「一応ありますが、あまり得意ではありませんね。相手が魔物の場合、剣より魔法の方が騎乗では扱いやすいので。」
「確かになあ。俺の家系が騎馬兵の者ばかりで国に帰れば鍛錬ができるのだが、学園で鈍ってしまっているから付き合ってもらえれば、と思ったんだが。」
「私では相手にならないと思います、、、フエゴとテールにも聞いてみましょうか?」
「ああ、頼む。」
フエゴもあまり騎乗しての戦闘は得意ではなく、テールは両手剣使いなのでそもそも向いていなかった。
ペドロ先輩が軽くでいいから、と誘ってくるので、武術の授業後馬場で少し練習に付き合うことになった。
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「シャルル君、せっかくの練習だから槍を使ってみないかい?」
騎乗者同士で戦うなら剣でも可能だが、実質問題、魔物と戦うなら剣では届かないことが多い。
届くような大きさの魔物なら、馬の取り回しがよほど上手くないと先に馬が狙われてしまう。ある程度のリーチがある武器の方が騎乗して戦うのにむいている。
「槍はほとんど使ったことがないのですが。」
「あまり使わない武器を使うのも練習だよ。騎乗での戦いは馬の速度も加わり一撃の威力が大きくなるから武器を落とさないようにね。」
そう言って渡されたのは、木の棒の先に丸いゴムみたいなのがついた模擬槍だった。
「こんなのでも、まともに食らえば骨が折れるから気をつけてね。」
「お手柔らかにお願いします、、、」
「流石に今日は直接戦わないよ。慣れるだけにしよう。お手本で走るから見ててね。」
そういうとひらりと馬に飛び乗り、馬場に設置された最速と思われるスピードで駆け抜けながら、全ての的を壊していくペドロ先輩。
的は木の板でできているのだが、木っ端微塵に粉砕されていく。
「どうかな?」
「全くできる気がしません、、、」
爽やかな笑顔で問いかけられるが、目の前で繰り広げられた、的の大量虐殺ともいえる凄惨な光景にドン引きしてしまう。
あんなの一撃でも食らったら死ぬんじゃないか。
「僕は小さい頃から騎馬での戦いを教え込まれているからね。流石にシャルル君にあんな事はしないよ。」
俺が引いているのに気付いたのか苦笑いでフォローしてくるペドロ先輩。
「とりあえずやってみます。」
的を新しいものに変え、同じコースを走ってみる。
ペドロ先輩の半分くらいのスピードでやってみるが、的の中心にうまく槍を当てることができない。
うまく当たると的が割れるが、大半は端っこを欠けさせたりするくらいだった。
当たった時に手への反動が想像以上に強く、何度も槍を落としそうになり、体制を整えているうちに的を狙うことができず駆け抜けるだけになってしまう。




