学園一年生24 読書まとめ会2
軽食が終わり、侍女達に片付けてもらった後、ベアトリスが纏めてくれた内容を説明し始める。
俺とテール、ラファルに割り振られた本の内容を纏めた資料は事前にベアトリスに渡してあり、それらも一つの資料として纏めてくれている。
「まず、ドラゴンについて記載された物語について、ご説明いたしますわ。」
完全に物語として空想で書かれているのかどうかの判断は差し置き、共通する身体的特徴、発生箇所、攻撃内容、弱点について説明してくれる。
数十冊の本をまとめた資料として、よく出来ており、できるビジネスマンのようだ、と変な感心の仕方をしてしまった。
ドラゴンの身体的特徴は以前ラファルが語ってくれたように頑丈な鱗に覆われ、翼があって空を飛び、鋭い爪を持っている、俺が前世の日本で知っているドラゴンのイメージそのものだ。
発生箇所は大体が山や渓谷。山は、火山のような木のない場所が多い。全長数十mという巨体で戦うことを考えると木が邪魔になる事は想像にかたくない。
攻撃内容は咆哮、毒の息、炎のブレス、氷のブレス、前足での打撃と鋭い爪での引っ掻き、噛みつき、尻尾による攻撃、といった、ゲームの中で定番のものばかりだった。
弱点については、喉元にある逆さに生えた鱗、いわゆる逆鱗について触れられている小説があったが、特に他に属性による弱点はないらしい。
逆に、属性によるダメージ無効やダメージ軽減もない、というのは有り難いことだ。
俺は前世で光の乙女の楽園以外にも、様々なゲームで多種多様のドラゴンと戦ったことがあるので、知っていることを聞かされているような状況だったが、皆にとっては知らないことだらけなので、ベアトリスに細かく質問をしていた。
俺は初めてきいた、という顔をしながらふむふむと頷きながら聞いた。目新しいところがない、という事は逆に、この世界のドラゴンに特殊性がないという確認になるため、俺にとっても有意義な内容だった。
「長くなりましたが、ドラゴンについては以上ですわ。」
ドラゴンについて話終えたベアトリスが疲れた顔をしていたので、一時休憩を取ることにした。デリアに声を掛け、お茶の交換と茶菓子を用意させる。
ベアトリスは朝から既に疲れた顔をしていたのに、長時間にわたり、説明と質疑に応答していたので、かなり辛そうに見える。
「すまんな、ベアトリス。少し休んでくれ。」
「大丈夫ですわ。」
微笑んでくれた顔も弱々しい。
「明日は1限目から槍の授業だろう?続きはまたにして今日は休んだ方がいいのではないか?かなり顔色が悪い。」
「シャルル、ベアトリスちゃんの授業把握してるの?」
「ん?ここにいる皆の授業は把握しているぞ。」
「あ、うん、それなら、、、いいのかな?」
テールが首を捻っている。
「あの、私は大丈夫ですわ。明日の授業に出た後はゆっくりお休みさせていただきますので、せっかく読み切ったお話ですもの、休憩の後にしっかり共有させていただきますわ。」
かなり無理をさせてしまったことを改めて反省する。ドラゴンと戦うのは学園卒業後。
ここまで短時間に期限を設けるべきではなかった。
「そんなお顔をしないでくださいませ。私は大丈夫ですわ。明日ゆっくり寝れば回復いたします。」
「本当にすまん、、、」
「シャルル様ー。大丈夫ですー。面白い本があれば徹夜しても読んでしまうものですのでー。」
横からラファルもフォローを入れてくれる。
「ラファルもベアトリスも、徹夜はいかんぞ。」
「申し訳ありません。今回まとめさせてもらった『眩き御魂のをみなの地』という小説が、とても面白くてついつい読み進めてしまいまして。1000年も前に書かれた物語なので記述が難しくて読むのに苦労するのですが、どうしても先が気になってしまい、辞書を片手に解読していると朝になってしまうのですわ。」
かなりのめり込んで読んでいたようだな。俺も前世で寝食を忘れてゲームしていたことが何回もあるから気持ちがよくわかる。
「そんなに面白かったなら何よりだ。1000年前の物語だと言葉がだいぶ違うのだな。題名からして読み辛そうだな。」
「そうですわね。現代語に訳すなら、、、光の精霊の加護を受けた女性の国、といった感じでしょうか。」
「光の精霊の加護か、サファリアの女性のことを指しているのかな。」
「はい。サファリアで書かれた小説ですし、内容もサファリアの当時の実情と適合しておりますので間違いありませんわ。題名から主人公の女性は王族かと思いましたが、物語の設定では平民でありながら、光の精霊に愛された方ですの。」
確かサファリア建国記で貴族制度が建国当初にできたという記述を思い出す。
「その本が書かれた当時は既に貴族、平民制度があったのか?」
「はい、今よりもまだ混沌としている最中ではあったようですが、魔法を使える物が貴族として扱われておりましたわ」
「それなら主人公の女性も貴族になるのでは?」
「それが、主人公の女性、ソフィア様は精霊の加護を受けているものの、魔法が使えず、最終的にドラゴンに挑んでいる時に初めて魔法を使えるようになるのですわ。」
「すまん、細かいところが気になって聞いてしまったが、大枠はどんな話なんだ?」
「よくある、恋愛小説ですのよ。光の精霊の加護を受けた少女が、様々な殿方から寵愛を受けて、最終的に皆でドラゴンに挑み、打ち勝つというお話ですわ。」
大枠のストーリーが乙女ゲー「光の乙女の楽園」と酷似していることに気付く。小説の題名も似ている。全文を読みたい気持ちをぐっと抑える。
「すまん、休憩といいながら話を初めてしまっていたな。ベアトリス、体調が問題なければこのまま纏めた内容を共有してもらえるか?」
「はい、大丈夫ですわ。恋愛関連の記述に関しては今回関係がないかと存じます。終盤、ドラゴンを倒しに行く部分から纏めましたのでご覧くださいませ。」
手際良く、纏めた資料を全員に配布し、説明を始めるベアトリス。
「ソフィア様は様々な属性の精霊の加護を受けた男性方から寵愛を受け、最終的に闇の属性を持つ魔道士テネブル様と結ばれるのですが、ドラゴンと戦う際は皆様同行されますわ。この辺りの記述は建国物語とも似通っておりまして、クレール王が中心となり、ドラゴンの討伐隊が組まれます。この物語上では名前が変えられていますが、クレール王のことを指していますのでそのままクレール王とお呼びしますわね、クレール王も、評議員の方々もソフィア様に恋慕を抱いていらっしゃり、ソフィア様の声がけで集まったという記述になっておりますの。」
「建国記とはそのあたりの筋書きが違うのだな」
「はい、こちらは恋愛小説ですので、建国の際の実話を元に作られた創作かと存じますわ。建国記とは違う箇所も数点ございますし。」
「違う箇所、とは?」
「恋愛描写が多いので細かいところは沢山ございますが、1番大きな点はドラゴンを倒したのがクレール王ではなく、ソフィア様とテネブル様というところですわね。」
「そうなのか!?」
「はい、クレール様も負傷されて動けなくなり、テネブル様も軽く傷を受けられて、助けたいというソフィア様の想いが奇跡を起こすのですわ」
うっとりとした顔でそのシーンを思い起こすベアトリス。
「今まで魔法が使えなかったソフィア様が魔力を暴走され、ソフィア様の光の魔力に包まれ、テネブル様の傷が癒やされるのです。ソフィア様がテネブル様の手を取って2人でドラゴンに立ち向かわれるのですわ」
「それはまた、凄いな、、、」
魔力の暴走で傷を癒すとか、ちょっと考えられないな、と思ってしまう。
「2人はどうやってドラゴンを倒したんだ?」
「2人から発せられた光と闇の魔力が絡み合ってドラゴンを包み込んで、ドラゴンが消滅したのですわ。」
先程はテネブルを癒した魔力が今度はドラゴンを消滅させたのか。突っ込みどころが多い。
「ちょっと、シャルル。確かに内容は気になるけど、そんなに質問責めにしたらベアトリスちゃんが疲れちゃうでしょー?」
テールが待ったをかけてくれて良かった。食い気味に話をし過ぎていた。
「す、すまん。」
「いえ、大丈夫ですわ。」
「シャルル様ー。ベアトリス様お疲れですよー。」
とラファルからも軽く睨まれる。
「今日はここまでにしようか。ベアトリス、現代語訳した全文を読みたいのだが預かっても良いか?今日は休んでくれ。」
「は、はい。拙い訳ですがこちらにございますわ。」
かなり分厚い、紐で閉じられた手書きの書類を受け取る。
「ありがとう。ベアトリスも、皆も2週間よく頑張ってくれたな。色々と情報が得れて感謝する。また何か気づいたことがあれば話をしてくれ。しばらく調べごとにかかりきりになってしまったが、明日からはまた学業を疎かにしないよう勉学に集中してくれ。今日はゆっくり休んでくれ。」
「はい!」
と皆が返事をし、部屋を出て行く。
俺は皆が立ち去った後、寝室に篭り、ベアトリスが現代語訳してくれた小説を読み始めた。




