閑話 sm会
学園の一室、早朝にsm会は開催される。
学園内の生徒、一部講師も参加しているとされるその会に参加するもの達は怪しげな仮面を着けている。
参加者の、その素性を知らさないための配慮ではあるが、髪色や髪型で、元々見知った者同士であれば、誰かを見分けることは容易だろう。
つまり、厳密に素性を隠すことを目的としておらず、出席した者同士で、参加者が誰かわかったとしても、この会での話は他言しない、ということがこの会の暗黙の規則となっていることの現れである。
ほぼ連日開催されているこの会は、日に日に参加者が増えている。
会発足当初は学園一年生有志のみであったのに、いつの間にかニ、三年生。加えて講師や研究所に所属している者までが参加するようになり、開催場所も最初は教室の片隅だったはずが、このままでは大ホールにならんとする勢いだ。
「静粛に」
日々増加する人員に対し、学園一年生と思われる小さな少女からの凛とした声で場は静まりかえる。
彼女はこの会発足メンバーであり、毎回この場を取り仕切っている。
この会には上下関係はないが、司会進行、という点で参加者は彼女の声に従うのだ。
「それでは、本日は大きく3点の話をいたします。」
皆が彼女の声に耳を傾ける。
「一つ、マリア嬢について。
一つ、フエゴ様とのデートについて。
一つ、ドラゴンについて。」
s シャルル様を m 見守る 会のメンバーは、続きの言葉を待つ。
「マリア嬢につきましては、魔道具の授業でシャルル様に過度の接触があった事は以前の会でも報告がございました。その後、テール様より叱責のお言葉があり、昨日の魔道具の授業でもマリア嬢はシャルル様への接触はなかったようです。」
ホッとした息が参加者から漏れる。
「しかし、未だかつてあの距離でシャルル様とお話し、あまつさえ接触を行う者はいなかったため、引き続き注視する必要があると考えています。」
と、司会者の少女から説明を行うと、
「あの、直接注意しては?」
sm会の参加者から意見が出る。
司会者の少女は首を振る。
「あくまでも私達は見守る会です。
シャルル様のご婚約者のベアトリス様、ご学友のテール様、フエゴ様、ラファル様からのご忠告であれば良いのですが、私どもからは差し出がましい真似は出来ません。」
力強い少女はの物言いに反論する者は現れなかった。
「シャルル様と同じ授業を取られている方はくれぐれも油断なされぬよう」
とだけ、釘を刺し、次の話題に移る。
「それでは、次の議題へ。フエゴ様と街歩きに行かれた件です。
残念ながら、お二人を見つけることは困難だったと聞き及んでおります。」
2人が街に行くという情報は掴んでいた。あれほど目立つお二人なはずなのに、目撃情報が寄せられない、というのはガセだったのだろうか。
「フエゴ様らしい方の情報は入っております。」
と、参加者から声がかかった。
曰く、市場で大量に飲み食いされ、服屋、カフェ、飲み屋と入ったとのこと。
居酒屋で、1人だったはずが慌てて出て行った際は2人だった。
「怪しい、ですわね。」
参加者の皆考え込みつつ、どういうことかわからない、と疑問に思っている。
「フエゴ様との仲を応援されていらっしゃる方もいるのは存じておりますわ。部会にて議論なさいませ。」
会が大きくなるにつれ、婚約者のベアトリス様だけでなく、ご学友である男性の方との仲を応援する会員が増え、それぞれの応援者として部会が作られた。
「最後の話題ですわ。シャルル様はドラゴンについて調べていらっしゃるそうです。
私どもはあくまでも見守る回ではありますが、シャルル様のお役に立てることがあれば助力できれば本望ですわ。もし、有益な情報をお持ちの方がいらっしゃれば私にお伝えくださいませ。」
仮面の参加者達の中で、司会役の少女だけは仮面をつけていない。
己を晒すことにより、有益な情報を持っている者はいつでも語りかけてほしい、という意思の表れだ。
そして彼女は、最もシャルルに近い位置にいる侍女デリアの娘である自身の身分をあえて出すことにより、シャルルの情報の正確性をアピールしているのだ。
シャルルの侍女デリア・ラジヴィの娘、ダリア・ラジヴィは、彼女の母がシャルルの乳母としての務めをはたしていたことから、幼少時に普通の子供のように母親から一身の愛を受けられなかったが、その点に関して捻くれた感情を抱かなかった。自分と同じく母親から愛を注がれた乳母兄妹といえるシャルルに対して、直接顔を合わす事はないものの、母親からいつも話を聞いていた。ダリアにとってシャルルは輝かしい存在であり、まるで神のように崇拝する対象なのだ。
息抜き会でした。




