学園一年生19 建国物語を読んで。
火曜日 昨晩建国物語を読んでいたせいで寝不足だったが、火曜日は授業が多い日だ。
1時間目の魔物学は全員受講しているため、顔を合わすことができた。ランチタイムにドラゴンの話と建国物語の話をするため、食堂で会う時間を合わせよう、と伝える。
2時間目の魔法の授業は、まだスルスの魔法陣ができていないため無難な魔法の練習をして終わる。
とはいえ、同じ魔法を使用することにより、練度が増して上級魔法なら問題なく扱えるようになった。
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食堂にて、全員が集まったので切り出す。
「昨日、テールと話していて、ドラゴンが飛来したという史実がサファリアにも、アカサンドリアにもあることが分かった。ドラゴンとは物語の中の存在だと思っていたのだが、2国に史実が残されているのであれば、本当に存在したのかもしれないと思い至った。その後テールと、もう少し調べてみるために図書館にむかい、そこでラファルに合った。ラファルの話だと、建国物語や、建国時の恋愛物語にもドラゴンの記載がある、ということだったので建国物語を読んでまとめてみた。思うところがあれば意見が欲しい。」
ベアトリスは小首を傾げている。
「あの、シャルル様はドラゴンが存在すると、信じていらっしゃのでしょうか?」
「2国の史実に残っているなら存在したのかもしれん、という気にはなっている。もし本当に存在するならば、脅威として考えねばならん。今は可能性に過ぎないが、調べてみる価値はあると思っている。」
「ふふふ、変わりませんわね。」
「?」
「私達の婚約が決まった日も、『今後、国に危機が訪れた時、俺は第一王子として戦う覚悟をしている。いざという時は一緒に戦ってくれることを期待している。』と、おっしゃってましたものね。」
3年も前のことを覚えてくれているのか、と胸が熱くなる。
「こほん、そこ、2人の世界に入らない。サファリアだけじゃなくどこに現れるのかわからないからね。アカサンドリアに現れるかもしれないし。一緒に調べようと思って。そもそも俺たちが生きている間に現れるかもわからないし。でも、一応調べれることは調べておきたいからさ。シャルル、まとめた記述ちょうだい」
と、テールから言われ、俺は慌てて昨日まとめたメモを渡す。
皆ひとしきり目を通したのを確認し、話しかける。
「建国物語を読むとサファリアの西の山脈にいる可能性があるが、約1000年も目撃情報がないところをみると、違うのかもな。」
「でもー。山脈はあまり深くまで行きませんしー。可能性はあると思いますよー。」
と、ラファル。
「騎士団でも、討伐依頼は街周辺ですし、数年に一度魔物調査で出向くくらいです。可能性はゼロではありませんね。」
とテール。
「居場所も不明ですが、建国物語の記述の、『低レベルの魔法ではその硬い鱗を傷つけることが叶わなかった。』というところが気になりますわ。当時はまだ今のように初級、中級、上級と明確に魔法の分類がなされていなかったはずなので、これがどの魔法を指すのかわかりませんわ」
と、まとめた資料を見ながら思案顔でベアトリスが指摘してくる。
「どういうことだ?」
「昔に書かれた物語の数々では、中級魔法が気軽に使われているのですわ。それで、もしかすると今よりも昔の方が魔法の水準が高かったのかもしれないと思いまして。低レベルの魔法、というのが現在の中級だと仮定しますと、ドラゴンの鱗はかなり高い魔法防御力を有しているのでは、と思いましたの。」
「なるほど。そう思うとやはり高等魔法の練習はしておきたいな。
そういえば今ベアトリスは当時書かれた小説を読んでいるんだったな。そこにドラゴンについても書かれていないか?」
「原文は表現が難解で、まだ序盤までしか解読できておりませんの。ドラゴンはまだ出てきておりませんわ。読み進めましたらお伝えいたしますわ。」
「すまんな。急がないから、ベアトリスのペースで読んだらまた教えてくれ」
「かしこまりましたわ。お任せくださいませ。」
とふわりと微笑むベアトリス。
「あの、ドラゴンには剣は通じるのでしょうか?」とフエゴが聞いてくる。
「残念ながら、建国物語には細かい記述がなくてな。ベアトリスの言う通りだとすると上級魔法以上の魔法しか攻撃が通らないようだから、剣だと腕と力、武器自体の切れ味によりそうだな。」
「硬いものを切る技術か、、、鍛錬の仕方を考え直さないと、、、」
と考え込み1人でブツブツ言い始めるフエゴ。
「弱点属性とかーあるといいですねー」
「そういう記述もなかったな。ドラゴンがどういう攻撃をしてくるのかも不明だ。」
「物語の中でもー歴史に沿ったものならー参考になるかもですねー。僕もーもうちょっと調べてみますー。」
ラファルも調べてみてくれるようだ。
「昨日入れなかった資料室、予約してあるから調べとくよ。明日また共有するから。」
テールも、いつの間にか予約してくれていたようだ。
「皆、ありがとう」
空想上の生き物とされているドラゴンと戦うなんて言い出した俺を馬鹿にするでもなく、一緒に考えてくれる皆がいて本当に良かった。
目が熱くなってきたが、なんとか涙を抑え、皆に礼を言うのが精一杯だった。




