学園一年生14 日曜日 平民街2
シャルル視点に戻っています。
うー苦しいー。
今世初めての平民街。
平民街の料理は前世のファーストフードのようなものが多く、懐かしさのあまりあれもこれも、と頼んでしまった。どの料理も酒に合うので一緒に酒を頼んでいたら腹もパンパンだし、酒にも酔っ払って酷い状態になってしまった。
フエゴも俺と同じくらい飲み食いした筈なのにケロリとしている。ガタイの差なのだろうか。
もっと休憩したかったが、歩かないと腹ごなしにならないと言われ、手を引かれる。
うぅ、、、子供みたいだ。腕輪があって良かった。一国の王子が手を引かれて歩いている姿なんて、とても民に見せられたものではない。
歩いていると、腹がマシになるどころか、気持ち悪くなってきた。
フエゴは身長がある分俺より歩幅が広い。ズンズン歩いていくので周りをみる余裕もないし、キツくなってきた。
休憩を要求し、カフェに入ることになったが、フエゴに手を引かれたまま入るのは、認識阻害の効果を発動しているといえ決まりが悪い。
俺が手を繋いだままであることを告げると慌てて手を離す。
同じ歳なのに子供扱いはやめてほしいものだ。
ちょっと、いや、結構俺より大きいからって、、、と俺が睨んでいるのも気付かずフエゴはさっさと店員に人数を告げて席に案内させる。
腕輪の効果で、フエゴが人数を言うまで、店員にはフエゴ1人だと思われていたようだ。2人だと告げて初めて俺を認識できるようだが、ハッキリとは分からないようだ。
何か飲むのも苦しいが、一応ハーブティーを頼み、席でグッタリする。
「そんな顔で見ないでほしい。」
向かいに座ったフエゴは呆れ顔だ。
「だから頼みすぎだって言ったのに、、、」
途中でフエゴから制止されても、露店で料理を頼み続けた俺に呆れているのだろう。
「たまにはいいじゃん。」
と、拗ねて目を逸らす。
こちらは13年ぶりの懐かしい料理を口にしたのだ。
今日くらいは許してほしい。
まあ、フエゴには前世のことは言ってないからそんなことは関係ないのだが。
自分が仕えることになる主君が食べ過ぎてグダグダなところなんか見たくなかっただろう。
「、、、失望した?」
と遠慮がちに聞いてみる。
急に真面目な顔で目を見て問うたことに慌てたのだろう。
俺を見ていたフエゴが慌てて顔をそらす。
「いや、、、今日のシャルルは、人間臭くて、良いんじゃないか?」
と言いながら顔を赤くする。
面と向かって褒めると恥ずかしいのだろう。
「良かった、、、」
ちょっとホッとした。長年一緒にいて、今日一日で失望されていたら傷つくからな。
しばらくの間俺たちはそのままカフェで休憩した。
「すっかり時間経っちゃたな。少しだけ街の中でも歩こうか。」
俺の胃が落ち着いたので街歩きを提案してみる。
「もう腹は大丈夫か?」
「大丈夫だよ。何か見たいものある?」
「特にねぇな。シャルルが見たいとこでいいぞ。」
と言われても初めて来る場所なので何があるかもわからない。
「今日はどんな店があるか見るくらいでいいよ。」
と言って歩き出す。
どうやらこの街は商業街と住宅街がエリアで分かれているようだった。カフェがあるエリアが商業街で、大小様々な店が並び、ところどころに飲食店があった。裏路地の方には大人の男性が通うような店があるようだが、時間も早いためか、看板を出している店も少なく、通りも閑散としていた。
流石にそちらは行くことはないだろう。
商店は専門店の形態の店ばかりで、八百屋、精肉店、チーズ屋、金物屋、魔道具屋、服屋、アクセサリー店と、様々な店があった。服屋も中古の古着屋から、貴族が着るような高級店まで、店に寄って趣向が明確に分かれていた。
この街ではアカサンドリアとサファリア両国から人が来るため、同じ店の中に系統の違う服が並んでいるのが興味深かった。次回はアカサンドリア風の服を着てみようか、と平民服の店で試着してみたが、フエゴは渋い顔をしていた。俺にはあまり似合わないらしい。
フエゴにも着せてみると結構似合っていた。少し悔しい。
服屋を出て、平民街の酒場に入りたい、と言ったらフエゴに凄く嫌そうな顔をされた。
「さっきまであんな状態で、、、よくそんなこと言えるな。」
「もう大丈夫だ。むしろ腹が減った」
と言い張り、渋々といった感じのフエゴを気にせず、目についた酒場に入る。
まだ夕方ということもあり、客は疎らだ。
大きな酒樽が店の端に数個横向けに並んであり、線を抜くと酒が飛び出てきてそれを店員が溢さないようコップで受け止めている様子がみえる。器用なものだ。
空き樽がフロアに立てて並べてあり、スタンディングで客が酒を飲んでいる。
いいなあ、この感じ。
庶民的な居酒屋も前世以来だ。懐かしい。
今日は懐かしい雰囲気に酔ってしまい、自分が王子という立場であることを忘れがちだ。気を引き締めないと、と思いながら、腕輪の効果で周りから見られていないこと、フエゴにはもうダラけたところを見られたことから気が抜けてしまった。
ついつい酒を頼み過ぎ、いい感じに酔っ払ってきて、立ったままテーブルに突っ伏してしまった。
頭の上に何か布が被さった感触で俺は少し落ちていたことに気付いた。
「んー?フエゴ?」
寝ぼけながら顔を上げると慌てた顔のフエゴがいた。
頭の上に乗った布を払おうとすると、布の上から腕を回され前が見えなくなる。
「何をするー?」
むにゃむにゃと酔っ払いながらフエゴの腕を払おうとするがガッチリ締め付けられた腕は離れない。
「シャルル!腕輪!効果切れてる!」
と、小声で俺に言ってくる。
「んー??そうかー?」
「おばちゃん!お勘定!!」
頭をグルグル巻きにされたのが不快で布を取ろうとするがフエゴの太い腕で締められていて外れないまま、強引に店の外まで引っ張っていかれた。
「痛いぞー。離せー。フエゴー。」
「うるせぇ、酔っ払い。」
布の隙間から周りの様子が見える。外に出るとすっかり暗くなっていた。街の明かりは平民街では貴重なのか全体的に薄暗い。
居酒屋らしき店の前は明るく、各店の前には酔っ払いが楽しそうに飲んでいる。
道にも人は多く、次はどの店にしようかと物色している者や、歌っている者など賑やかだ。
「シャルル、腕輪使えるか?」
とフエゴが聞いてくる。
「んー。いいぞー。どうだー。」
腕輪に魔力を流そうとするがうまくいかない。
持ち上げられるのがわかった。
「おろせー。」
バタバタしてみるが降ろしてもらえない。酔っ払つてなくてもフエゴに力では敵わないのだ。
はあ、とため息が聞こえる。
「じっとしていろ。」と布越しに囁かれ、顔は見えないものの声色に怒気が含まれているのを感じ大人しくした。
辻馬車に押し込まれ、ようやく布を外される。
フエゴの上着だった。
「すまん、、、寒かったか?」
「もう酒は飲まない方が良いですよ。」
と言われ目を逸らされる。
すごく申し訳ない気分になり沈黙しているといつの間にか眠ってしまい、気づいたら自分のベッドで寝ていた。
次の朝、起きてデリアと顔を合わすと大きくため息を吐かれ、
「フエゴ様に御礼と謝罪を」
と言われた。
うぅ、、、合わせる顔がない。
次話は短め、再びフエゴ視点の今回の平民街の話の予定です。
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