学園一年生 7 食堂から研究所
ベアトリスとラファルを追いかけていったきりテールは戻って来なかった。
うまく会えなかったのか、テールが説明を失敗したのか、聞く耳を持ってもらえなかったのか。
俺も追いかければよかった。いや、俺が行くと逃げられた可能性もあるし。
午後の授業時間になるまで待って諦める。
立ちすくんでいた俺の傍らにフエゴが依然立っていることに気付く。
「まだいたのか。授業はないのか?」
「、、、ずっといましたが。今日は午後は何もないです。」
「すまんな。テールは説得できたと思うか?」
「まあ、ただの冗談ですし。2人に会えていないかもしれないですけど。明日にでもシャルル様から謝れば良いのでは?」
「俺が謝るのはおかしくないか?テールが俺が鼻の下を伸ばしていたと嘘を言ったんだ。」
呆れた顔で俺を見るフエゴ。
「あんな女に、隙を見せている時点で、、、」
と呟くのが聞こえ、ムッとする。
「隙があったわけではない。あの女が後ろから近づいてきたのには気付いていたし、呼びかけには無視をしていたぞ。」
はーっとため息を吐かれる。
「まあ、いいです。あの女の厚かましさは俺も感じていましたからよくわかります。テール様が追い払ってくれたみたいだし、もう関わらなくて済むでしょう。」
なんだ、その納得はしてないといった態度は。俺は毅然としてマリアを寄せ付けないようにしていた、はずだ。
バッドエンド回避のためにマリアとは着かず離れずで接触しないといけない、と考えていたのに計画通りにいかないな。
マリアは乙女ゲームの主人公なのに、俺だけでなく他の攻略対象者のフエゴとテールにも嫌われてしまったようだ。このままではラファルかスルスのどちらかを攻略してもらわないとバッドエンドルートまっしぐらだ。
どちらかを攻略してくれれば、最終的にラスボスのドラゴンと戦う際に俺たちも同行できるだろう。
「考えていても仕方ないな。フエゴ、時間があるなら何か部活動でも見に行かないか?」
「はい!」
俺たちは食堂を後にした。
*******
どこに行ってみるか話していると、廊下で話かけられた。
「シャルル王子。と、君は?」
10冊くらいの本を重そうに両手に抱えたスルスだった。
「フエゴ、魔法陣学の講師のスルス先生だ。」
と、先にフエゴに紹介する。
「フエゴ・アルカンタラです。」
と、フエゴも自己紹介をする。
「君もサファリアの者かね?ちょうどいい、2人とも本を運ぶのを手伝ってくれないか。前があまり見えなくてね。」
スルスが言うように、分厚い本ばかりで視界を防いでいる様子が伺えた。
「こちらの校舎にもいらっしゃるんですね。」
何となく、研究所に居着いているイメージだったので聞いてみる。
「学園長から魔導書を借りるためにな。図書館にある目ぼしい本は読んでしまったが、学園長の持つ本は特殊なのでたまに借りているのだ。」
無造作に抱えているが、貴重な魔導書なのだろう。
落とさないように気をつけねば。
「フエゴ君は魔法陣学を取っていないようだが、実に惜しい。君も魔力が強そうだ。」
「・・・スルス先生は何をする気ですか?」
魔力量による魔法陣の発動の強さをみるなら、生徒3人も魔力量が強い者がいるなら充分ではないか、と思う。スルスも加えたら4人もいる。
「なに、学術的好奇心だよ。例えばこの学園を守る防御魔法にしても、魔石を使わずに君達が魔力を注ぎ込めば発動してくれるのか、何人いれば可能なのかを見てみたい。ちなみに私1人の魔力量では作動しなかったからな。
他の魔法陣でも、高位のものは魔石でしか発動できないものがある。
もちろん、そういったものに使われる魔石は貴重且つ高価なものになる。
高位の魔法陣の研究が進んでいないのだよ。」
なるほどな。
魔力量を多く保有する魔石は、討伐の難しい強力な魔物からしか取れない。そのため、希少であり、非常に高価なのだ。
使えるかわからない魔法陣を発動させるために簡単に利用することはできないのだ。
「それに、高位の魔法陣以外でも、魔力量の差で発動の仕方に差異が出るのは体験してもらったから知っているだろうが、単なる強弱だけなのか、魔力を注いだ者の属性によって異なる効果がでるのか等、研究できていないことは多い。」
ん?
「スルス先生、魔法陣はどの属性の者でも使えるのが特徴なんですよね?術者の属性が魔法陣に影響を及ぼすことがあるのですか?」
「可能性はある、といったところだな。
今までその仮説への研究はなされていない。
ただ、私は一部の魔法陣には属性が影響を与えると思っている。」
「何故ですか?」
ふむ、と少し考える仕草をとるスルス。
「魔導書を読み解く限り、複数の効果がありそうな魔法陣の存在が示唆されている。残念ながら、具体的に書かれた資料は見つかっていないのだがね。」
興味深いな。
「あのー、さっぱりわからないんですが。」
話に入れないフエゴは居心地が悪そうだ。
俺たちは話し込みながら移動していて、馬車で研究所まで来ていた。
「すまんな、話に夢中になってしまっていた。」
「フエゴ君も興味があれば是非研究に協力してくれたまえ。」
「いえ、俺は剣にしか興味がないので、、、」
強く迫るスルスの雰囲気に押され気味のフエゴ。
「ふむ、剣に何か魔法陣を付与してみるか?」
「いえ!シャルルに頼んでいるので大丈夫です!!」
俺が描けるようになるまでどのくらいかかるかわからないのでスルスに頼んだ方が早そうだがな。
「先生、それでは俺たちは失礼します。」
「ふむ、私はだいたいこの研究室にいるので、授業以外でも気軽に来てくれたまえ。」
どうせここに来たら研究に付き合わされるんだろう。気軽には来れないな。
とはいえこの研究者と仲良くなるためにたまには寄ってみるかと思うのだった。
最近ようやくメモアプリで書いてコピペするようにしたので、誤字脱字減ったんじゃないかと思います。まだあったらごめんなさい。
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