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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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テール視点

俺はテール・ロドリック。アカサンドリアの第五王子だ。


男子にしか王位継承権がもたらされないアカサンドリアでは、生まれた順番だけではなく、誰の子供か、ということが重要視される。

俺の母は正妃だったので、王子としては5番目に生まれた最年少の王子にも関わらず、王位継承権は2位だ。


幼少の頃は知らずにいたが、徐々に状況を理解した。

まずは第二、第三王子を産んだ第二王妃が俺の敵になった。

あからさまに俺を殺そうと毒殺や、暗殺者を送ったりしてきた。

運良く回避できたと思えば、今度は兄上ではなく俺を王位につけようという派閥まで現れた。


年の離れた兄上は俺をとてもかわいがってくれた。

未来のアカサンドリアを語る兄上は俺の目には眩しく映り、一生を兄上に捧げようと決めていた。

兄上は凡庸な人間ではなく、他者から秀でた才能を持ちながら、努力も惜しまず、人格面も素晴らしい人だ。


何れか一つでも欠けていたら、兄ではなく俺が王に、と望んだかもしれない。


幸い、兄は素晴らしい人だったので俺は補佐にまわるつもりだったが、俺が優れた才能を持つことに目をつけた貴族達が、俺を王位につけようと画策し始めた。


それを察して、馬鹿なフリをし続けた。


最初は疑っていた貴族達も、徐々に俺から離れていった。これでは持ち上げても仕方ない、と思われるようになっていった。

いつしか俺はアカサンドリア国内で「出来損ない」と、呼ばれるようになっていった。

狙い通りだ。

兄上は俺の意図に気付いていて、そんな呼ばれ方は好ましくないと言ってくれていたが、出来損ない扱いされた方がこの国では無難に生きていける。

兄上が王位を継いだ後に出来損ないの名は払拭できるよう勉学は怠らないが、それを皆が知る必要はない。

兄上が王になってから、様々な派閥争いが収束してから、俺は役に立てば良い。

そう心に決めている。


*****


リセドール学園に入学したが、どうせ習うことなどない。というのが俺の考えだった。

あくまでも義務で入学せざるを得なかったが、学びたいような内容はなく、王族教育で学んだものが大半だった。


とはいえ、アカサンドリアとサファリアの合同で作られたこの学園にいる間はくだらない派閥争いから離れられる好機だ。

俺が様々な授業に出て良い成績を上げればまた変な派閥が発足する可能性があるので、授業には出ず、無駄な時間を過ごすことが国の安寧につながる。


俺は3年間を無駄に過ごすことを決めていた。


*****


隣国サファリアの王子シャルルが入学していることは当然知っていた。


まさか、風呂で会うとは思っていなかったが。


サファリア人は大風呂の風習がなく、ほとんど寮の大風呂に入ることはないと思っていた。


初対面が風呂になるとは思いもよらなかった。

と思わず思い出し笑いをする。


体格は男だが、顔だけみれば絶世の美女。

初めて会った時はピリピリと、警戒心を露わにしていたな。

湯気だらけの浴室でも光り輝く金髪。

サファリアの王族は光の属性だと知っていた俺はシャルル王子だと確信した。


細身の体だが、抱き寄せてみると鋼のような筋肉が確かめられた。片手剣、それも結構な使い手だな、とその筋肉の着き方から推測した。




シャルルは変なやつだ。

あんな見た目をしているのに、自覚がないのはどう考えてもおかしい。


周りの女も、男でさえも虜にしている。


フエゴも可哀想に。

シャルルは一生気付かないんじゃないだろうか。


ベアトリスちゃんという婚約者がいて良かった。

あの子は聡いし、見た目も良い。

あの子がいないと、学園内でシャルル争奪戦が繰り広げられそうだ、と想像して可笑しくなる。





シャルルは良くも悪くも純粋だ。

今日俺が話すまで、他国との戦争のことを考えていなかったようだ。

一国の王となる人間がそんなに甘くてどうする、と恫喝したくもなったがそれが彼の良いところだ。


俺が遠慮なく彼やその周りの家臣達に話しかけられるのも、彼の温和な性格によるものだ。

性格の良い者たちが集まっている。

俺の周りにはそんな奴らはいなかった。追い落とすか、追い落とされるかの関係だけだ。


正直居心地が良い。

なんだかんだで俺を排除しようと考えていないのがわかる。


アカサンドリアの第二位王位継承者だと話してからも、シャルルの態度は変わらなかった。


いいな、と思った。


王位継承権の順位により、アカサンドリアの貴族たちは態度を変える。

でも、サファリアの者達は変わらない。


キラキラと眩しい第一王子であるシャルルの妹弟はシャルルに心酔していると聞くし、シャルルが王位を継ぐことに誰も反意を唱えていないサファリアは我が国とは全く違う。


状況が違うので羨ましがることはないと頭では理解しているが、羨まずにはいられない。


俺は状況的にシャルルを妬んで憎んでも良かったと思う。

だが、実際にシャルルと会って、学友として接してみると憎むことは出来なかった。

彼の純粋さに心が解されていた。



ただ、彼の鈍感さと優柔不断さにイライラさせられることが増えた。




特に今日の出来事は我慢が出来なかった。

平民の女が親し気にシャルルに話しかけてきた。

今年、光の属性を持つ平民が入学していることは聞かされていたので、一目でこの女のことだとわかった。


王族であるシャルルに、汚い言葉で親し気に話しかけている様子を見ていると腹が立った。

苦い顔をしながらも何も言い返さないシャルルにも腹が立ったが、下賤な女にも釘を刺しておいた。


シャルルもあの女も固まっていたけど、そのままだとシャルルがフォローしようとしてあの女に優しい言葉をかけそうなので、シャルルはこの場から引き離しておこう、と腕を引っ張る。


あの女から引き剥がし、今日は流石に自覚させようと決意する。シャルルは自分の見た目を意識しないし、無尽蔵に信者を作っている。

信者だけならいいけど、さっきの女みたいな、空気を読まない厚かましいやつも出てくるだろう。

「シャルルはさあ、自覚が足りなすぎるよね。」


「さっきの話なら終わりにしただろう?平和ボケしているのは自覚した。次期王として、同盟国としては不安になったと思うが。」

何言っているんだコイツ。

大きくため息をつく。全然わかっていない。

「そうじゃなくてさあ、、、」

「ん?」



シャルルの腕をとり、壁際追い詰める。

コイツは全然わかってない。

逃げられないよう、壁に手をやり話しかける。

「さっきの平民の女にあんな態度とらせていいわけ?」

「マリアのあの態度には迷惑している」

迷惑だとしてるのが俺にはわかるけど、本人にもちゃんと伝えろよ、とイラっとする。

「迷惑しているなら、ちゃんと態度と言葉で示せよ。」

シャルルは目を伏せる。

「すまん、甘かったかもしれん」

俺に対するいつもの強気な態度は消え失せ、しゅんとして反省した態度のシャルル。

目を伏せられると長い睫毛が憂いのある顔と相まって女性らしさを醸し出す。

「だから、そういうところが無防備だって言ってるの」

と言いながらはあーっと大きなため息を吐き、気持ちを落ち着かせる。

「シャルルはもっと気をつけなよ」

と助言すると

「うむ、もっと毅然とした態度で追い払うようにする」

と見当違いの返答を返すシャルル。


魔法も剣も、常人離れした天才で、学業全般優れていて、あんなに綺麗な婚約者もいて。

誰もが羨む境遇の隣国の王子だが。

コイツ、馬鹿なんじゃないか?

と思ってしまうのは俺だけだろうか。




モヤモヤし続けた俺はベアトリスとラファルがいる場であの平民のことを、口走る。


「きいてよー。ベアトリスちゃん、シャルルさあ、さっき平民の女の子に話しかけられて鼻の下伸ばしちゃってさあ」


ベアトリスちゃんの足元にも及ばない、ただの顔が可愛いだけの女だった。

シャルルは鼻の下を伸ばすどころか、本気で嫌がっていたのは態度でわかった。でも俺は自分のモヤモヤを吹き飛ばしたい、という気持ちだけで嫌な言葉を吐いた。


結果は最悪だった。


シャルルがこんなに怒ったのは初めてではないだろうか。


ベアトリスとラファルが去った後の、シャルルの目。

殺されるかと思った。こんな顔ができるならあの女も遠ざけられるのに。


フエゴが来てくれたので、シャルルの顔が通常に戻りホッとした。まあまだ怒っていたけど、怖さが緩んだ。


俺はもう一度謝ってから、ベアトリスとラファルを追いかけた。


無駄に長い廊下を歩く2人の姿は遠くなっていたので走って追いつく。


「何ですか?」

ラファルの怒り顔は怖い。普段からニコニコとしているからギャップが凄い。


「ごめん、冗談が過ぎた。

シャルルは鼻の下なんか伸ばしていないよ。

変な女に絡まれて追い払っただけ。シャルルは本気で嫌がってたし、俺がきつい言葉で追い払ったから、もう絡まれないと思うよ。」


まだ疑わしそうな顔をするラファル。

「シャルル様じゃなくー。テール様が追い払ったって事ですよねー。」


痛いところをつくな。


「シャルル様はー。疎すぎますー。」

「それには同感する。」


「あ、あの、テール様のご冗談だったのですわよね?それなら、立ち去った非礼をお詫びしてこないと。」

といって戻ろうとするベアトリスをラファルが止める。


「ベアトリス様ー。怒っているふりをしておきましょうー。シャルル様には良い薬ですー。」

と、いつも通りの穏やかな笑みでベアトリスに告げるラファル。


意図がよく分かっていないベアトリスは戸惑っているが、俺もその意見には同意する。

「うん、ちょっとシャルルは反省した方が良いね。俺だけ戻るとシャルルに怒られるから俺もこのまま帰るよ。」


戻って来ない3人にヤキモキして、ちょっとは自分の態度を反省すれば良いんだけどな。元はといえば無自覚にキラキラを振りまいて、変な女を寄せ付けたのはアイツが悪いんだから。


いつもお読みいただきありがとうございます!

続きが読みたい、と思っていただけたらぜひ評価、ブックマークよろしくお願いします。

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