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攻略対象者なのに悪役令嬢を溺愛中  作者: のあ
第二章 学園編
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学園一年生 4 魔法陣学 馬術部

授業3日目 水曜日。

俺は今日は午後、3時間目の魔法陣の授業しか取っていなかったが、昼食の時間に合わせて校舎にむかった。


馬車から降りて食堂に向かう途中フエゴを見かけたので声をかける。

「フエゴ、今から昼食か?」

「は、はい!」

「俺は午前の授業がなかったんだがお前は何をとっていたんだ?」

「はい、午前は歴史と経済を。あー、その、歴史の授業例の女もとっていまして、授業中話しかけられました。」

苦虫を噛み潰したような顔をするフエゴ。

マリアのことだな。気持ちは良くわかる。

「昨日シャルル様と一緒に魔道具の授業を受けて、シャルル様と友達になったとほざいていましたが、昨日あの女に何かおっしゃられましたか?」

「ああ、と、そうだな、くらいしか返していないが一方的に話しかけられたな。学友になったといっていたのか、、、面倒だな。」

ほっとした顔をするフエゴ。

「恐らくあの女の勘違いだと思っておりましたが、良かったです。いや、勘違いさせたままではよろしくありませんね。」

「俺からお前に会ってみたいと言っておいてなんだが、出来ることならもう関わりたくはないな。」

「同感です。」


食堂に着くとベアトリスとラファルがいた。2人は既に昼食を取っていた。俺とフエゴもランチセットを受け取り、2人の席に同席する。


「ベアトリス様と僕ー。2時間目の授業一緒だったのでー。ご一緒させてもらいましたー。」

「文学の授業でしたの。とても興味深かったですわ。」

「古典文学の読み方がー。とても勉強になりましたー。」

「文学は奥深いですわね。今まで現代語訳の本をよんでおりましたが、原文で読むと表現や意味が奥深くて。」

2人ともとても楽しかったみたいだ。珍しく興奮しているようで、話が止まらない。

打ち込めるものがあるのはいいことだな。


楽しそうな2人の会話に口を挟む気になれず、俺はフエゴと話をする。

「午後の授業は何をとっているのだ?」

「地理と法律です。今日は丸一日授業をとっているので、頭がパンクしそうです。」

「今までサボっていたツケだな。学園在学中くらいはしっかり勉強しろよ。」

「はい、、、。シャルル様は今日は午後だけなんですよね。」

「今日は3時間目の魔法陣学だけだな。ベアトリスとラファルも同じ授業だな。」

「難しそうですよね、俺には無理そうです。」

「難解だからな。習得したらお前の剣に魔法陣を描いてやるよ。」

「本当ですか?魔石が装着できるような剣を作らせておきます。」

魔法を剣に付与させる方が簡単だが、自分の魔力を使わなくて良いので魔法陣と魔石の魔法剣を使った方が長期戦にむいている。

魔法剣の作成、楽しみだな。

「魔法陣なら他属性にもできるらしいから、氷の剣にしてみるか?」

「それでしたら、、、光の剣がいいです!」

と言って顔を赤らめるフエゴ。

確かに、厨二っぽいよな、光の剣。勇者っぽいし。恥ずかしいんだろうな。その気持ちはわからんでもない。

「わかった。いつ出来るようになるかわからないが気長に待っていてくれ。」

俺は優しいから突っ込まずにおいてやった。


******

フエゴと別れて3人で魔法陣学の教室にむかう。

魔法陣学の教室はいつもの校舎とは別の建物である、研究所にある。

学園を卒業した生徒が通う大学院のような場所だ。

魔法陣を描くためのインクが特別なもので保管上の問題があるのと、研究所に所属する講師や生徒が自分の研究に夢中になり別校舎に行きたがらない、という理由でもあるらしい。


研究所へは乗り合い馬車で移動する。

「シャルル様はー。魔法陣も描けるのですかー?」

どうもラファルは俺が何でもできると思っているみたいだな。

「魔導書で見てはいるが、実際に描いたことはないな。間違えた魔法陣を描いてしまうと怖いからな。

我が国では魔法は発達しているが、魔法陣を教えることができる者がいないからな。」

「そういえばー父上がー魔法陣を使うのー。見たことないですー。」

ラファルの父、王宮筆頭魔道士であるユアンも使っていないのか。テールが、サファリアのことを魔法王国と言っていたが、魔法が発達した分魔法陣が発達しなかったのかもしれないな。


******

研究所に入ると薬品のような匂いがした。

薬学の研究室でもあるのだろう。

普段の校舎と違い、薄暗い。なんだか悪い研究でも行われていそうだ。流石に二国間で設立された学園内でそんなことは行われていないだろうけど。


魔法陣学の授業を受けるのは20人くらいのようだ。

予想はしていたが、アカサンドリアの生徒が多い。


「ふむ、珍しいな。魔力量の多い生徒が3人もいるとは。」

と言いながら、魔法陣学の説明を行なっていた講師が入ってくる。


「皆、席につき給え。」

冷えた声色の講師の声に、立っていた生徒も急いで席につく。


静まり返った教室に講師の声が響く。


「嘆かわしいことだが、魔法陣学は魔力の多い者には軽視されがちな学問だ。

それは何故か?

彼等は時間のかかる魔法陣より、魔法を使えば良い、と考えるからだ。


効果発動までの時間を考えると魔法は呪文の詠唱が終われば発動できる。高等魔法でも数分だろう。

それに対して魔法陣を描くのには時間がかかる上に、覚えるのが難しい。間違えて描かれた魔法陣は発動しない。戦闘の場で魔法陣を描くのは現実的ではない。


魔法陣の最大のメリットである、魔石で魔力を充填して効果を発動するという点が、魔力量の多い者にとってはメリットとして感じられていないのだ。」


一気に捲し立てる講師。普段から不満に感じていたのだろうな。


「ただ、その考えは非常に短絡的だ。」


そう一息つくと、講師の男は黒板に魔法と魔法陣のメリット、デメリットを書いていく。


「魔法陣については、魔石以外にも自分の魔力を通して、より強い効果を得ることができる。

更に、戦闘に入ってから描かなくても事前に描いて準備しておくことができる。

使用する者の魔力量や、使用する魔石、描いておく魔法陣の種類、魔法陣を描く場所といった要素の組み合わせにより際限なく使い方が広がり、その研究はまだまだ道半ばなのだ。」


「今年は3人も魔力量が多い者がこのクラスを受講してくれた。研究が捗りそうだ。」

ニヤリと微笑む講師。眼鏡の奥の鋭い眼光が怖いのだが。



「それでは、前置きはここまでにして、魔法陣学の基礎から始める。」


初歩の初歩、といった、描きやすい魔法陣を実際に描いてみる。手袋等に描く防寒の魔法陣。ごく少ない魔力でも使えるので便利そうだ。

今は過ごしやすい季節なのでしばらく使うことはないのだが。

1人1組配布された手袋に、黒板に描かれた見本の魔法陣を見ながら特殊なインクで、魔法陣を描く。

簡単だったので直ぐに描き終わり、着けてみる。

見学の時の反省を生かしてごく少量の魔力を流す。

ほわっと手袋が温まる。電気毛布のような暖かさだ。コタツも作れそうだな。

ラファルとベアトリスも描き終わったので、魔力を流しすぎないよう注意する。

案の定、周りでは

「熱っ!」

と叫ぶ生徒の声が聞こえる。

「魔力を流しすぎると熱が強くなるので気をつけるように。」

と講師から注意が入る。

それは描く前にする注意だろう。

どうもこの男は使用上の注意点を後で言う癖があるらしいので気をつけなければ。


授業が終わる前に、思い出したように講師が自己紹介をする。

「言い忘れていたが、私は魔法陣学を教えるスルス・ポリニャックだ。研究所1年の所属だ。魔法陣学の講師として適切な者がいなかったので、研究所員ではあるが私が教鞭をとることになった。」


最後に爆弾投下された。

水の攻略対象者と同名。

攻略対象者に講師はいなかったはずだ。


いや、でもマリアはこの授業を取っていない。

どうやって会うかは覚えていないが、よく会う場所の設定は魔導書研究室だった。これはノートを何度か読み返したから間違いない。


魔導書研究室って研究所の一室なのか?ということは、設定上は講師ではなく先輩キャラ?

先輩キャラって一歳上が普通だろ?

あ、でも研究所1年ってことは3年間一緒に過ごすことになるのか。

大分歳上かと思っていた。


動転する俺に気づき、ベアトリスとラファルがまた体調を崩したのかと慌てていたが、マリアを見た時と違い、直ぐに落ち着いた。

「問題ない。ちょっと考え事をしていただけだ。」

と微笑むと2人とも安心した顔をした。


マリアの場合、俺が考えているシナリオが根本的に裏返る可能性があり動揺したが、今回は、スルスが学生ではなく講師だったことに驚いただけだ。

学園生活1年目で会えたのだから何の問題もない。


*****


ラファルもベアトリスもこの後は授業がないとのことだったので、3人で馬術部にむかってみた。


「ようこそ、馬術部へ。馬と触れ合うのは初めてかな?」

体格は良いが、顔は優しげな男が出迎えてくれる。

「俺は問題ないが、2人は初心者だ。馬との接し方を教えてやって欲しい。」

「君はシャルル王子だね。任せてくれたまえ。私は3年で、馬術部を任されているペドロだ。馬も見惚れる美貌だね。」

「それはどうも。シャルル・ド・リュミエールだ。こちらは俺の婚約者ベアトリスと学友のラファルだ。よろしく頼む。」

お世辞には慣れているのだ。

騎乗服を貸してくれるとのことで、早速馬に乗らせてくれるそうだ。


騎乗服はズボンになっているので、ベアトリスは前世の某歌劇団のようにみえる。

男装の麗人、という言葉を体現したかのようだ。

「あの、変ではございませんか?」

初めての格好に違和感を覚えているようで落ち着かないベアトリス。

「よく似合っているよ。普段と違う格好だが、これはこれで良いな。女性ファンが増えそうだな。」

「惚気てないで、初めても良いかな?」

ペドロが口を挟んでくる。


馬との接し方、騎乗姿勢、馬の乗り方、発進と停止の合図をペドロに説明され、真剣に聴くベアトリスとラファル。

ごく短時間で馬に乗ることができた。

よく躾けられた大人しい馬と、良い指導者がいれば決められたコースを歩くだけなら短時間で可能なのだ



帰りの馬車で感想を聞く。

「目線が全く違うのですね。凄く高く感じて最初は怖かったですけれども、馬の体温が伝わってきて、すごく愛しい気持ちになってしまいました。」

と喜ぶベアトリスと対照的に

「お尻が痛いですー」

と、辛そうなラファル。

慣れないうちはお尻を打ち付けてしまうからな。ラファルは運動神経が悪いから、ベアトリスの方が上達しそうだ。

「何度も乗っていればじきに慣れる。2人とも、明日は筋肉痛になるかもしれない。風呂に入っておくとマシかもしれんぞ」

頷くベアトリス。彼女は大風呂が気に入ったようだ。

ラファルは断固として大風呂に入ろうとしない。

風呂推進派の俺としては、いつか嫌がるラファルを風呂に入れて風呂の良さを知ってもらいたいのだが。






やっと攻略対象者が出揃いました。


ブックマーク100件超えました!

ありがとうございます!!

1日1話を目標に頑張って更新しています。

評価、ブックマークいただけるととても嬉しいです。

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