学園一年生 3 魔道具の授業 マリアと接触
魔道具を講師のウラジールから受け取り、マリアの隣の席に置き、その横に座る。
「諸君の元にあるのは1番一般的な魔道具、魔力灯だよ。簡単に分解できるようになってるから、分解して見てご覧。
光る部分に魔石が入っていて、光らせる為のスイッチ部分まで回路があるから。」
用意された魔力灯は前世でいうランタンの形状をしている。球状のガラスの中に魔石が真ん中に設置できるような金具がある。魔石が入ったガラス玉を固定するように針金より太い数本の金属で固定されており、台座に乗せられている。台座部分にスイッチがついている。
針金は簡単に外れ、台座からガラス玉を外すとガラス玉は下部が横に切れていて、外したものをそのままテーブルの横に置く。
魔石も取り外し、テーブルに置く。
さらに分解しようと台座部分を捻ろうとすると俺の手に白い手が重ねられる。
ギョッとして手を引く。
「あ、あの、ごめんなさい!台座部分外すの力がいると思って!」
真っ赤な顔で俺を見るマリア。
俺は言葉が出ないのでしばし無言になる。
「でも、シャルル君の手、硬くて男の子って感じだね。」
と言って恥ずかしそうに俯くマリア。
なんだこの茶番?
「続きやろっか!」
マリアは無言の俺を気にする様子もなくニコニコしながら器用に分解していく。
「あー!魔石からスイッチ部分まで銀色の線がある!これが回路ね!シャルル君も見て!」
「すごいすごい!こんな仕組みで動いてるんだね!
これなら私にも作れそう!」
「そっかあ、この回路がスイッチオンオフと連動しているんだぁ。」
ウラジールの説明を聞きながらもずっと1人で喋り続けるマリア。
俺は放心しそうになりながら、
「ああ」「そうだな」
と相槌を返すので精一杯だった。
前世が平民だったのでギリギリ耐えられたが、あまりの不敬な態度にカルチャーショックで何もこちらからは話す気にはなれなかった。
こっちの世界で生まれて13年、俺にこういう態度で接してくる者はテールくらいか。
よくゲームの中のシャルルは耐えられたな、いや、逆にマリアのこの態度が新鮮に感じたから惹かれたのだろうか。
今の俺にとっては物凄く不快なのだが。
「シャルル君、聞いてる?」
突如服の端を摘まれる。
「聞いているから離してくれないか。」
「あのね、シャルル君なんでこの授業受けたの?
王子様だったら自分で作る必要ないでしょ?
何でも買ってもらえるんでしょ?良いなあ。」
「魔道具作りに興味があっただけだ。」
「そうなんだあ。これからも一緒に頑張ろうね!」
満面の笑みを向けられる。
マリアは容姿が整っていると思う。
その微笑みを向けられただけで、前世の俺だったら惚れていたかもしれない。
でも、今の俺は心を動かされない、というか、逆の意味で動かされたかもしれない。悪寒が走ってしまった。
「ああ」
とだけ返して、授業が終わると足早に立ち去った。
*****
どうしよう、物凄く苦手なタイプだ。
前世でいう「あざとい」を体現した女性だ。
自分の可愛さをわかった上で親しげに話しかけて男を落とすのに長けている。
流石乙女ゲームの主人公、男が喜ぶ仕草を心得ている。
でも俺としては触られた手と服を消毒したいくらい寒気が走った。
乙女ゲーの主人公、怖い。
早く帰って風呂にでも入ろう、と乗合馬車の待機場に急ぐ。
「シャルル様?どうかなされましたの?顔色が悪いようですが。」
待機場で馬車を待っていたであろうベアトリスに会い、俺の口元が緩む。
「ベアトリス!ごめん、ちょっといいか?」
ベアトリスの手を両手で握る。
「シャルル様!?」
慌てるベアトリスと反対に落ち着く俺。
「緊急だったんだ。君と会えてよかった。」
「私をお探しでしたの?」
不思議そうな顔をするベアトリス。
「いや、探していたわけではないんだ。
ちょっと説明ができないんだが。こうやって君に会えて、君の手を握れば落ち着けた。ありがとう。」
全く意味がわからないだろうが、マリアと会って嫌な気分になっていた心がほぐされた。
「何をおっしゃっているのかわかりませんわ」
と言いながら、まだ離されない手を見つめて顔を赤くしてくれるベアトリス。
馬車が来ても、片手は繋いだまま帰寮した。
他の生徒との乗り合い馬車だったので、乗ってきた生徒は俺たちを見ると顔を赤らめて目を逸らし、ベアトリスは手を離すのを諦めて真っ赤になりながら俯いていた。
俺はそんなベアトリスを見ながら帰り、先程までの嫌な気持ちはどこかにいってしまったのだった。
マリアはあざとい系女子でした。シャルルは苦手なようです。
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