学園一年生 2 魔物学、魔法、魔道具の授業
今日は授業2日目、火曜日だ。
1時間目の魔物学は俺が受けるよう皆に願っていたため、ベアトリス、ラファル、フエゴ、テール皆揃っている。
テールは昨日授業はサボると言っていたが、今日は参加している。
「皆一緒に受ける授業ってこの授業だけでしょ?魔物と戦うのも面白そうだから参加しようと思ってー。」
実際、両国とも魔物と対峙することが多いため、参加している者は多い。
本気で魔物と戦おう、というよりは生態を知って、危ない場所に近づかないようにしたい、という者が多いかもしれない。
我が国では騎士団に入隊を希望する者は卒業後魔物と戦闘を行うので必須だし、アカサンドリアは主な輸出品である武器は、対人より対魔物で使用することが多いため、魔物の性質を熟知している方が良い武器ができるだろう。
「魔物学では、魔物個々の風貌、攻撃方法、対処法、魔物の系統といった講義から入ります。
本学園に在籍するサファリア、アカサンドリアに生息する魔物から勉強していきましょう。」
と講師の男が説明し、地図を広げ、ニ国の地域毎にどんな魔物が出没しやすいか、という講義で今日は終わった。
2時間目は魔法の授業だ。最高クラス、中級、初級とクラスは別れるが場所は同じなので一緒に移動する。
「まだ戦ったことのない魔物が結構いたな。」
「シャルルは魔物と戦ったことあるの?」
とテールが驚く。
「フエゴと騎士団にくっついて討伐に参加していたからな。」
「騎士団の討伐は街に近づく魔物が中心だから、種類は限られますね。」
とフエゴも説明する。
「僕は植物系の魔物と戦ってみたいですー。とれる素材にも生態にも興味がありますー」
ラファルも意外にやる気を出している。
「私も頑張ります!きちんと生態を学べば怖くないはずですわ!」
とベアトリスもやる気になっている。
「いざとなったら俺が守るから」
「俺も守ってー」
「割り込むな。お前は自力で頑張れ。」
俺とベアトリスの間に入るな。
「あ、着きましたよ。」
魔術の練習場は周りに防御魔法が張られていて、誤射した場合でも場外には魔法は飛んでいかないそうだ。
とはいえ、場内誤射の可能性があるため、実技の、特に初級、中級クラスは防御魔法、回復魔法が使える講師が数人待機するらしい。
フエゴは上級クラス、高等魔法が使える俺、ラファル、ベアトリスは最高クラス、魔法が得意ではないというテールは初級クラスだ。
初級クラスはこの練習場ではなく、講義の授業なので場所が違うことに来てから気づいたテールが慌てるでもなく移動していったので、早速サボるつもりかな、とため息をつく。
魔法クラスでは、初級クラスが初心者、中級クラスが初級魔法、上級クラスが中級魔法、最高クラスが上級魔法を習う。クラス名と、魔法のクラスが合っていないのは、前にテールに説明されたように、高等魔法を使える者が珍しいからだろう。
そして、このクラスでは高等魔法を使用することは禁止されていた。
使用できる者自体少ない高等魔法だが、威力が強いので誤射すると下手すると死人が出てしまう危険なものだからだ。
俺たちが王宮で練習していた時は王宮筆頭魔道士のユアンが付き添ってくれていたが、学園にはユアンと同等の防御魔法を使える講師はいないようだ。
とはいえ、魔法も使っていないと感覚が鈍っていくので、週一回でもこうやって練習しておくのは良いことだろう。
「シャルル様ー高等魔法練習したいですー」
まだ高等魔法の練度が低いラファルが相談してくる。
流石に我が国の筆頭魔導士ユアンは学園に呼ぶ訳にはいかない。無策で講師に相談すると、迷惑がかかるから何かないか、と頭を捻る。
「そうだ、ラファルが防御魔法の練度をあげて、高等魔法でも耐えれるとなれば許可が貰えるのではないか?」
ぱっと顔を綻ばすラファル。
「シャルル様、それではラファル自身は攻撃魔法の練習ができませんわよ。」
「・・・・そ、そうだな。」
同時に2種類の魔法を展開することはできないのだ。
何かいい案が出るまでは保留にして、他の者に混じって上級魔法の練習を練習した。
最高位クラスは俺たちを含めて5人だけ。
後の2人共、サファリアの生徒だった。
水色の髪のエドモンドという男子と、赤い髪のソフィアという女子で、彼等の親は王宮魔導士として働いているということだった。
親から俺らが高等魔法を使えるということを聞いていて、2人とも目を輝かせて見たがったが、禁止されていることを説明するとガッカリしていた。
2人は中級魔法までは完璧にコントロールできていて、上級魔法はこれから、という段階だった。
俺たち3人とは属性が違うので魔法の種類も変わってしまうが、魔力のコントロールや威力の調整などのコツをラファルがおっとりと説明して、2人とも頷きながら聞いていた。
******
昼休み、一度また食堂で集合した。
「テールは結局授業に間に合ったのか?」
「ごめん、出なかったんだー。天気が良いから屋上で寝てたよ。多分魔力とはーとか、初級の呪文とか、そういう内容だろうから。実技だけで良いかなーと。」
最初から中級クラスを選べば良いのに。
「今日のランチ、デザートラビットの肉とワイルドボアの肉みたいですよ。どちらにしましょう?」
「僕兎にしますー。」
「私もデザートラビットにしますわ。」
どっちを選ぶか悩む。
食堂のランチセットは、きっと良い料理人が作っているようで味も美味しいし、食材が珍しい。
デザートラビットは砂漠に生息する兎の魔物なので、サファリアでは獲れない。ワイルドボアはサファリアでも森の中にいて、猪肉と似た味がして、食べ応えがある。
「両方、頼む。」
「それってあり?俺もじゃあ両方!」
「じゃあ俺も!」
テールとフエゴも追随する。
どうやら両方頼むのもありらしい。これで今後悩まなくてすむ。
「シャルル様、そんなに食べられますか?」
少食気味のベアトリスが俺の前に並んだ料理を見て、少し顔色を悪くしている。
「余裕だと思うぞ?」
26だった前世の俺なら胸やけを起こしたかもしれないが、今は13歳。体の大きさからして16歳くらいなので、いくらでも食べられる年頃だ。
案の定問題なく平らげる。
ん?
ベアトリスだけではなく、皆が俺を見ている。
「本当にー入りましたねー。」
「いつも結構食べられるな、とは思ってましたが。」
「どこに入ってんの?」
「いや、普通に入るだろ?フエゴとテールも同じだけ食べてるだろうが。」
なぜ俺だけ突っ込まれるのか。解せん。
******
3時限目は魔道具の授業をとっている。
教室は小教室だったので予想はしていたが、魔道具の授業を取る生徒は少ないようだ。
主に生活用品として使用される魔道具は、貴族にとって購入するものなので作ろうと考えるのは変わったやつか、貴族の中でも貧乏な下級貴族くらいなのだろう。
目立たぬよう、1番後ろの席に座ったが、俺がこの授業を取ったことが意外なようで、10人くらいしかいない生徒がチラチラと振り返って見てくる。教室が狭いためこっちを見られると近い距離で目が合ってしまうのでやめてもらいたい。
俺は目が合わないよう窓の外を見るフリをして授業開始を待つ。
「お待たせ。魔道具の授業を開始するよ!
今年はとってくれている子が多くて嬉しいよ!
僕は魔道具師のウラジール。魔道具はまだまだ研究が進んでいない分野だから、基礎を勉強したら新しい魔道具作りにチャレンジするよ!」
入ってきた途端話し始める講師のウラジール。
緑色の長い髪を三つ編みにして、大きな丸眼鏡をかけている女性だ。
「この授業は魔道具を見ながら説明するよ。今日は四つ用意してるから、4グループに別れてもらって、グループに一個の魔道具をわたすからとりにきて。
10人のクラスだから適当に近くの子と2-3人くらいでグループになってね。」
俺は1番後ろの席だったので、近くには1人しかいなかった。
マリアだ。
「初めまして。シャルルだ。」
「は、は、は、初めまして。マリアと申します。」
「魔道具を取ってくる。」
こうして俺はマリアと会うことに成功したのだった。
やっとマリアと会えました。
次回はこの後のお話です。
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