科目選択週間 1
登校初日にフエゴにマリアとの接触について頼んだものの、無策でマリアと会うとベアトリスに変な誤解を与えるかもしれないので一旦保留にしてもらった。
流石に宰相の娘であるベアトリスに対して、マリアが父であるサファリアの王の隠し子かもしれない、という言い訳はできない。
フエゴも騎士団長の息子なので、言われると不味いのだが、フエゴ自身が自分が考えた案ながらありえないと思っているようなので言うことはないだろう。
今日は登校初日から3日目。昨日は数件の科目説明に参加し、取り立てて面白い内容のものがなかった。
今日は是非とも取りたいと思っている魔法陣学と魔道具学の説明がある。
午前の早い時間に開催される魔道具学の科目説明に向かった。
魔道具とは、基本的に魔石を組み込まれた生活用品が主なものだ。
魔石は電池のように、魔道具を動かすための魔力を供給する役割を持つ。魔石から、魔力を流す回路を作成して動かす動具を魔道具と呼び、簡単な構造のものが大半だ。
例えば夜に光る魔力灯が1番普及している魔道具だ。
弱い魔物から取れるクズのような魔石でも使えて、燃費が良いので平民でも利用している。
魔力灯は魔石自体を光らす仕組みになっているので、構造も簡単だ。素材も安いもので作れる。
他にも、火属性の魔石を使ったチャッカマンのような点火する魔道具や、水の魔石を使った冷蔵庫のような魔道具など、基本的には如何に効率よく魔力を支えるように他の素材と組み合わせるか、構造上簡素にできるか、ということを学ぶのが魔道具学だ。
貴族の家には既に出来上がった魔道具が沢山あり、あえて自分で作ろうというものはあまりいないようで科目説明に参加している生徒も数人だけだ。
俺の場合、ゲームのストーリーから考えて、卒業後の冒険の際役に立ちそうだから、という理由でこの科目を取ることにした。
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その後魔法陣学の科目説明に移動する。
魔法陣学はラファルとベアトリスも取るつもりだと言っていたが、この日2人はいなかった。
それぞれの科目説明はこの1週間で数回行われるので、他の科目説明と被っていたのだろう。
少し残念ではあるが、魔法陣学は是非とも習得したい科目だ。
講師が入ってきて説明が行われる。
魔法が精霊の助けを借りて本人の魔力を使用するのに対して、魔法陣は魔石から魔力を供給でき、かつ物に付与することができる。
この学園全体に貼られている強力な防御結界は学園の4隅に魔法陣が描かれた塔があり、魔法陣の中には大きな魔石が置かれているそうだ。
この魔法陣は非常に複雑かつ難解なもので、魔法陣の中でも最高レベルといえる代物だそうだ。
当たり前だが、魔法陣を描くには時間がかかるため、戦闘の場で使用するなら、事前に武器や防具に魔法陣を書き込んでおく、罠として利用する、回復の魔法陣を描いておき、怪我をしたら入る、という使い方をするそうだ。
魔法陣には魔石で魔力を供給する使い方が一般的だが、直接人間が魔力を注ぐこともできる。魔石を使用すれば本人の魔力量に依存しないが、俺のように魔力が強い人間であれば魔法陣の効果を高めることができる。
うまく使えれば戦略の幅が広がりそうだ。
「シャルル王子、前へ」
急に講師に声をかけられる。
後ろの方の席で目立たぬようにしていたのだが、指名を受けたので講師の元へむかう。
「今説明した通り、魔法陣は魔石を利用するのが一般的ですが、代わりに彼のように魔力量の高い者が使用するとどうなるか、実際に見てみよう」
と講師の男が会場の生徒に呼びかける。
魔法陣の中には小さな魔石が設置してある。
「これはどういう魔法陣ですか?」
「当たりを明るくするだけの害はないものだよ。安心して魔力を通しなさい」
魔法陣を中心に光が輝いている。魔法陣は直径1メートルくらいで、光の範囲は5メートルくらいだ。
講師の男が魔石を外すと、ふっと光が消える。
俺は魔法陣にむかい、ゆっくりと魔力を通す。
魔法陣が輝き始め、眩い光が教室全体を照らす。
思わず目を閉じ、魔力の供給を止める。
「皆目を開けられないと思うが、このように魔力量の強い人間が魔力を流すと、魔法陣の効果は増大する。魔法陣の優れている点は、書かれた魔法陣の属性と、魔力を流す人間の属性が違っても使用できるところにある。この魔法陣は光属性だが、他の属性の人間でも使用できるのだ。」
目がチカチカしている。
他属性でも使えるならわざわざ光属性の俺にやらせなくても、水属性の講師がやれば良かったではないか。
まだちゃんと開かない目で睨む俺に講師は
「想像以上だ。君が魔力を通す時には目を瞑っていたが、それでも眩しく感じた。色々と実験ができるのが楽しみだ。絶対に魔法陣学を取るように。」
と嬉しそうにしていた。
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あくまでも偏見だが、一部の研究者という人種は人の迷惑を考えない。
自分の研究以外のことには興味を持てないのだろう。
先程の講師はきっとそういう人種だ。
目が潰れるかと思った。何が害がないだ。
魔法陣学は学びたいが、あの講師の元で学ぶのは不安だ。学園時代に命を落とす羽目にならなければ良いが。
そう思いながら食堂にむかう。
うまく時間が合わなかったようで見知った顔がない。
ぼっち飯でもいいのだが、生徒が皆こちらをチラチラと見てくるので居心地が悪い。
セットメニューとは別にテイクアウトできるサンドイッチがあったので、それを頼んで外で食べることにした。
テールのゲーム内のプロフィールによく遭遇する場所が屋上と書いていたのを思い出し、校舎の3階から屋上を探してみる。
校舎入り口から伸びる階段は3階までだが、回廊を進むと屋上に出る階段が校舎の外にあった。
想像より広い。バスケットボールのコートが置けそうだ。ベンチも数個並べてあり、座って昼食が食べれることに安堵する。
テールどころか誰もいなかった。
わかりにくい場所だからだろうか。
空が近くて気持ち良い場所だと思うが。
俺はベンチに腰掛け、サンドイッチを食べる。
「シャルル様?」
振り向くと真っ赤な顔をした男子生徒がいた。
知らないやつだ、と思う。
「何か用か?」
「いえ、こんなところに人がいると思わなくて!!
しかもシャルル様だなんて!!」
「サファリアの者か?俺のことを知っているんだろう?」
「アカサンドリアです!この学園の者なら皆知っています!2年のウィングといいます。
シャルル王子のことは他学年の生徒だけでなく、講師の方々も皆、噂していますし、知らない者はおりません!」
「噂か、代表挨拶のことか、第一王子だからか。」
「いえ!そうではなく!その、、、なんでもありません!」
ガチガチに緊張したままのウィングに、立ち去るように仄めかし、俺は引き続きサンドイッチを食べた。
先程の魔法陣の講師も俺を名指しで指名していたし、食堂にいた生徒達の様子からも、ウィングが言った通り、俺のことが学園内の全員に知れ渡っているのは間違いないだろう。新入生挨拶をする、ということがここまで注目を浴びる結果になるとは予想していなかった。
先程のウィングの俺への態度を見ると、新たに友人を作るのは難しいと考えるのが妥当だろう。
寂しい学園生活になりそうだ。
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