登校初日 1
学園初日
今日は初登校の日だ。
制服も、ピッタリ体が合うように作られている。
デザインは、日本の学校によくありそうな白いシャツに紺色のブレザー、チェック柄のズボンなのだが、今世の俺の体型だと、印象が前世の高校生と全く違う。
シャルルは足も長いし、筋肉も適度についているので、かなり格好良く着こなせていると思う。
服の素材も高級な光沢があり、パリコレに出ても違和感がなさそうだ。
シャツの首元には、何をつけても良いのだけれど、真面目な学生らしく上まで全部ボタンを締めて、落ち着いた色味のシルバーのアスコット・タイを国紋を入れたリングで止める。
良い感じに纏まった。
「おかしくないか?」
「お似合いですわ。」
一応、デリアにも確認を取り校舎に向かう。
寮から学園の校舎までは個々が馬車に乗ると毎日大渋滞になるため、大人数が乗る大型の乗り合い馬車で向かう。
学園が広大で、一つの街くらいの大きさがあるため、施設間は循環する馬車を使用することになる。
寮と校舎までは朝と夕方は大型馬車が、行ったり来たりするそうだ。
数百人が通う校舎は立派なものだった。木造の柱は濃い緑に塗られていて、壁は漆喰のような白い壁材が塗られている。
入り口は王宮の入り口と似た広さの開けたホールになっており、3階まで続く幅の広い階段が緩やかに左右に伸びている。校舎は真ん中に中庭があり、回廊型の廊下が四角く中庭を取り囲んでいる。2階と3階には回廊の外側に大小様々な大きさの教室が並んでいる。
一階部分は大ホールに続く廊下と、食堂、教職員室といった施設が並んでいる。
カリキュラムの表と、学園施設図を片手に、それぞれの科目の説明が行われている場所と時間を確認して見学に行く。
色々確認するためには1週間はかかるだろう。
俺の場合は既に教育を受けている分野は外して見学に行くため、3日程度で全て回れそうだ。
我が国ではあまり発展していない魔法陣学、魔道具学の科目は必ず取りたい。魔法と武術は基礎的なものから、高位のものまで4段階にクラスが分かれているため、1番高位のクラスで良いだろう。
他にも、各国の歴史や文化、法律を学べる科目や、礼儀作法、ダンスといった貴族らしい科目、一般教養としての文学や哲学、植物学、魔物学、数学といった科目や、薬草作成講座のような実技講習もある。アカサンドリアが得意とする鍛冶や、採掘の講座もある。面白そうだが、何を目指しているのかわからなくなりそうだ。
せっかくなので、取ることはない科目も見学に行くことにした。
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最初向かったのは校舎の2階の教室だ。
この時間はここでは魔物学の講義内容の説明が行われる。
聞きに来ている生徒は30人くらいか。
茶色の髪の初老の男性が講師のようだ。
魔物学では、魔物個々の風貌、攻撃方法、対処法、魔物の系統といった講義と、実際に皆で戦って生態調査を行うフィールドワークがあるそうだ。
俺は騎士団と共に魔物討伐を行なっているが、まだ戦ったことのない魔物のことも深く知れそうだ。
この科目は取ろう、と思い次に向かう。
次は屋外での武術練習場。
この科目説明は全てのレベルの物が一堂に会し、それぞれの講義レベルの説明を行うので新入生ほぼ全員が集まる。運動場のような場所の真ん中で大きな声を張り上げて茶色の髪と無精髭を生やした30代くらいの男が説明をしている。
基本の武術の科目は片手剣が中心となる。
他の武器を使用する場合は、習熟度が高くても低くても其々の武器の科目となるため、習熟度が高い生徒は通常の武術科目の高レベルの授業を受けるよう勧められていた。
「シャルル様、武術科目は最上位のクラスですよね。」
と、フエゴに話しかけられた。
「ああ、そのつもりだ。」
ここにはほぼ全員が来ているはずだ。
ラファルは見つけられないが、ベアトリスはいた。
テールもいるが隠れておく。
「フエゴは剣以外の科目は受けないのか?」
「はい、一応一通りは使えますが、やはり剣が使いやすいです。」
確かゲームでは弓も使っていたと思うが、魔法を覚えたからか、俺との練習が剣ばかりだからか、使用武器も変わったんだな、と心の中で考える。
「俺も剣だけだな。ラファルは見当たらないな、ベアトリスに声をかけるか。あっちにテールがいるから気づかれないようにしよう。」
「はい!
あ、ラファルは武術はやりませんよ。イフリータ伯母が嘆いていました。」
「確かに、ラファルは剣を持つのは想像できないな。」
などと笑いながら、こっそりとベアトリスに近づく。
「シャルル様」
気づかれた。
「ベアトリスも武術を?」
「私は槍の科目を取る予定です。フエゴに教えてもらってはいますが、まだ満足に槍を払えないので。」
確かに、その細腕では厳しいだろうな。
「頑張ってくれているのだな。期待している。」
と労い、2人にむけて話しかける。
「魔物学を一緒に受けないか?先程聞いた方が、今後一緒に戦っていくなら受けたほうが良さそうだ。魔物と戦う実戦もあるようだ。」
「それは良いですね!」
と直ぐに同意してくれるフエゴと対照的に顔を曇らせるベアトリス。
「私では足手まといになるかと、、、」
「講師も横につく。安全な状態で魔物に慣れた方が良い。最初は怖いと思うが、俺とフエゴもついているから徐々に戦えるようになるさ。」
「はい。頑張ってみます。」
2人から同意を得られ、魔物学を受けることになった。あとでラファルも誘ってみよう。
「俺は誘ってくれないの?」
思わず体がびくつく。
「・・・テール。頼むから気配を消して近づくな。」
「気配を消してるつもりはないんだけどね。なんていうか、習性みたいなもん?」
いつも通り全く気付かれない内に近くに来ていたようだ。
フエゴとベアトリスも気づいていなかったようで驚いている。
特にフエゴは、今日はテールに気付かれないよう警戒した上での接近に顔を青ざめさせている。
「土の魔法か?」ピリピリとした緊張感のある口調でフエゴが問いかける。
自身の系統以外の魔法に関して、普通はあまり知らない。
ただ、俺はある程度別系統についても学んでいる。隠密系の魔法は、確かに土魔法には存在しているが、これはそれとは違う。おそらくは、、、
「違うよ。魔法じゃない。言ったろ?習性だって。シャルルなら意味はわかると思うけど。」
チラリとこちらを見てニヤリと笑うテール。
大体わかったが、気付かないふりをしよう。
「土魔法だと思ったぞ。違うのか?」
隠すふりなら演技に付き合ってやるか、と思いこちらも素知らぬ顔で返しておく。
「ふふ、シャルルは面白いよね。
フエゴも面白いし、ベアトリスちゃんは可愛いし。
俺も一緒に魔物学受けたいな。」
「何を企んでいる?」
「何も。学園生活を楽しみたいだけさ。魔法はそんなに得意じゃないけど、双剣の腕前はなかなかのもんだよ?」
「ベアトリス、フエゴ。受けてやってもいいか?」
驚く2人。テールも驚いた顔をしていた。まさか俺があっさりと承諾するとは思っていなかったようだ。
「シャルル様がよいなら、、、」
と2人とも怪訝な顔をしながら頷いてくれた。
まあ、俺が散々苦手だと態度に出していた相手に対し、あっさり承諾したことを不思議に感じるのは仕方ない。
「わー!ありがとうー!3人ともよろしくねー!
あ、ちなみに俺は武術最上位クラス受けるからー!
あ、シャルルとフエゴも一緒かー!頑張ろうねー!
ベアトリスちゃんとは離れるの悲しいなー!」
などとずっと一人で話しているテールに2人は完全に引いていた。
俺は、無言でテールを見ていた。




