ベアトリス視点の入園パーティー後
ベアトリス視点です
シャルル様と別れ、なんとか自室に入るまでは、と姿勢を正し、自室に戻って後ろ手に扉を閉めた瞬間私は崩れ落ちました。
「お嬢様!何がございました!!」
慌てて駆け寄ってくる侍女のセーラに私は顔を両手で覆いながら、
「・・・シャルル様が、、、」
とだけ告げました。
それだけでセーラには伝わったようです。
「お疲れ様でございます。前室の地べた等にお座りになってはいけません。お顔を隠されたままでもけっこうですが、お手をお貸ししますので中に入りましょう。」
両手で顔を隠したままでは無理なので、仕方なく真っ赤になった顔を晒しながらおぶさるようにセーラに運んでもらい、改めて前室から応接室の長いソファーに倒れ込みました。
セーラは悶える私に、いえ、恐らくシャルル様に対してため息をつき、
「気分を落ち着かせるハーブティーをご用意いたしますのでお嬢様はそのままお待ちください」
と言って去っていく。
シャルル様には決してお伝えできないのですが、侍女や貴族の御令嬢の間で、シャルル様は
「無自覚キラキラ王子」
と呼ばれているのです。
この世の者とは思えない、光り輝くような端麗なご容姿をされており、皆シャルル様を見ると顔が赤くなり、近くで見た者は倒れてしまいます。
それなのに、ご本人にはその自覚がございません。
先程も私の友人達への挨拶に同行された際、友人達は、近づく私達を見て、目で必死に
「やめて、来ないで」
と訴えていました。
シャルル様は遠目で見て楽しむことができる方で、近くでお会いすると皆過度の緊張に襲われるのです。
いつも、お茶会では
「ベアトリス様はすごいですわ。あんな至近距離でお話しするなんて考えただけで心臓が止まりそうですわ」
「絵姿でぎりぎり直視できますわ。目がつぶれそうですわ」
等と言われております。
こういうと、まるで化け物扱いですわね。ふふっ。
そんなシャルル様と、ここ3年間は近くで過ごしてはいるのですが、私もなかなか直視できておりません。シャルル様は相手の目を見て話される方なので、こちらにも顔を自分の方に向けるよう強要してこられます。
いつになったら自覚してくださるのかしら。
今日は特に至近距離過ぎて、、
別れ際もあんなに強く抱きしめられて、、、
思い出しただけで熱が上がり、思わずソファーのクッションに顔を埋めてしまいました。
「お嬢様、お茶のご準備が、、、
まあ、おやめくださいませ!クッションに紅が写ってしまいますわ!」
そう言って私からクッションが引き剥がされる。姉妹のように育ったセーラは私にも容赦がございません。
「あら、ついておりませんわね。
まあ、もしかしてお嬢様、シャルル様と、、、」
セーラの意図するところを察し、慌てて否定します。
「違います!抱きしめられただけです!」
「まあ。」
失言に気付き、顔を両手で覆う。
「それは良くここまで持ち堪えられましたね。」
と、感心されてしまう。
セーラにもシャルル様の破壊力は伝わっているのです。
「今日のシャルル様のお召し物は如何でしたか?」
私を落ち着かせようと抱きしめられた件からは離れた話題を振ってくれる。
「私の瞳の色に合わせてくださった濃い紫色のスーツでしたわ。私にお送りくださったアクセサリーと合わせて、カフスボタンやハンカチーフにも葡萄の葉を取り入れられていて、それがまた全てお似合いで、、、」
思い出して、ふう、と感嘆のため息をつく。
「それは良うございましたね。お嬢様の今日のドレスとアクセサリーについても、何かおっしゃっていましたか?」
思い出してまた顔が熱くなる。
「もう、シャルル様の話題は今日は禁止です!!」
私がようやく落ち着いてハーブティーを飲む頃にはすっかり冷めてしまっておりました。
ベッドに入ってからも、今日一日のことが次々と頭に浮かんでしまい、私は寝不足のまま学園生活初日を迎えることになるのでした。




