ベアトリス 12歳 冬
私の名前はベアトリス・ドアバック。
代々宰相を務めるドアバック家の子女でございます。
この国に闇の属性を持つ者がほとんどいない上に、稀に出ても髪色はグレーのような黒、という中で私の黒い髪はとても目立ってしまいます。
この濃い紫色の瞳もそうです。
その為に同年代の子に揶揄われることが多かった私は屋敷に引きこもってしまい、読書ばかりしておりました。
そんな私に大きな転機が訪れました。
なんと10歳で、この国の第一王子、将来王になることを約束された存在であるシャルル様と婚約したのです。
それから2年間、妃教育と並行して魔法教育も行われ、私の魔法能力はみるみる内に成長いたしました。まさか、たったの2年で高等魔法まで使えるようになるとは考えてもみませんでした。
教師役の王宮筆頭魔道士のユアン様からもとても褒めていただきました。
王妃になると、様々な夜会や茶会を開催する必要があるため、苦手にしていた夜会や茶会への参加も行うようになりました。
シャルル様と婚約者となった私は、どの会でも非常に注目を集めてしまいます。シャルル様に恥をかかせないよう、毅然とした態度で挑むようになりました。茶会では、小人数ではありますが、女性の友人もできましたし、婚約者発表があった後は髪色や眼の色で眼前で揶揄われることはなくなりました。
私の方を見ながら、こそこそと話していらっしゃる方々がいるのは承知していますが、気にしないよう心がけています。
それでも、夜会の際には、男性の方が話しかけてこられようとなさいます。女性の方にはだいぶ抵抗がなくなってまいりましたが、男性はまだ怖い為、緊張してしまいます。
ただ、夜会の際には必ずシャルル様と一緒に参加しておりますので、私が男性の方から話しかけられそうになると、どこからか現れて助けてくださるので、男性の方と二人きりでお話しせずにすんでおります。
シャルル様は、転送の魔法でも使われているのかと思うほど、つい先ほどまで遠くでどなたかと話し込まれていても、私が話しかけられるやいなや、私の元に駆けつけてくださいます。
本当にお心配りいただき有り難い限りです。
男性を苦手としている私ですが、男性のお友達もできました。
シャルル様の魔法のご学友で、ユアン様の御子息、ラファルです。
ラファルは同性の方、と勘違いしてしまうくらい女性のようなご容姿をしていらっしゃいます。
ご本人は、自分も他人に対しても容姿に関して何のご興味もお持ちではいらっしゃいません。
散々髪や眼の色を揶揄われて育った私にとっては、ラファルが私の容姿に何も感じていらっしゃらないことを有り難く感じました。
ラファルは、初めてお会いした時から、無感情、といってもよさそうな、何に対しても興味を持たず、いつも眠そうな表情をしていらっしゃる方でした。
私はシャルル様のご学友といえど、男性であるラファル、フエゴ両名としばらくお話することはありませんでした。
魔法の鍛錬の休憩中、私が読んでいた本を見たラファルが、その本をお好きだとお伺いし、そこからは色々と本についてお話することになりました。
私が茶会で仲良くなりました御令嬢達は、恋愛に関する小説をお好みでした。私も恋愛小説はとても好きなのですが、他にも私が好んで読んでいる歴史や政治、精霊や魔法といった傾向の本が好きな方はいらっしゃらず、疎外感を感じていました。
ラファルはむしろそういった恋愛以外の傾向の本にご興味をお持ちで、存分に意見を交換できる初めての方となりました。
シャルル様も幅広い傾向の本をお読みになられる方なので、本について意見を交わすことができる方なのですが、気兼ねなく話せる、ということではラファルの方に軍牌が上がります。
どうしてもシャルル様とお会いすると本の話に集中できないというか、させてもらえないというか。
婚約者のシャルル様の前でも、ラファルと本の話で盛り上がってしまいました。婚約者を目の前にして、他の男性と話が弾むというのは良くないことだと思うのですが、ラファルの容姿のせいか、同性のような意識になってしまっておりました。
シャルル様にも、ラファルと本の話で盛り上がったことをついついお話しておりますと、一時不機嫌になられているご様子でした。
それに気づき、婚約者でありながら端ない真似をしてしまったと顔を青褪めました。
シャルル様は私からの話とラファルからの話を聞かれた上で、異性といえど私とラファルとの本で結ばれた友情をご理解くださりました。
本当に寛大なお心をお持ちの方だと改めて感動しました。お気になさらずいただけて本当に良かったです。
ここ最近は、魔法以外にも武術を身につけたいと思っております。
高等魔法まで身につけることができましたが、魔法は詠唱に時間がかかります。後衛に控えていても、突然の攻撃を敵から受けるなど、戦闘には色んな状況に対処できる必要があると感じるようになってまいりました。
一緒に魔法の勉強をしているフエゴは、剣が1番得意ではあるものの、他の武器も色々試していると話していたため、私も相談してみました。
魔法が得意な私が武器も習いたい、という話をすると驚かれましたが、様々な武器について一つずつ丁寧に教えてくださいました。
その中で、私に適した武器は槍と結論づけられました。
私は武器を扱ったことがなく、基本的には武器を持っていても魔法が中心の戦い方になります。
詠唱時間を稼ぐ為に、リーチの長い槍が適しているというのが私に槍が適している理由です。
シャルル様とフエゴの訓練をしている場の片隅で、訓練させていただきましたが、少し槍を振っただけで両腕が動かなくなってしまいました。
シャルル様とフエゴは小さい頃から特訓しているので、ずいぶん重そうな剣も軽々ふっていらっしゃいます。
ゆくゆくは、私も槍を操れるよう、まずは素振りから始めていきたいと存じます。
・・・・子供ではないのですから、そんなに不安そうな顔でこちらを見ずご自分の訓練に集中してくださいませ、シャルル様。
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ここ2年で、色々と私の周りの状況は目まぐるしく変化して参りました。
何もかもがシャルル様との婚約から始まっております。
婚約がなければ今頃も私は学園入学が不安で逃げ出したい気持ちのまま屋敷に引きこもり、読書しかしていなかったことでしょう。
この2年でお友達もでき、魔法と少しばかりの槍の訓練を行い、そして何より最愛の婚約者がおります。
学園入園は、恐ろしいものではなく、楽しみになっております。
数年間、世俗とは離れた場で同年代の方々と学業を共にすることは一生に一度の掛け替えのない経験となることでしょう。
同じ学年にシャルル様がいてくださることから、何の不安も持たず、新しい場にも飛び込むことができます。
より成長できることを願い、年があけるのを期待をこめてお祈り申し上げます。




