魔法のお勉強
お茶会から一月、今日から魔法の勉強は俺以外にベアトリス、フエゴ、ラファルが加わる。
ベアトリスとフエゴも精霊の泉には既に訪問したそうだ。
お茶会からはベアトリスとは王宮ですれ違うだけだ。顔を真っ赤にさせてお辞儀をして去っていく。
ちょっとお茶会の際は接触が過ぎたかな、と反省する。相手は10歳の女の子。しかも人見知りで淑女教育が行き届いた子に対して。
自制しよう、と思うのだが反応が可愛くてつい弄りたくなってしまう。
話を戻そう。魔法の修練については俺だけが圧倒的に先行しているので、今後の勉強内容自体は皆とは違うが、同年の子供がこれだけ揃うのは初めてなのでとても楽しみである。
ラファルは座学を数年前から行っているため、直ぐに実技の訓練、ベアトリスとフエゴは座学を勉強しながら、実技も行なっていく、という流れになっており、ユアンだけでは教師が足りず更に2名の魔道士が来てくることになった。
「皆、よく集まってくれた。
学園入学はまだ3年先だが、魔法の修練を早期から行い、力をつけ、共にこの国を守っていけるようになることを期待している。
私も先んじて勉強を始めているが、追い抜くつもりで頑張って欲しい。」
俺の挨拶の後、各自の紹介を行なった。
ベアトリス、フエゴ、ラファルは3人とも緊張している。お互いあまり知らない者同士だし仕方ないだろう。ベアトリスはあまり外出もしておらず、他人と会うこと自体がなかっただろうし、フエゴとラファルは従兄弟同士とはいえタイプが真逆なのでお互いあまり関わって来なかったようだ。
この場はお茶会のような懇親を目的とした場ではなく勉強の場だ。
無理にお互い話す必要はない。
とはいえ、少しずつで良いから打ち解けていくと良いな。
学園に入る頃にはこのメンバーだけでもある程度魔法が使えるようになっているだろうから、連携を強める方針に切り替えていきたい。
魔法は詠唱に時間がかかるので、パーティーでの連携が非常に重要になってくる。
どのタイミングで防御魔法をかけ、攻撃魔法を入れるのか、回復魔法をかけるタイミングは、というのは実際に戦いながら連携を深めていくしかない。
幸いこの4人であれば、俺とフエゴが剣を使えるので、ベアトリスとラファルを後衛に置くことができる。
なんて、先のことも考えながら、授業を受ける。
4人揃うのが初めてなので、今日は俺とラファルも座学を一緒に受ける。一度習ったこととはいえ、細かい部分は忘れていたりするので良い復習になる。
この世界では光、闇、火、水、風、土の属性が存在して、それぞれの属性の精霊にお願いして力を借りて自分の魔力を増幅させて解き放つ。
俺が光、ベアトリスが闇、フエゴが火、ラファルが風の属性を持つ。
属性により魔法の種類が変わるため、魔法の詠唱内容はそれぞれに異なる。
光属性は攻撃、癒し、能力強化
闇属性は攻撃、能力低下、状態異常付与
火属性は攻撃、能力強化
水属性は攻撃、癒し
風属性は攻撃、防御
土属性は攻撃、能力低下
の魔法を使用できる。
特に光と闇は使用できる魔法の種類も多く、強力な攻撃魔法が存在するので、他の属性より上の二大属性と位置付けられている。
この4人でパーティーを組むなら俺が攻撃と回復を行わないといけないからバランスが悪い。
「光の乙女の楽園」主人公のマリアか、水の攻略者のどちらか1人は味方に入れないといけないな、と思う。
全ての攻略対象者と主人公マリアをいれると7人か、ごちゃごちゃして逆に戦いにくそうな気もする。マリアを含めて後3人は学園入学までに会えるか分からないから、会ってみてから考えよう。
座学の授業は進んでいるが、既に習ったことが大半なのですぐに違うことを考えてしまうな。
俺は隣にいるラファルに小声で話しかけてみる。
「ラファルも既にこの辺りは勉強したのだろう?
退屈ではないか?」
「はいー。大丈夫ですー。面白いですよー。」
ラファルはゆっくり話すタイプのようで、語尾が全部伸びている。フエゴはチャキチャキした感じなので合わないだろうなあ。
「殿下はーもう魔法の詠唱ー出来るんですよねー。僕も早く使ってみたいですー。」
「詠唱呪文は覚えたか?」
「はいー。何個かはー。」
うーん、なんかラファルと話しているとおっとりしたペースのせいか、眠気が襲ってきてしまう。
「ここで一旦休憩にしましょう。殿下とラファルは集中できていないようなので、休憩後は実技にしましょう。」
と講師をしていたユアンから声がかかる。
4人しかいない講義で2人が話していたらバレバレだよなあ。と苦笑する。
座学の講義は数十人は入れる、大学の講義室のように前に教壇があり、教壇から数メートル離れたところを最前線として、テーブルと椅子が教壇とは向き合うように階段状に並べられていて、前が低くて後ろの席は高いところにあるので、後ろの席からでも教壇が見えるようになっている。
教壇の後ろには広い黒板のようなボードがある。
魔力で書き込んでいき、消すときは一瞬だ。
俺たち男子3人は最前列で講義を受けていたので、ユアンの目の前で雑談していたことになる。
ちなみにベアトリスは少し後ろの席になっている。
「せっかく4人揃ったから少しお茶でもするか。
ユアン、お前もどうだ?」
「良いですね。ただ、授業の続きもあるので短時間でお願いしますね。」
講義室は話しにくい形状なので、別室にむかうと既にお茶の用意が整っていた。デリアが用意してくれていたようだ。
円状のテーブルを囲うように座る。
「フエゴ、魔法の授業を受けてみた感想はどうだ?続きそうか?」
まず、1番親しいフエゴから話しかける。
「なんとか今日習ったことはついていけました。勉強は、あまり得意ではないのですが、自分から言い出したことなので頑張ります。」
フエゴの珍しい敬語口調にユアンがくすくす笑い、フエゴに睨まれている。
「ベアトリスはどうだった?」
「はい、ユアン様がとても分かりやすい教え方をしてくださっていましたので、授業内容は全て理解出来ましたわ。ありがとうございます。ユアン様。」
とユアンに御礼を言う。いいな、俺もベアトリスに感謝されたい。
「そうか、引き続き頑張るように」
「ラファルとシャルル様はおさらいになってしまいましたね。少し退屈だったかもしれませんが、何事も基礎が1番大事ですからね。お忘れなきよう。」
「先程はすまなかったな、反省する。
ところで、ラファルは早く実技を行いたいそうだ。」
と話をすり替える。
「ふぇっ!?あ、はいー。父上ー。楽しみですー。」
ユアンは苦笑しつつ答える。
「ラファルは屋敷でもずっと熱心に詠唱呪文を覚えていましたからね。屋敷で使われると困りますから唱えきらないように我慢させるのが大変でした。」
「良かったな、ラファル。この後は全部唱えて良いぞ。」
「はい!」
と、和やかに休憩は終わり、ベアトリスとフエゴは講義室に戻った。
ユアンは俺たちの方に来るので別の王宮魔道士が引き続き座学の講師を行う。今日はユアン1人で講義の予定だったので休憩の間に段取りがされていたようだ。
ユアン、ラファルと一緒に俺たちは王宮の外に出た。
魔法の実技は野外で行わないと危ないため、魔道士用の練習場として、運動場くらいのスペースがあるのだ。
魔道士練習場は、火の魔法で焼き尽くされてしまうのか、草一本生えていない。
「それではラファル、初級魔法から唱えてみましょうか。」
藁で作った人型の模型のような的が10体、木の杭に設置されている。そこを狙い、風の初級魔法エアカッターを放つラファル。
10センチくらいの風の渦が多数ラファルの両手の掌から飛び出て的に向かう。
が、的には当たらず、過ぎ去って空中で霧散する。
「うまく詠唱できましたね。魔法の発動は問題なかったのでコントロールの精度を上げましょう。コントロールするには魔力の流れを感じとり、標的に魔力を当てるようなイメージで。何回かやればコツが掴めるでしょう。」
ラファルは初めて魔法を撃った感覚に感動して目をキラキラと輝かせている。
「はい!」
数回繰り返すと徐々に風の渦が的に当たるようになり、今日の練習の終わり頃にはラファルのエアカッターは全て的に当たるようなっていた。
ちなみに的の藁人形は破損がひどくなると現場の係員のような男性が取り替えてくれる。今は初級魔法の練習なので損害が少ないが、俺が今練習している中級者魔法だと10体一度に破損してしまうため、取り替える係は大変そうだ。
中級以上の魔法だと魔力量が必要になり連発できないため、1発ずつの間の時間は必要となるが、それでも取り替え係には頭が下がる。
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「お疲れ様。ラファルは筋がいいね、ユアンの息子だけあるな。」
そう言ってやるとラファルは顔が赤くなる。
「いえー。父上は遥か高みにいらっしゃる方でー。
僕もこれからー殿下とー、父上に少しでも近づきたいですー。」
「うん、よろしく頼むぞ。」
ラファルの攻撃魔法の見学のみで、練習は出来なかったが、味方の魔法の特性を知っておくのは悪いことではない。初級魔法は攻撃力は少ないものの、魔力をほとんど消費せず、詠唱も短いので間髪入れずに打てるため、使い勝手が良いので、高等魔法を覚えた後でも使う機会があるだろう。属性ごとの攻撃魔法の種類と性質を理解しておくことは戦略を組み立てる上で重要だ。
今日見た感じだと、確かに筋も良かった。初めて魔法を使う子の場合、的に当てるまででも1週間くらいの時間を要するときいていた。
ラファルは数時間の練習で全ての的に当てていた。
かく言う俺もそれくらいの習得スピードだった。
やはり、ゲームの中で攻略対象者と設定されている人物は他の者より優れた性質を持つのだろう。
悪役令嬢としてゲームに登場したベアトリスは、仲間になることがないのでステータスはわからないままだ。何か成績関連のイベントや魔法についての言及はなかったかな。後で「光の乙女の楽園」ノートを見てみよう。




